ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
そのせいでウマ娘がまるでできん
「ハッ!!」
振り下ろされる槍を体をよじらせながら避けるさやか。
そのまま態勢を崩しながらもぐりこむようにこのはにさらに肉薄する。
右手のGNソードⅡで寸止めするつもりとはいえカウンター気味に切りかかる。しかし────
「ッ!?」
目の前に飛んできた槍の穂先に反射的にGNソードⅡで防御するさやか。
衝撃と武器同士がぶつかりあった金属音、そして一瞬の稲光と火花が散るとさやかの身体が大きく宙に吹っ飛ばされる。
その高さと言えばこのはの出す霧の結界から少し飛び出てしまう。
離れたところでテーブルを囲んでいるマミたちの姿があったが、それを一瞥すると態勢を整え、同時にこのはの姿を見やる。
視界に収めた彼女はさながらゴルフスイングをしたような恰好だった。
直前の攻撃が槍の振り下ろしだったのを鑑みるに、反対側の穂先でかちあげたと考えるのが妥当だろう。
(力業もいいところだな────)
さやかが内心呆れているような言葉を漏らしているとこのはは次の行動に移る。
さやかの健在を見た彼女はまだ着地していないにも関わらず、猛スピードで距離を詰める。
わかりやすいがさやかが着地したところを狙うのだろう。
(飛んでもいいが、まだそこまでではないな。)
さやかは接近してくるこのはに向かって両手のGNソードⅡを向けると、わずかのチャージのあとに三日月状のビームカッターを二つ、縦に放つ。
(直撃コースじゃない‥‥‥でも動かされるわね…‥‥‥なら!!)
初めて見る攻撃に一瞬目を見開くこのはだが、瞬時にそれが直撃ではないことを見抜いた。
だが、さやかのビームは着弾と同時に小さくない爆発を起こす。
その爆発に迂回させられ、さやかの隙を付けなくなることを危惧したこのははそのまま突っ込んだ。
勢いそのまま、迫りくる二つのビームカッターをこのは自身の槍で切り払う。
「────ッ!?」
このはの表情が驚きのあまり固まると同時に彼女の周囲が爆発の光で塗り潰される。
立ち上る炎と煙を見据えながら無事着地したさやかの表情は険しいものだった。
「おー、派手にかっ飛ばされたなぁー。」
「少しだけ霧の外に出てきたところしか見ていませんが、あまり良い状況、とは言い難そうですね。」
「そりゃそうだろ。あのバカ、アンタらと戦ったときより縛ってるぜ?」
霧の外で半ば談笑、もしくは戦いの行く末を観戦する状態になっている魔法少女たち。
その中で杏子とななかは霧の外から少しだけまろびでたさやかの様を見ながらそんな会話をする。
杏子の言う通り、今のさやかはななか達と戦ったとき以上に己を縛っている。
ザンライザーは出しているとはいえ、戦闘に参加させてない上、バスターソードⅡはおろかGNドライヴすら見せていない。
「あのさやかっていう魔法少女、本気出してないの!?」
そんな二人のやりとりを聞いていたのか、一人の魔法少女がびっくりした顔で駆け寄ってくる。
特徴的な黒い眼帯をつけ、桃色のツインテールを激しく揺らしている魔法少女の名前は三栗あやめ。
このはと葉月と同じグループの魔法少女だ。
「正確に言うと出せないのよ。あの子の攻撃は火力を上げすぎると吹っ飛ぶもの。」
「吹っ飛ぶって何がだ?あ、もしかして木とかか?それくらいだったらあちしもできるぞ!!力には自信があるからな!!」
さやかは本気を出さないのではなく、出せない。
それを聞かされたあやめは不服そうに頬を膨らませたが、マミの言葉を聞くと打って変わって自身の力自慢を始める。
そんなあやめの様子をマミは割りとスルーするように愛想笑いを見せる。
「そうねぇ‥‥‥美樹さんと火力で張り合うのなら、軽くビル一つくらいは吹き飛ばしてもらわないと勝負にならないと思うわよ?」
「…‥‥え?ビル一つ?」
「そ、ビル一つ。どう?できそうかしら?」
「で、できるから!!なんならフェリシアのやろーとの勝負で廃墟壊しゲームとかやったことあるし!!なんなら今からどっか適当なの探して────」
「はいはいストップー。あやめいったん落ち着こうか。そんなのやられたらシャレになんないから。あとその廃墟壊しゲームって何?アタシ初耳なんだけど。」
「あ…‥‥‥」
勢いのあまりどっかに飛び出していきそうなあやめを葉月が羽交い絞めにして取り押さえる。
その際に少しだけ怒ったような声色を出すことであやめの逸る気持ちを別の方向に逸らすことで折っておくことも忘れない。
あとで怒られることを察したあやめはしまったと感じたのか顔を青くした憔悴した表情をしている。あの様子ではしばらくはおとなしくしてるだろう。
それを確認した葉月は困ったような目線をマミに向ける。
「あんまり焚きつけないでよね。あやめって結構負けず嫌いなところがあるからさ。」
「ごめんなさいね。少し反応が面白かったものだからつい。」
「…‥‥アイツそんなことやってやがったのか。」
「普通に器物損壊で犯罪ね。私もたいがい人のことを言えたわけではないのだけど。」
あやめのことをおちょくったことを微笑みながら謝罪するマミ。
葉月はため息をつきながら頭を抱えるが、その時に杏子とほむらの様子も見ていた。
二人の反応に少しでもマミの言葉をいぶかしむようなものがあったら嘘だと断じるつもりではあったが、二人の反応に特にこれといったものはない。あろうことか杏子はほむらの口から語られる武器調達のための主にヤと付く者たちに対する窃盗行為に目を白黒させていた。
挙句の果てに自衛隊かそこら辺の施設からも何かくすねているようなことを示唆していたことに杏子はとりあえず考えることをやめた。触らぬ神に祟りなしである。
「…‥‥‥‥」
霧の中で一人険しい表情を浮かべるさやか。
視線の先には爆発で立ち上っている黒煙があった。
その中にいるはずのこのはだが、彼女の姿はまだ見えない。
イノベイターの感性でとりあえずこのはがいることはわかっているが、それでも不安なものは不安である。
さやかは確認のために黒煙に近づこうとすると────
「むっ」
働かせていたイノベイターとしての感覚がこのはの敵意を感じ取る。
それと同時に黒煙の中から何か細く、短い物体がさやかに投げつけられる。
よく目を凝らしてみてみると、それはこのはの得物である槍だ。彼女が持っていた代物はもっと長かったはずだが、投げつけられたそれは先端がなくなっていた。
「ッ!!」
投げつけられた槍をGNソードⅡで弾く。
甲高い音とともに折れた槍は遠くへと飛ばされていった。
「…‥‥‥まったく、完全に失敗したわ。」
黒煙が晴れ始め、中から姿を見せたこのはは愚痴をこぼすも、煙を吸い込んだのかせき込む様子を見せる。
爆発に巻き込まれたとはいえ、このはの手足がスプラッタなことになっているということはない。やちよ辺りの会話を耳にしていたが、魔法少女となった賜物によるものだろう。
その代わり、服装はところどころ焼け落ちて柔肌を晒していたり、服そのものがススだらけになっていたりしていたが。
「攻撃を叩き落そうとしたら、まさかこっちの槍が溶断されるなんて…‥‥あなたに当てるつもりがあったら死んでいたわ。」
内心ほっとしているさやかにこのはが皮肉な笑みを見せる。
まだやるかどうかを聞こうとしたさやかだったが、どうやら愚問に近かったようだ。
「もう少し確かめさせてほしいことがあるの。悪いけどまだ付き合ってもらうわよ。」
さやかの心情を知ってか知らずか、そういうとこのはは自身の魔力を二人を取り囲んでいる霧に注ぎ込む。
それまで二人を取り囲んでいるだけの霧はその領域を広げ、二人を霧の中に覆い隠す。
(‥‥‥‥気配が、攪拌した?)
視界不良となり、数メートルも見えなくなった空間の中、さやかはこのはの気配を探ろうとしたが、その結果に眉を顰める。
結論から言えば気配がわかりづらくなった。いるのはわかるが、それが複数に分裂したり、突然消失したりと判断が付きづらくなっていく。
(‥‥‥‥‥どこから仕掛けてくる?)
辺りを見回すが、周りからは本物かどうか判別がつかないこのはの気配ばかりでまるであてにならない。
同時に視界すらままにならない状態にさやかは動くことができない。
どう行動すべきかを考えているところに背後から薄水色の光刃が襲い掛かる。
「ちぃッ!!」
感じ取った敵意に機敏に反応し、回避行動をとるが、それでも遅れるものは遅れてしまう。
直撃こそもらいはしなかったが、刃の切っ先がさやかの身体をかすめた。
(こっちはわからないのに向こうからは丸わかりか。これでは反撃も難しいな…‥‥)
避けてから反撃ではあまりにも遅い。すでにこのはは別の場所に移動してしまっている。
(避けてからでは遅い‥‥‥ならッ!!)
光刃を避けつつ、さやかは戦法を変える。
手にしていたGNソードⅡを手放し、代わりの武装としてGNバスターソードⅡを出現させる。
持ち手を握りしめ、大きく振りかぶった大剣を勢いよく振り下ろし、飛んでくる光刃を粉々に叩き割る。
(また大剣…‥‥初めに見せてきたものとは別物みたいだけど‥‥‥)
呼び出された新しい武器に警戒感を強めるこのは。
一番最初に見せてきたGNバスターソードⅢと違うことだけはわかるがこのはにはそれ以上のことを知ることはできない。
それでもこのはのやることは変わらない。どのみちさやかの武装は近づかれなければ当たることはない。
遠距離兵装もこうして霧の中に籠ることで狙いをつけづらくさせる。
(和泉さんの言葉通りに受け取るなら、たぶんこの子は気配に敏感ということね。)
実際さやかの察知能力は目を見張るものが多いとこのはは感じていた。霧の持つ幻惑効果でこのはの気配を多く見えるように仕向けてはいるものの、さやかはそれらに機敏に反応し、姿を視えていないはずの自身からの攻撃を捌いている。
おそらく、このまま同じやりとりを続けていたらいずれ看破される。そういう嫌な確信がこのはの内にあった。
何か策を講じようとするこのはだったが、さやかがそれより早く動いた。
「そこだなっ!!」
確信めいた言動と共にGNバスターソードⅡを構えるさやか。その様子はまるで大剣の刀身を盾のようにしているようだった。
あまり見ないような使い方に怪訝な表情を見せるこのはを尻目に、さやかは放たれた光刃に向かって駆け出す。
「フィールド展開ッ!!」
掛け声と共にバスターソードⅡのギミックが解放され、走っているさやかを取り囲むようにGNフィールドが形成される。
「大剣からバリアッ!?」
さやかのウワサの中にバリアに関するものがあったのはこのはも聞き及んでいた。
しかし、それが盾とかそういうあからさまなものではなく、大剣という性質的に正反対にも近いものから出されたことに驚愕に満ちた表情を浮かべる。
そして、刃はフィールドの防御力の前に真っ向から打ち破られ、塵となって霧散する。
「そこにいるのはわかっている!!ならばこれで!!」
光刃をタイムラグなしに突破したさやかは即座にバスターソードⅡを手放すとこのはのいる辺りに向かって何かを投げた。
くるくると回転しながら薄緑色の光を螺旋に描くモノの正体は連結させたGNカタールだ。
(何か投げてきた?でもその先に私はいないわよ?)
投げつけられたGNカタールだが、それほど離れていないという前提がつくが、このはの言う通り、飛んでいく先に彼女の姿はない。
一体なんのために、と今度はさやかの方に目線を見やると、そこにはGNソードⅡロングを構えたさやかの姿が。
(────────まさか)
ゾワリと背筋に冷たい風が吹き抜ける。
そんな芸当、普通の魔法少女にできるはずがない。いくら魔法少女となったことで身体能力が向上していたとしても元はどこにでもいる争いとは無縁だった少女。
そんな曲芸じみたことなんて無理だ。しかし────このはの胸中には同時に矛盾した感覚があった。
『さやかさんが一体どんな魔法少女か、ですか?』
脳裏に思い出すのはここに集まるきっかけとなったななかとの会話。
その場でこのははさやかについてななかから聞き出そうとしていた。
単純にどんな魔法少女か知ることができれば御の字だったし、ななかも快く教えてくれた。そのとき浮かべていた笑みに含みがあったような気がしないでもなかったが。
『あの人は規格外ですよ。できることからやってしまうことまでほとんどすべてが。』
この魔法少女なら、やりかねない
「狙い撃つッ!!!!」
トリガーを引き、銃口から鮮やかな桜色に近いビームが飛ぶ。
放たれたビームは霧の中を一筋の閃光のごとく切り裂き、前を飛んでいたカタールの刃に寸分の狂いなく着弾する。
「う────」
瞬間、程よく近くにいたこのはの視界が弾けたような光で塗りつぶされる。
ビームが刀身にあたったことによって乱反射し、疑似的な閃光手榴弾と化した。
とはいえ、実際に閃光手榴弾を使ったわけではないため、視界潰しとしての効果は実のところ短い。
本命は極限まで細く、拡散したビームで相手に防御を強いることだった。
「────まさか、ここまでとはね。」
戻ってきた視界で最初に見たものは自身に向けられる剣の切っ先。
そこから少し目線を奥に向けると、GNドライヴで宙に浮くさやかの姿があった。
「…‥‥あなた、一人でも空を飛べるのね。」
「能ある鷹は爪を隠す、とかいえば恰好はつくのだろうが‥‥‥‥とりあえず満足か?」
「‥‥‥ええ、もう十分よ。」
さやかの言葉に事実上の降参の言葉で返すと、このはは自身が発生させた霧の魔法を解除する。
『ええええッ!?一人でも空飛んでるー!?』
霧を解除してもらうや否や、単独でも飛行ができているさやかの姿に観戦席から悲鳴に近い声が飛んでくる。
「‥‥‥‥ホント、あなたって聞いた通りの魔法少女ね。その姿でようやく通常形態ってところでしょ?」
「まぁ、そうなるな。ななかからはじめから飛ばれると割と詰みに近くなってしまうと言われてそうしていたのだが…‥」
そう言ってさやかは気まずそうに頬をかいた。
どうにも手加減していたことを悪く思っているようだ。
「はぁ…‥勝った人間がそんな辛気臭い顔を見せてどうするの。あなたはこれからこの集まってくれた
さやかの様子にため息を吐くこのはは負けた腹いせと言わんばかりに飛んでいるさやかの足を思い切り引っぱたくのだった。
ビームコンフューズ!!!!
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない