ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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ほむらちゃん弱くなっちゃった(心が)


第82話 もう盾は廻せない

 

 

「わかった。そちらの要望に応えよう。」

 

霧によって形成された疑似的な闘技場。

その真ん中で向かい合うさやかとこのは。

直前まで見せていたどこか不安そうな目付きはなくなり、鋭くなった目線がこのはを射抜く。

さやかの雰囲気が変わったことを感じ取ったこのはは無意識に自身の得物である槍を構えなおす。

 

「ねぇ、一つ聞いてもいいかしら?」

 

「ん?まぁ、別に構いはしないが‥‥‥‥‥お前も見滝原のことを聞きたいのか?」

 

「違うわよ。そんなこと、スマホで調べれば簡単に済むことじゃない。」

 

「そうか?案外人から聞くこともバカにならないと思うが…‥‥‥まぁいい。」

 

呆れ声でそういうこのはにさやかは物思いに耽るような表情でそう返してみるが、これ以上続けると話がこじれる予感がしたため、そこで打ち切る。

 

「あなたたちは一体なんの目的でこの神浜市にやってきたの?」

 

「目的?それはマギウスの翼を止めるためだが‥‥‥いや、それはこちらに来てからの目的か。」

 

答えかけた言葉を飲み込むように首を横に振るさやか。

マギウスの翼を止めるためと言おうとしたが、それはあくまで神浜市に来てからの目的だ。このはが聞いているのは、元々一体なんの目的で神浜市にやってきたのか、ということだろう。

さやかの言葉にこのはは特に反応を返したりはしなかったが、それは肯定であると見ていいだろう。

 

「‥‥‥‥つい2か月ほど前の話だ。私たちはある筋からの人物からの話で見滝原にとある魔女が現れることを知った。まだ魔法少女になってから…‥‥‥1週間も経っていたか?まぁいい。日の浅かった私だったが、流石に見過ごせなかったため、その魔女を迎え撃つために手伝おうとした。彼女からすれば余計な事しかしていなかったかもしれないがな。」

 

「…‥‥‥」

 

そう言って懐かしんでいるのか苦笑するような表情を見せるさやかだが、対するこのはは内心冷静ではなく、話も右から左に筒抜けになりそうだった。

何せあの最強と神浜市中でウワサされているあの美樹さやかが、ふたを開けてみれば自分よりはるかに歴の浅い、まだ契約してから数か月しか経っていない言ってしまえば新米であることに愕然としてしまう。

 

「で、その魔女というのがワルプルギスの夜というのだが‥‥‥‥‥知っているか?」

 

「‥‥‥‥‥えっ!?ワルプルギスの夜ッ!?まさか来るの、神浜に!?」

 

「いや、話だと見滝原に来るはずだったのに来なかったからもしかしたらというだけの話なんだが…‥‥‥ちゃんと聞いていてくれたか?」

 

このはの反応の様子からどこか上の空だったのは察したが、多分いつもの通り驚かれているのだろうと感じたさやかは話をちゃんと聞いていたかどうかに留める。

とりあえず知っているのであれば話は早い。

さやかは少し間を置いて落ち着きを取り戻したこのはと自分達の目的について話し始める。

 

「確かに…………この神浜市にはどういうわけか魔女が集まってきているわ。一度はこの都市を離れた私たち3人だけど、それが理由で戻ってきた。まさか、ワルプルギスの夜もこの現象の影響を受けているとでも言うの?」

 

「はっきり言えば確証があるとは言えない。だが、来るべき時に来なかった代わりに、起こったのがマギウスの翼を発端とする魔女の収集だ。実際に、あの集団には魔女の行動を制御する術がある。私たちは奴らの制御下に置かれた使い魔と戦闘を行っているからな。」

 

「‥‥‥‥‥どうしてワルプルギスの夜が現れるタイミングを知っているのかとか疑問に感じる点はあるけど‥‥‥なるほどね、確かにその魔法少女たちが意図的に集めているのなら説明はつくわ。理由は一向にわからないのだけど。」

 

「…‥‥‥それは────」

 

「魔法少女の救済。耳障りはいいのでしょうね。魔法少女を本当に元の人間に戻せるのだとしたら。」

 

「ッ…‥‥‥知っているのか。」

 

このはの言葉にさやかは耳を疑った。

どうやら静海このはという魔法少女はキュウべぇとの契約に隠された事実を知っている稀有な魔法少女だったようだ。

とはいえ、知っている魔法少女をそれなりに見てきたためか、さやかの表情も驚きこそすれどもそれを顔に出す頻度も減ってきた。

 

「ええ、そうね。初めて聞かされたときにはとても後悔したわ。あやめと葉月に契約なんてさせるんじゃなかったって思うくらいにはね。」

 

そう言いながら軽くため息を吐き、どこかに目線を向けるこのは。

別にそこにいることがわかっているからその方向を向いているのではないのだろうが、その目は霧の外にいるあやめと葉月に向けられているのだろう。

 

「でも、魔法少女にならなかったら、少なくとも今はないわ。私の世界はあの二人だけで止まっていたでしょうね。」

 

キュウべぇに物申したい気持ちは少なからずあるけど、と少しばかり大げさに肩を竦ませるこのは。

対するさやかは内心首をかしげる。

まだはっきりとわかっているわけではないが、マギウスの翼にいる魔法少女は多くが魔女と戦うことができなかった魔法少女だ。しかし、魔女を倒しグリーフシードによる浄化を行わなければいずれは自身の身すら魔女に成り果ててしまう。

認識の程度は大きく左右されるが、グリーフシードを手に入れられないからマギウスの翼を頼ったのだろう。

逆に、魔女と戦えるにも関わらず羽根となっている魔法少女はその隠された魔女化から逃れたいと思ったのがほとんどだろう。

故にさやかは内心首を傾げたのだ。

自分たちのように知っていながら反抗できる魔法少女など稀であるだろうと。

 

「知っているなら、どうしてななかたちの言葉に応じてくれたんだ?」

 

「…‥‥魔法少女は希望が大きければ大きいほど、その分返ってくる絶望も大きくなるものなのよ。」

 

 

彼女が言うにはキュウべぇとの契約はいわゆる悪魔の契約と等しいらしい。願った希望の規模が大きければ大きいほど、のちに自分に降りかかる絶望も大きくなってしまうと。

それはさながら、自分が過ぎた願いを叶えたことに対する「世界」からの報復のようなものだと。

呼びかけに応えてくれたのも、原理はわからないが、魔法少女の救済、おそらくソウルジェムに変貌させられた魂を元に戻すなどという誰がどう見ても奇跡と呼べるようなことをされて、後に返ってくる絶望を被るのはごめんだというわけらしい。

確かに前述したこのはの言葉に則れば、救済はいわば他人から良い悪いはともかくとして押し付けられた希望であり、それが原因となって絶望が押し寄せてくるともなればたまったものではないだろう。

 

(杏子もどこかで似たようなことを言っていたような気がするな。絶望と希望は差し引きゼロ、とかだったか?)

 

「‥‥‥‥‥まぁ、あまり関係はないか。しかし、仮にそうであれば、願いを叶えなかった私には絶望はやってこない、という話になってしまうな。」

 

「…‥‥‥常盤さんがあなたのことを規格外って呼んでいた理由が少しわかったような気がするわ。」

 

「‥‥‥‥弁明のようだが、契約したときに必要だったのが戦うための力なだけだからな?叶えたい願いがなかったというのもあるが。」

 

ついぽろっと出た言葉に驚きを通り越して真顔に近いこのはにそう言い訳を並べるさやか。

 

「‥‥‥‥‥長くなったわね。最後にもう一つ聞いてもいいかしら。」

 

「可能な限りは。」

 

「‥‥‥‥‥あなたは要するにワルプルギスの夜を追って神浜市にやってきた。だけど神浜と見滝原は来れる距離にあるとはいえ離れているわ。来ないのがわかっているならわざわざそこまで出向く必要もないはずよ。なら、どうしてそこまで…‥‥いいえ、一体何があなたをそこまで動かすの?」

 

このはの問いにさやかは一度静かに目を伏せる。

見ようによっては考えに耽っているように見えるが、わずかにフッと軽く鼻を鳴らすと朗らかな表情で霧の向こう側を見据える。

 

「‥‥‥放っておけない奴がいるんだ。少しでも目を離してしまうと、どこかへ忽然と姿を消してしまいそうでな。」

 

「ソイツは‥‥‥‥一言で言うなら旅の途中なんだ。前へ進むためのな。アイツの旅はワルプルギスの夜を倒すことでようやく終わることができる。まぁ、こうしてワルプルギスの夜が見滝原に来ることはなくなったのだから制止の声がかかれば止まるとは思うが、今度は制止した奴が多分ダメになる。ソイツもワルプルギスの夜が見滝原に来ることは知っているからな。自分が契約すれば被害を出さないでどうにかなったかもしれないと考えてしまうだろう。もっともそうさせたくないからこそ、ソイツは旅を続けてきたのだが。」

 

「‥‥‥‥‥あまり言いたくないのだけど、少し傲慢すぎじゃないかしら。魔法少女が一人増えたくらいでワルプルギスの夜を倒せるのなら、こうまで伝わってこないわよ。」

 

このはの指摘に苦笑いを浮かべるさやか。

キュウべぇ、もといインキュベーターは意図的に隠しはするが嘘を言うことはない。まどかから聞いたが、キュウべぇがまどかにワルプルギスの夜を一人で倒せるだけの才能があると言えば、それは紛れもなく真実なのだろう。

しかしほむらがそうさせない。させたくないのだろう。さやかはそう思っているだけだが、今のほむらを動かしているのはこれまでわたってきた時間軸のまどかとの約束だろう。

その約束さえあれば、ほむらはまたあの盾の中の砂時計をひっくり返し、時間を巻き戻すことができる。

だが、さやかは杏子のことを説得するために風見野市に向かう直前、彼女自身の口からきいてしまった。

 

『もう‥‥‥自信がないの。』

 

いつぞやかのバス停で背中越しに聞いた彼女のか細い声。

そこでさやかは自身がほむらに与えてしまったモノに気づいた。一度は切り捨てた者たちを突然出たイレギュラーによって再び助けだせるかもしれないという希望を。

この時間軸にいるさやかはほむらがこれまで見てきた『美樹さやか』とはまるで違う。

ほむらもそれはわかっているのだろう。この時間軸で失敗し時間遡行を行えば、もう二度とこの時間軸で見たようなさやかと出会うことはないと。

しかし一度でもあったということは人の心理に大きな影響を与える。

 

「私はアイツ(ほむら)に希望を与えてしまった。そしてアイツは、もうあの盾を廻すことができない。できなくさせてしまった。」

 

切り捨てた人を、手を伸ばしたかった人をもう一度助けられるかもしれないという浅慮な希望を。

一度でもあったという事実は人の心に常に可能性となってこびり続ける。そしてやがて、その可能性に殺されてしまうだろう。

 

「だったらとことんまでやるだけだ。希望を絶望にさせないためにも、私は未来を切り開く。」

 

「あなたも誰かのために戦う人なのね。」

 

「軽薄だと感じたか?」

 

「まさか。私だって一番大切なのは二人との日々よ。それを守るためならいくらでも頑張れる。」

 

踵を返し、さやかから離れていくこのは。

その様子をさやかは表情こそ朗らかなものだったが、目線だけは鋭くし、このはの一挙一動を見逃さまいとしていた。

 

「ハァッ!!」

 

突如としてこのははさやかと向き直る。

それと同時に展開した槍を振り向きざまに振り抜き、双頭の槍の穂先の軌跡が光の刃となってさやかに襲い掛かる。

 

「予期していなかったわけではないが!!」

 

さやかは持っていたGNソードⅡを手放すと腰に刀のように下げていたGNソードⅡロングの掴み手を右手で叩き、銃口を光刃に向け、そのまま左手でトリガーを引き、西部劇でよく見るガンマンのような早撃ちの要領で迫りくる刃を撃ち落とす。

 

「流石ね。この程度じゃ攻撃にもならなそう。」

 

「…‥‥‥鼻に付く言い方だが、全力で来い。こちらもできる限りをもって応えるだけ応えよう。」

 

「‥‥‥‥変な言い方をするのね。まるでまだまだ底が見えない。」

 

さやかの言い方に若干眉をひそめたこのはだが、それも戦っているうちにわかるはずだと結論を出し、力強く前へ足を踏み出した。

 




戦い前の会話だけで一話使っちゃった(白目)

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

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