ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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魔女にずっとやりたかった前格特格派生をぶちこむことができました^_^


第27話 どうやら、私の力には元があるらしい

「私に力を貸せ!!!!」

 

咄嗟だった故に後先を考えられなかったさやかの跳躍。居合わせた3人が息を呑んだその時、魔女が根城としている空間に響くのはさやかの気迫に溢れた声。その声に諦観といった絶望は存在せず、あるのは現状を脱し、未来へと進もうとする意志。例えその先が不透明であったとしても踏み出していける勇気であった。

さやかのその声に呼応するが如く、これまで彼女の両肩から薄い緑色と水色の粒子を吐き出ているだけだったコーン型の突起物がスライドするようにさやかの背中に回る。

 

そのコーン型のスラスター…………『GNドライヴ』から放出される『GN粒子』………その粒子量はどんどん増大していき、落下するさやかの体を空中で押しとどめる。だが、粒子の放出はそれだけに留まらずーーーーーー

 

「ガンッダァァァァァァム!!!」

 

雄叫びと共に、さやかの体を重力という鎖から解放したかの如く、天高くへと舞い上げる。その速度はさながらロケットのように早く、緑色と水色、二つの色で彩られた二つの円を青い空に残す。

 

「み、美樹さんがーーーー」

「空をーーーーー」

「飛んだ……………!?」

 

さやかが空を飛ぶというかけ離れた現象にマミたちも思わず助けを出そうとした手をとめながら、大きくさやかが飛び上がった空を見上げる。

彼女の姿はもはや米粒のように小さくなり、二つのGNドライヴから放出される粒子を反射しているのであろう光だけが、その所在を知らしめる。

やがて光は僅かにマミたちから見て右に軌道を逸らすと、再び二色で彩られた『OO(二つの円)』を描き、その光を強める。さながらそれは大気圏での空気抵抗で爆発的な光を発する隕石のような輝きだった。

 

「ダブルオーガンダム………争いを止めるための力…………それがこの力の名前だと言うのなら…………」

 

腰に吊り下げられていた2振りの実体剣、『GNソードⅡロング』と『GNソードⅡショート』を手にしたさやかはさらに落下スピードを速めながら魔女へと肉薄を始める。当然気づいた魔女はそれをさせまいとして遥か上空を飛ぶさやかに向けて、掌から糸のような紐を吐き出す。

 

「……………遅い!!」

 

その糸で編まれた弾幕に対し、さやかは半身を翻しながら、バレルロールをくり返すことでその弾幕をすり抜けながら、さらに加速を重ねる。

 

「ライフルモード…………!!」

 

弾幕を突破したさやかは右手に持っていたGNソードⅡロングの刀身を半回転させ、ライフルモードに移行させると、その銃口を魔女を向けて発射する。広範囲に広がった使い魔を一掃するための三日月型の形状ではなく、シンプルに直線に伸びたそれなりに太いビームは魔女に生えている上半身の右腕の一本を易々ともぎ取っていく。

さらにつづけざまにと言わんばかりにさやかは魔女へ肉薄すると左手に持っていたGNソードⅡショートで一閃。もう一本の右腕を切り落とす。

 

魔女の右腕を切り落としたさやかは魔女の真下まで下降すると、大きく旋回し、スカートの下から背後へと回り込む。

 

(…………そういえば、使い魔は何もしてこないのか?)

 

ふと気になった使い魔の妨害。後ろに回り込むついでに周囲を見渡したさやかはそこでわずかに目を見開くような光景を目にする。全ての使い魔がこちらに見向きもしていないのだ。まるで我関せず、もしくは知っていながら意識を逸らしているかのどちらか。

本来魔女は使い魔にとっては守るべき存在であり、生みの親のようなものだ。その使い魔が魔女が打倒されそうになっているにも関わらず、紐の上をスケート靴で滑走している光景にさやかは微かに顔をしかめる表情を見せる。

 

(………………何というか………寂しいな)

 

哀れみ、というわけではないがさやかは目の前の魔女に目線を向ける。魔女は魔法少女の成れの果て。ソウルジェムが穢れきる前は生きていた人間なのだ。どういう願い、思いを持って魔法少女になったのかはさやかに知る術はない。

 

「……………お節介もいいところなのかもしれないが、私はアンタという魔法少女がいたということは覚えておく。」

 

目を伏せ、魔女の背後で立ち尽くすさやか。その様子はさながら黙祷を捧げているようにも思えた。そこで背後にいるさやかに気がついたのか、魔女は身を翻しながらその残った二本の左腕をさやかに向けて振りかぶる。

 

「アンタのことをいまだ探しているかもしれない家族に伝えることもできない以上………なんの手向にもならないだろうがーーーーー」

 

その迫りくる二本の巨腕に対し、さやかはその二本の腕の間を上体をひねりながら滑り込み、流れるように魔女に接近する。

そして左手に持っていたGNソードⅡショートで魔女の胸元をーーーー具体的に言えば、さやかの右肩に懸架されている大剣、『GNバスターソードⅡ』でつけられた縦一文字の傷痕に向けて、その剣先を深く突き刺した。

 

「ハァッ!!」

 

魔女がリアクションを起こすより早く、さやかはGNソードⅡロングを腰に戻し、フリーになった右手に最初に撃った『GNソードⅡブラスター』を手にすると、左手を引き抜くと同時にブラスターの銃身に取り付けられている半透明の実体剣でなぎ払う。

さらにさやかは薙ぎ払ったブラスターを斬り返し、体を前へ前進させると同時に魔女の胴体を両断し、斬り抜ける。

 

「…………………」

 

斬り抜けた先で残心のように振り抜いたブラスターを持ちながら佇んでいるさやかの背後で両断された魔女が爆発を起こし、その死骸が炎に包まれ、焼失する。その爆発の光が反射したのかは定かではなかったが、魔女を両断した後のさやかの瞳はいつぞやか、マミを助け出した時のような鮮やかな金色に輝いていた。

 

 

 

 

魔女を倒したことで結界が揺らぎ始め、元の現実の風景に戻ると、さやかは落ちていたグリーフシードを拾い上げ、離れたところにいるまどか達のところへ向かう。

 

 

「倒しはした…………のだがーーーー」

 

さやかは魔女を倒したことを報告するもその表情はどこか面倒なものを見ているかのようなものを浮かべていた。

 

「美樹さんあなた………空を翔ぶことができたのね………」

「……………どうやら、私の力には元があるらしい。」

 

マミが驚いた顔を浮かべながらさやかが空を翔んだことを称賛するが、肝心のさやかが微妙な顔をしながら自身の力に元が存在していることを告げる。

 

「元…………ですって?」

 

ほむらが怪訝な顔を見せ、眉を潜めながらの聞き返しに、さやかは静かに頷いた。

 

「ガンダム…………と呼ぶらしい。争いを止める、そのための力。私が判断を見誤り、落下しかけたその瞬間、私の脳内に声を響かせてきた存在がそういっていた。」

「ガンダム………………?」

 

さやかが自身が手にした力がガンダムであるという言葉にマミがガンダムの言葉を反芻し、首をかしげる。他の2人も似たような反応だった。

 

「………………それって信じられることなの?貴方の言い方だと突拍子もなく声をかけてきた不審者のようにも見えるのだけど。」

「それは……………わからない。」

 

ほむらの指摘にさやかは困惑した表情をしながら首を横に振る。その様子にほむらは潜めた眉を一層深くするがーーーー

 

「だが、賭けてみる価値はあった。結果を顧みればこの武装の詳細を知ることができたのだからな。」

 

一転して表情を緩め、まるで感謝するように軽い笑みを見せるさやかにほむらは毒気が抜かれたように呆れた目線をさやかにぶつけた。

 

「……………やっぱり貴方は大馬鹿者ね。そんな突拍子もないことを信じられるなんて。」

「ありがとう。最高の褒め言葉だ。」

 

皮肉のような言葉を送るほむらだったが、それを褒め言葉としてさやかに受け止められたことに少なからず府に落ちなかったのか、ムスッとした表情を見せる。

 

「そういえば美樹さん、ソウルジェムの浄化を忘れずにね?あんな動きを見せていたのだから穢れも相当なものよ?」

「それもそうか…………」

 

マミからそう言われてようやく思い出したのか、さやかは魔法少女の状態を解除し、ソウルジェムを元のアクセサリー状に戻した。

 

「さやかちゃん、空を翔んでいる時の姿、とってもかっこよかったよ!!特に魔女を倒した時の決めポーズ!!」

「…………そうやって面と向かって言われると気恥ずかしいからやめてくれ………成れ果てだったとはいえ、私がやったのは人殺しなんだ。」

「あ……………そ、そうだよね………魔法少女のソウルジェムが濁り切って………出てくるのが魔女だから…………そういう………ことになるよね………ごめん………。」

 

最初こそさやかが魔女を打倒したのを自分のことのように喜ぶまどかだったが、さやかが自身のやったことは人殺しと相違ないというニュアンスの言葉を聞いて、まどかはハッとした表情を浮かべたのちに心痛なものに変え、俯いた。

 

「…………やはりまどかは優しい心の持ち主だ。だがそれ故に魔法少女になるのはやめておいた方がいい。」

「………………そうなの?」

 

納得したような笑みを浮かべるさやかに今度は不思議そうな表情を浮かべるまどか。

 

「私が自身がやっていることを人殺しだと揶揄ったくらいで今にも泣きそうだ。それでは先が保つはずがない。まどかだって、自分が魔女化した所為で見滝原の町を壊したくはないはずだ。」

「それは………そうだけど………」

「才能があることと契約した先、やっていけるだけの適性があることは全くの別問題だ。才能があったとしても自分自身が追いついていかなければ、いずれ潰れる未来が待っている。」

 

そういうとさやかはまどかの額に親指と人差し指で円を作った右手を向ける。一瞬何をするつもりかと思ったまどかだったが、次の瞬間ビシッとさやかがデコピンを放ち、まどかの額からスコーンッといい音を響かせる。

 

「あうっ!?」

 

思わずのけぞったまどかは一歩後ずさるとデコピンされた額を抑え、薄く目尻から涙を浮かばせながらさやかを見つめる。

 

「それに、魔法少女になっている人間は大抵が契約による願いしか、残された手段がなかった、どうしようもなくなってしまった人間がほとんどだ。もちろん、それには私も当てはまる。そんなところにまどかを巻き込みたくないのが、私の正直な思いだ。」

「で、でも……ひ、ひどいよ…………急にデコピンなんて…………」

「……………陰湿な空気にはしたくなかったからな。」

「ええ……………それだけ?」

「それだけだ。」

 

そう言ってさやかは得意気な表情を見せる。そのさやかの様子にまどかは軽く肩を竦めるような仕草を浮かべ、怒った顔つきーーーとはいっても、本当は全く怒りの感情などはないのだろうがーーーで詰め寄った。

 

 

(………………いいえ、貴方はそのどうしようもなくなった人間には当てはまらないわ。美樹さやか。)

 

さやかとまどかのやりとりを一歩引いた位置から見つめるほむら。

ほむら自身が自覚している通り、さやかはいわゆる手段が契約以外、どうしようもなくなってしまった人間には当てはまらない。ある意味、そうさせたのはほむら自身だ。さやかが契約するきっかけとなった魔女については決して初見の相手ではなかった。しかしこれまでの時間軸の中では既に倒されたか、戦力過多気味で秒殺してしまったパターンがほとんどであり、今回ではそれが完全に仇になった。

 

下手を踏み、記憶の中にあるまどかが死ぬ光景を見させられたほむらは視線を釘付けにされ、あろうことか魔女の目の前で固まってしまうという明確な隙を与えてしまった。

 

その状況を察したさやかは動いた。ここで動かなければみんな死ぬ。マミの援護も望めない。残された手段は、誰かが契約して魔女を打破するのみ。

だからさやかは契約した。ほむらのまどかを契約させる訳にはいかないという意志を汲んで、いつもの時間軸のように上条恭介の腕を治すためではなく、友人のため、まどかのためーーーー何よりほむら自身を救うためにーーーー

 

(…………貴方は考えなしよ、美樹さやか。そこは他の時間軸の美樹さやかと変わらない。でも…………)

 

記憶の中でとある時間軸の『美樹さやか』が投影される。大体の時間軸ではほむらに対する『美樹さやか』の第一印象は良くない。元々説明するつもりはなかったのはあったものの、誤解に誤解を重ね、ある日剣を向けてくるほど関係が劣悪になった時もあった。

 

だが、この時間軸のさやかはまるで違う。

 

(それでも、貴方は信じた。他の『美樹さやか』が信じなかったことを、言葉に嘘がなかった。たったそれだけで信じてくれた。)

 

もっとも、この時間軸のさやかはとびきりお人好しかと言われればそういうわけでもない。どういうわけかは知らないがキュウべぇに対して、第六感ともいえる所感でアレから紡がれる都合のいい言葉に対して疑いを持っていた。

 

(やっぱり、今回の美樹さやかはほとほと異常ね。これまでのパターンがまるで通用しないわ。まぁ、それで救われている面がほとんどなのだからとやかくいうつもりはないけど)

 

 

「………………ん?」

 

ふと何かが目についたのか、首を傾げているようなさやかの声にほむらは目線を彼女に向ける。

さやかは手のひらに乗せたソウルジェムを見つめて、首を傾げていた。その周囲には同じように覗き込んでいるまどかとマミの姿もあった。

 

「…………マミ先輩。ソウルジェムの穢れはおおよそ魔法少女として行動することで増大するはずだな?」

「え、ええ…………そうだけど………」

「…………戦闘の割に、ソウルジェムの穢れが少ない気がする。」

「……………見せてもらえるかしら?」

 

マミにそう尋ねるさやかにほむらがそう持ちかけ、さやかはソウルジェムを手渡した。

 

(…………………………何気なく言ったけど、よくもそう易々と渡せるわね。)

 

さやかのお人好しの度合いに軽く頭を悩ますほむらだったが、別に害を成すつもりも微塵もないほむらは手渡されたソウルジェムに視線を集中させる。ソウルジェムの中に産まれる穢れは確かにあるものの、ソウルジェムの輝きそのものを覆い隠すほどはなかった。

 

(確かに戦闘の割には穢れが少ないわね…………あんなに様々なことをしていたのなら、相当溜まっていてもおかしくはないはずなのだけど………)

 

さやかが手にしたガンダムという力、その力はそれなりに戦闘経験を積んでいるほむらから見ても破格そのものだった。高威力の遠距離武器に複数の格闘兵装。何より、空へと飛翔することさえできるのであれば、使われる魔力も相当なものだろう。

考え事をしていたほむらだったが、ソウルジェムの穢れを見つめていると、ふとあることに気づく。

 

(…………穢れの大きさが一回り小さくなった?)

 

さやかのソウルジェムについていた穢れが少し前に見たときより縮小しているように感じられた。

そのほむらの認識は間違いではなく、穢れの大きさは時間と共にどんどんとその面積を小さくしていき、最終的には穢れそのものが元々なかったかのように跡形もなく消滅した。

 

『…………………』

 

グリーフシードを使用したわけでもないのにも関わらず、穢れが消失したという出来事にほむらも含め全員が驚いた顔をしながら顔を見合わせる。

 

(ど…………どういうことッ!?!ソウルジェムから自動的に穢れがなくなるなんて聞いたことないわよっ!?)

「穢れが………消えた?」

「き、消えたわね…………まさか、魔力が回復したの?」

 

明らかに有り得ない状況にほむらの思考も混迷の一途を辿る。さやかとマミもついていけていないのか、ほむらと似たような困惑しているような表情を見せる。

 

「………………おそらく、それであっているでしょうね。ソウルジェムに穢れが産まれるのは大きく分けて二つ。感情の揺れ幅と単純に魔力の浪費」

 

マミがポロっとこぼした言葉に賛同しながら、ほむらはこの現象に対しての考察を述べると、さやかにその驚愕に満ちた目線を向ける。

 

「今この場で、貴方が絶望しているとは思えない。なら、魔力が自動的に回復した、と考えるのが一番妥当なところね。はっきり言うと、かなり異質よ」

「……………ちなみにだが、お前が巡り歩いてきた時間軸の中で、前例は?」

「ないからこそ異質って言ってるのよ?」

 

何を当たり前のことを言ってるんだと言わんばかりにほむらにそう返されたさやかはため息を吐いた。

 

さながら自分はどうやらとんでもない力を授かってしまったと思っているかのような態度であった。

 

 





実は、原作本編終わった後にマギレコの話とかみたいですか?
私わんたんめんはマギレコ未プレイな上にやるにあたっても多少設定とかいじるんですけど……………

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

  • ガンダムだ
  • ガンダムではない

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