ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
「うっひゃぁ‥‥‥‥‥ホントにこんなところから飛び降りるの?」
時刻はすっかり日が沈むほどに進み、代わりにビル群からの電飾が夜空を逆に照らしている。
そのビル群が生み出す夜景を唾を飲み込みながら真上から見下ろしている鶴乃がいるのは昨日さやかたちが魔女と相対した電波塔────その屋上だった。
そこには彼女の他にもいろはやフェリシア、そしてやちよといったみかづき荘の面々が足並みをそろえていた。
「さすがにこんなところから落ちたらただじゃ済まねぇよな‥‥‥‥」
「意外と魔法少女なら大丈夫かもしれないわよ?魔法少女の身体は思ったより頑丈だもの。それに────」
鶴乃と同じように自身の真下に広がる光景に二の足を踏んでいるフェリシアにやちよは平然とした様子で電波塔の下をのぞき込む。そこに広がるのはビル群からの光で幾分マシになっているとはいえ地面すら見る事のできない漆黒の闇。しかし、その四人の眼下に広がる闇を少しでも振り払わんとするように白緑の粒子光が奔る。
「何かあっても彼女が手を伸ばしてくれるはずだから。」
そう言って電波塔の下の方で滞空するさやかと目を合わせるやちよ。彼女と目線があったことに気づいたさやかは任せてくれというように軽く笑みを見せてそれに応える。
まるで電波塔にいる誰かが落下したときのカバーに入れるような場所に立っているのは理由があった。
昨日ひとりぼっちの最果てのウワサ、もとい『アイ』からウワサの詳細を聞いた一行。まず手始めにウワサの領域内への入り方を彼女に質問してみたのだが、それが中々一般的には実際の行動に移すのが尻込みしてしまうような内容だったのだ。
中央区にある電波塔から一人で飛び降りる。
これがひとりぼっちの最果てのウワサの内部に入るための絶対条件であり、事実上の投身自殺の催促状でもあった。
一応これを聞いた直後は動揺を隠しきれなかったが、幸いその場には空を自由に飛び回ることができるさやかがいる。自分が下に待機し、何かあった際にはこちらでフォローすると申し出たところで話はまとまった。
「そういえば、『出口』の方はどうなの?さやかちゃんの仲間の魔法少女が担当って話になったのは覚えているけど…‥‥‥」
不意に下にしていた目線を戻した鶴乃は声をやちよの方に向けながらも別の方向に視線を向ける。その方向はまた一段と他のビル群から一つ頭の抜けた建物、電波塔よりも高く、屋上にどういう意図で建てたのかまるでわからない特徴的な巨大な女性の像のある神浜セントラルタワーを見据える。
「そうね…‥‥貴方、まだ彼女の仲間の魔法少女とは会ったことなかったわね。」
鶴乃はまだ顔を合わせたことがないとはいえ同じ事にあたろうとしてくれている魔法少女のことが心配なのだろう。そんな名前はおろか顔すらも知らない相手のことすら心配する鶴乃の様子に苦笑しながらも同じようにセントラルタワーを見据える。
「うん。やちよししょーとかは会ったことあるの?」
「あるにはあるけど…‥‥その時のあの子たちの様子を見せられた身とすれば、天然ボケをかましてくる身内に手を焼かされているっていう印象ね。」
「え‥‥‥‥そんな人なの、さやかちゃんって‥‥‥‥あんまり昨日の雰囲気とかから見てるとそういう風には見えないんだけど‥‥‥‥」
渋い顔を見せるやちよからさやかと愉快な仲間たちの様子を聞かされた鶴乃はぎょっとしたような表情を見せながら下の方にいるさやかを見つめる。
「でも、あの人はどこまでもまっすぐな人だとわたしは思います。どんなにそれが輝かしい光で、一見すると誰からでも救いの光であったとしても、それが間違っているんだって知ったら最後まで抗い続ける。そんな人だと思います。さやかさんは。」
「すごく慕っているんだね、さやかちゃんのこと。」
「そうですね‥‥‥‥もしかしたら、意外に心のよりどころにしているかもしれないです。その、一番最初にういのことを信じてくれた人なので‥‥‥‥‥」
いろはの語るさやかの人となりに思わず微妙な表情を禁じ得ない鶴乃。いろはもさやか自身が信ずるに値する理由を一応教えてくれているとはいえ、いるかどうか未だ定かではない人間の存在を身内であるいろはよりも先に信じるその姿にわずかながらに困惑が先に来るようだ。
『‥‥‥‥すまない、まだ行かないのか?こちらにはほむらからもう準備が整っているというメールが来ているのだが…‥‥』
その時にまだ飛び降りないのが気になったのかさやかから怪訝そうな口ぶりでいろはたちに念話を送られてくる。それを聞いたら、ウワサの領域に入ることになっていたいろはが慌てた様子で足場の端に立った。その表情はやはり高いところから先の見えない風景の中に飛び込むのは本能的に恐怖心が煽られるのか、どこか硬かった。
「さ、さやかさん!!行きます!!」
下の方で有事の際にいろはを抱きとめるさやかに聞こえるように大声で呼びかけると軽く笑みを浮かべながら静かに頷くさやか。
『急かしたつもりはなかったのだが、もし何かあったとしてもこちらでなんとかするから、バンジージャンプをするくらいの気持ちで安心して飛び降りてくれ。』
「そ、それは流石に…‥‥せめて命綱はつけさせてください‥‥‥‥」
『あといろは、二葉さなと話すにあたってだが可能な限りアイに話させた方が円滑に進むかもしれない。』
「え…‥‥でもそれじゃあ私が向かう意味は────」
『急に現れて名前も知らない人間にここから出ましょうと言われてもその言葉に人を動かすだけの力はない。そういう説得はある程度の交友関係が必要だからな。だからこの際いろははそのきっかけを作る程度の気分でいるのが楽だとは思うが‥‥‥』
「確かにそうかもですね…‥‥‥私と二葉さなさんは今回が初対面なわけですし…‥‥‥」
さやかの言う通り、二葉さなとはあらかじめ彼女のことを聞かされているとはいえ、今回が初対面であることに変わりはない。だがそれでもいろはの胸中にあったのは、二葉さなを助けたいという一心であった。
「でも、私は‥‥‥私自身の意志で彼女を助けたいと思っています。さやかさんの言う通りなのはわかっていますけど、それでも────」
『わかっている、いろは。お前の気質はなんとなく私の友人に似ているからな。』
「友人、ですか?それはこの前の暁美さんといった人たちとはまた別の?」
『ああ。魔法少女ではないから必然的に会う機会はかなり限られると思うが、仮に会う機会でもあれば、たぶんお前とも話は合うだろうな。』
「そう、ですか‥‥‥‥‥私、会ってみたいです。」
さやかからの念話に思わず微妙な笑みを見せながらそうこぼすいろは。しかし、いろはの目の前に広がる一面真っ黒な空間。その中に小さいながらも存在感を放っているさやかの青と白の色は思いのほか目立つ。さらにはその両肩に背負っているツインドライヴから放出されるGN粒子が月光を反射し、さながらその真っ黒な空間を包み込むように幻想的な空間を形成する。
(きれい…‥‥‥)
思わず目を見開き、その光景に視線を奪われるいろは。綺麗という陳腐な感想しか湧かないが、それでもおよそこの世のどこを探してもないであろうこの光景。気づけばさっきまであった恐怖心もなくなっていた。
「きゅいきゅい~!!!」
「え‥‥‥あっ!!」
聞きなれた小動物の鳴き声にハッとなったいろはにどこからともなくあの小さなキュウべぇがいろはの足をよじ登り、彼女の肩にちょこんと腰を下ろす。最初は驚いた眼でそれを見つめていたいろはだったが、不意に表情を緩めるとその小さなキュウべぇの頬を指先で撫でる。
「きゅいきゅい~」
いろはに撫でられてくすぐったいのか、喜んでいるような鳴き声を挙げる小さなキュウべぇに自然と笑みを零す。もう恐怖心はなくなった。ならあとはやるべきことをやるだけだ。
いろはは再び目線を自分の眼下に広がる景色に戻すと、一歩前へ踏み出し、電波塔からその身を投げ出した。
(ッ…‥‥来たッ!!)
電波塔から身を投げ出したいろはを見たさやかは険しい表情をして身構え、もし何も起こらなかった時に備えていろはの救助に入る。そのために少しの異常も見逃さないためにも目線をいろはから一時も離さないでいると、
何かこちらからは確認することのできない異常でも起こったのだろうかとさやかが勘ぐっていると、急にいろはの身体がどこか別の空間にでも入り込んだように消失した。
忽然と消えたいろはに少し動揺したのか辺りを見回すさやか。しかしどこを見てもいろはのような姿が見えることはなく、電波塔に残っているやちよたちに目線を送ってみるもその返答は首を横に振るだけだった。
ということはあの『アイ』の言う通り、いろははひとりぼっちの最果てへ入ることができたと考えるのが一番妥当な部分だろう。
「あとは待つだけか‥‥‥‥‥このまま何もないといいのだが…‥‥‥」
そうは言うさやかだったが、彼女の胸の中で妙な緊迫感のようなものがくすぶっていた。それはウワサの領域へ向かったいろはに対する警告か。本人であるさやか自身もその正体が掴めないでいた。
「どうやら無事に向こう側へは行ったみたいわね」
危機感ともとれる言いようのできない感覚に物思いにふけっていると上からやちよの声が聞こえてくる。
「‥‥‥‥‥そうだな。」
「私たちはこのまま神浜セントラルタワーに移動して貴方のお仲間たちと合流するけど、貴方自身はどうする?」
どうやらやちよはさやかが何か気になっていることがあることを察したらしい。そのことにさやかは申し訳なさそうに髪をかき乱しながら上にいるやちよに目線を合わせる。
「すまない。私はしばらくここに残って様子見をしていようと思う。先にセントラルタワーに向かってくれて構わない。」
「…‥‥そう。まぁ、私にはそれほどまでに貴方を止めておく義理もないから余計な口添えをするつもりはないわ。でも仮に何かあったのならなるべく早めに連絡を取るなりはしてくれるとこっちも行動しやすくなるわ。」
それだけさやかに伝えると、やちよたちはセントラルタワーに向かうつもりなのか、電波塔から降り、この場を後にした。残ったさやかは誰もいなくなった電波塔に降り立つとそのまま鉄柵に両肘を乗せ、神浜市の夜景を眺める。
「…‥‥‥一体なんだこの感覚は…‥‥‥近くにいるはずなのに、なぜこうも遠く距離が離れている奴がいるような感覚がする‥‥‥‥?」
一方、『アイ』の待つひとりぼっちの最果ての中に侵入したいろは。中の空間は電飾のような飾りが上空にちりばめられており、暗いという感覚を抱くことはない。さらに目を凝らしてみると、時折上の空間に電気信号のような光の球体が走っていく光景はさながらパソコンのマザーボード。自分が機械の中に入りこんでしまったかのようだった。
「ここが………………ひとりぼっちの最果て……………」
周囲を見回し、その光景に圧倒されるように目を丸くするいろはだが、自分がやるべきことを思い出し、すぐに移動を開始する。
案の定、もしくはいつも通りというべきか、直前まで一緒にいたはずの小さなキュウべぇの姿はかけらもないが構わず領域内を進んでいくいろは。そしてその目的の人物はこの空間がほとんど平坦なものだったからか、はたまたこのウワサの領域自体それほど広いものではなかったからか、すぐに見つけることができた。
「だ、誰ですか……………!?」
いろはを見るや否や、不安と恐怖が入り混じった表情を向ける翡翠の髪の少女。そしてその彼女の奥にはホログラムのような半透明の実体を持った女性の形をした存在がいた。
『はじめまして、環いろはさん。私がアイです。』
「貴方がアイさん‥‥‥‥なら、隣にいるその人が、二葉さなさんですか?」
「み、見えているんですか……………なら、あなたも魔法少女……………!?」
どうやらいろはの目の前にいる人物が二葉さなで間違いはないらしい。しかし彼女の反応ぶりを見るに、まるで彼女自身普段は他人から見えていないと言っているような口振りに思わずいろはは首を傾げるが、とりあえず魔法少女なのかという彼女の質問に頷いておく。
「じゃあ…‥‥あなたもマギウスの翼?」
「ま、マギウスの翼を知っているんですかッ!?」
さなから飛び出てきたマギウスの翼という単語に思わず声を大にしながら反応するいろは。妹であるういに関する手がかりがほぼほぼマギウスの翼に限られている以上、いろはにとってはその単語だけでも値千金だ。しかし、そのいろはからの突然の大声にさなは小さく悲鳴を挙げると委縮した様子でアイの影に隠れてしまう。
「あ…‥ご、ごめんね、驚かすつもりはなかったんだけど…‥‥‥」
そう謝るいろはだが、さなは警戒しているのかアイの後ろから様子をうかがうだけで出てこようとしない。その様子にいろはは困ったような笑みを浮かべる。
「と、とりあえずそのままでいいから聞いてほしいんだけど、マギウスの翼のことをどこで知ったんですか?」
「し、知ってるも何も‥‥‥結構頻繁にここを出入りしているよ?流石に何をしているかまではわからないけど…‥‥」
「そうなんだ‥‥‥」
「あの…‥‥ところであなたはどうしてここに?なんだかここに囚われに来たという感じではなさそうですし‥‥‥‥」
『彼女は私が呼びました。ようこそ環いろはさん。私がアイです。』
「え…‥‥‥?」
アイの言葉に思わず呆けた表情を見せるさな。その彼女の様子をアイは一瞥することなくいろはに向かって進んでいってしまい、それを目の当たりにしたさなはショックで表情を困惑にし、さらにその色を強める。
「ア、アイちゃん‥‥‥それってどういう────」
『さな、そろそろこの関係を終わらせる時が来ました。』
突然の離別を告げるアイにさなは理解が及ばないのか、数瞬呆けたように茫然とアイの姿を見つめ、その両目に涙を浮かべ、唇をかみしめた悲痛そのものというべきな表情を見せる。
「どう、して………………!?私のこと、嫌いになっちゃったの…………!?」
『そんなことはありません。むしろ大好きです。あなたがここにやってきてからの日々に退屈だった時間などなかったですよ。』
「なら尚更どうして…………!?私のことを好きでいてくれるのなら、ここにいさせてよ……………!!」
悲鳴とも呼べるさなの声が響く。痛々しいほどに響くその声にアイは柔和な笑みを浮かべながら諭すように首を横に振る。
『好きだからですよ、さな。あなたからは本当にいろんなことをたくさん私に教えてくれました。特に、優しさという感情を。そしてその教わった優しさが私に訴えかけるのです。さなはここにいるべき人間ではない、と。』
「でも…‥‥‥‥!!」
ウワサの領域から出ていきたくないと食い下がるさなに、そんな彼女の身を案じてかどうにかしてこの領域からの脱出を願い出るアイ。相反する二人の口論をいろはは口を噤み、静かにその行く先を見守る。
『ですがさな、あなたはマギウスの翼がここで行っていることに対して苦悩を強いられていたはずです。私はさながつらそうな表情を浮かべることをよいことであるとは思えない。だからこそ、いろはさんのところへ行ってほしいのです。』
「ッ‥‥‥‥」
アイがこのウワサの領域内で行っていることについて言及すると、さなは図星をつかれたかのように視線を外し、気まずそうに表情を俯かせる。
「一緒に行こう、さなちゃん。」
そのタイミングでいろはが口を開き、さなに向けて手を差し伸ばす。その様子をさなは不安そうな目で見つめ返す。
「アイさんからあなたのことを色々聞きました。さなちゃんほどの孤独感を感じたことはないけど、私も最近この神浜市に引っ越してきたばかりで、クラスでもそんなに馴染めていなかった。でも最近魔法少女の知り合いが増えてから不思議なくらい自然に過ごせてるの。」
いろはの脳裏にこれまで会ってきた魔法少女の姿が浮かび上がる。やちよや鶴野、そしてフェリシアやさやかをはじめとする
「だから、さなちゃんもきっとうまくやっていくことができると思う。初対面なのに、こんなことを言われてもあんまり良い気分にはならないかもしれないけど…‥‥‥。」
そう言っていろはは気恥ずかしそうに頬を軽く指先で掻くが、さなの表情はまだ優れない様子でいろはのことをじっと見つめている。
「でもマギウスの翼のことで苦しんでいるのなら、こうして手を取り合って一緒に戦うこともできると思うの。だから、一緒に来てください。魔法少女として、仲間として、さなちゃんを私が必要とするから。」
「ッ‥‥‥‥でも、私がここから出ちゃうと、アイちゃんはどうなるの?」
いろはからの言葉に目を見開いて驚愕するさな。だがその表情もすぐに取り繕うと、話題を逸らすように自分がウワサの領域から出てしまった際のアイの動向を彼女自身に尋ねる。
『さなが出たと途端に私はウワサとして暴走するでしょう。私が人間をこの空間に閉じ込めようとするのは、ある種の本能です。今はその本能は鳴りを潜めているため、こうして会話も可能なほどに理性的でいることができます。ですが、その方がいいでしょう。私というウワサは消えた方がマギウスの翼にとって痛手になるはずですので。』
まるで恐怖などないように淡々と自分が消滅することのメリットを説明するアイに苦い顔を隠しきれないさな。そしていろはそうまでして自分の消滅を望むわけとそれがマギウスの翼にとっての痛手になる理由を尋ねようとした時────
「そんなことされたら、アリナ的にバッドなんですケド」
そういえば、アプリ版のマギレコで本編に関わるようなほどストーリーで重要なことがでてくるイベントとかあります?
いちいち全部確認するの時間的に厳しいので書くにあたってこのイベントのストーリーは見ておいた方がいいというのがあるのでしたら感想などで教えていただけるとありがたいのですが‥‥‥‥
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない