ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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もう一年の1/4が過ぎそうってマ?


第73話 面倒なことになった

「‥‥‥‥‥‥」

 

ブロッサムでのやりとりを終えてから数日。

ソウルジェムのことを共有したあと、このみは少し考えたいという、彼女の意向に従い、その場は解散することになった。

その後にこのみたちからの連絡はない。

相野の方は元々知っていたから問題はないにしろ、このみの反応の様子から一抹の不安を覚えるのも仕方がなかった。

それでもさやかは彼女らの判断に任せるしかなかった。

 

「…‥‥‥」

 

そのことも気がかりではあるのだが、さやかは今現在直面していることに頭を悩ませていた。

といってもそれも普通の人間からして見ればなんら問題のない、ほほえましいものなのだが。

 

「~~♪~~~♪」

 

そのさやかの前では鼻歌を交えながらまどかが街中を進んでいる。

ここのところ神浜のことにかかり切りになっていたさやかと久々の外出なのか、まさに気分上々といった様子だ。

周りにはほむらを始め、マミ。そしてマミからの誘いで杏子もその場にいる、はたからみれば女子中学生のちょっとしたお出かけであることも拍車をかけているのだろう。

 

ただ─────そのお出かけに向かった先が神浜市であることを除けば

 

 

(おいこら、コイツ(まどか)を神浜に連れ出しやがったのは一体全体どこのどいつだ?)

 

(…‥‥‥‥)

 

(まどかの右隣でだんまりを決め込んでいる黒髪ロングの奴だ)

 

心底から面倒くさそうにしている表情をしながらそう念話で犯人捜しをする杏子に、腕を組んで憮然な表情をしているさやかが速攻でチクる。

それを聞かされたほむらは一瞬身体をびくつかせるが、しらを切るつもりなのか口と念話を閉口する。

明らかに黙秘権を行使している。

 

神浜市には見滝原市と比べて何十倍も魔法少女の数が多い。

それはつまり、いろはたちのようにいい魔法少女もいれば、逆に悪い魔法少女も決して少なくはない。

そして神浜市中の魔法少女を取り巻いているマギウスの翼の存在、さらには彼女らに対して明確に楯突いている現状。

その危険性はストップ高だろう。

 

(ま、まぁまぁ・・・・・・暁美さんも悪気があるわけじゃ────)

 

(どうせまどかにお願いされて断りきれなかったというオチだろう。こいつはまどかのことになるとだだ甘になる上に視野が狭くなるからな。)

 

「・・・・・・・・・」

 

「目ぇ逸らしやがったぞコイツ。」

 

念話を敢えてほむらに聞こえるようにしながらやり取りしている。

擁護しようとしたマミの言葉をぴしゃりと断ち切りながらさやかに白い目で指摘されると、ほむらは冷や汗をわずかに垂らしながら逃げるように顔を横に逸らす。

 

「あ、あはは・・・・・・・ごめんね杏子ちゃん。神浜に一回来てみたいっていうのは私のわがままだから、ほむらちゃんをそんなに責めないでほしい、かな?」

 

そんな彼女のことが不憫に思えたのか、まどかが苦笑いを浮かべて振り返る。

 

「ったくよぉ・・・・・・・・神浜のこと聞かされていないわけじゃあるめぇし・・・・・・」

 

「まぁ、ほむらに対してああは言ったがせっかくの遊びなんだ。そうカリカリするのもそこまでにしておいたらどうだ?」

 

そう諭す声をさやかからかけられた杏子だが、その顔をいまいち納得しかねているような表情だ。

彼女にとっては突然面倒ごとに巻き込まれたようなものだろうから仕方のないことだろう。

 

「‥‥‥‥なんかうまいもん一つな。」

 

「それはまどかとほむらから強請(たか)ってくれ。最近はどうも財布の厚みが悩みの種なんだ。」

 

「えっ!?」

 

「ちょ、ちょっとッ!?」

 

突然の財布扱いに驚きの表情を見せる二人はさておき、さやかたちが向かったのは北養区の一角にある洋風レストラン。

以前杏子と一緒に足を運んだ、胡桃まなかの父がシェフを務めるウォールナッツだ。

ここを選んだ理由としては単純に出される料理が非常にうまかったことが一番だったが、時代の流れというやつで客足が遠のいてしまったがゆえにすぐに料理にありつけるだろうという若干の邪推もあった。

 

「ここかしら?美樹さんがいっていたウォールナッツっていう洋食屋は…‥‥」

 

「ああ、ここであっているのだが‥‥‥‥‥驚いたな。」

 

不思議そうに聞いてくるマミに目を見開いた様子で驚きの声を挙げるさやか。

それもそのはず、以前来たときには閑古鳥が鳴き、店の人間であるまなかでさえその状況を憂いていたはずのウォールナッツに行列ができ、にぎやかな声が響く人気店となっていたのだ。

 

「普通に人気店の様子を見せているのだけど…‥‥‥あなたたちが来たときはたまたま定休日だったんじゃないの?」

 

「じゃなきゃメシにありつけてねぇつぅの。まぁぶっちゃけるとそんとき店の店主出払っていたから確かにそう思うのもしゃーないけどよ…‥‥」

 

ほむらの言葉にそう返す杏子だが、ともかくこのまま行列に加わるかそれとも別の店を探すか考える必要がある。

とはいえさやかが知っている神浜市の店と言えば鶴乃の万々歳しかない。

あそこも別に構わないのだが、いかんせん謎にある「魔法少女割」とかのおかげで一食に食べる量ではないし、せっかくの遊びでの神浜市なのだからちゃんとうまいところで食べたいというのもある。

あれこれ考えていると店の中から見覚えのある赤髪の少女が出てきた。

そちらに目線を向けると出てきた少女は快活な印象を受ける声で行列の先頭にいる客たちを店の中に出迎える。

言うまでもなくまなかだ。そう思って彼女の仕事ぶりを見ていると、向こうもさやかたちに気づいたのかさやかたちを見つけると一瞬だけ喜んだ表情だけを浮かべてすぐに仕事に戻っていった。

 

「…‥‥並ぶか。知り合いに見つかってしまった以上それを無視するのはよくないからな。」

 

見つかってしまったのなら並ぶほかはない。それに一瞬だったとはいえ来てくれたことを喜んでくれたような顔を見せてくれて帰るわけにはいかなかった。

 

 

 

 

「また来てくれたんですね!」

 

「まぁ、あんなに喜ぶ表情を見せつけられてしまったからにはな…‥‥」

 

「えっ、そんな顔に出ていましたか‥‥‥‥?は、恥ずかしいです…‥‥‥」

 

「いや、私が変に目敏いだけだ。気にしなくていい。」

 

さやかたちがウォールナッツの行列に加わり始めてから早一時間ほど。

ようやく列の先頭になったところで再びまなかが顔を見せて話しかけてきた。

 

「そうですか・・・・・・ところで後ろの皆さんはさやかさんの御同輩ということでよろしいですか?」

 

「五人だ。よろしく頼む。」

 

「わかりました!!席をご用意できましたらまたお呼びしますので今しばらくお待ちください!!」

 

店員としての顔に戻ったまなかにそう伝えると彼女はパタパタと忙しない雰囲気で店の中へと戻っていった。

程なくして人数分の席が用意できたのか再び顔を見せたまなかから店内に招き入れられる。

店内ではカウンター、テーブル含め店のほとんどの席が埋まっており、外の行列が表していたようにウォールナッツの盛況ぶりを見せつけていた。

 

「ほわー‥‥‥‥すっごい。これぞ高級って感じがするレストランだね…‥‥こんなお店に来るの初めてだよ…‥‥」

 

「雰囲気が違いすぎて前来た店とホントにおんなじか?」

 

店内の賑わいに初めて来たまどかが自身が場違いだと感じてしまったのか肩を縮こませ、一度来た杏子も肩身が狭くなる感覚がしたのか驚いた表情で周りの様子を見渡していた。

まどかと一緒で初めての入店であるほむらとマミも言葉こそないが、杏子と同じように店の雰囲気にあてられたように落ち着かない様子で周囲を見回していた。

まなかの案内でテーブル席につくと人数分のお冷のグラスを回しながら備え付けられたメニュー表に目を落とす。

ちなみに席順はテーブル席の奥からまどか、ほむらそしてさやかの順で座り、その反対側にマミと杏子が座っている形だ。

 

「ん‥‥‥?」

 

メニューに書かれている内容に首を傾げたり、金額に一喜一憂しているとふとさやかは何かに気づいたような様子を見せる。

何気なく視線を上げるとちょうど対面に座っている杏子と視線がかち合う。

どうやら彼女も同じように気づいたようだ。

 

「‥‥‥‥なんか前来たときとメニュー変わってねぇか?」

 

「そのようだな。明らかにメニューに新しいのが書き加えられている。」

 

「‥‥‥‥お前ってこういう時どうするタイプだ?割と積極的に行く感じか?」

 

「あまり気にしたことはないが‥‥‥‥まぁ、時と場合による。」

 

「んだよ面白くねぇ答え方だな‥‥‥‥」

 

さやかの受け答えに杏子はつまらなそうに頬杖をついてお冷の水を一気に飲み干す。

その様子に苦笑いを浮かべて再びメニューに視線を落とすと、今度はちょいちょいと服の袖をつまんでいる誰かの手が写りこむ。

 

「ね、ねぇ、ほ、本当に私が佐倉さんの分支払わなきゃいけないのかしら?」

 

「?」

 

服の袖をくいくいと引っ張られる感覚に、さやかが振り向くとほむらがどこか不安そうな表情を見せていた。

 

(‥‥‥‥‥まさかかと思うが)

 

見慣れないほむらの雰囲気に一瞬思考が停止したさやかだが、再び再起動させると、そこからの結論に達するのは早かった。

一言で言えば、ほむらはまどかに支払わせるつもりはなく、全部自分で引き受けるつもりだったようだ。

しかし、やってきたウォールナッツの高級感に気圧されてしまったようだ。

 

(別にそこまで意地の悪いことをするつもりはなかったのだが‥‥‥‥)

 

さやか自身、適当にみんなで割り勘にして済ませるつもりであったため、そのことをほむらに伝えるとほっと安堵の息をもらした。

どれくらいかは察することはできないがほむらもそれなりに懐は寂しいようだ。

 

「……………でもまどかにも支払わせるのね。」

 

「そこには突っかかってくるのか。」

 

妙なところでブレないほむらに辟易したような表情を浮かべてしまう。

困り果てたようにしながらも今に始まったことではないため、逃げるようにメニューに視線を向ける。

そして話題はさやかと杏子が気づいたウォールナッツの新メニューとやらに移ったが、まなかに念話を通して聞いてみれば彼女が考案したものらしい。

さらにはこの行列もその新メニューが目的とのこと。

ならば頼んでみる他はないと満場一致でその新メニューを食べることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~あ、困ったことになったなぁ‥‥‥‥」

 

人通りもそれなりにある街道をうなだれた様子で歩く少女が一人。

青と白の制服に身を包み、金色に近い色合いの髪をサイドテールにして揺らしているその姿はどこかの学校のギャルかのようである。

一方で彼女の首にはレンズの大きい一眼レフカメラがぶら下がっていた。

 

「いやさ、色々探りにかかるってのは記者としての本業ではあるよ?だけど見滝原のをねぇ‥‥‥‥」

 

少女の名前は観鳥令(みとり りょう)

マギウスの翼の一員であり、翼の中では天音姉妹と同じ白羽根の地位にいる魔法少女である。

そんな彼女にトップの『マギウス』の御三家から見滝原の魔法少女たちについて調べてこいとの指示が降った。

 

「観鳥報とかそうだし黒羽根の子たちに向けたメルマガの方もやらないといけないし…………社畜か?もしかしなくても観鳥さん中3で早くも社畜の域に…………?」

 

がっくりと肩を落としながら重い足取りで歩き彷徨う。

しかし、そうしたところで特に意味がないことは彼女自身分かりきっていた。

 

「まぁうだうだ言ったところで何かスクープが転がり込んでくるわけでもないか。」

 

気持ちを切り変えるように自分のカメラに手を添える観鳥。

その大事なものに触るかのような手つきは彼女が情報を取り扱う者としての矜持を示しているようだった。

最近ではネットやスマホという便利なものも増えたが、結局は自分の足でどれだけ歩いたかが成果を生むのだ。

 

「ん…………あれ?ここってウォールナッツだよね?」

 

ふと目についた行列に意識が向く。

自分の記憶が正しければここは立地条件がそれほど良くなかったのか、今のような賑わいをみせていたことはなかったはずだ。

 

「なんかあったのかな………………ま、そんなにリッチではない観鳥さんがこんな高級な料理屋に入れるなんて────うぇっ?」

 

何気なく外から店内の様子を見るだけで済ませるつもりだった。

出されている料理の雰囲気やそれを食す客たちの表情を見るだけにとどめるつもりだった。

 

「え、マジ?」

 

ウォールナッツの店内に調査対象(美樹さやか)がいることに見鳥は目を見開いて驚きをあらわにすると咄嗟に隠れるように身を屈ませる。

それは当然だろう。

見滝原なんて神浜市からギリギリ日帰りができるかどうかの距離にあり、学生の身で赴くには時間的に厳しいものがある。

そういうのも相まって中々難しいと思っていたところに、これである。若干挙動がおかしくなるのも仕方がないだろう。

 

「これはまさかまさかの幸運…‥‥!!金髪に赤髪、そして黒髪の子も全員いるし、まさにおあつらえ向きのシチュエーション…‥‥!!」

 

転がってきた幸運に感謝しながらカメラを構える。

一番めんどくさいと思っていた仕事が思いのほか手早く終わりそうな気配に表情がほころぶ。

 

(ありゃ‥‥‥そういえば奥にピンク髪の子がいるな…‥‥同じ魔法少女?それともただの共通の友人かな?)

 

レンズ越しに写る事前情報にない人物にわずかに首をかしげる。

マギウスから聞いていた話には見滝原の魔法少女は4人のはずだ。

赤髪の槍使い(佐倉杏子)

金髪の銃使い(巴 マミ)

黒髪の盾持ち(暁美ほむら)

そして、最近羽根たちの間でひっきりなしに噂になっている「最強」の魔法少女、美樹さやか。

しかし、目の前のさやかたちは明らかに五人で行動をとっている。

 

(…‥‥悪く思わないでよね。これも解放のため、って奴だから。)

 

少し考えたあと、観鳥はカメラのシャッターを切った。

彼女はマギウスの御三家を信奉しているわけではないが、彼女らの目指す解放には期待をかけている。

故に多少のことを割り切ってこなすだけ。そう思いながら撮った写真を確認するために撮った写真が自動で転送されるように設定されている自身のスマホに目を落とす。

 

「えっ?」

 

こぼれた言葉は困惑に染まっていた。

写真を撮る人間として撮った写真の写り具合を確認するだけの何気ない行動。もしくは記者として活動する彼女の反射的な行動だったのだろう。

写真の中の被写体の姿を見て、それがちゃんと使えるかどうかを見る。だからこそ観鳥は気づいてしまった。

テーブル席の一番外側。店の通路側に座るさやかが冷ややかな目線を向けながら自分を見ていることを。

 

「ッ…‥‥‥!?」

 

そんなわけがない。ないはずだと観鳥の胸中で困惑と恐怖が渦巻く。

自分が覗いている窓からさやかたちが座る席は離れている。ゆえに姿を見られるはずがない。

渦巻く思いが彼女を逸らせ、再び窓から中の様子をうかがう。

 

「…‥‥‥‥」

 

だが、そんな彼女の願いは儚く崩れ去った。再び覗いた窓からは自分を見つめながら出されている料理を頬張っているさやかの姿があった。

覗いてしまったことにより、視線がさやかと彼女とかちあった観鳥は心臓をわしづかみにされるような寒気と共に飛び跳ねるようにその場から逃げた。

 

 

 

「めんどうなことになったな…‥‥‥」

 

「‥‥‥どうかした?さっきからお店の外を見つめているようだけど。」

 

逃げた観鳥に対し、ため息を吐くようにポツリとつぶやくさやか。

隣に座っているほむらが耳ざとくそれに気づき、聞くとさやかは名前も知らない誰かに明確な目的意識をもって自分たちが写真に撮られてしまったことを念話で伝える。

 

(‥‥‥‥それってもしかしてまどかも写ってるのかしら?)

 

(…‥おそらくは。行けるか?)

 

(ハァ…‥‥そいつの特徴は?)

 

(金髪のサイドテールに青と白の制服。それに学生が持つには中々高価に見えるカメラを首から提げていた。おそらくは羽根の魔法少女。)

 

(それだけわかっているなら十分よ。ちなみにここの代金はどうしてくれるの?流石に食い逃げで警察の世話になるのは避けたいのだけど。)

 

(私の方で立て替えておく。ちなみにあとでちゃんと返してほしい。)

 

(あら、そこは抜かりないのね。)

 

(そちらも抜かるなよ?最悪まどかに危険が及ぶ。あとわかっているとは思うが────)

 

(安心しなさい。殺しはしないわよ。それじゃ、先に行っているわ。)

 

さやかの念話を遮りながら盾を召喚したほむらは時間停止魔法を発動させ、その場から消えるように移動した。

 

「あれッ!?ほむらちゃん!?」

 

「…‥‥美樹さん、何かあったの?」

 

突然ほむらが消えたことにびっくりするまどかに何か事態が起こったことを察するマミ。杏子はまだ食べているが、視線と耳をこちらに傾けているのはわかった。

 

「まあ、少し不躾なパパラッチをしばきに、だな。とりあえず話し合いに行こう。一応逃げた方角程度は覚えているからな。」

 

 




久しぶりのまどかちゃん。
それはそれとして終盤の会話ヤクザのそれなんよな。

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

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