ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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刹那っぽさが中々出せないお…………(白目)


第4話 ソウルジェムと願い、その対価はーー

「……………つまるところ、この趣味の悪い空間は魔女と呼ばれる人に仇をなす存在が展開する結界と呼ばれる異空間の中で貴方はその魔女を打倒する魔法少女、ということか?」

「ええ、大まかな認識はそれで構わないわ。それで私はその魔女を倒しに行くところなのだけどーーーー」

 

窮地に陥ったさやかとまどかの目の前に突如として現れた少女、ベレー帽を被り、金色の髪をリボンでロール状にまとめた巴 マミと名乗った人物は暖かな光を感じさせる光を展開した後、中々目を疑うような攻撃方法でさやか達を取り囲んでいた化け物ーーーマミ曰く魔女の手下を撃退した。どこからともなくマスケット銃が出現したのだ。それもその数は一丁だけでなく、およそ三十はくだらないほどの量であった。その数の暴力から放たれる圧倒的な火力に魔女の手下は蜘蛛の子を散らすように逃げたり、マミの放った銃弾に撃ち抜かれたりし、ほどなくすると魔女の手下達はいなくなっていた。

その後、彼女の戦いぶりに呆気にとられているさやかとまどかに二人が今いる奇妙な空間についての説明を行った。

およそ、魔女だか魔法少女と言った超常的な存在がいるという現実に二人の思考は軽く固まっていた。

ちょうどその魔女などに関する説明が終わったタイミングで結界と呼ばれる異空間が揺らぎ始めると徐々に先ほどまでさやか達がいたショッピングモールの立ち入り禁止の場所に戻っていった。

 

「け、結界が…………!?」

「…………崩れたのか?」

「いいえ、これは魔女が移動しただけね。」

 

結界が晴れたことにさやかとまどかはひとまずの安堵感を露わにするが、マミが魔女が未だ健在であることを示し、二人の表情は再度険しいものに変わる。

 

「…………とりあえず、襲ってくることはないみたいだからキュゥべえの治療でもしましょうか。」

「キュゥべえ…………?確か貴方が契約するときにいた奴のことか?一体どこに…………?」

「えっと、鹿目さんだったわよね?貴方が抱いているその白い子がキュゥべえよ。」

「こ、この子がですかっ!?」

 

自身が抱きかかえている生き物が件のキュゥべえであることは露にも思っていなかったのか、思わず上ずった声で驚くまどか。

そんなまどかの様子をマミは微笑みながらまどかに抱えられているキュゥべえに手をかざす。

そして、彼女の掌が発光したかと思うとさっきまで傷だらけーーおそらく暁美ほむらに付けられたものだろう。その傷がみるみると塞がっていった。

 

「………まるで魔法だな、というのは野暮な言葉か。」

「ふふっ、そうね。実際使っているものね。」

 

マミがキュゥべえの傷を癒し終えたタイミングで誰かが降り立ったような、そんな音を三人は耳にする。さやかがその音のした方角に目を向けるとそこには積み重ねられた荷物の山が置かれておりそのまま荷物の山の頂上を見上げると、そこには暁美ほむらが立っていた。

 

「暁美ほむら…………!!」

「…………………。」

 

再度姿を表したほむらにさやかは警戒している表情を向けるが、対するほむらは自己紹介の時に見せていた涼しい顔でさやかと、そしてまどかを見下ろしていた。

そんなほむらとさやか達の間に割り込むようにマミが立ちふさがる。

 

「魔女は逃げたわ。仕留めたいなら今すぐに追いかけなさい。今回は貴方に譲ってあげる。」

「私が用があるのはーーー」

「呑み込みが悪いわね、見逃してあげるって言っているの。」

 

魔女の討伐を譲るというマミに対し、ほむらは視線をまどかに抱えられているキュゥべえに向ける。動機は全くをもって不明だが、彼女がキュゥべえとなんらかの因縁を持っているのは確かなようだ。

しかし、そんな彼女にマミは隠していた本音のようなものを前面に出して、ほむらを威圧する。

殺気のようなものが混ざっていると感じ取ったさやかは一触即発の雰囲気に思わず表情を強張らせ、冷や汗を流す。

 

「ッ……………。」

「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

 

マミの挑発するような声質の言葉にほむらは変わらずのクールな印象を思わせる顔で対峙していたが、しばらくすると三人に背中を向け、去っていった。

 

(…………今、僅かにだが奴の表情が悔しげなものに歪んだような………プライドの高い人間なのか?)

 

僅かに見せたほむらの悔しげな、歯噛みをするかのような表情。さやかは今いる場所が暗い空間ながらも感じ取ったその表情の理由に当たりをつけることは到底無理な話なため、思うだけで口に出すようなことはしなかった。

 

「はあ…………。」

「…………あまり、彼女を挑発するのはやめてほしい。こちらの肝が冷える。」

 

ほむらが立ち去ったことにまどかは緊張の糸が切れたのか大きく息を吐き、さやかは一度思考を打ち止め、挑発するような態度をとったマミに苦い顔を向ける。

 

「ごめんなさいね、ああでもしないと貴方達まで巻き込みそうだったから………。」

「…………そうか、すまない。私達を思っての行動だったか。」

「謝ることはないわ。私も誤解されるのは覚悟の上だったし、それに本音半分でああいう態度を取ったから。」

「その本音、というのはキュゥべえ、という白いナマモノが襲われたことからか?」

「ナマモノじゃなくて私の友達よ。」

 

そういったマミにさやかは思わずまどかの腕に抱かれているキュゥべえと彼女の顔の間を視線で行ったり来たりする。その表情にはどこか困惑気味なものが含まれており、マミはともかくまどかも疑問気に首をかしげる。

 

「…………友人と呼べる人間がいないのか?もしくはいい精神科でも勧めようか?」

「貴方見た目によらず結構失礼ねっ!!!?私は別に喋れる仲のクラスメートがいないわけじゃないし、精神を病んでるわけじゃないから!!」

「す、すまない。そ、そうであれば別にいいのだが………。」

(さやかちゃん、天然なんだな〜…………)

 

さやかの失礼な発言に思わずマミは言葉を荒げ、まどかもその様子に苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「ふぅー・・・・助けてくれてありがとう、マミ。」

『ッ!?』

 

突如として響いた今までとは全く異なる第三者の声にさやかとまどかは驚いた表情を浮かべる。

 

「まさかソイツ………喋れる、のか?」

 

さやかは驚きから目を見開き、震えるような声で指をさした先にはまどかが抱えているキュゥべえと呼ばれた生命体。

そのキュゥべえはそんなさやかの様子に目がくれることもなく、傷が塞がったから動けるようになったのか、まどかの腕の中で蠢くように体を揺らす。

 

「んーまぁ僕にとってはさほど重要なものではないんだけど、マミと話すにあたって言語は便利だからね。」

「……………ねぇ、あなたがわたしを呼んだの?」

「…………まどか?呼ばれたとは、コイツになのか?」

「う、うん。お見舞いの品を探している時に急に、頭の中に声が響いて………。」

「いわゆる、テレパシーとかいう奴か。それで、お前がまどかを呼んだのか?」

 

まどかの言葉にさやかは一瞬だけ彼女に視線を向けると僅かに眉をひそめながらキュウべぇに視線を戻し、問いかける。

 

「そうだよ。鹿目まどか。そして、美樹さやか。」

「何故呼んだ?そのせいで彼女は危うく危険な目に遭わされるところだった。」

「彼女には素質があるんだよ。それは君にも当てはまることだけど。」

「素質?一体何のーーーー」

「魔法少女だよ。僕はそのために君たちを呼んだんだ。だからーー」

 

キュウべぇはそういうとまどかの顔を見上げながらその紅い瞳を閉じながら、さながら人間でいう笑みのようなものを浮かべながら彼女に言葉を投げかける。

 

「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ。」

 

「私達が…………。」

「魔法少女に…………!?」

 

突然振って降りてきたような魔法少女への催促にさやかとまどかは困惑と驚きが入り混じったような顔を上げることしかできなかった。

 

「…………いきなりそんなこと言われても分からないわよね?」

「何であれ、話が唐突すぎる。ただでさえ魔女という存在ですら自分の中でうまく飲み込めていない上に私達に魔法少女への適性があるだと?そんなことを言われてもすぐに答えを出せる訳がない。」

 

マミの言葉にさやかは腰に手を当てながら肩を竦め、驚きを通り越して呆れているような態度をとる。

 

「あの、わたし達、魔法少女になれるんですか?」

「キュゥべえに選ばれた以上、その資格はあるわ。」

 

まどかがその魔法少女の資格に関する話に興味があるような口調でマミに尋ねる。

その言葉にマミは頷きながらキュゥべえに選ばれたということは魔法少女になることができると説明した。

つまり、今まで小説やテレビの中でしか存在しないはずだったファンタジーの魔法そのものが使えると言うことだ。

まどかはそのマミの言葉に憧れていたことがついにできるのか、という感動しているように晴れやかな顔を浮かべる。

 

「よかったら、二人ともウチによっていかない?色々と話したいこともあるし………。」

「…………いいのか?友人であればともかく私達はまだ出会ってすぐだが。」

「ええ、もちろん。さっきも言ったけどいろいろと話したいことがあるから、ね。」

「は、はい………だったら、お言葉に甘えて…………。さやかちゃんも行くよね?」

「…………わかった。私も甘えさせてもらおう。」

 

マミの誘いに二人は頷く姿勢を示す。その様子が嬉しかったのか、マミはどこか軽やかな足取りで二人を引き連れて自宅へと先導するのだった。

 

 

時刻は既に夕暮れに近くなり太陽がオレンジ色に輝いている中、ショッピングモールから離れてしばらくするととある一角のマンションに辿り着く。

そのマンションのエレベーターに乗り、それなりに高い階層で降りると廊下を進んでいく。

そしてマミがとある部屋の扉で足を止める。おそらく、そこが彼女の自室なのだろう。

その証拠に彼女は学校のカバンから鍵を取り出し、部屋の鍵を開ける音を辺りに響かせる。

 

「どうぞ。」

「お、お邪魔しまーす…………。」

「邪魔をする…………。ん?」

 

マミに促されるように部屋へと入ったまどかとさやか。まどかはマミが見滝原中学の三年、つまるところ先輩の家に上り込むことに緊張しているのか、少しばかり震えた声で落ち着かない様子で部屋へと上がる。

対するさやかはさほど緊張はしていなかったが、ふとあることが目に付いた。

それは部屋に入ってすぐのところ、さやか達が立っている玄関だ。

部屋に入るにはまず靴を脱ぐ。そのため靴を脱ごうとしたのだが、そこでさやかは違和感を感じとる。

 

(靴の数が少なすぎる…………。)

 

さやかが見下ろした玄関の床には先に部屋に上がったまどかが脱いだローファー以外には靴が()()もなかったのだ。少なからず父親や母親の靴が普通はあるはずだが、マミの家にはそれらしきものが一つたりとも見当たらない。

 

「美樹さん?どうかしたかしら?」

「……………いや、なんでもない。」

 

マミに不思議そうな顔をしながら声をかけられたさやかはひとまず考えるのを打ち止めにし、先行くまどかの後を追うために同じように靴を脱ぎ、まどかの後をついていく。

フローリングの短い廊下を歩くと壁の一面がガラスででき、マンションの外の風景を一望できる豪華な内装の部屋がさやか達を出迎える。

 

「…………素敵なお部屋…………。」

 

マミの部屋の内装、そしてそこから望める景色の雄大さに圧倒されているのか、まどかは感嘆といった声を上げる。しかし、さやかはそこでも違和感を感じとる。

 

(…………人の気配がしない。両親は共働きでもしているのか?)

 

感じた違和感、それは人の気配がないこと。明らかにマミ一人で過ごすには広すぎるその空間にさやかは彼女の両親が共働きをしているという推察を立てる。

 

「一人暮らしだから、遠慮しないで。ろくにおもてなしの準備もできないのだけど…………。」

「一人暮らし………なのか?」

「え、ええ。そうだけど…………?」

 

一人暮らしという単語に反応したのか、さやかはマミに驚いた表情と目を見開きながら彼女を見つめる。

そのことに少しびっくりしたのか、マミは僅かに声を詰まらせながら頷いた。

 

(…………あまりいい予感はしないな…………)

 

両親がいない一人暮らし、そしてその割には広すぎる部屋。さやかの中でピースがはまりはじめる。しかし、それは嫌な予感のパズルであり、決してさやかにとっては完成して欲しくないジグソーパズルであった。

 

「今、お茶とケーキを用意するからそこに座って待っていてね。」

 

おもてなしをするために一度キッチンに向かった彼女の言葉に従い、さやかとまどかは言われたとおりに三角形の形をしたテーブルの側に腰を下ろした。

しばらくするとトレーの上にカップとケーキを乗せたマミがキッチンから戻り、二人の前のテーブルそのカップとケーキを置いた。カップから紅茶が湯気を上げ、ケーキは一目見ただけでその美味しさがわかりそうなほど色合いが綺麗な一品であった。

さやかがフォークを片手にそのケーキを切り分け、それをフォークで刺して、口に運ぶ。

たちまち口の中でケーキの甘さがほのかに広がっていき、さやかの舌鼓を打った。

 

「ん………うまい。」

「そう?口にあったのなら良かったわ。」

 

さやかが感想を述べるとマミは嬉しそうに表情を綻ばせる。しかし、それの表情も長くは続かず、さやかがケーキを咀嚼し、飲み込んだのを見計らい、話し始める。その顔付きはどこか険しいものであった。ちょうどマミの後ろに夕暮れの陽があり、彼女の顔に影が差し込んだのが余計にその様子を顕著に際立たせる。

 

「まずはどこから話そうかしら………まず一番大切なこととして、キュゥべえに選ばれた以上あなたたちにとって、それは他人事じゃないの。」

「………あんな趣味の悪いものを見せられて他人事でいられる方が難しいと思うのだが………。」

「う、うん。あんなの忘れたくても忘れられないよ………。」

 

遠い目をしながらのさやかの言葉にまどかはうんうんと頷きながら同意の意を示した。

その様子にマミは苦い笑いを禁じ得ず、僅かにフフッと声を漏らした。

 

「順を追って説明するわね。改めまして、私の名前は巴 マミ。あなたたちと同じ見滝原中学の生徒で三年生。そしてキュゥべえと契約した魔法少女よ。」

「美樹さやかだ。見滝原中学の二年生。言いそびれていたが、助けてくれてありがとう。あのままでは魔女の手下に何をされるかわからなかった。」

「お、同じく二年の鹿目まどかです。あの、ありがとうございました。」

「いいのよ、魔女の結界に何も知らない人が巻き込まれるのはなにも珍しいことじゃないから………。」

 

さやかとまどかの礼にマミは気にしなくていいというように手を自身の顔の前で横に振る。

その後マミは制服のポケットから何かを取り出すと、さやか達からはその手の中身が見えないように逆の手で覆いながらテーブルの上に置く。

 

「話を戻すわね。これはソウルジェムっていうものなんだけどーー」

 

そう言いながらマミは覆っていた手をどかすと金色の装飾が施された黄色に近いオレンジ色の宝石がその身を表す。

その宝石が彼女が変身する直前に持っていた宝石そのものだった。

 

「わぁ………綺麗…………。」

 

そのソウルジェムの輝きにまどかは珍しいものを見ているかのような目線でソウルジェムを見つめる。

 

「これが、いわゆる変身アイテムというものか?」

「ええ、そのような解釈でいいわ。このソウルジェムはキュゥべえに選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ。魔力の源でもあるし、何より、魔法少女としての証でもあるの。」

「そうか………そういえば、先ほどから契約という言葉を使っているが、契約と銘を打つ以上、貴方とキュゥべえの間でなんらかの取引が行われているという認識でいいのか?」

「僕は君たちの願い事をなんでも一つ叶えてあげる。それこそなんだって構わない。奇跡だって起こしてあげるよ。」

「ね、願い事を、なんでも………!?」

「奇跡、か。それこそ某こすったランプから現れる魔人の童話のようなものなのか?」

「君が想像しているのがなんなのかは知らないけど、仮にそれが願いを叶えるのであればその認識でもいいと思うよ。」

 

契約してくれれば願い事をなんでも一つ叶えてくれる。その夢のような取引にまどかは驚き、さやかはパッと思いついた類似する物語を例に挙げる。

 

「そうか。願い事に関してのイメージは掴んだ。そうなるとその願い事を叶えるという契約の代価として産み出されるのがソウルジェムなのか?」

「そうだよ。でも、ソウルジェムを手にした者は魔女と戦う運命を課せられるんだ。」

 

魔女と戦う運命を課されるということにまどかは暗い表情を浮かべ、顔を俯かせる。変わらない日常を過ごしていたはずが、突然魔女と呼ばれる超常的な存在と戦えと言われてはい、そうですかと二つ返事で動けるほど人間はできていない。

さやかはそんなまどかの様子を視界に収めながら話を進めるためにマミとキュウべぇに視線を向ける。

 

「魔女、か。マミ先輩から魔女とは人類に仇をなす者という大まかな概要しか聞いていないから詳しい説明が欲しいところだな。そもそも魔女とは一体なんだ?なぜ人を襲う?」

「そうだね。まずはそこから話しておこうか。魔法少女が願いから産まれるとすれば魔女とは呪いから産まれる存在なんだ。」

「呪い、か。概念が具現化した存在、ということか?」

「ある意味はそうかもしれないね。魔法少女が希望を振りまくなら魔女は絶望を撒き散らす。しかも普通の人の目には見えないからなおさらタチが悪い。」

(………つまり、向こう側からは襲い放題というわけか。確かにタチが悪いな。)

 

キュウべぇの言葉にさやかが納得といった顔を浮かべている話は次の段階に移行する。

 

「魔女は人間の不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういった(わざわい)の種を世界中にもたらしているんだ。」

「理由のはっきりしない自殺や殺人事件はかなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。形のない悪意となって、人々の心を蝕んでいくの。」

「結界の内部も趣味が悪ければその手法も趣味が悪いな。」

 

自身はそのきっかけを与えるだけであとはその呪いをかけられた人間が勝手に自らを死に追いやっていく。その手法のいやらしさにさやかは表情を歪め、嫌悪感を露わにする。

 

「マミさんは、そんな危険なものと戦っているんですか?」

「……………ええ、そうね。文字通り命がけよ。だから貴方達も、慎重に選んだ方がいい。」

「…………当たり前だな、その時の気分でその後の人生まで決定づけられるほど、楽天家でいるつもりはない。その契約は余程のことを、それこそ奇跡と呼ばれるほどの願いでなければ、釣り合わない。」

「…………それってマミさんも、どうしても叶えたい願いが、あったってことですよね?」

 

さやかが険しい表情を浮かべながら言った言葉で気づいたのか、まどかはマミに彼女が魔法少女になった時の願いを尋ねた。それこそ、彼女にとってはあくまで参考のようなものになればいい。それくらいのもので尋ねたのだろうがーーー

 

「…………ええ、あったわ。」

 

マミはその質問に辛そうな表情を浮かべながら願いがあったことだけを伝え、内容まで口にすることはなかった。その顔はその願い事に関して彼女があまり口にしたくないことをさやかは如実に感じ取っていた。

 

「…………まどか。願いというのは誰しも大々的に言えるものではない。それこそ、他人から見ればどうということはないにしても本人からすれば叶えたいがあまり他人には言いふらしたくない願いだってある。ましてや、願いなど、ひょんなことに応じて変わるものだ。まどかだってなにか食べたいものがあったとしよう。それも願いに該当すると思うが、食べたいものなどその時の気分や状況によって変わる。つまり、不変性などどこにもないんだ。」

「あう…………ご、ごめんなさい!!わたし、マミさんの気を悪くするために言ったわけじゃないんです!!」

「………ううん、大丈夫よ。鹿目さんがそんなつもりで言ったわけじゃないのはわかっていたから。でも、少なくとも私の願いを参考にするのはやめておいた方がいいわ。」

「…………そう、ですか。」

 

マミの言葉にまどかはどこか反省しているように背中を縮こませながら顔を俯かせる。さやかはそのまどかの背中を優しくさすると、別の話題を切り出す。

 

「別の質問をしたいのだが、暁美ほむら………ショッピングモールで貴方が退かせた人物のことなのだが、彼女も魔法少女なのか?」

 

ソウルジェムや契約に関しての質問からさやかは先ほどショッピングモールでまどか、というよりキュゥべえを襲ってきたクラスメート、暁美ほむらについて尋ねることにした。

 




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