ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
「…………………」
さやかは今、手元にある一枚の写真と睨めっこをしていた。その写真に写っている人間は二人。お互い満面の笑みといった様子で仲睦まじそうにカメラに映っていた。
片方はまだ幼さの残る顔つきだったが、長く下ろした濃い蒼の髪からさやかの目の前にいるやちよなのだろうというのはわかる。問題はその隣にいる白髪の少女。写真のやちよと同じような笑みを浮かべているが、はっきり言えばさやかには見覚えがあった。あの時、天音姉妹のドッペルを打倒したあとに姿を見せたあの黒羽根を率いていた魔法少女に他ならなかったからだ。
その少女の名前は『梓みふゆ』。やちよのいう知り合いであり、先ほどいろはを寝かせてきた部屋の人間だった。
そのことにさやかは世界はなんとも狭いものだと呆れるようにため息を漏らすと、手にしていた写真を置き、やちよに視線を向ける。
「……………この人物で間違いない。あの時見かけた魔法少女は梓みふゆだ。」
「ッ……………そう。」
さやかの言葉にやちよは安心したような、それでいて残念そうにもしている複雑な表情を浮かべる。
彼女も一年前から失踪状態になっていた知り合いの安否が知ることができた嬉しさと、マギウスの翼という怪しげな宗教法人じみた集団の一員になっているのが心配なのだろう。
(気まずいな……………それになんか関係性がドロドロしてきた…………昼ドラのそれよりはマシだが……………見たこともないが)
そのやちよの様子の気まずさにさやかは見たことすらない昼ドラの修羅場に出くわしてしまったような錯覚に陥ってしまう。とりあえずやちよにかける言葉も見つからないため難しい表情で黙っている他なかった。
「そういえば、貴方を含めた見滝原の魔法少女たちは、揃ってマギウスの翼の掲げる救済には賛同しないのよね?」
「んん………………まぁ、そうだな。奴らの言うことが胡散臭いだの、理由はそれぞれだが。アンタもマギウスの翼に対して、一般人を巻き込むのはまずいと思っているから梓みふゆの誘いを断ったのではないのか?」
黙っていては埒があかないのはわかっていたため、なんとか会話の糸口を見つけようと心の中で悪戦苦闘を繰り広げるさやかだったが、唐突にやちよの方からマギウスの翼に反抗する理由を問われる。
「確かに、貴方の言う通り、私はそれを理由にみふゆの誘いを蹴ったところがあるのは認めるけど………………それができるのは環さんをはじめ、魔女化のことを知っている人物が限られているからよ。」
やちよは遠回しに普通の魔法少女であれば魔女化の運命から逃れようとマギウスの翼に傾倒するはずだという。そのことにさやかはお互い自分の行っていることは大衆の考えからは外れているのだと認識しているのだという思考に至る。
「………………そうだな。確かにアンタの言う通りだ。私たちのやっていることはいわば世界を敵に回しているような愚行だ。なぜなら理不尽な運命から逃れられる救いが目の前に存在するのにそれを破壊しようというのだからな。」
さやかは先ほどまで見せていた悩まし気な表情から一転してニヤリとした笑みを浮かべると椅子の背もたれに深くもたれながら腕を組む。
「だがその救済の裏で、私たちのエゴの所為で理不尽を味わう人たちがいるのなら、私個人としてはそれに異を唱える。それが、わずかな可能性でも家族や友人が巻き込まれるのならなおさらのことだ。私は友人を守るために魔法少女となったからな、そこだけは譲れない。譲ってはいけないと自負している。」
「貴方………………他人のために願いごとを………………!?」
さやかが自分が契約したときの状況を簡単に説明すると、やちよから驚愕といった表情を向けられる。やはり、契約時の願いごとはほとんどの場合が自分のために使用されるのが魔法少女たちの間の暗黙の了解みたいなものであるらしく、さやかのように他人ために願い事をつかうのはなかなか異質らしい。
「いや、そもそも契約したときの願いは使っていない。というか、いらなかった。私が契約したときに必要だったのは魔法少女としての力だけだったからな。」
「………………う、嘘でしょ!?貴方、正気なの!?」
それでもやはり根本として願い事を叶えず、その権利を放棄するというのはやっぱり常軌を逸脱した行動らしい。
明くる日の朝、さやかは平日であるその日は制服姿で学校へ登校していた。とはいえ、父親の慎一郎には友人とカラオケにいっているという
(…………ここのところ、ずっと動いていたから少し眠いな。)
春の朝の陽気から思わずさやかはあくびをしてしまうほどに温暖な気温であった。意識もなんとなくぼーっとしているような感覚もあり、さやかは眠気を吹き飛ばすように頭を振り、若干無理矢理に意識を覚醒させる。
「ん………………?」
そんな時さやかは自身の登校用のスクールバックから携帯のバイブ音が振動していることに気づく。誰からの電話だと思いながら携帯を取り出し、画面を見てみれば、そこには『環 いろは』の名前があった。
「いろはか?」
『あ、さやかさん。おはようございます。』
画面をスライドさせて携帯を通話状態にして耳に当てると、電話口からいろはの声が聞こえてくる。その様子から昨日の騒ぎから特にこれといった大事には至っていなかったことに安堵するが、それと同時に平日の朝から電話をしてくるということは何か別件で妙なことに巻き込まれたのかとも思ってしまう。いろはの口ぶりからそのような雰囲気はほとんど感じられないが………………
『あの、やちよさんから聞きました。たまたま神浜市内にいたとはいえ、別の場所にいたところから、わざわざ危ないところを助けに駆けつけてくれてウワサを倒してくれたって。本当にありがとうございました。』
そう思っていたところにいろはの口から出てきたのはウワサから助けてくれたことに対するお礼の言葉だった。言葉面を聞いている限り、さやかがウワサの本体を倒したことになっているが、大方やちよがドッペルやソウルジェムのことを隠すために建てたカバーストーリーであることをすぐさま察する。それでも許可の一つぐらいは取ってほしいのは山々だったが、それは流すことにした。
『さやかさん?』
「………………ああ、すまない。少し考え事をしていた。話を戻すが、私としては大したことはしていないさ。ただ駆けつけて、掛かる火の粉を振り払っただけだ。もっともそれができたのもあの小さなキュウべぇのおかげだが………………」
そんなことを考えていると、応答がなかったことを不思議に感じたのか、いろはが首をかしげているような声で呼びかけられると、さやかは意識を会話に戻して、なるべくやちよのカバーストーリと齟齬が生じないあいまいな表現をしながらそう答える。
『小さなキュウべぇ………………さやかさん、あの子に会ったんですか!?』
「どちらかといえば私に会いに来たというのが正しいだろう。実際、あのキュウべぇの様子からただならない状況を察し、そいつの道案内で従ってみれば、向かった先がいろは達のいた水名神社という場所だったのだからな。」
『そうですか………………あの子が、小さいキュウべぇがさやかさんを呼びにいってくれたんですね………………』
何か感慨深いものを感じたのか、さやかから事の顛末を聞くといろはの声が電話口から聞こえなくなる。さやかも水を刺すような口も挟まなかったため、少しの間沈黙がその空間に漂う。
「………………電話をかけてきた要件をそれだけか? ないなら電話を切るが………………」
『え、ちょ、ちょっと待ってください!!ただ単にお礼を言いたいだけで電話したわけではないんです。実は私からさやかさんに話しておきたいことがあります。』
「そうなのか?」
程よく時間が経ったところでさやかが電話を切っていいか確認をとると、いろはから話しておきたいことがあると飛び出る。そのことにさやかは不思議そうにしながら考える素振りを見せる。その時の表情はどことなく険しいものであった。
「それは………………なるべく早めに伝えておきたいことか?」
『…………はい、できれば。端的に言うとういについてです。結構時間をとってしまうとは思うので、今みたいに電話越しじゃなくて、直に会った方が………………』
「分かった。なら今日の放課後にしよう。場所は………………神西中央駅でいいか?」
『お願いします。でもごめんなさい。さやかさんにはさやかさんの予定があるのに………………』
「気にしなくていい。私もいろはに伝えておかないといけないことがあるからな。それにここまでくればもはや一蓮托生のレベルだ。なら私がやるべきことは自分の全力をもって事にあたることだ。それが、存在していた痕跡すら抹消されたお前の妹を客観的に存在していると言った私の責任だ。」
『責任………………ですか………………』
さやかの責任という言葉をまるでオウム返しのようにつぶやくいろは。電話越しというのもあってわかりづらいが、なぜかさやかにはいろはが苦笑いのような表情をしている光景を思い起こす。
「………………そんなに変だったか?責任という言葉を出したのは………………」
『えっ!?い、いいえ!!そんなことありませんよ!?ただ、やっぱりさやかさんは年下とは思えないなぁーって………………ごめんなさい!!』
その光景を脳裏に思い描いたさやかは気落ちしたようなしょんぼりとした表情を見せ、また年甲斐もないような言葉を口走ったかと確認するようにいろはに話しかける。話しかけられたいろははさやかの指摘が図星だったのか、上ずった声を挙げてフォローの言葉を並べようとしたが、結局自爆してしまい、謝った。
「…………まぁ、それほど気にしていないから、いろはもそんなに気負う必要はない。また連絡する。」
少しいじわるなことでもしてしまったかと、さやかは軽い笑みを見せながら後で連絡する旨を伝えると通話状態を切り、携帯を再びバックの中に押し込む。すると今度はさやかははたと疑問が浮かんだのか首をかしげる仕草を見せる。
「………………そういえば、まどかは遅いな。時間的には電話に出ている間には来る頃だと思っていたんのだが………………あ」
いつもの時間であれば、そろそろ時間的にはまどかの姿が見えてきてもおかしくはない。それを不思議に思ったさやかが周囲を見渡そうとすると、直後にさやかにしては中々挙がることがないような気の抜けた素っ頓狂な声を挙げる。
「あはは………………ごめんね、もう来てみたら電話に出ていたから声をかけるのはやめてたんだけど………………」
「あー………………すまない。待たせてしまったらしいな。」
「ううん、そんなことないよ。とりあえず、学校に行こう。」
そこにいたのは苦笑いを浮かべながら自分に向けて手を振るまどかの姿。さらにはその口ぶりから自分がまどかを待っていたはずが、逆に彼女を待たせていたということにさやかは申し訳なさを隠しきれないでいた。
とりあえず促されるままにまどかの元へ向かうと、二人は横に並んで学校へ向けて歩き始める。
「さっきの電話、もしかして神浜市の人?」
「そうだな。詳しいことはプライバシーにも関わることだから預かり知らないところで話すことはできないが。」
「そっかー………………そうだよね。」
そんな会話をしながら二人は比較的ゆったりとした足取りで歩く。それに対し、周りにいるほかの生徒は足早と二人の横を通り過ぎていく。さながら二人だけ時間の流れから取り残されたようだった。
「まどかは、確か知っているはずだったな?魔法少女の、強いていうのなら、ソウルジェムの真実を。」
「………………うん、人それぞれに違いはあるけど、みんな最終的には魔女になっちゃうんでしょ?マミさんや杏子ちゃん、それにほむらちゃんも。」
まどかの答えにさやかを神妙な面持ちで静かに、そして重々しく首を縦に振った。
「だが、もしその運命から逃れられる救いの手があると言われたら、まどかならどうする?」
「私だったら………………?うーん……………やっぱり、とても魅力的だと感じちゃうかな。誰だって死んじゃいたくないはずだもん。」
「それが普通だな………………だが、その救いの手が他人に不幸を強要する、犠牲ありきでしか成立しないものだったら、お前はどうする?」
「他人に………………?」
それは魔法少女でもないまどかにはあまり意味がないように見える問いかけ。それでもさやかはまどかが魔法少女の存在を知っているとはいえ、無関係の人間からの意見が欲しかった。
「………………やっぱり、それはダメだと思う。だって誰か一人を不幸にさせたら、その周りの人にとっても、それは不幸だと思う。そんなの、一回やり始めたら収まりがつかないもん。魔法少女でもない私が言っても何の力にもなれないと思うけど………………」
まどかの表情こそ重く、難し気なものを浮かべていたが、その声にはか細いながらしっかりとした拒絶の心が入っていた。
「いや、そんなことはない。力にはならなくとも十二分に、その言葉には意味はあった。」
まどかの心底残念そうな表情からでた言葉だったが、さやかはその言葉に満足したのか笑みを見せる。まどかもそれにつられるようにわずかに笑みを見せたが、やはり上辺だけのものだったのか、すぐに表情を曇らせる。
「はぁ………………私も何か手伝えることができたらいいのにな………………やっぱり魔法少女の契約」
「それをすれば、もれなく
「だよねー………………ほむらちゃんも私を思ってくれて止めているのはわかるんだけど、自分だけ知っているのに何もしないっていうのは、凄くもどかしい………………」
そういって不服そうに頬を膨らませるまどかの様子にさやかは気持ちはわかるが、自分ではどうすることもできないというように苦笑いを浮かべているほかなかった。
まどかとのそんなやり取りのあった朝の登校時間から時を進めて放課後。足早に電車に乗り込むと、さやかは颯爽と新西中央駅に向かう。大分急ぎ足できたためか、ラッシュの時間が来るより早く来ることができたようだった。
電車を降りたさやかは駅の改札口を出て手ごろなベンチを見つけるとそこに座って自身を呼んだいろはを待つことにした。特にやることもないため、何気なく取り出した携帯でいろはに駅の改札口の近くにいるとだけ連絡を入れると、何か目を引く情報はないかと画面をスクロールすること十数分。
「あ、さやかさん!!」
さやかが座っているベンチを見つけたのか、いろはが駆け寄ってくる姿を視界端に捉えたさやかは携帯をバックの中にしまうと立ち上がっていろはを出迎える。
「すみません、お待たせしました!!」
「いや、問題ない。だが、どこか落ち着いて話のできる場所がいいだろう。知らないか?」
「それでしたら」
そういうさやかにいろはが連れてきたのは駅からほど近い場所にある名前を聞けば誰でも知っている超有名なファストフード店。カウンターで定番のセットメニューを買って店内の二階にあがるとテーブルの一つ一つにガラスの仕切りが設けられていた。ここなら悪くないと思ったさやかは座席に座り、いろはと共に適当にポテトを肴に話を始める。
「それで、お前の妹の環ういについてで話したいとの事だったが、何か目ぼしい情報が手に入ったのか?」
「実は、話自体はメディカルセンターを水波さんに調べてもらった時期のことなんですけど、ういの友達についてです。もう少し私の力で情報を集められたらって思ったんですけど………………」
「………………それは悪手だろう。自身の力で進もうという意志はいいと思うが、頼れるものは頼った方がいい。」
「うう………………それもそうですよね………………」
「とりあえず、その友人について教えてもらえるか?」
「はい。その友人というのは、ういと同じ病室で入院していた、
「里見灯花に柊ねむか………………出身校からたどることができれば大分早く接触がかなうが………………」
さやかの言うとおり、その重要参考人である二人の出身校を知ることができればういの行方に近づくことができる。しかし、それができない以上、地道に探していく他がない。
「ごめんなさい。水波さんもあくまで看護師の人たちから聞いた話というだけで、カルテとか見れたわけではないので、そこまでは………………」
「まぁ………………それが限界だろうな。だが、肝心要のお前自身はどう感じている。二人の名前に聞き覚えはあるのか?」
そのこともいろはもわかっていたのか、申し訳なさそうに頭を下げる。だが、それも仕方のないことだろう。さやかもいろはも刑事や探偵といった専門の人間ではない。それどころかまだ大人にもなれていない子供だ。どうやっても個人情報を取り扱う部署には近づくことさえ許されないだろう。だからこそさやかは尋ねる。あの時、ういとの記憶を思い出したいろはに対して問いかけたように。
「………………はい。この二人は、よくういと一緒に遊んでくれていた二人と同じです。私自身にその記憶、思い出があります。」
「なら問題はないだろう。だがこの間いろはの自宅で指摘したが、ういという接点が丸ごと消失したせいでその二人との関係性が変わってしまっている可能性も存在する。だから仮に二人に出会って記憶の中の彼女らと違う反応をされても動揺はしないようにな。」
いろはの迷いのない言葉に安心すると同時にある程度の覚悟はしておいた方がいいと忠告をしておく。
「それと………………これも一応話しておきたいとも思います。さやかさんは水名神社にいたウワサについてはほとんど知りませんでしたよね。」
「………………ああ、そうだな。言われてみればあそこにはどういうウワサが潜んでいたんだ?」
いろはの言葉にさやかはわずかに間を空けて思考する時間を作ってからいろはの話を合わせるようにそう答える。実際さやかは水名神社にウワサが潜んでいたということをやちよから聞かされてはいるわけではなかった。
だが、大体あの場に魔法少女姿でいたということは魔女かウワサがいたという証左にもなりうるため、それがいろは達の手で討伐された以上、これといって指摘する必要もないと思っていた。
「水名神社を潜んでいたウワサは、口寄せ神社のウワサと呼ばれるものです。一言で言うなら、今一番会いたい人の名前を絵馬に書き込むと、その人に会えるというものでした。私はそこでういの名前を書いて、やちよさんと一緒にウワサの領域の中に入りました。」
「…………結果を急かすようで悪いのだが、会えたのか?」
単刀直入にそうさやかが尋ねると、いろはは重たい表情を見せながら無言で首を振った。それが意味するものはそもそもとして会うことができなかったか、もしくは外面だけで中身が根本的に異なるものだったかのどちらかであろう。
「………………やっぱりそこで会える人はウワサが見せる幻でしかないみたいです。そこで会ったういの様子が途中から様子がおかしくなったというのもそれに気づけた要因でもあったんですけど………………」
「おかしくなったとは……………どういう風にだ?」
どうやら今回は後者のパターンに該当するらしい。しかし、いろはが会ったういが偽物だと気づいたきっかけである『様子がおかしくなった』という言葉にさやかは首をかしげる。
「………………まるで壊れていくテレビを見ているみたいでした。譫言みたいに同じ言葉を呟きながら、時折映像みたいに姿がブレる様子を見て、とても不安になりました。死んだ人にすら会えるという謳い文句があったのにあんな結果だったんじゃ、本当にういはいるのかって。もしかしたら、この記憶はやっぱり間違いだったんじゃないかって。」
いろはの口からそれ以上語られることはなかったが、さやかはその先に繰り広げられたであろう展開を大まかにだが察することができた。
おそらく、その時点でいろは心的負担がマックスになり、ソウルジェムの穢れが大幅に増幅し、中の穢れが最高潮に達したのだろう。
そして神浜市限定で穢れが限界に達したとき出てくるのは、魔女ではなく、ドッペルと呼ばれる魔女モドキだ。さやかの推測の上でしかないが、いろはの様子を見るに無意識のうちにそのドッペルの力でウワサの本体を破壊したというのが筋だろう。そこから先はさやかが目で見た展開と変わりはないだろう。
「………………今も不安か?」
少しの間、聞き手に徹していたさやかだったが、話を円滑に進めるために一言だけ添えるように短く聞くと、いろはは首を横に振った。それを見たさやかは安心したようにジュースのストローを口に咥え、のどを潤した。
「ならいいのだが。それと、携帯で連絡を取っていた時は言い損ねていたが、実は私からもいろはに伝えておかなければならないことがある。」
「私に、ですか………………?」
「黒江についてだ。こないだ偶然鉢合わせた。この神浜市内でな。」
「く、黒江さんが、ですか!?」
神浜市に向かったきり、行方が分からなくなっていた知り合いを見つけたという報告にいろはは目を見開いて驚きを露わにすると、安堵したように胸をなでおろした。
「だが、少々面倒な状況になっているのも同時にわかった。最悪………………いや、近い未来、確実に彼女と矛を交えることにもなるだろう。」
「まさか、やちよさんから聞いたマギウスの翼にですかっ!?あの、ウワサを守っているっていう………………!!」
「そうだ。しかも、彼女からこれ以上邪魔になるなら敵対行為も辞さないという最後通告と一緒にな。」
黒江との仲は決して親しいというわけではなかった。せいぜいが互いの情報を共有する、いわゆるビジネスパートナーのような間柄だった。それでも友人の少なかったいろはにとって、話せる仲の友人が矛を向けてくるかもしれないという言葉に思い詰めた表情を浮かばずにはいられなかった。
ホントさっさんメンタルケアしかしてねぇな…………なんだこれ。
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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