ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
「杏子!!」
「んおっと!?中々いいタイミングで来やがったな!!」
「そちらの状況に確かめに来たのだが…………あまり良くはなさそうだな。」
魔女モドキをマミに任せたさやかは言われた通りに杏子の元へ訪れるが、何か察したように難しい表情を見せる。その表情に釣られるように杏子が肩を竦め、困り果てた表情を向けた先には手にしたハンマーで凄まじい轟音を響かせながらガムシャラに魔女モドキを文字通り潰しているフェリシアの姿があった。
「見ての通りだ。まーるでこっちの話なんか聞きやしねぇ。」
「とはいえ、使い魔を潰してくれるのはいいがこのまま彼女に好き勝手動かれてうっかりこの結界を破壊されてしまうと、もれなく残っている使い魔が一斉に逃げ出す。それは避けたいから最低限全滅させるまでは我慢して欲しいのだが…………」
「……………あんなバーサーカーにか?ありゃああたしより筋金入りで魔女を恨んでるぜ?下手に我慢させっとこっちに矛先が向いちまう。こういうのは放っておくのが一番賢いやり方だ。」
フェリシアをどうにか止めたいと考えるさやかに杏子は訝しげな表情を向ける。確かに今のフェリシアのような狂戦士を無理に止める必要はどこにもない。杏子の言う通り好きにさせておくのが一番現実的な考えだ。
だが、それでもさやかにはフェリシアを放っておくわけにはいかないと感じる理由があった。
「彼女に魔女への恨みが積もりに積もっているのはわかっている。だが、私にはどうにも違和感を感じるんだ。何か危うくて、それでいて漠然とした罪悪感だ。」
「危うさってのはあたしにもわかるけどさ…………罪悪感は自分が感じるもんで他人であるさやかには無理だろ?例のイノベイターって奴の感覚か?」
「わからない。だが、同時にあまり触れてはいけないものとも直感している。爆弾でも触っている気分だ。」
「ハァ…………便利なもんだ、イノベイターってのは。」
さやかのイノベイターとしての感覚からでる言葉に杏子はあまり間に受けていないように呆れたような表情を浮かべていた。
「ま、あのガキンチョに対する印象はともかく、あたしはあのまま放っておくのはまぁまぁ夢見が悪い。それはさやかも同じだろ?」
「ああ。彼女の戦い方は自分自身を孤立させる。指摘して止めようとしたところで火に油を注ぐような逆効果かもしれないが。」
「そもそも、別に無理して止める必要はねぇんじゃねえの?」
「だが、彼女を放置してこの結界を破壊されてしまえば 」
「ばーか、お前意外と頭堅てぇな。
杏子のフェリシアを完全に放置するような発言に少しムッと表情を顰めながら異論をを唱えようとしたさやかだったが、途中で杏子に割り込まれる形で遮られる。おふざけが籠められたおどけたような口ぶりに少しだけ眉の形を逆ハの字にするが、杏子の結界ごと、という言葉がひっかりわずかに沸いた憤りを静めながら思案にふける。
「ッ………………そういうことか!!」
「わかったならさっさと行きな。あいにくあたしはまだ調整を受けてないからできねぇんだわ。でもお前は遠目から見ていたけどさっきマミにやってただろ?まぁ、あんな感じになるとは全く思ってなかったけどさ。」
「ともかくありがとう!!調整の料金は基本グリーフシードで対応してくれるそうだ!!」
杏子の発言の真意にたどり着いたさやかは善は急げといわんばかりの行動の早さで、杏子に礼がわりに調整の代金を伝えながら視線の先で大暴れを繰り広げているフェリシアの元へ飛翔する。
「しっかし、コネクトって与える側はともかくだけど、結構それを受けとる側にも引っ張られるよな。マミの時は攻撃がビームに変わった上に飛び回るようになっちまったし………………どうなるんだろな。」
肩に担いでいた槍を振るい、自分の周囲にいた魔女モドキたちを一閃しながらのつぶやきに答えるものはいなかった。
「深月フェリシア!!」
「なん………だよ!!邪魔……すんなぁ!!!」
フェリシアの近くまで来たさやかは彼女の名を呼ぶ。それにフェリシアは怒気を含めたようなイラついている口ぶりをしながら、物理学的な観点で見てみれば膨大な質量を有しているであろうほどの大きさのハンマーを軽々しく振るい魔女モドキたちを蹴散らす。その風圧からさやかの程よく肩まで下ろした水色の髪がひどく風に煽られるが、不思議と戦闘の余波が飛んでくることはなかった。
さやかから飯をおごってもらった彼女なりの礼なのかは定かではないがともかく、現状暴走状態のフェリシアにも、まだ周りのことを考えられる理性があることをさやかは察する。
「お前の抱えているその魔女への恨み。一体なんのためにその復讐を果たすつもりだ?」
「オレの父ちゃんと母ちゃんは魔女に殺された!!優しかった父ちゃんと母ちゃんを奪った魔女がこの中にいるかもしれないんだ!!だから、オレはぁ!!!」
さやかの問いは普通であればよほど親しい仲の人間であっても到底話せる内容ではない。しかし、フェリシアは戦闘での精神の高ぶりかはたまた目の前に自分の両親の仇がいるかもしれないという満杯になった器からあふれる水のようにとめどない感情の発露からまだ会ってからそう時間のたっていないさやかにすらその復讐心を吐露する。
しかし、そのフェリシアの復讐心にはいくつかの疑問が湧いて出るのがさやかの正直なところであった。まず大前提、話の口ぶりからしてフェリシアはその仇の魔女の姿を覚えていないようにも思える。そうでなければ、魔女という存在そのものに対して今の彼女のように過剰反応のような怒りを湧きあがらせるのだろうが、ならばなぜその復讐したい相手の特徴を明確に覚えていない?
魔女の姿形を認識できないほどの短時間で両親を殺害された?
ならなぜフェリシアだけ生き残れた?魔女の行動はさながら獣のソレに近い。獲物とされたのなら逃す可能性は低い。
フェリシアがその殺害現場に居合わせていなかった?
ならなぜ彼女は両親の仇を魔女であると漠然的ながらにも断定している?インキュベーターの告げ口で知ったのだろうか?
フェリシアの言葉にさやかはつぶしては湧いて出る終わりのない可能性の坩堝にはまりそうな錯覚を覚える。結論として今は考えるべきことではないと無理矢理思考を打ち切るさやか。
「お前の戦う理由は理解した。だが、その脇目も振らない戦い方はやめておいた方がいい。人は常に100%の全力を出せるほどうまくできていない。それは魔法少女であろうと、例外ではない。」
「なんだよ………なにがいいたいんだよ!!お前は!!」
さやかの言葉の言い回しになにか癪に障るものがあったのか、フェリシアは魔女モドキをハンマーの槌で吹き飛ばしながらも鋭い目線と険しい表情を見せつけ、威嚇するようにさやかに向ける。しかし、その獰猛な目線にもさやかは一切気圧されるような様子を見せず、静かに佇む。
「両親の復讐のために戦うのは私から特に言うことはないが、まずは自分のことを最優先にしたらどうだ?このような自分自身の命が関わってくる状況まで、お前が復讐鬼である必要はない。」
「なんだそれ………………そんなのいったいどうすりゃあいいんだよ!!わかんねぇよ!!」
復讐は全くもってするのは構わないが、まずは自分を大事にしろという言葉に戸惑うようにしながらも巨大化させたハンマーを振り回し、魔女モドキと蹴散らすフェリシア。しかしその様子はなんというべきかハンマーに振り回されているようにも思えた。まるで両親を魔女に殺されたことで
「決まっている!!」
そうと感じたさやかは粒子量を増大させて浮遊すると、がむしゃらに暴れているフェリシアの元へ無造作に接近する。しかし、今のフェリシアに近づくことは嵐の中に身を投じることと同義である。声の届く少し離れた場所から髪を荒々しく煽ることができるのだからその風圧はすさまじいものとなる。実際、近くまで飛んできたさやかだが、フェリシアの戦闘が生み出す衝撃波といった諸々に不意に体が浮き上がるような感覚がすると、さやかの身体が風にあおられたようにわずかにバランスを崩す。
「あ お、おい!!!」
そのさやかの様子にフェリシアはたまらず戦闘を中断し、さやかに向けて手を伸ばす。その時の彼女の表情は先ほどまで見せていた復讐鬼の表情ではなく、純粋に他人を心配しているどこにでもいる少女の表情だった。その彼女の表情をしっかりと見たのか、または元からフェリシアに自ら手を伸ばさせることが目的だったのか、もしくはその両方か。ともかくこれ幸いというように伸ばされたフェリシアの手を掴み取るとフェリシアのハンマーの持ち手に足をつける。
「共に行こう、深月フェリシア!!まずは陰気臭いこの空間を吹き飛ばす!!言うならば、換気の時間だ!!」
自分の手を握り込み、そう息巻くさやかに目を丸くして茫然とその様子を見つめるフェリシア。しかし、さやかの身体がほのかに輝き、その輝きが繋がれた手を伝ってフェリシアに移ると、ただでさえ大きかったフェリシアのハンマーの槌が脈動するようにさらに巨大化していく。それを見たフェリシアはさやかとコネクトが発生したことを察し、呆けたような目線をさやかに向ける。
その目線にさやかの反応はわずかに口元を上げた笑みを浮かべ、静かにうなずくことだけだった。
「………………おっしゃあぁぁぁぁ!!オレに、ま・か・せ・と・けぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
フェリシアが空高く脈動を続けるハンマーを掲げる。そのフェリシアの声にハンマー自身が応えたのか槌の部分をどんどんと巨大化させると、やがて槌が巨大化に耐え切れず枷から外れるように外装が分離していくと、そこから光輝く視覚化されるほどの膨大な紫色のエネルギーで構成された新しい槌を出現する。その紫色の光は不思議と怪しげなものとと感じさせることなく、結界全体を照らす。
「………………まーたうるさそうなのが増えそうだな………………こりゃ。」
(あら、私は結構騒がしいのは好きよ?見ているだけでこっちも楽しくなるもの。)
「あっそ。まぁ、人手が増えること自体にあたしも構いやしないんだけどさ。」
その様子に杏子が軽く頭を抱え、面倒くさそうに見ていると、念話でマミの好意的に見ている言葉が送られてくる。それにため息をつく杏子だったが、自身も別に構わないという旨を明かしながらお菓子を口に咥えると、その様子を静観する。
「全部まとめて………………吹き飛びやがれ ッ!!!!!!」
巨大化に巨大化を重ねたようなサイズまで大きくなった紫色に輝くハンマーをフェリシアは結界の地面に自分の持ちうる全力をもってたたきつける。その瞬間、たたきつけた地点から以前までのとはくらべものにならないレベルで爆発したような膨大な光と猛烈な衝撃波が魔女モドキたちを消滅させる。それどころがハンマーの勢いは止まらず、結界の地面にヒビが生じると全く間に結界全体に広がっていき、その瞬間、ガラス細工が砕けたような甲高い音とともに崩壊し、結界を構成していた部分は白く変色した光にかわり、元の足元に水が張った地下空間に戻っていた。
「………………お前たちが操っていた使い魔たちは全滅し、その結界は崩れた。残るはお前たちだけだ。」
さやかは視線の先で身を寄せ合っている天音姉妹にGNソードⅡブラスターの銃口を向け、事実上のホールドアップを宣告する。しかし、当の二人は戦闘の疲れからなのか、肩で息をするように呼吸を荒くしているだけで何も言葉を返さない。
「投降してくれ。お前たちのソウルジェムも黒く濁っている以上、これ以上の戦闘行為は無意味だ。」
何も返答をしない天音姉妹にさやかは警戒心をにじませながらも再度降伏勧告を行う。集まってきた杏子たちも天音姉妹の動向を不信に思い、怪訝な表情を露わにしていた。
「ソウルジェムが黒く濁る?それは全くもって好都合でございますわ。」
「君たちは今から神浜市で魔法少女が救われる、その奇跡を目撃するんだよ。」
姉妹の言葉に何かあると踏んで即座に身構えるさやかたち。次の瞬間、姉妹の身体を包み込むように黒い靄が出現する。その靄を見た瞬間さやかは身の毛がよだつような感覚に襲われる。イノベイターとしての直観が姉妹からでてきたあの黒い靄の正体が使い魔とはわけが違う、魔女のものであると警鐘を鳴らす。そしてそれはマミや杏子、そしてフェリシアも例外でなく、ソウルジェムの探知能力であの黒い靄を魔女であると判別したのか、そろって驚愕といった表情を見せていた。
天音姉妹の姿が黒い靄に包まれて見えなくなると、その二人を包み込んだ二つの黒い靄は宙を浮き、蠢き、胎動を始める。そのおぞましい様子にさやかたちはただただ見つめることしかできないでいた。
やがてその黒い靄が固まっていくように思えたその時、靄が晴れ、そこから五体満足の姉妹が現れる。
「おいおいおいおい!!一体何なんだよ、あれはッ!?」
「魔女を………………身に纏っているのよね、アレ。」
「な、なんであいつらから魔女が!?」
しかし、その様子は先ほどとはまるで違った。月夜はブランコのように座し、月咲はまるでストリップショーのポールダンサーのように頭を下に向けた状態で棒に体を絡ませていた。問題なのは、その姉妹たちそれぞれの周りを取り囲む球を半分に分割し、その上で金環のような巨大な輪っかが目立つまるでアクセサリーのような魔女だった。
「それが………………お前たちの掲げる解放か………………!!」
「そうだよ。これこそが魔法少女たちを希望へと導く、解放の証。」
「その解放の証をその目でご覧になられたことはとても幸運でございます。」
「ッ……………」
最初に顔を合わせたときのように落ち着いた口ぶりで語る天音姉妹たちの様子からかなりの戦闘力を二人が纏っているような魔女が有していることを察するさやか。このまま撤退するのも一案だが、まだウワサの本体をほむらが潰せていない上、そのほむら自身が戻ってきていない以上、ここでの撤退をできない。つまり、どうであれこの魔女を身に纏ったような前代未聞の存在を相手取る以外に選択肢はないことにさやかは舌打ちするように表情を険しくする。地下水道での攻防戦は最終兵器ともとれる切り札の投入により、終わりが見え始めていた。
次回、ドッペル VS ダブルオーガンダムセブンソード/G+eta
なるべく早めにだせるように頑張ります。少し前に似たようなのやったけど、天音姉妹のドッペルでどうやったらOO7S/Gに勝てそうかコメントしてくれよな!!
送ってくれたら作者の笑いの種になるので。
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない