ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
「ハァッ!!」
ほむらを結界の外へ送り届けたさやかはGNソードⅡロング、ショートを手にしながらGNドライヴからの粒子放出量を増大させると天音月夜に向かって、GNソードⅡロングで切りかかる。
「ッ……………!?」
さやかのスピードに目を丸くしながらも辛うじて反応した月夜は手持ちの笛を口に当て吹き鳴らす。その笛の音色が響くと彼女に音のような波紋で形成されたバリアが展開され、さやかが振り下ろしたロングを阻む。
「音の障壁……………!?」
攻撃が防がれたことにさやかは目を丸くするが、攻撃を防いだ月夜も脂汗を滲ませ、苦悶の表情を浮かべていた。
(な、なんという膂力でございますこと………!!押しとどめるのが精一杯でありますわ…………!!)
少しでも気を抜けばバリアごと自分が斬られる。そう直感した月夜は笛を吹き続け、バリアの破られまいと堪える。
「これならば…………!!」
さやかはバリアに阻まれているロングをそのまま押しつけたままもう片方に手にしていたショートを腰に戻す。当然その行動も月夜の目に入るわけだが、敵の目の前で武器を収めるその行為に怪訝な表情を隠しきれない。
だが、さやかは空いたその手に別の剣を生成する。その剣はロングとショートの刀身のちょうど中間くらいの長さにしたような酷似した剣だった。
「ライフルモード…………!!」
呟くようなさやかの言葉。それに呼応するように新たに生成したGNソードⅡの刀身が半回転させ、その銃口をバリアに押し付ける。
次の瞬間、ライフルモードに変形させたGNソードⅡの銃口から細かな光の粒が散弾銃のように撒き散らされ、至近距離からバリアの表面をピンク色の光で照らすと、バァンッ!!という爆裂音と共に月夜の身体が跳ね返るように真後ろに弾き飛ばされる。
「つ、月夜ちゃん!?」
とんでもない爆音と共に吹っ飛んできた自身の姉に思わず吹き鳴らしていた笛の演奏を止めながら彼女に駆け寄り、声をかける。
「う、うう…………」
幸い月夜に特にこれといった外傷はなかったが、散弾銃を至近距離で受けたような衝撃はやはりとんでもないものだったのか月夜は呻き声を漏らすだけで月咲への返答はない。
「バリア全体に衝撃を行き渡らせ、そのままバリアごと押し出すように弾き飛ばした。外傷はないはずだが、威力もそれなりの出力を出したから、しばらくは動けないだろう。」
横たわる月夜を抱える月咲にさやかはそれだけ伝えるとGNドライヴで浮遊すると一瞬だけGN粒子の放出量を上げ、跳躍するように上昇し、別の場所へ向かう。
「そ、空を飛んでる………………それにこの緑色の光は………?」
「……………な、何という衝撃………まだジンジンしますわ…………」
さやかが飛び去ったあとに残されるGN粒子の光に月咲は不思議そうにしながらキラキラと降り注ぐそれを見つめるが、月夜が呻き声のような声をあげると慌てた様子で倒れている月夜の上半身を起こす。
「だ、大丈夫!?」
「…………ええ。あの御人の言う通り、衝撃に弾き飛ばされただけでございますわ。」
妹の月咲の声に無事を示すようにわずかな笑みを見せると、降り注ぐ緑色の光に目がついたのか、その光を追っていくと魔女モドキ達と戦闘を行なっているさやか達の姿が目につく。
戦闘に復帰したさやかは杏子をフェリシアに向かわせたため、マミと合流し、そのまま彼女と背中合わせで魔女モドキの殲滅にかかる。魔法少女としてのキャリアとしてはマミの方が数年上だが、彼女がマスケット銃を展開して前方に向けて掃射すれば、その後ろをさやかが薙ぎ払うようにGNソードⅡブラスターのビームを撃つことで凄まじい勢いで結界内の魔女モドキ達の数を減らしていく。
「ですが、このままではフクロウ幸運水のウワサが消されてしまいます。先ほど結界に大穴を開けられてしまいましたし、一人…………黒髪の魔法少女の姿が見えませんわ。おそらくこの結界から脱出し、ウワサの破壊へ向かったのでしょう。」
「じゃあ止めに行かないと…………!!」
ウワサが破壊される危機に逸る月咲を月夜は服の裾を掴むことで引き留める。そのことに月咲は困惑してしまう。
「いいえ、いいえ。それはダメですわ月夜ちゃん。あの御人がそう易々と向かわせてくれるとは思いませんわ。私達は足止めする立場から足止めされる側へと一瞬で盤面をひっくり返されてしまったのでございます。」
「じゃあ……………どうするの?」
「今は機を待ちましょう。このソウルジェムに穢れがたまるその時まで。幸いこの飼育場は他にもあるのでございます。」
(……………動かないか。何かしらの妨害に出ると思ったのだが。)
身を寄せ合う双子を見張るために視界の端に入れていたさやかだったが、現状二人が動かず事態を静観すると判断すると視線を魔女モドキ達に集中する。
ひとまずマミとツーマンセルを組んで魔女モドキの掃討にかかる。その魔女モドキ達はサイズにそれぞれ大きかったり小さかったりと違いがあったが、神浜市では総じて魔女が強いというのが影響しているのか見滝原で戦ってきた使い魔よりは動きが素早かったりと強くはあった。
だが、それでも幸いまだ対応しきれる範疇ではあったため、マミの生み出す無数のマスケット銃の援護もあり、順調に使い魔の数を減らしていく。
「しかし、ウワサどころか魔女を、それも飼育して育てているとは、奴らの掲げる救済とは一体どうやって行うつもりなんだ?」
魔女モドキを切り捨てながらさやかはマギウスの翼の掲げる魔法少女の救済について首を傾げる。
「それは…………私にもわからないわ。でも、何も知らない無辜の人々を巻き込んおいて、自分たちだけ救済を望むのは間違っていると思うわ。」
そのさやかの疑問に後ろで弾切れしたマスケット銃で魔女モドキを殴りつけながらそう応える。表情こそは伺えないが、その口ぶりだけでも彼女が明確に一般人を巻き込んでいるマギウスの翼の行為を否定しているのがわかる。
「そうか。貴方がそういう風に明確に反意を示してくれるとありがたい。意外と気負い安い貴方のことだから向こうに同調してしまうかと密かに心配していたのだが。」
さやかの中ではマギウスの翼の構成員は総じて魔女化や魂が材料になっていることなど、ソウルジェムの真実を知っているだろうと踏んでいる。
その上で掲げる魔法少女の救済とは、言わずもがな魔法少女に定められたその運命からの脱却ということだろう。
そして、マミはソウルジェムの真実をほむらから告げられた時、一度は心が折れてしまったかのように家に引きこもっている。
今は受け入れているかどうかは別問題として、普通にいられているようだが、いつ人の精神が破綻するのを想像するのは難しい。
だからひょんなことから彼女がマギウスの翼に加担してしまうかもしれないとさやかは不安視していた。
「…………でも、私だって、そんな方法があるのならあやかりたいわよ。一応、貴方はそういう心配事は解消されているんでしょ?」
「…………まぁ、それもそうか。」
先ほどまで明確にマギウスの翼の目論見に反意を示していたマミの一転して不安を押し殺したような声にさやかは納得したように静かに瞳を落とす。ソウルジェムが黒く濁る原因は主に魔力の消費によるものだ。他にも絶望などによる負の感情エネルギーによる濁りもあるが、それはパターン的には比較的少ない方だ。
その主だった穢れの発生の原因をさやかはGNドライヴによる魔力の生成で補っている。
それが意味することは、ある種さやかはマギウスの翼の掲げる、理想の体現者とも取れる。
(だから私はマギウスの翼にああまで普通に異を唱えることができるんだろうな。魔女化の可能性が他の皆より低いから。)
だが、たとえその条件がなかったとしても私はマギウスの翼の理想を認めることはできない。
同時にさやかはそれでも彼女の行いを見過ごすことはできないと確信する。魔法少女の救済。字面だけ聞けば、確かに聞こえはいい。ソウルジェムは自分自身の魂が材料にされていて、ソウルジェムの破壊は自分の死を意味すること。そして何より、その宝石の輝きの中に、黒く暗く秘められた魔女化の運命。
それを半ば意図的に隠されていて、それを知った時には、その知らない間に課せられた運命に不服を立てたくなるとは分かる。
だが、それを理由に他者を傷つけていい理由にはならないはずだ。
別段、魔法少女が魔女化の運命から逃れられること自体に異論はない。むしろさやかもそのようなことができるのなら構わない。だが自分たちが救われたいからと他者に危害を加えるようでは、到底救済とは呼べない。そんなのはただの傲慢、エゴ以外の何ものでもない。
「…………私は認めない。そんな他人を犠牲にするようなやり方、まだ大人でもない私達には禁忌以外の何ものでもないのに…………一生モノの呪いを引きずって生き続けていくつもりか………!?」
「それは…………それを成し遂げたものの咎といえば聞こえはいいけど………拷問ものね。」
「だから私は、破壊する。こんな呪いを背負わせようとするマギウスの翼の所業を。いやマギウスの御三方か。確かそう言葉を漏らしていたな、彼女らは。」
「ええ、確かにそう言っていたわね。意外と抜けているというかなんというか…………」
決意新たにしてGNバスターソードを横薙ぎに振るい、魔女モドキ達をまとめて一刀両断するさやかに対し、マミは苦笑するように困った表情を見せながら、遠目で天音姉妹の方に目線を向けた。
「まぁ、あの人たちには後でしっかりとマギウスの翼について吐いてもらうとして………美樹さん、ここは私に任せてちょうだい。手を出してくれる?」
(…………調子がいいように見える時の貴方は危なっかしいとまどかも言っていた、というのは余計なことか。)
ちょっと危ないセリフに言葉を挟みたくなったさやかだったが、とりあえず結界内ではすぐに援護に向かえない距離ではないので、飛び出た言葉を飲み込む。
そして彼女が手を伸ばしてきたのが、調整屋によってソウルジェムに調整を施された者同士でできるコネクトをやろうとしているのだろう。一応調整を施された後にコネクトについては簡単に説明は受けたのだが…………いまいちさやかには要領を得ないというのが正直なところだった。無論、みたまの話自体が理解できなかったわけではない。
(…………私がコネクトした場合、一体どういう効力が付与されるんだ?)
いろはとほむらと一緒に神浜市を訪れた時のももことレナが結んだコネクトはももこの得物である刀剣レベルまで巨大化させたような鉈にレナの水魔法が付与されるという類のものであった。
そこからみたまの説明も合わさって、コネクトというのは相手に自分の魔法効果をエンチャントし、能力を一時的に向上させるものという認識まではできた。
だが、さやかにはそういう属性魔法みたいなものが特にない。マミだったらリボンによる拘束の補助効果、杏子は幻惑効果による撹乱、ほむらはもしかしたら攻撃時に時間停止の状態異常を相手に押し付けるみたいなことができるのだろうが、さやかにはそういう魔法的なものが本当にない。
一度だけ回復魔法も使ったこともあったが、あれはインキュベーターのいう因果律の重なりが引き起こしたものであり、それがコネクトとして反映される可能性も低い。
(…………とりあえず、悪い効果が引き起こされるわけではないと思うが…………)
結局のところ、やってみなければわからないという結論に至り、さやかは少々戸惑いながらも差し出されたマミの手に自分の手を重ねる。
その瞬間、さやかの体がほんのりと光に包まれたかと思うと繋がれた手を渡り、橋を渡るようにさやかからマミへ光が流れ込んでいく。
「…………なにか変わったか?」
前回と比べるとあまり変化の見えないマミの様子にさやかは訝しげに小首を傾げるが、その反面マミはさやかからのコネクトをどういうものなのかと心得たのか、迷いなく載せていた帽子からマスケット銃を取り出すように生成し、自身の前面に横一列に並べる。やはりというべきか、マミの生成したマスケット銃にも明確な変化は見受けられない。
「
だが、指揮官のようにマミが手を振りかぶり号令を飛ばし、並べられたマスケット銃の銃口が起き上がり、眼前の敵に向けられその撃鉄が下されるとその銃口から発射されるのは鋼鉄の弾丸 ではなく、ピンク色に輝く複数の閃条が魔女モドキ達をまとめて貫いた。ちょうどそれはさやかが使っているGNソード系から放たれるビームと同じだった。
「!?」
突然目の前で行われた光景に流石のさやかも呆然としながら目を見開くことしかできないでいた。
「行きなさい!!」
さらにマミが号令を飛ばすように言葉を発するとマスケット銃はまるで意思を持ったようにひとりでに空に浮かび上がるとマミの言葉に従うように魔女モドキ達に接近し、一度ビームを出した銃口から再びピンク色のビームを発射し、魔女モドキ達を破壊していく。
「美樹さん……………これすっごくいいわ!!」
「え……………そ、そうか。貴方がそういうのなら別にいいのだが。」
空を縦横無尽に駆け巡るマスケット銃達にマミは何か彼女の中でくすぐられるものがあったのか目を輝かせながらその力をもたらしたさやかに礼を述べる。
思わず戦闘の手を止め、呆けていたさやかはそのマミの礼で意識を取り戻すと困惑気しながらもその礼を受け取る。
「さっきも言ったけど、ここは私に任せて!!数も減っているから、佐倉さんの方をお願い!!」
そう言ってマミはマスケット銃の操作に集中するためなのか、さやかから目線を外し、魔女モドキの殲滅にかかる。
その勢いに押され、声をかけることすらできなくなったさやかは、とりあえず杏子の元へ向かうのだった。
マミ は ホルスタービット(仮)を手に入れた!!
ただし、この武器はさっさんと事前にコネクトを行う必要があるから注意が必要だぞ!
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない