ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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しばらく続くよフェリシアパート


第54話 彼女こそが本当の希望

「………………フェリシアから私に頼みたいことがある?」

 

意外そうな声を挙げ、目を見開くさやかは思わず自室の椅子に座りなおし、その話を真面目に聞く姿勢を取り始める。ことの始まりは数分前、夕飯を平らげ、風呂も済ませホクホクとした表情を見せていると自室に携帯の着信を知らせる電子音が鳴り響く。

何事かと思って携帯の画面を見ると、そこには神浜市にやってきてから一番交流が深くなったとも呼べるくらい顔を合わせる機会がトップに躍り出ているいろはの名前が表示される。何気なく通話状態にして彼女の話を聞くと、フェリシアがさやかに頼みたいことがあるとのことだった。

 

『はい。一応フェリシアちゃんにその理由は聞いては見たんですけど、ともかくさやかさんに繋いでほしいってばかりで………………』

 

「………………わかった。だが彼女と代わってもらえるか?私の方で聞いてみる。」

 

困ったように悩まし気な声を挙げてそう話すいろはにさやかは突然の頼みごとに不快感のようなものを一切感じさせないような平然とした顔でそれを承諾すると、代わりにフェリシアを出してほしいといろはに頼む。

 

『わかりました………………すみません、手間をかけさせて………………』

 

気落ちしたような声色のいろはにさやかが思わず苦笑しながら気にしなくていいと声をかけると、いろはの声が遠のき、誰かを呼んだような声が電話口に入り込む。

 

『………………えっと………………もしもし。』

 

電話口から聞こえてくるフェリシアの声。その声はそれなりに聞きなれた快活な印象を覚えるいつもの彼女とは違い、低く、小さいものであった。

 

「………………みかづき荘に移り住んでから三日ほど経ったが、様子はどうだ?」

 

そのフェリシアの様子に思ったより時間がかかることを瞬時に見極めたさやかは少しだけ間を設けて思考の時間を創ると、とりあえず下手に最初から本題に踏み入ろうとはせずにあまり関係のないことで雰囲気を和ませることにした。

 

『あ………………?ま、まぁ………………じゅーじつはしてるっていうか、なんというか………………メシ代考えることもないし、寝るところで苦労することもねぇから、悪くねぇ。』

 

「ハハ、やたら三大欲求に忠実なんだな。」

 

『サンダイヨッキュウ………………なんかの必殺技か?』

 

「人間にとって切っても切れない睡眠欲、食欲………………ともかく生き物を生き物たらしめる基本的な欲求のことだ。」

 

『………………?』

 

さやかの言葉に脳が理解することを諦めたのか、電話越しでも首をかしげているの光景を想像するのが簡単なほどそういう雰囲気を見せるフェリシア。

 

『あ!!でもやちよの奴がひどいんだぜ!!オレのことすっげぇしかりつけてくるんだよ!!やれ皿洗いを手伝えとかさ、服を脱ぎ散らかすなとかさ、少しは勉強しろとか事あるごとに言ってくるんだぜ!?まるで悪魔かよ!!』

 

(それは………………至極当然のことではないのか?彼女の根が善良であることはわかっていたが、ここまでヤンチャな気性の持ち主だったとはな。今度菓子折りでも七海やちよに持っていくか。)

 

やちよの気苦労にさやかは苦笑いを浮かべ、彼女に対して同情の思いを抱きつつ、今度詫びの品でも持っていくかと決心するが、フェリシアにそれを悟られないよう表面上は相槌を打つさやか。

 

「そうだな………………唐突だがフェリシア、『好き』の反対は何なのか知っているか?」

 

『好きの反対………………?ほんとに唐突だな。そりゃあ嫌いなんじゃねぇのか?』

 

「まぁ、あくまでこれは私個人の持論なのだが……………一見好きと嫌いという感情は相反しているように見えるが、その根っこの部分は同じなんだ。良くも悪くも相手に対しての関心があるということ。好きでも嫌いでもその相手に対してはなんらかの感情があるだろう?」

 

『相手に対しての感情………………オレあんま難しいことわかんねえんだけど………………』

 

「そうだな………………例え話をするとだな、お前は好き勝手に生活しているが、やちよはそれに対してなんの小言を立てることはない。お前が何かしでかしても、逆にお前が何か事を成しても、何をしようがお構いなしだ。これに対してお前はどう思う。」

 

『なにそれ、めっちゃいいじゃん!!要はアイツのうるさい説教一生聞かなくて済むんだろ!?』

 

さやかのたとえ話にフェリシアは目を輝かせて食いつき、さながら天国だというようにたとえ話とはいえそれに歓喜しているような反応を見せる。

 

「ならばその対応をいろはや私が同じように家でもしてきたら、お前はどう思う?」

 

『え………………いろはやさやかが?』

 

付け足されたさやかの言葉にフェリシアが呆けたような反応を見せると、しばらくの間電話からうなるような声が続いた。

 

『………………なんつぅかさ、えぇっとその………………』

 

多少フェリシアが何か答えを返そうとしているような声が聞こえては来るものの、それが実際にフェリシアの口から出ることはなく、しばらくフェリシアが何か言おうとしてはそれを断念するようなしどろもどろな様子が続き、時間が過ぎていく。

 

『そ、そうだ!!さやかだったらどうなんだよ!?そういう風に質問してくんなら当然答えもしってるんだろッ!?』

 

どうやらフェリシアはおつむは緩いが頭の回転がいい方らしい。わからないのか答えるのが恥ずかしかったのかは今のところ定かではないが、ともかく質問してきたさやかに先に答えさせようとしている。

 

「私か?私がその立場にさらされているのだったら、まぁ寂しくは感じるな。そんなのはまるで透明人間にでもさせられているようなものだからな。」

 

『だ、だよなぁ!!さやかもそう感じるよな!?』

 

その返しをさやかは無視してもよかったが、それではフェリシアがいつまでも答えを詰まらせたままになると思ったさやかは彼女から答えを引き出すように自分が持っている答えを口に出すと、堰を切ったようにフェリシアがさやかと同じ感覚がすることを明かした。

 

「ならやちよがお前に対して小言を唱えていられる間のうちだ。いいかフェリシア、好きの反対は嫌いではなく無関心だ。それを頭ではなく心に留めておけ。お前の場合、その方が物覚えがよさそうだからな。」

 

『………………わかった。少しくらいは頑張る。オレはやちよは別にいいけど、いろはやお前にそういう反応されるのは、ちょっとやだ………………』

 

「そういう風に考えられるようになっただけでも上出来だ。」

 

フェリシアの言葉にさやかは柔らかな笑みをこぼし、彼女をほめるように言葉を贈る。

 

「本題から話が大分それてしまったな。すまないな。」

 

『いや…………いい。さやかがオレが話しやすくしようとしてくれたんだろ?』

 

「ん………………お節介が過ぎたか?」

 

『まぁな。でもそういうところがさやからしいから別に気にはしねぇよ。』

 

「そうか………………」

 

フェリシアの言葉になんとなくむずかゆくなる思いが芽生えたさやかは気恥ずかしそうに頬を指で軽くかいた。どうであれ話題を逸らしたことは事実だし、フェリシアがそれに感づいている以上、必要ないため、本題に戻ることにした。

 

「それで本題に戻るが、一体何用で電話をかけてきたんだ?」

 

『………………調整屋でさ、オレの顔が張り出されていたよな。』

 

「?………………そうだったな。」

 

あまり要領を得ないような突拍子もない言葉にさやかは若干のラグを作りながらもフェリシアの言う通り彼女の顔が描かれた手配書のようなものが調整屋に張り出されていたことを思い出す。

 

『一応、時期的にあれを張り出したのはアイツだってのもなんとなく察しが付く。アイツいけすかねぇ奴だったし、オレの苦手なタイプの魔法少女だ。』

 

「待ってくれ、話が見えてこない。お前は私に一体何をさせたいんだ?」

 

独り言の領域に踏み入りそうだったフェリシアの調子をさやかは無理矢理話に割り込むような形で一度間を設けさせる。

 

『あーっと、そうだった。ワリィちょっと熱くなった。オレがさやかに頼みたいのは、付き添いなんだ。』

 

「付き添い?」

 

さやかの確認ついでの繰り返しにフェリシアはそうだと返すと、さらに話を続けていく。

 

『その、まぁ……なんだ。オレは魔女を目の前にすると周りが見えなくなるから、傭兵としてやっている時も、迷惑をかけていたと思うんだよ、たぶん。』

 

「たぶん………………ハァ、この際だからはっきりと言うが、魔女との戦いは文字通り命懸けだ。戦闘に至るまでもそれなりにどのように戦うかのプランもあったはずだ。グループで事にあたるのであればなおさらのこと。それを一人の行動でかき乱されてはたまったものではないと思うが?まだ契約してからひと月ほどしか経っていない私が言うのも少しばかりおこがましい部分もあるが。」

 

『うっ………………そ、それはわかってる!!』

 

フェリシアの言葉にさやかは頭を抱えるような仕草をすると、呆れたような物言いで彼女の普段の行動に苦言を呈する。そういわれたフェリシアも一応は自覚をするようにはなったのか、声を詰まらせながらもそう返すと、仕切りなおすように大きく咳払いをした。

 

『話を戻すとな、迷惑かけた奴らに謝ろうと思ってるんだよ。その、オレの悪評のせいでいろはたちにまで迷惑かけるわけにはいかねぇからな。けどオレ一人だと正直何言われっかわかんねぇ上にオレ自身が我慢できるかわかんねぇ。』

 

(つまり、彼女の言う付き添いというのは要はストッパー替わりか。まぁ全くもって構わない上に勝手に行動されてまた面倒ごとになるのはやめてほしいところだから、ここは素直に彼女の成長と考えるか)

 

フェリシアの言葉にさやかは反応を返すことはせずに、顎に指を乗せ、考えるような仕草を見せ、フェリシアの話を聞き入る。

 

『でも、オレがこれまで傭兵として依頼をしてきた奴は山ほどいる。中にはもう顔を覚えてねぇ奴もいる。』

 

「まぁ………………そうなるか。これで顧客リストとか律儀に制作しているのなら謝罪行脚もできなくはないが、そういうの、一切取ってなさそうだしな。現実問題、到底無理だろう。」

 

『だから、とりあえず調整屋にあの張り紙張り出した奴らのところに行こうと思ってる。ソイツらの中に、やたらとオレに構ってくる奴がいたからソイツの名前は覚えてる。』

 

「ちなみにだがその人物の名前は?」

 

『………………かこ。夏目かこって言ってた。』

 

「了解した。だが私にも普段の生活がある。どうやっても今週末の休日からしか動くことはできないが、それでも問題はないか?」

 

『………………わかった。それで頼む。』

 

 

 

さやかの条件をフェリシアが承諾し、学校が休みに入った土曜日の昼時、さやかは恒例となってきた新西中央駅で待っていた。場所はフェリシアが携帯といったすぐに連絡を取れるものを持ち合わせていなかったため、事前の打ち合わせで決めた駅の入り口の真上にある半円型の屋外庭園。その落下防止用の鉄柵に体を預け、さやかはフェリシアを待っていた。

 

(携帯がつかえないとこうも相手が来るかどうかが不確かで不安になってくるな。昔はよくもまぁ口約束で集まれたな………………)

 

なんとなく昔の時代に戦慄のようなものを抱いていること十数分。

 

「………………わりぃ、駅で少し迷って遅くなった。」

 

「ん?フェリシアか。このくらいだったら全然構わない    

 

近くからフェリシアの遅れたことを謝る声が聞こえ、さやかがそのことを気にしなくていいと伝えようとして振り向くと、そこには頭頂部が風船のように膨らみ、ボリューム感の出るキャスケットを目深にかぶり、はずかしそうにしているカジュアルな恰好に身を包んだフェリシアがいた。

 

「………………誰かにコーディネートでもさせてもらったのか?」

 

「………………やちよに無理矢理着せられた………………!!」

 

さやかの質問に悔し気にうめき声を上げながらそう答えるフェリシアに思わず表情が緩みそうになるのを口元を覆い隠して耐えるさやか。フェリシアの服装はフード付きの緑色の服に、その上からオーバーオールを重ね着したものだった。

 

「………………流石は本職だな。他人のコーディネートまでお手の物か。似合ってるから私としてはいいと思うが?」

 

「なんか落ち着かないからヤダ!!」

 

そのやちよのコーディネートにさやかは流石はモデルだと舌を巻いていたが、当の本人はまだおしゃれというのにその気がなかったようだ。ともかくこうして合流したのならあとは動くだけ。さやかはフェリシアを連れ添ってまずは情報収集を始める。

 

 

 

「あら、いらっしゃ~い♪この間ぶりねぇ」

 

そういってほんわかしたような間延びした口ぶりでさやかたちを出迎えたのは調整屋のみたまだ。とりあえずフェリシアの指名手配所もどきが掲示されている場所にいる人物なら何か知っているかもしれないと踏んで足を運んだのだ。

 

「突然押しかけてすまないな。」

 

「いいのよぉ、ここって魔法少女の子が来ない限りヒマなんだから~私とお話しに来たって思って♪」

 

そういって二人が座るソファの対面に座るみたまは以前出会った時と同じようにケーキの上にケチャップをはじめ、およそ人類がだれも試そうと………………試すことすら忌避してしまうようなゲテモノトッピングをしたうえでそれをおいしそうに頬張っていた。

 

「それで、今回はどうしたのかしら?この前みたいな用事ではなさそうだし………………」

 

「そうだな、今回は別に調整をしに来たわけではない。ちょうどアンタの後ろの柱に張り付けられた、指名手配書のようなものに関してだ。」

 

不思議そうな表情を浮かべ、頬に手を当てて首をかしげるみたまにさやかはみたまの後ろを指さし、自分たちがここに来た目的を告げる。

 

「あの紙を張りに来たグループについて、何か知っていることがあれば教えてもらえないか?」

 

「張り紙?………………ああ、なるほどねぇ………………」

 

さやかの言葉にはじめは要領を得ないみたまだったが、さやかが指した指を追うと、そこでようやく理解したのか納得といった声を挙げた。

 

「………………それを知って貴方たちはどうするつもりなの?まさかとは思うけど、復讐なんてのは、ないわよね?」

 

「あ、それは別に心配しなくていい。あくまでフェリシアが謝罪したいだけだからな。」

 

「………………そ、そうなの?」

 

フェリシアの気質から彼女が復讐が目的でその張り紙を張り出したグループのことを知りたがっているのなら、彼女らの安全も鑑みて教えるつもりはなかったが、次点でさやかが復讐とは真反対の謝罪がしたいというのに、思わずみたまは驚きながらそれの真意を尋ねる。

 

「………………なるほどねぇ………………根無し草だった貴方がねぇ………………」

 

事の経緯と詳細を聞いたみたまは感嘆といった様子でうんうんと何度もうなづきながらホロリと涙を零した。そのみたまの様子に顔を引きつらせているしかない二人。理由としては彼女のそばに目薬の容器が丸見えだったからだ。

 

「………すまないが、目薬が丸見えだが?」

 

「………………あらやだ、乙女の秘密はそう明かすものではないのよ?」

 

「そもそもアンタはまだそう呼ばれるような見た目ではないだろう。」

 

さやかの指摘にみたまはおどけた口ぶりで窘めるが、呆れた様子のさやかの返しにみたまは表情を強張らせる。

 

「貴方って色々まっすぐよねぇ………………少しはかわいげのあるところは持っておいた方がいいわよ?」

 

「反応に困るようなことを言わないでほしいのだが………………仕方ないだろう。こればかりは性格なんだから。それで、結局教えてもらえるのか?」

 

みたまのじとっととした目線に困ったような表情でしか返せないさやかだが、本題のあの張り紙に触れるとみたまは姿勢を整えるように座りなおした。

 

「そうねぇ………………まぁ調整屋も魔法少女の紹介とかしないわけじゃないからそういう情報がない訳じゃないけど………………」

 

「………………かこのことも知っているのか?」

 

悩まし気に空を見つめるみたまにフェリシアが唯一名前を知っていること…夏目かこのことを尋ねた。突然のファーストネームの人物名にみたまは少し戸惑ったように視線を右往左往させていたが、少しするとその人物について当たりをつけたのか、思いついたようにわざとらしく手のひらの上を拳で叩いた。

 

「そうねぇ………………その子のことだけ知りたいの?」

 

「いや、手掛かりがそれしかないだけだ。」

 

「そうよねぇ………………あの子たちならそうするわよねぇ………………」

 

さやかの言葉に今度は納得といった表情を見せるみたま。無論その様子に首を傾げないわけではないさやかだったが、それを疑問として口に出すことはせずに沈黙を貫いた。

 

「………………わかったわ。じゃあそのかこちゃんについてだけ教えるわ。その子の調整の時に見たソウルジェムの記憶でよければね。」

 

「十分だ。ありがとう。」

 

情報を得られることにさやかがお礼を述べると、それを聞いたフェリシアが慌てた様子でか細いながらも続いてありがとうと感謝の言葉を述べた。そのことにみたまは目を見開き軽いカルチャーショックのような驚愕を覚える。

 

「………………ところでだが、こういうのはやはり代金のようなものとかは出てしまうのか?」

 

    ッえ、ええ、そうねぇ………………最近はやっぱり情報にも金銭が発生する時代だからねぇ………………」

 

「そうか………………そうか………………」

 

 

 

みたまからそういわれたさやかは腕を組み、難しい表情を見せて悩んでしまう。その様子からみたまは彼女が前と同じようにグリーフシードの持ち合わせがないことを察する。

 

「オレの分で出すか?」

 

「いや、そこまではしなくていい。お前は燃費が悪そうだからな。自分の分は自分で使ってくれ。」

 

「そ、そっか………………っていうかさやかはグリーフシードのあまりとかないのか?」

 

「………………あいにくな。というか基本持ち合わせを持っていない。」

 

「マジで?じゃあどうやってソウルジェムから穢れ取り除いているんだ?」

 

「じゃあ、こうしましょうか。」

 

「?」

 

フェリシアとそんな会話をしているところにみたまが何か別の代替え案でもあるかのような会話を挟み込んできたことに二人の目線がみたまに向く。

 

「貴方、この前調整を受けたときに自分には特異な性質みたいなのがあるって言っていたじゃない?代金はそれについて話してくれることでどうかしら?」

 

「………………」

 

みたまからその条件が提示されたことにさやかは少し考え込むように目線を下に下げる。

 

「………………いや、すまないがこのことを話すにはそちらから提供される情報が少なすぎる。」

 

「………………そこまでのものなの?貴方の抱えているのは。」

 

顔を挙げたさやかから返ってきた答えはNO。それもただのNOではなく、自分の出す情報の価値がみたまから得られる情報に対して割に合わないというものであった。思わぬ返答にみたまの表情は自然と険しいものに変わり、蒼玉の瞳がさやかを射抜くが、それでもかたくなにさやかは首を縦に振り、自身の抱えているものが生半可なものではないことを暗示する。

 

「だが、私たちもその夏目かこという人物の情報を必要としているのは事実だ。私個人の主観が織り交ざってしまうのは否めないが      

 

 

 

 

 

 

「なぁさやか。よかったのか?その特異な体質ってのを話してさ。」

 

「誰にも言っていないわけではないからな。ほぼ身内にしか言ってないが。」

 

「え………良いのか、それ。」

 

「まぁ…………全部話した、ということではないが…………それでもインパクト自体はかなり大きかったはずだ。」

 

目を丸くするフェリシアにさやかは別に問題ないと語るように朗らかな表情で前を見据えると、少しだけ歩くスピードを早め、フェリシアの前に躍り出る。

 

「善は急げ、だ。とりあえず、彼女が教えてくれた場所へ赴くとしよう。」

 

みたまとの取引で得た夏目かこの居場所。その居場所は幸いにも新西区にあるという夏目書房とのことだった。

 

 

 

 

 

「………………………」

 

さやかとフェリシアが去ったあと、調整屋でみたまはいつもの彼女らしくなく、のほほんとした雰囲気を一切感じさせない神妙な面持ちで佇んでいた。

 

「魔力の……………自動回復……………」

 

取引で代金の代わりにさやかが話したのは魔力の自動回復。GNドライヴをはじめとするガンダムのことに関しては一切明かしていないほんのそれだけの言葉だが、みたま…………いや全ての魔法少女がその異常な能力に一度は耳を疑うだろう。

 

(本当にそんなことがあり得るの…………でもあの子、本気でグリーフシードの持ち合わせがなかったみたいだし……………)

 

顔を合わせた回数こそ少ないがそれでもわかることも十分にある。初めて調整をした時にさやかが言っていたグリーフシードの持ち合わせがない、というのは本気のようにも見えた。事前に調整について聞かされていた上での演技にしてはさやかの困った様子が本当にグリーフシードの持ち合わせがないように見えたからだ。

 

(もし、もし本当なら……………余程のことがない限り、魔女化することはないって言うことになる。それはつまり、彼女は魔法少女の呪縛から、半ば抜け出しているということになるの………かしら?)

 

ふと、目線を室内にある丸テーブルに向ける。その上にはあらかじめ連絡のあった魔法少女の来客予定が記されたスケジュール表が鎮座しており、みたまの目線は自然とその中にある人形に一対の翼が生えているようなマークに向いてしまう。そのマークはマギウスの翼の構成員である羽根たちがつけているペンダントと同じ形をしている。

つまりその日付はマギウスの翼の関係者が客として来客することだ。そしてみたまは実際、マギウスの翼に対して調整のために支払われたグリーフシードの横流しをしていた。マギウスの翼に手を貸し、さやかたちをはじめとするその企みを防ごうとする魔法少女たちにもわけへでなく調整を行う様は、まさに中立。

しかし、そしてここにきて明かされた美樹さやかのもつ特異性、魔力の自動回復にみたまはこの上なく揺らいでいた。その仕組みをマギウスの翼の頭目でもあり、聡明な賢者でもある『マギウス』に解明させれば、それだけで魔法少女の救済が大きく前進するのではないのかと。

 

「でもこれ………………調整屋の立場上絶対伝えられないものよね………………」

 

みたまは苦笑いのような笑みを浮かべると、スケジュール表から目を外し、そばにあった冷蔵庫からケーキを取り出すといつものごとくゲテモノトッピングを施した上でそれを口にする。

 

「………………もしかすると、彼女こそが本当の希望………………っていうものかしら?」

 

もっとも本人はそういう大層な称号を嫌う人間だから受け入れられることはないだろうと微笑みながら、みたまは舌鼓を打つのだった。




これななか一派の頭領から見てさやかたちとかみかづき荘ってどういう風に映るんだろうか?
やっぱり大局的に見て魔法少女の理に適うことをぶっ壊そうとしているから敵として映るのかな?

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

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