ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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どうしてこの世には就職とかいう単語が存在するんだろう(白目)


第64話 大体の確立で厄介なことがある

「で、どうすんだ?さやかからの連絡でこのセントラルタワーにウワサがいるって聞かされてやってきた訳なんだけどさ。」

 

いろはが単身でウワサの領域へと突入したのと同時刻、さやかからの頼みで杏子たち三人は中央区で一際高い神浜セントラルタワー────その屋上に来ていた。三人は屋上に入るところの扉の前で外の様子をうかがっていた。

 

「そうは言われても、結果は目の前に出ているわよ。」

 

近くにいたほむらが促すように外にむけて目線を向けると杏子の目線もつられるように外に向けられる。

 

「どうしましょうどうしましょう!!」

 

「どうしましょったらどうしましょう!!」

 

そこには以前フクロウ幸運水のウワサをめぐる戦闘にて出会ったマギウスの翼の白羽根、天音姉妹が互いの手をを繋ぎ、顔を見合わせ、さながら劇か何か演目のワンシーンのようにふるまっている様子が目に入る。

 

「ええ…‥‥何やってんのあいつら…‥‥」

 

一体自分は何を見せられているのだろうか?杏子の表情はまさにそれを表しているように空いた口がふさがらない様子だった。マミやほむらも互いに苦笑いを浮かべたり、ため息をついたりとさまざまな反応を見せていた。

 

「ったく、三文芝居を見に来たんじゃねぇんだぞアタシら。」

 

「まぁ、あの子たちがどことなく佇まいが芝居がかっているのは以前からだけど‥‥‥‥注目すべきはその双子の近くにある存在よね。」

 

うんざりしている杏子にそう笑いかけるマミだが、既に意識は建物の屋上に鎮座していた存在に向けられていた。その存在はまるでパラボラアンテナを太い鉄柱にくっつけたような、どことなくコミカルなオブジェクトだ。そしてそのオブジェクトにはなんらかの操作を行うためとみられるコンソールもあった。

 

「さやかから聞かされたウワサの主である『アイ』とやらはここが出口だと言っていたそうだけど‥‥‥あの鎮座しているのがそれなのかしら?」

 

「どうかしらね…‥‥何か操作盤のようなものは見えるけどあまりうかつに触れるのも少し憚られるわね‥‥‥‥美樹さんからはあくまで出口の安全確保しか頼まれていないし‥‥‥」

 

天音姉妹のそばにある面妖なオブジェクトにほむらは懐疑的な目線を送り、マミは悩まし気に頬に手を添えて首をかしげる。

 

「別に悩むことはねぇだろ。さっさとあの二人をとっちめて聞き出しちまえばいいんだよ。ここにいるってことはつまりはそういうことだろ。」

 

そんな中、杏子は獰猛な笑みを浮かべながらそう言い張ると得物の槍を構え、いち早く戦闘態勢をとった。そういうことというのはつまりあの姉妹はオブジェクトの操作方法を知っている。確かにその通りだし、一番手っ取り早いがなんとも野蛮的な解決方法に二人の表情は若干ながらに曇る。

 

「はぁ…‥‥‥まぁ、貴方の言う通りね。この前みたいにあのドッペルとやらを出されたらさやかを欠いている私たちでは厳しいかもしれないだろうし、気づいていないうちに片づけるのが一番クレバーね。巴さん、貴方のリボン、ピアノ線くらいの細さで出せるかしら?」

 

「一応出せはするけど、それでどうするの?流石にどこかの時代劇みたいな芸当は無理よ。」

 

「そこまでする必要はないわ。私と、貴方たち二人をリボンで繋いで。できれば足同士で括り付けるのがいいわね。」

 

「?…‥‥そんなことしてどうすんだよ。」

 

ほむらの言葉にいまいち合点がいかないのか、疑問符を浮かべる杏子。それはマミも同じだが、とりあえず言われた通りにギリギリ肉眼で見えるほどの細さのリボンを出すと、それを邪魔にならないように自身とほむらの足に括り付ける。

 

「私の時間停止魔法は、基本的には私以外の全てがその対象になるけど、例外的に私が触っているモノに関しては一時的にだけどその対象外になる。この先は話すのも面倒だから自分で確かめなさい。」

 

杏子の質問にぶっきらぼうにそう答えるとほむらは左手の盾を回転させ、砂時計をひっくり返す。たちまち周りの風景が灰色と化し、視界に移っていた天音姉妹が石になったかのように動きを止め、衣服をはためかせていた風すらも止める無風の空間が形成されていくなか、魔法の発動者であるほむら自身とマミと杏子は色を失わないでいた。試しに杏子が準備体操がてら身体を動かしてみるが特に抵抗感のようなものもなかった。

 

「一応、お前と手とか繋いでおけば時間停止に巻き込まれることはないってのは聞いていたけどさ、意外と判定はガバガバなんだな。」

 

呆気にとられた様子でほえーとつぶやく杏子をよそにほむらはさっさと歩きだし、固まった状態の天音姉妹の元へ向かう。マミもそのあとに続き、杏子は慌てて追いかける。

 

「そういえば暁美さん、この状態で貴方とつながっていない人に触るとどうなるのかしら?やっぱり動けるようになるのかしら?」

 

「‥‥‥‥あまり気にしたことはないけど、おそらく貴方の言う通りになると思うわ。」

 

「そうなのね。まぁ‥‥‥‥‥」

 

ほむらからの返答にマミは納得した表情と同時にフィンガースナップで指を鳴らす。パチンッと軽快な音が響くと天音姉妹の足元から無数のリボンが出現し、二人の身体を一瞬でがんじがらめに拘束する。

 

「これなら別に問題はないでしょう?」

 

そう腕を組んで得意げにするマミにほむらは流石だというように軽い笑みを浮かべ、杏子は気づいたら知らない間に敵対している自分たちに攻め込まれ、なおかつ一瞬で身動きが取れなくされているという地獄みたいな状況にされている姉妹に同情するように憐れみの目を向ける。

 

「同情するぜ、かわいそうになぁ‥‥‥‥」

 

「…‥‥貴方、本当にそう思ってる?なんだか言葉遣いが不穏よ?」

 

「時間停止からの拘束とかいう格闘ゲームとかでいう回避不能のハメ殺ししてるアンタに言われたくない。」

 

「は、ハメ殺し‥‥‥‥!?」

 

杏子の言葉に余ほどショックを受けたのか、あからさまに破顔しているマミを他所に、ほむらは文字通りの時間の浪費を嫌がったのかさっさと時間停止を解除する。すぐさま視界の色が元の色彩に戻り、姉妹は急に体が動かせなくなったことに理解が及んでいないのか呆けた表情を見せる。

 

「よぉ、何やら楽しそうなことやってんな。」

 

状況の理解が追い付いていない二人にとりあえず声をかける杏子。楽しそうとは言ったものの彼女自身にそんなつもりは一切ない。しかし、姉妹にとっては直前まで自分たち二人しかいなかったはずのこの神浜セントラルタワーの屋上に他の人間の声などあってはならない。ましてや切り札であるドッペルごと自分たち二人を蹴散らした魔法少女の声など。

 

「ぴ、ぴぃぃぃぃっ!?」

 

「ど、どうして貴方たちがここにいるのぉ!?と、というかいつの間にか縛られてるッ!?」

 

「そりゃあここに用があるからに決まってんだろうが。」

 

小鳥のような悲鳴と困惑と驚きが入り混じった声を挙げながらじたばたと暴れてもがく姉妹に杏子は槍を肩に乗せながら淡々とした様子でそう答える。

 

「こ、ここには何もないでござりまするっ!!ウワサとかおりませんし、増してやその結界の中で魔女を育てているなんて、そんなことはかけらもないのでありまするっ!!」

 

「そ、そうだよっ!?ウチら、こんなところで何かしようってわけじゃないし、特に誰かを待っているわけじゃないもん!!ねぇ、そうだよね月夜ちゃん!?」

 

「ね、ねぇー?」

 

何か問い詰めようとしているわけでもないのにまくしたてるように言葉を並べたてながら最終的に上ずったままの声で勝手に口裏を合わせる姉妹。そのあからさまな様子にある種の戦慄を覚えた三人は険しい表情で姉妹を見つめる。

雑にもほどがある、言い訳とするにもおこがましいと小一時間近く説教タレこみたいところをぐっと抑えながら頭痛の種ができたように頭を抱える。

とりあえず、この姉妹が直前にまくしたててきたことは全部嘘だろう。なんらなことごとくが反対のことをある意味で白状してしまっているともいえる。

 

(お、おいおい……‥流石にこいつは‥‥‥‥)

 

(全部嘘でしょうね。ここまで相手にそう思わせるのもある意味では才能ね。)

 

(誤魔化すつもりはあったのだろうけど、どう見ても白状しているようにしか聞こえないものね……………)

 

一応念話上で確認するが、三人とも天音姉妹が嘘をついているのはわかっているようだ。とはいえその嘘のつき方があまりにもおざなりだったからか、そのことを詰問することすらかわいそうと憐れんでしまう。

 

「……………ま、それはともかく。人の顔を見るなりまーるで鬼か悪魔でも出たかのように悲鳴を挙げるなんて、なかなかひでぇことしてくれんじゃん。」

 

 

そう言って悪どい笑みを浮かべながらゆっくりと姉妹に近づく杏子。縛られて見動きをとることができない姉妹は互いに体を寄せ合って小動物のようにプルプルと震えている。どうやらこの際姉妹から色々とマギウスの翼に関することを聞き出すつもりのようだ。

 

「ちょっと佐倉さん?ダメじゃないそんな怖がらせるような顔をしちゃ。」

 

「あん?別にいいじゃんか。どのみちマギウスの翼に関しちゃあ聞き出さなきゃいけないこといっぱいあんだろ?」

 

じわりじわりと距離を詰め始める杏子の肩に手をかけ、マミが制する声をかける。

止められた杏子を口を尖らせ不服そうにそう言うが、マミはそれでもよと語尾を強めて首を横に振る。

 

「確かにそうだけど、私達はあくまで彼女らがやろうとしていることを見定めること。今は魔法少女を始め、他の関係のない人々に害をなしているからこうして敵対するようなことしてるけど、決して敵を作るためじゃないのよ?」

 

「ケッ……………どこまでも甘いこった…………んお?」

 

「?……………佐倉さん、何か見つけた?」

 

「あれは………………」

 

自虐するような笑みを見せながら視線を逸らす杏子だが、不意にその瞳が何か見つけたように見開かれる。

それに釣られるようにマミとほむらは彼女が向いている方向へ視線を向ける。

 

「とぉぉぉうッ!!!最強魔法少女、由依鶴乃、ただいま参上ッ!!」

 

「おおっ!!なんだそれかっこいいな!!オレもやるッ!!!さんじょうッ!!」

 

そこに電波塔の方にいた鶴乃達が到着し、姿を見せるや否や日曜の朝にやっていそうな特撮ヒーローの決めポーズをする鶴乃。

それに目を輝かせながら似たようなポーズをとるフェリシア。

 

「ってアレ?もしかしなくてももう終わっている感じ?」

 

「ハァ……………どうやら危なげなく終わったみたいね。」

 

もう既に事が終わっていることに気づいた鶴乃は残念そうに肩を竦ませ、その様子にため息を吐きながらやちよはマミたちに声をかけた。

 

「あ…‥‥‥七海さん、お久しぶりです。」

 

やちよたちに気づいたマミはひとまず振り向き、挨拶し、それに続くように二人も視線をいったんやちよたちに向けた。

 

「おお!!きょーこたちじゃねぇか!!また会えてうれしいぞ!!」

 

「おお、お前か。さやかからアイツらのとこで世話になるって聞いちゃあいたが、ちゃんとやれてんのか?」

 

再会を喜んでいるのかぴょんこぴょんこと駆け寄ってくるフェリシアに杏子が彼女の頭を被っている帽子がずれてしまうくらい力強く撫でる。髪もかき乱されてぐちゃぐちゃになってはいるが、不思議と撫でられているフェリシアに不快感のようなものは見られなかった。

 

「そこで縛られている子たちは?大方マギウスの翼の魔法少女なんでしょうけど。」

 

「彼女たちはマギウスの翼の構成員、通称黒羽根を総括する白羽根の天音月夜と天音月咲よ。さやかの方からその組織については色々聞かされてはいるんでしょ?」

 

「…‥‥ええ、そうね。」

 

縛れている天音姉妹に話題が移り、ほむらからその説明を聞かされているとわずかに表情を曇らせながらも答えた。おそらくマギウスの翼の一員になっている梓みふゆのことが気がかりになっているのだろうが、何も知らないほむらはわずかに表情をくもらせたやちよに首をかしげるだけだった。

 

「‥‥‥‥‥ところで美樹さんはどうしたの?いっしょに来てはいないみたいだけど。」

 

「理由はわからないけど、何か気になることがあるっていって電波塔の方に残ったわよ?」

 

ふとさやかがやちよたちと一緒に来ていないことに気づいたマミがそう尋ねると電波塔に残ったと返すやちよ。それを聞いたマミたち見滝原の魔法少女はお互いの顔を見合わせると、念話で通さずとも互いに思ったことが同じであることを確認したのかハァ…‥とため息を吐いた。

おずおずとした足取りで屋上の端っこまで来たマミたちはじっと視線をある方向に向けたまま────槍、マスケット銃、拳銃の各々の得物を携える。その方角はちょうど電波塔の方向だ。

 

「え、なになに?三人ともそろってどうしちゃったの?」

 

「あー…‥‥‥さっきさ、さやかの野郎が電波塔に残っているって言っていただろ?」

 

状況についていけず狼狽する鶴乃に杏子が面倒くさそうに髪を軽くかき乱しながらさやかが電波塔に残ったことに言及する。しかし、それだけではよくわかっていない鶴乃が首をかしげていると見かねた杏子がちょいちょいと手を振って近くまで来るように合図する。

 

「あれ、見えるか?」

 

やちよたちが近くまで来たところで今度は夜空に向けて指をさす杏子。一見すると何も見えない真っ暗な空を指で指しているとしか思えないが、よく目を凝らしてみると暗い空にうっすらとだが翠に輝く星のような煌めきがあることに気づく。

 

「あの光はもしかして美樹さんの?」

 

「ええ。私たちもついさっき見つけたのだけど…‥彼女、何か気になることがあるからそこに残ったのよね?」

 

わずかな間とはいえすぐ近くでさやかが空を飛ぶ様子を見ていたやちよがあの翠に輝く星がさやかのモノであることに気づくと、それをまるで答え合わせをするかのようにほむらが正解と答える。

 

「あいつが何か気になるって言ったんなら大体の確率でなんか厄介なことがある。そんでもってアイツが動きだしたんなら、大方その気になることになんか変化が起きたってことだ。」

 

「‥‥‥‥あんまり細かいことは得意じゃないけど、戦う準備はした方がいいってこと?」

 

「そうかもしれないわね…‥‥経験則…‥‥‥領域へ向かった環さんの方に何かあった、と考えるのが筋かしら。」

 

杏子の言葉にそう意気込む鶴乃を見ながらマミは夜空に輝く翠色の星を見ながらそう呟くのだった。

 




前書きで察してもらえればですけど、作者はただいま就活中です。
ただでさえまばらな投稿頻度がさらにひどいことになってますけど、よろしくです。
また感想とか気軽に送っていただいて結構です。現実逃避したくなる作者の励みになりますので…‥‥(笑)

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

  • ガンダムだ
  • ガンダムではない

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