ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
「しかし、来たところで家主である調整屋がいないのなら、どうしようもないな。」
「いやーごめんねー。まさかちょうどいないタイミングだとは思わなかったんだよー…………」
「そちら側に非はない。どちらかといえばこの勝手に居座っている状況が申し訳ないのだが………」
「いいのいいの。その調整屋がそもそもとしてそういうのあんま気にしない人だからさ。」
ももこ達の先導で神浜ミレナ座こと調整屋にやってきたさやか達だったが、肝心の調整屋が不在だったことに肩透かしを受け、置かれてあったソファに腰掛けて談笑を交わす。
ここに来るまでにももこに道すがら調整屋について聞いたところ、どうやら調整屋というのはソウルジェムに干渉して、その奥底に秘められた潜在能力を解放することができる人物とのことだった。先の魔女結界でももことレナが手を合わせたことにより発せられた効果もその一環であり、『コネクト』と言われるのができるのもその調整を施された者同士が為せる業だったようだ。
しかし、その調整屋がいなければ何もできないと手持ち無沙汰なさやかが背もたれに深くもたれかかっているとももこから手を合わせながら申し訳なさそうに謝罪の言葉が飛んでくる。
そのももこに気にするなとさやかは声を返しながら勝手に上がっている状況に微妙な顔を浮かべていた。
「そういえば、アンタ達ってなんで神浜に来たのよ。調整屋も知らないんじゃ、アンタ達は外からやってきたんでしょ?神浜市の魔女は他の奴らより強いって知らないの!?」
そんなところに水色ツインテールの魔法少女、水波レナが語気を強め、相手を責めているような高圧的な態度で神浜市に来た理由を聞いてくる。
「レナちゃん…………この人たちわたしたちより強いかもしれないよ?使い魔だって一瞬で倒していたし…………」
「使い魔を倒していても魔女が倒せていなかったら意味ないじゃない!!」
「神浜市の魔女、か。確かに見滝原の魔女よりは数段強かったが…………わたし一人でまだなんとかなる範疇だったが?」
「見滝原なんだ…………それはともかく君、一人で倒したの?調整も無しに?」
さやかがぽろっと見滝原の単語を出したことにももこが頷くような表情を見せながらも、直後にさやかが単独で神浜市の魔女を討ち果たしたことに驚きの顔を見せる。
「はじめてこちらに足を運んだ時にだが。多分私の知り合いの先輩魔法少女でも単独撃破は問題ないと思う。」
「はへー…………見滝原ってそんなに強い魔法少女がいたんだー…………」
「というより、見滝原にいるのはその先輩魔法少女とここにいる二人しかいないのだけど。」
さらに
「…………話が逸れてしまったが、本題に戻ると私と隣にいるほむらを含めた見滝原の魔法少女は神浜市に来れば魔法少女は救われるという謎の夢、ないしは噂の真実を調べに来ている。」
「実のところ、他にも妙な現象は起きているわ。例えば見滝原に現れる魔女の数が減っていること。」
「え?そんなことあったのか?」
「神浜市に赴く前の四日間、色々と各地へ併走していたのだけど、その間に一体も魔女に出くわさないっておかしいでしょ?」
「そういうことがあったのなら前もって共有情報として挙げておいて欲しいのだが。情報が他人に信じられようがないからって語らないのはお前の悪い癖ではないか、それ。」
(今しがた思ったのだが、お前のやってること、キュウべぇとどっこいどっこいだぞ?重要なことほど語らないという部分に関しては。)
(っ…………………これからは善処するわ……………!!)
『ほんれんそう』がまるでできていないほむらにさやかが呆れ顔を見せながらそれを指摘しながら、念話でキュウべぇと似ていると送られてきたほむらは苦々しい表情を見せながら改善を約束する。やはり一番嫌っている存在と似ていると言われるのは結構堪えるらしい。
「えっと、話、続けてもいいのかな?」
「ん?あぁ、すまない。話を逸らしてしまった。」
ももこのおずおずとした表情からの質問にさやかは謝りながら話を進めることを促す。
「うーんと、その噂はともかく、数が増えてるのも事実だね。強さも昔はこんなんじゃなかったんだけどなー。」
「…………やはりなんらかの異常事態が起こっていると考えた方がいいのか。周辺地域の魔女が減って、この神浜市が増えているということは要するに魔女が神浜市へ集まっているということだろうな。」
「なるほど……………ところで、それが二人の目的ならいろはちゃんは?」
「わ、わたしは、里見メディカルセンターに行かなきゃならないんです。妹の、ういがいたはずなんです。」
「……………はず?」
いろはは自身が神浜市を訪れた理由を語るも『はず』という曖昧な言葉にかえでが首を傾げながらその部分を鸚鵡返しすると、いろはが事の詳細の説明を始める。
「何よそれ…………!!そんなのを信じろって言うの…………!?」
しかし、人の存在が丸々消滅しているということはやはりあり得ないのか、レナは驚きの表情を見せながらまるで元々居なかったのではないかと言いたげに言葉を返した。
「……………まぁ、いなくなったのが妹なのかどうかというのはともかく、人の存在が丸々かき消されているというのは事実だと私は思っている。これを見て欲しい。人が一人で写真を撮るときにこんなポーズを取るか?」
そういうとさやかはももこ達に一枚の写真を見せる。その写真にはいろはしか写っていないが、写真のなかのいろはは不自然に片腕を上げ、何もない空中に置いていた。その様子はまるで誰かの肩に腕を回しているようなポーズに見える。
「その写真、誰かと肩を組んでいる写真に見えないか?たった一人で写真を撮るのであれば、そんなポーズをする必要性はないだろう。」
そのように言われたももこ達三人は写真を見つめる。その中でレナだけ難しい表情を見せていたが
「確かに……………うん………なら、まずはその里見メディカルセンターだな。」
「ハァッ!?ももこッ!?」
「えっ!?い、いいんですか?」
ももこが頷きながらいろはの妹の捜索に手を貸すことを宣言するとレナが悲鳴のような声を上げる。いろは彼女が手伝いをしてくれると言ったことに驚いたように目を見開く。
「ま、これも何かの縁だしね。それに魔法少女は助け合い、てね?」
「ちょっと待ちなさいよ!?それじゃあレナ達の捜査はどうなるのよッ!?」
「一週間も探して見つからなかったんだよ?今日はお休みでもいいんじゃないかな?」
「……………そちらの行動に支障をきたすのであれば、私達がその捜査に協力するという形で貸し借りを無しにするのはどうだ?ここまで案内してくれた礼もあるからな。」
「なるほど、そりゃ妙案だねー。こっちは捜索の足が増えるし、向こうは貸しがなくなってWin-Winってやつか。これならレナも別にいいよね?」
「……………まぁ………別にいいわよ…………でも、足手纏いにはならないでよね!!」
最初こそ自分たちのやっている捜査に影響が出るかもしれないことからいろはの妹探しに難色を示していたレナだったが、さやかから礼として自分たちの捜査を手伝うと提案されたことに言い返しが思い浮かばなかったのか、渋々といった様子で承諾した。
「…………ほむら、お前はどうする?向こうへの協力は私が言い出したことだし、無理に付き合う必要性もないが……………」
「…………いえ、私自身、もうギリギリな部分があるからあなたについていくわ。」
「ギリギリ…………?お前、まさかとは思うがまだ話していないことがあるのではないだろうな?」
突然自分が勝手に協力を申し出たことにほむらがいい顔をしないと思ったさやかは彼女に別に加わる必要はないと忠告するもほむらから意外にも参加する言葉が返ってくる。
しかし、その言葉に妙なのを感じたさやかは眉を潜めながら実はほむらはまだ隠していることがあるのではないかと追及をする。
(………………実は、私の時間停止にはおよそ一ヶ月の上限があるの。それがもう底がつきかけている。)
(…………ハァ、わかった。それで調整屋に賭けようという訳か。)
また大事なことを言っていなかったほむらにさやかは内心ため息を吐くが、ほむらが調整屋のソウルジェムの潜在能力の解放に賭けていることを察したさやかはそれ以上は同じようなことをいうだけだったのも相まって口を噤んだ。
「ところでなんだが、そのお前たちが捜査しているのとはなんだ?魔女か?」
「えっと、鎖の魔女って聞いたことある?」
さやかがももこ達が捜査しているものの詳細を尋ねるとそんな固有名詞が返ってくる。その鎖の魔女という固有名詞は魔女であることは察せていたが、そもそも魔女にその個体を表すような単語をつけたことがないさやかたちは首を横に振るしかなかった。
「レナ達、その魔女を追っているの。その子の用事はレナ達の魔女探しより重要なことなの?」
「ちょっと手伝うだけだろ…………?」
「重要かどうかはさておき、捜査が行き詰まっているのなら、別のことへ手を出してみるのも一つの考え方だと思うが?一度できなかったやり方に固執していても結果は同じで時間の無駄だが、気分転換に行ったことが事態を好転させるなどよくあることだからな。」
「ほらレナちゃん、そんな意固地になってないで素直になりなよー。レナちゃんはいつも頭が硬いんだからー。」
「う、うるさいわね!!」
さやかの言葉にかえでが同調するようにレナに説得を行う。ただその言葉にどことなく天然の煽りのようなものが含まれていることにカチンときたのか、レナが金切り声を上げる。
「それで、その鎖の魔女とやらは一体どんな奴なんだ?」
「と言ってもね、私たちも実際に出会した訳じゃないんだ。元々が胡散臭い噂だからな。」
「噂?」
「………………三人はさ、絶交階段の噂って知ってる?」
さやかがももこに魔女の詳細な情報を尋ねるも元が胡散臭い噂というのに眉を潜める。ほむらも同じような感想なのか、訝しげな表情を見せながらももこの話に耳を傾ける。
その噂とは、要約するとももこ達の通う学校、神浜市立附属大中等部のとある一画の階段に自分と絶交したい相手の名前を書き込むと、それが絶交証明書となって未来永劫関わりを断ち切ることが認められるらしい。
だが、一度その証明が成立した状態で仲直りをしようとすれば、謝った方は鎖の化物が連れ去って行ってしまうという内容の噂であった。
「特定状況下において姿を現す指向性を有した魔女か…………どう思う?ほむら。」
その噂における鎖の化物はももこ達の追っている鎖の魔女と同一の存在と仮定したさやかだったが、ことさらまだ魔法少女になってから二週間と少ししか経っていないさやかは、正確な回数は不明だが時間遡行を繰り返したことにより魔女に関する知識も自分より高いほむらに意見を求めた。
「……………魔女にはある程度居ついた場所の人間に『口づけ』をけしかけたりはするけど、そういう獲物を見定めるような習性は存在しないはずよ。はっきり言ってしまえば、妙な魔女よ。」
そのほむらからの意見に顎に手を当て考える仕草を見せるさやか。
「……………妙な魔女、それにウワサ、か。」
さやかはそれに対して悩ましげに声を漏らすだけで、それ以上は何も語らなかったが、ももこと何かあったら連絡が取れるようにと連絡先を交換した後、そこでお開きとなり、一同はももこ達の案内で神浜新西駅から帰路に着いた。
そこから日を改め、さやかとほむらはマミと一度合流し、情報の共有を行うことにした。
「調整屋と呼ばれるソウルジェムの干渉ができる魔法少女と特定の条件が揃うと姿を現す魔女、さらにはその魔女のことを指しているようなウワサね…………こっちじゃ全部聞かない話ね。」
マミはさやかがももこ達から聞いた鎖の魔女や調整屋の話を聞くと訝しげな顔を見せながら考え込む。
「そちらはどうなんだ?キュウべぇ…………インキュベーターから何にか聞き出せたか?」
「ええ、そっちの方は。でもあの子、本当に聞かれたら答えるのね。」
さやかがマミにそう尋ねると彼女は呆れたような顔を見せながら肩を上下に動かしながらキュウべぇから聞き出したことを語り出す。
「神浜市ではキュウべぇが活動することができない?」
「そうなのよ。実際神浜市と他の地域との境界に立ち寄ったのだけど、神浜市の領域に入った途端に機能を停止したように動かなくなるのよ。それこそぬいぐるみみたいにね。」
「つまり…………神浜市にキュウべぇはいないということ?」
「そういうことになるって自分で言っていたわ。それが何を意味するのかは、私には考えつかないのだけど。後は………周辺地域の魔女が神浜市に集まって来ている、ということぐらいかしら。」
ほむらの言葉にマミは手にしているカップに入っている紅茶に口をつけながらそう返す。
「でも、これで結論ははっきりしたわ。美樹さんの思った通り、神浜市で何かが起きているのは間違いないわ。」
「……………わかった。マミ先輩、ありがとう。」
「いいのよ、これくらい。貴方に救われた命だもの。それで私はまだキュウべぇから何か聞き出す役割に徹した方がいいのかしら?」
さやかがマミに礼をあげると彼女は笑みを向けながら自身のこれからをさやかに尋ねる。しばらくそのことで思案に耽るさやか。
「マミ先輩も私達と行動を共にしてもらってもいいのだが、下手に向こうの魔法少女を刺激するのは防ぎたい…………」
「それを警戒して佐倉さんを別行動させているものね。」
そんなこんなで時間が過ぎて行くとふとしたタイミングでさやかの携帯が辺りに音を撒き散らす。
何事かと思いながら携帯の画面を起こすとそこにはいろはからメールが1通届いていた。
「……………病院に入院していた記録が残っていなかったか。やはり環ういの存在自体が消失したのは明白か。ん?続きがある。」
メールにはいろはが里見メディカルセンターに赴いたがういが入院していた記録が残っていなかったという内容のメールだった。そのことに納得しているとまだメールに続きがあることに気づいたさやかは画面をスライドさせて続きを読み進める。
「水波レナと秋野かえでが喧嘩して絶交を言い出した?それで水波レナが自宅に戻ってきていないって…………何をしているんだ一体…………」
そのメールにはレナとかえでが喧嘩してしまった趣旨の内容が続いてあった。思わず呆れたように肩を竦めるさやかだったが、携帯をしまうとすぐに出かける準備を始める。
「……………すまないが、ちょっと神浜市に行ってくる。」
「……………私はパスするわ。」
頭を抱え、悩ましげな表情を見せるさやかに対して、澄まし顔で佇むほむらだ。だが、さすがにこんなことにほむらを同行させるのも気が引けるのもあったため、ほむらから同行を断る申し出がでたことにむしろありがたかったさやかは微妙な笑みを見せる。
そしてまるで同情するかのような苦笑いを浮かべるマミを尻目にさやかは急ぎ足で駅から電車で神浜市へ向かう。
「………………………
以前ももこ達と別れた神浜新西駅にやってきたさやかは改札口付近でたむろっているももこ、かえで、いろはの三人組を見かける。
向こうもさやかのことに気がついたため、足を運んださやかは開口一番、目線を細めたじとっとした視線をしながら、ももことかえでから、なぜ喧嘩するに至った経緯を尋ねる。
「いやー、トドメはわたしが指したようなもんなだけどさー。」
困り果てたような様子で後ろ髪をかき乱すももこからその経緯が語られる。
さやかとほむらと別れた次の日、いろはが一人で里見メディカルセンターを訪れたのだが、妹のういが入院していたという記録はなかった。しかし、いろはがういの見舞いにそのメディカルセンターを訪れた記憶があると言うことで、どうにか勤務している医師か看護師から情報を聞き出したいと考えているところにかえでがレナに白羽の矢を立てた。
その理由がレナの魔法が他人に変身する魔法とのことでそれで看護師に変装してメディカルセンターに潜入してもらおうというものだった。
ただ、もしバレた時の自身に対する影響を考えたのか、レナはそれを拒否。少しの間説得にかかるももことかえでだったが、一向に首を縦にふらないレナに痺れを切らしたかえでがレナに突っかかり、それにレナが腹を立てたことで口論に発展。
その口論の最中にレナがかえでの逆鱗に触れた結果、かえでが逆上し、互いに絶交を言い残してその場から立ち去った。
そのことに顔を俯かせていたレナだったが、ももこが下手なフォローをしたことでレナも怒りを露わにしてその場から立ち去ったとのことだった。
「で、水波レナは未だに家に帰らず、か。」
「そうなんだよ……………ごめん、その、こっちのゴタゴタに付き合わせて……………」
「気にしなくていい。それより今は彼女の捜索に時間を割くべきだ。
「それだったら、ゲームセンターだと思う。レナちゃん、いつもああいう場所にしかいないから。」
捜索の場所をゲームセンターに絞ったさやか達は神浜市に点在するゲームセンターのはしごをしての探索を始める。しかし、一件一件虱潰しに回ってみるも彼女の姿はかけらも見当たらない。
時間も無為に過ぎ去っていき、いつのまにか日も暮れ始めていた。
「………………………いるな。」
そんな時不意にさやかが察したように呟いた言葉に全員の目線がさやかに向けられる。
「え、いるの!?どこ!?」
「今いるゲームセンターの中に、という曖昧な感覚だが……………」
ももこがすがるような目線を受け、さやかは微妙な表情を見せながらそう語る。ももこはそれでもいいというように果敢に視線を周囲に張り巡らす。
「ちょっと向こう見てくる!!」
とりあえずレナがここにいるということにいてもたってもいられなくなったのか、ももこはさやか達から離れて、もう一度ゲームセンターをくまなく探しに行った。
「………………あっ!!」
「いろは?」
レナを探しにいくももこの背中を目で追っていたさやかだったが、いろはが何か見つけたような声を上げたことに視線をそちらに向けると今度は駆け出して行くいろはの背中が視界に収まると彼女が向かったその先にももこやかえでと同じ制服を身につけた女子生徒が視界に映る。
その女子生徒は灰がかった銀色の髪を後ろから見た限りボブカットのようなショートにしている。明らかにレナとは違う容姿だったが、さやかはなんとなくその女子生徒がレナの変装であることを見抜いていた。
「秋野かえで!!見つけた!!他人に変身しているが、わかるかっ!?いろはが追っている!!」
すぐさまさやかは隣にいたかえでにそのことを告げ、レナが変身していると思われる女子生徒を指差すことでその行方を知らせる。
「……レナちゃん!!」
かえではその姿を見るや否や、レナだと断定してその女子生徒に向かって行く。まさか即決で飛びついていくとは思わなかったさやかはそれに面食らった様子で数瞬立ち尽くした後に彼女を追う。
「レナちゃん!!レナちゃんだよね!?」
「な、なんのこと…………?」
さやかが駆けつけた時にはかえでがその女子生徒に化けたレナの手を掴んで逃がさないようにしているが、当の本人はまだバレていないと思っているのかたどたどしい様子で困惑気味にシラをきっている。
「……………いくら他人の皮をかぶったところで、お前は他人にはなれないし、他人がお前になることはできない。どう足掻いたところでお前はお前でしかない。水波レナ。」
さやかがそう女子生徒に化けたレナに語りかけるように声をかけるとレナは体を強張らせ、惑うことなく自分を見つめてくるさやかに目を見開く。
「お前は自分を見ていてくれる大事な友人を捨てるのか?」
「ッ…………!!!?」
「あ、待てぇー!!!」
まるで諭すようなさやかの口ぶり、そして自身に向けられる儚げに心配しているような表情にレナはいたたまれなくなったのか、かえでの手を振り払って逃走を始める。腕を振り払われたかえでだが、めげる様子をかけらも感じさせず、むしろ逃すつもりがないのか気迫のこもった様子で逃げるレナの後を追い始める。
「さ、さやかさん!!!」
「私は十咎ももこを呼ぶ。先に行ってくれ!!」
「わ、わかりました!!」
さやかが携帯を出しながらそう伝えるといろはもかえでと同じようにレナの後を追う。
『もしもし!?見つかった!?』
携帯を操作して電話帳からももこの携帯を呼び出して数コール。ゲームセンターの騒音に紛れて気付かないことも想定に入れていたさやかだったが、そんなことは杞憂でももこがすぐにでてくれる。
「なんとかな。だが彼女は逃走を図って、今はいろはと秋野かえでが追っている。」
『わかった!!すぐに行くよ!!』
ももこがそう答えた後に電話が切れるのを確認したさやかはいろは達と同じようにレナの後を追う。
(…………………なにか妙な感覚がする。魔女とはまた違う…………なんなんだ?)
まるで近くで自分の噂話をされて、それを近くで聞いてしまったかのような不快感がさやかの感覚を撫でるが、ひとまずレナを追うのが先決と考えないようにして駆け出した。
携帯を仕舞って、いろは達が駆け出した方角を見やるとその後ろ姿が遠目にギリギリ映った。なんとか見失う羽目にはならなそうだと思いながらさやかもレナを追い始めた。
ちょうどゲームセンターから出たタイミングでももこがやってきたのが目についたため、ついでに手を振りかざすことで場所を示しながらレナを追う。最初こそ距離が縮まらず、悪態を吐くさやかだったが少し走っているとかえでかいろはのどちらかが追いついたのか、急に遠目だったその姿が大きくなってくる。
どうやらかえでがレナに追いついたようだ。一度離したその手だったが今度は絶対に離さないと言うようにレナの腕を頑なに握りしめていた。
「そんなこと思っていない!!!」
しかし、突然レナがかえでの手を振り払うと頭を抱えて苦しげな表情を見せ始める。そのレナの様子に呆気にとられていたいろはとかえでだったが
「秋野かえで!!彼女から離れろ!!何か変だ!!」
いち早くその異変を察知したさやかがかえでをレナから離れさせるようにGNソードⅡショートのアンカーを腕に巻き付け、思い切り引っ張り、引き寄せる。
しかし、実際異変が起こったのは、レナではなくかえでの方だった。
突如としてかえでの体を包み込むように鎖のようなモヤが現れるとアンカーに繋がれていたはずのかえでの体は虚空へと消え去っていた。
「か、かえでさん…………!?」
突然かえでの体が消失したことに驚きのあまり声を失っていた。対してさやかは苦虫を噛み潰すような悔しげな表情でダランと伸びきったアンカーを見つめ
「今の鎖状のモヤ………………まさか、鎖の魔女か…………!?と言うことは、書いたのか!?絶交階段に、名前を!!!」
さやかの詰問にレナは呆然とした様子で立ち尽くしたまま何も答えない。しかし、例の絶交階段の噂が神浜市立附属大中等部の階段。そこにはその絶交を証明するかのように秋野かえでと水波レナの名前がはっきりと刻まれていた。
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マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない