ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
「ごめんね、さやか。お友達とお泊りの予定があったんでしょ?あの人ったらさやかがどうにも心配だったらしくて……悪く思わないであげてね。」
「いや、気にしなくていい。そもそも泊まりの約束自体突然のことだったし、最近帰りが遅くなりがちになっているのは自覚しているからな。」
神浜市から空を飛んで帰宅したさやか。そんな彼女を理多奈はまさかそんな遠いところから空を飛んで帰ってきたとは知らない様子で出迎え、予定を崩してしまったことを詫びる。
「さやかも高校生になったのなら多少はあの人も目をつむって自由にさせてくれると思うんだけど……やっぱりあの人もホントは寂しいんでしょうね。」
「ハハッ……そう思っておく。」
理多奈の言葉で苦笑いを浮かべながら階段を上って自室に向かうさやか。
「……父さん?」
二階に上がって自室に向かおうとしたところで扉の近くで腕を組んで壁に寄りかかっている慎一郎の姿が見えてくる。
「おう……悪かったな。」
「気にしていない。というより私的にはそんなところで居座っていることの方が気になるのだが。顔もなんだか神妙なソレだ。何か用か?」
「……出てたか?」
「ああ」
さやかが不思議そうにそう答えると、慎一郎は困ったような表情を見せながら後ろ髪を触る。
「……いやまぁ……お前もおしゃれとかに気ぃつかうようになったんだなってよ。」
「おしゃれ……?」
慎一郎の言葉に首をかしげているとおもむろにさやかの右手を指さしてくる。その様子はまるでお見通しだとでも言っているようだった。
「右手の中指、なんかマニキュアみたいなのついてんぞ。中指だけつけるってのも変な話な気がするけどな。」
そういわれてさやかは初めて自身の中指になにか変な紋章みたいのが刻まれていることに気づく。正直言ってさやかに心当たりはなかった。
(こういうのをつけた覚えはないのだが……とはいえ下手に否定するのもな……もしかしたら魔法少女になったことと関係があるかもしれないしな……)
とりあえずさやかは適当に話を合わせることにして、素直に自室で休むのだった。ちなみにマミに聞いてみたらやはり爪につけられた模様はキュウべぇと契約した魔法少女の証とのことだった。
ちなみについでにみかづき荘の様子も画像で見せてもらったのだが、人数が人数だったから軽い宴会状態になっていた。
(いいな、私もこういうことをやってみたい……今回は機会に恵まれなかったが……)
いかにも年頃の学生らしい出来事にさやかはまた今度と思いを馳せるのだった。
「おう、またどっか行くのか?」
「ああ」
次の日、準備を整えたさやかが玄関先で靴ひもを結んでいるところに慎一郎が声をかけてくる。
「しっかし最近はよく出かけるようになったよな。大体おんなじメンツで遊んでいるのか?まどかちゃんとかこの前会ったマミちゃんとか。」
「いや、そういうわけではないが……」
どうやらここ最近出かけることが多くなっているのを慎一郎は友人と遊んでいると思っているようだ。変に嘘をつくのもどうかと思ったさやかは素直に首を振った。
「……ま、俺からお前さんに特に言うことはねぇんだけどよ。あんまり母さん泣かせるようなことはするなよ?」
「分かっている。」
(こればかりは二人を巻き込むわけにはいかないからな)
そう思いながら靴紐を結び終えたさやかはおもむろに立ち上がり、玄関の扉を開け放つ。
「さやか」
「なんだ?」
出ようとした直前再び慎一郎から声を掛けられ外へ出ようとした足を止めて振り返る。そこには先ほどまでとは打って変わって神妙な顔つきをしている彼の姿があった。
「なんかあったら、すぐに言えよ。何があっても俺たちはお前の味方でいるからよ。」
「…‥‥‥わかった。ありがとう。」
慎一郎の言葉に心底からありがたいと思うようにさやかは表情をほころばせて玄関の外へ出かけて行った。
(もしかすると、父さんは察しているのかもしれないな。本当は遊ぶために出かけているわけではないことを。)
「お、来た来た。」
神西中央駅まで電車で移動し、改札口をくぐったところで杏子から声がかけられる。顔を向けてみるとそこにはマミとほむらの姿もあった。どうやら自分のことを迎えに来てくれたらしい。
「昨日は一緒に行けなくてすまなかったな。送られてきた画像、結構楽しんでいたように見えた。」
「あら、もしかしてうらやましいとでも思ったのかしら?」
「…‥‥‥正直に言えばな。」
煽ってくるような言葉づかいをしてくるほむらにさやかは苦笑するように乾いた笑いを見せる。
「もう、暁美さんたらそんなこと言ってしまったら美樹さんがかわいそうでしょ?だからまた今度、別でお泊り会をしない?鹿目さんも誘って。」
「名案ね。」
「え、お前が反応すんの?つーか反応はっやっ」
咎めるように口をはさんだマミが今度はまどかを入れた自分たちで似たようなことをやってみようと提案すると、直後にほむらが手のひらを返したようにその代案に乗っかる。その顔の分厚さと反応の速さに提案したマミや、見ていた杏子まで困惑した表情を見せる。
「‥‥‥‥ともかく、マミ先輩の案には私も賛成だ。落ち着きが見え始めたら、という前提になりそうだが。」
「そうね…‥‥こればっかりはそうよね。マギウスの翼に対してどうしても後手に回りがちになってしまう以上そんな気が抜けるようなことはしずらいわよね。」
「ま、その状況をどうにかすんためにあのアイって奴への質問会みたいなのをやるんだろ?早く行こうぜ。」
難しい表情で頬に手を当てて思い悩むマミに杏子が急かすように移動を促す。アイはウワサでありながらマギウスに対して反抗する様子を見せた稀有な存在だ。こうしてうまいこと救出することができたことでなにかマギウスに関して知ることができるかもしれないということで彼女に対する質問会のようなものが行われることになったのだ。
そして────
「……そこにいたのか。」
『はい。やはり私は実体を持っているとはいえ、電脳体の身です。こういう場所にいるのがふさわしいと思われます。』
みかづき荘にやってきたさやかたちだったが、リビングに招かれ目に飛び込んできたのは置かれているテレビの液晶に移りこんでいるアイの様子だった。彼女のサガなのかどうなのかは定かではないが、アイ自身がここがいいと言っているのであれば必要以上に言及することもいらないだろう。
「まぁ‥‥‥支障はでないみたいだから、このまま進めましょうか。この前スーパーでセールがあったから飲み物類とか買い込んだのだけど…‥‥何かリクエストはある?」
テレビから一番離れたテーブルに座っているやちよから飲み物のリクエストを尋ねられ、一瞬驚きの反応を見せるが、彼女の厚意を無下にするのもどうかと思うため、お茶をはじめとする適当なものをお願いして各々好きな場所に腰を下ろす。
『では始めさせていただきます。とはいえある程度はどのような質問が来るのかは予測してはいますが‥‥‥何から聞きますか?』
「じゃあ‥‥‥私からいいですか?」
アイの音頭で始まった質問会。一番最初に手を挙げたのはいろはだった。
「マギウスの翼を率いているマギウスの御三方はこの前の魔法少女の他に誰のことを言っているんですか?」
『アリナ・グレイの他にマギウスと称されているのは、里見灯花と柊ねむという魔法少女です。』
「うそ……!?」
ういの友人であるはずの二人がマギウスの翼のトップであるという事実にいろはは声を大きくしながら驚愕を露わにする。同じようにいろはからその二人の名前を聞かされていたさやかも目を見開く。
「環さん……今の二人のこと、知っているの?」
「え、えっと……その……」
あからさまに知っているという反応をしたいろはにやちよから聞かれるが、まだ困惑したままなのか、いろははしどろもどろになるだけで思考の整理がつけられていないようだ。
「……その二人は、彼女が探している妹、環 ういと病院で同室だった人物だ。何か彼女に関して知っていることがあるかもしれないと思ってはいたが……」
「美樹さんがそれをどうして知っているってことはともかく、その二人。マギウスなのよね?ってことはつまり────」
「確実に魔法少女でしょうね。しかも今回の騒動の主犯格である可能性も否定できないわ。」
混乱して答えられないいろはに代わってさやかがその二人について答える。しかしマギウスの翼────それもその首魁と言えるマギウスに名を連ねているということは彼女たちは魔法少女であることに他ならない。
「いろは。一応聞いておきたいのだが、里見灯花と柊ねむが魔法少女だと知っていたか?」
さやかのその問いかけにフルフルと首を横に振るいろは。どうやら彼女すらもその二人が魔法少女として契約していたことは知らなかったらしい。
「ん~……ちったぁ腑に落ちねぇとこもあるけどさ、とりあえず話進めようぜ?そいつらの能力とかは知っていることがあるのか?」
『里見灯花についてはわかりかねますが…‥柊ねむ、彼女についてなら話すことはできます。直接的な表現でいいますと、彼女こそがすべてのウワサの制作者です。」
話を進めるために杏子が二人の保有している能力を尋ねるが、その返答は余計にいろはを混乱の渦に引き込むことになった。妹の手がかりを知っているかもしれないと思っていたら、まさかの騒動の主犯格、もしくは首謀者である可能性すら出てきたのだ。
「となるとその柊ねむを抑えることができれば実質的に活動不能に陥らせる事が可能になるということか……」
「ねぇ貴方、マギウスの翼の本拠地のような場所は知らないの?」
『申し訳ありませんがそこまでの記録はありません。私が私として自意識を確立したときにはすでにあの電波塔の結界の中でした。』
やちよがアイにマギウスの翼の本拠地の場所を聞き出そうとするが残念なことに彼女にそこまでの活動記録のようなものは残されていなかった。
「そう簡単にはいかないかぁー……」
「あいつらの居場所、わかればすぐにぶっ潰しに行けるってのに……!!」
「どのみちわかったところで簡単にはいかないと思うわよ?」
「それには同意見ね。」
本拠地の情報を知ることができなかったことに鶴乃とフェリシアが残念そうにしたり、犬歯をむき出しにしてうなり声をあげたりとそれぞれ反応を見せるが、対照的にマミとほむらは知ったところで楽にはならないと厳しめの意見を出す。
どうしてと言うように鶴乃とフェリシアが顔でそれを示すと、マミとほむらが言うまでもないというように同じ方向に視線を向ける。その先にはさやかがいた。
「私も共犯と言えば共犯だけど、前回隠し玉とも呼べるドッペルをこてんぱんにしているわ。それも翼にとってトップともいえるマギウスのね。」
「おそらく今回のことでマギウスの翼は警戒度をかなりあげるでしょうね。本拠地も言わずもがな、ウワサの本体に対する防衛だって強化される恐れもある。相手は実力はまちまちな魔法少女が多かったけど、数だけは圧倒的に向こうが上よ。最悪人海戦術で押し切られることもあるわ。」
「じゃあ……オレたちは仲間を増やさなきゃいけないってことなのか?」
「それもそんなに簡単な話じゃないのよね……」
フェリシアの言葉にマミは難しい表情を浮かべて肩を竦める。基本的に他の魔法少女を仲間にしようとするとどうしてもある程度は情報を伏せた状態でないと引き込むことは厳しいだろう。さやかももしかしたら常盤ななかのところなら幾分腹を割った状態で話ができるだろうが、それでも可能な限り嘘をついたまま抱え込みたくはないのが正直な自分の心情だった。
「……考えてもしょうがないことね。ところでマギウスって羽根の連中とは目的が違うのかしら?あのアリナ・グレイは羽根と一緒くたにされることをよく思っていなかったそうだけど。」
『いえ、マギウスと羽根にも根底にある部分に相違はありません。魔法少女の救済…‥彼女らの計画がなんの障害もなく、つつがなく進められればそれが成し遂げられるのは事実でしょう。』
「なら、アイちゃんはどうしてそれに反抗するようなことを言ったの?もし、さやかさんが無理矢理結界を破壊してまで割り込んでこなかったらあの人に消されていたかもしれないのに……」
『彼女らの計画には、所謂人間の悪意による影響がまるで加味されていないのです。』
アイの話したことにいまいち理解が追い付かないのかそろって首をかしげる一同。突然人間の悪意がどうとか言われてもその言葉に理解を間に合わせるのは極めて難しいだろう。さやかも例外ではなく怪訝な顔を浮かべて彼女の次の言葉を待っていた。
『まず大前提として、彼女らマギウス────少なくとも里見灯花と柊ねむの二人は魔法少女の存在を明るみに出すつもりでいます。』
それを聞かされたさやかたちの反応は大きく二つに分断された。一つは鶴乃やフェリシアにいろは達、そしてマミや杏子といったその場にいる人間の大部分が見せた不思議そうな表情、まるでそれになんの問題があるのかといった具合だ。そしてもう一つはその反対、その言葉の意味を機敏に察知したのか危機感を抱き、険しい表情でいるやちよ、ほむら、そしてさやかの三人だった。
「魔法少女の存在を明るみに、ですか……?」
「それに一体なんの意味が────って、そういうわけではなさそうね。」
いろはとマミが首をかしげるが、さやかの表情を見るとすぐに浮かべていた不思議そうな表情を引き締め神妙な面持ちで見つめ始める。
「その顔を引っ込めるのならほむらか彼女を見てからのほうがいいと思うが……」
マミの言葉に思わず苦笑いを見せるさやかだが、そんな彼女をマミは笑顔でいいえ、と否定する。
「貴方は要領がよくて賢い人よ。それこそ私よりずっと。いつかの廃墟でもそうだったんでしょ?」
「なんだ気づいていたのか……人が悪いな、先輩も。」
「あの時は先輩としての建前もあったから聞かなかったけど、何より貴方は他人をやたらむやみに不安がらせるようなことは言わないでしょ?」
「まぁ‥‥確証もないことを言って下手に混乱を生みたくないという理由だけなのだが……いや、これ以上言い訳を並べても話が進まなくなるだけか。」
困った笑みを浮かべるさやかだったが、諦めたのかわずかにため息をついて肩を上下させると佇まいを直して脱線した話を戻そうとする。しかし何やら空気がおかしなことになっていることに気づいたのか、不思議そうに周りを見渡すさやか。
「その、なんていうか巴さんはさやかさんのことを本当に信頼しているんだなって思って……」
「あら~、環さんも別に私に対してかしこまらなくってもいいのよ?一応同い年ではあるんだし、下の名前で呼んでもらってぜんぜん構わないわよ?」
いつのまにか動揺から復帰したのかいろはがほえーっと感心したことに照れくさいのかわずかに顔を赤くしながらそう返すマミ。
「なんだか妙な雰囲気になっている……!?」
「とりあえず、そうなったのは貴方のせいよ。」
驚愕といった顔をしているさやかにぴしゃりと言いつけるようにさやかのせいだというほむらにショックを受けるさやか。
「まったく、話が進まないって自分で言っておきながら何をしてるのだか……それで?貴方も一応はアイが言わんとしていることを察せてはいるんでしょ。」
「……ああ。漠然とだが、魔法少女の存在を明るみに出すことに対する忌避感のようなものは感じる。」
「んー……アタシはそれをされっと魔法少女の数が増えてグリーフシードの数が足んなくなってめんどくせぇなって感じるくらいで……いや、十分にやべぇな。やっぱだめだわ。」
確認してくるほむらに頷いていると杏子が手に顎を乗せて考え込むようにしていたが、少しすると魔法少女が増大すると自身の稼ぎも減少することに気づいたのかすぐに手のひらを返した。
「そっか……魔法少女の存在を公にするってことはこの先魔法少女の人数も増えちゃうってことだし、魔女の数にも限りがないわけじゃないから……もしかしなくても待っているのは死活問題ッ!?」
「あと考えられるのは魔法少女同士でグリーフシードをめぐっての争奪戦。最悪戦争状態と似たような環境に変貌する可能性もある。」
「戦争というより、一時的な共闘はあれ実質的に本当の意味での味方がいなくなって、全員が敵になるバトルロワイアルのような形になるでしょうね。まったく、そんな馬鹿なことをしようとする奴の顔を見てみたいわ。絶対に周りのことをろくに考えようとしない子供みたいな奴なんでしょうけど。」
次々と魔法少女の存在を明るみに出すことに対する危険が羅列されていく。
特にほむらの言葉は辛辣そのものであり、いかに彼女が怒っているのかはわかりやすいだろう。
「あ、あはは……」
そんな中、いろはは苦笑いを浮かべるだけで何も言葉を発することができなかった。
(言えない……私の記憶が間違っていなければあの二人はまだ小学生なんて……!!)
内心顔を真っ青にしていろはは祈る。願うことならこのまま声がかけられることなく時間が過ぎていきますようにと。
「あ、そういえばいろは、あの二人について何か知らないか?君の妹と同室だったのならもしかしたら見舞いとかで顔を合わせていたりはしていないのか?」
さやかさーーーーーーーんッ!?!?
最近ギャグくさい感じで話を占めるのがクセになってきたな……………
やっぱりまどマギ的にギャグくさい終わりはNGかね?
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない