ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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最近分かった。土曜が仕事でつぶれるとめっちゃつらい


第85話 おそらく一番重たい話

 

「ハァ‥‥‥‥‥」

 

ある休日。

さやかは比較的ラフな私服で休日の神浜市を訪れていた。

しかし、その表情はどこか疲れているのかため息を零していた。

 

「どうした?そんなため息を吐いてしまって。私の仲介が必要だと言ってくれたのは君ではないか、美樹君。」

 

「いや‥‥‥それはそうなのだが‥‥‥‥ハァ。」

 

隣にいる白髪を揺らしながら不思議そうな顔を向ける十七夜にさやかは遠い目を浮かべてまたため息を零す。

今回はこの十七夜と二人である魔法少女の元を尋ねる。

その魔法少女の名前は(みやこ)ひなの。十七夜曰く南側の代表者、もといまとめ役とされている魔法少女とのことだ。

アポの方は十七夜の方で取り付けてくれたからあとは足を運ぶだけなのだが、本当はここにもう一人来るはずだった人物がいたのだ。

 

「さっさんとなぎたん、みゃーこ先輩に会いに行くの?」

 

「みゃーこ先輩、というのが彼女のことを指しているのであればそうだが。顔見知りか?」

 

都ひなのと顔見知りだと頷いたのは衣美里だった。

彼女にとって都ひなのという魔法少女は偉大な先輩らしい。興奮気味で若干聞き取りにくい部分もあったが、要はあるイベントで参加していた子供たちを魔女から身を挺して守っただとか。

 

「あーしも一緒に行く?知り合いいた方が話は早く進むでしょ?」

 

(‥‥‥‥衣美里の言う通りだな。顔見知りである彼女がいるのなら幾分楽に話は進むだろう)

 

衣美里の提案にさやかは断る理由もないと判断し、承諾しようとしたが────

 

「木崎君、すまないが都君のところには私と美樹君の二人で向かわせてくれないか?」

 

十七夜の言葉に眉を顰めるさやか。

せっかくの衣美里からの申出に断る要因のようなものはないと感じたが、一体なにかあるのだろうか?

 

「んー‥‥‥まぁ、なぎたんがそういうならこっちは引き下がるしかないんだけど…‥‥‥さっさん的にはどう?」

 

「私は別に構わなかったのだが‥‥‥‥何か理由でも?」

 

衣美里からのアプローチに感謝しながらさやかは十七夜にその理由を問う。

すると十七夜はどこか気恥ずかしそうに顔をそむけた。

 

「すまない、白状するとこれは極めて個人的な理由だ。()()とは中々踏み込んだ話をしなければならない。」

 

「個人的な理由かぁ…‥‥‥ま、いっか!」

 

十七夜の言葉は理由としてはひどくあいまいなものだったが、それを衣美里は少し考えたあとに快諾する反応を見せた。

 

「い、いいのか?」

 

「まぁ誰だって他の人に話したくないこととか聞かれたくないことの一つや二つあるだろうし。あーしはそれくらいにしか思わないかなー。」

 

目を丸くしているさやかにそう返すと衣美里は「じゃあ、みゃーこ先輩のことよろしくねー」とだけ言い残して去っていった。

 

 

 

 

(今思えば、その時和泉十七夜の言った『彼女』とは都ひなののことではなかったかもしれなかったな)

 

衣美里との会話の中で、十七夜の言っていた『彼女』とはこれから会う都ひなののことだと思い込んでいた。

もしかしたら魔女化のことも話す必要性も出てくると。

でもよくよく考えてみると、さやかは十七夜の内面を、その胸の奥底にある燃え上がる黒い炎を見てしまっている。

あれがもし、さやかの推測通りのものならば────

 

「さて美樹君。実ははじめ会ったころから‥‥一つ、君に問い詰めておきたいことがあってね。」

 

雰囲気の変わった十七夜にさやかは表情を強張らせる。

十七夜の表情も表面的には笑みを浮かべてはいるが、目はいわゆる笑っていない状態だ。

 

「君はどうやら他人の心を読み取る力に長けているらしいな。」

 

「‥‥‥‥やはりか。衣美里の提案を断ったのも私と二人きりになるためか。」

 

「そう答える、ということはやはり見てしまったのだな?この私の胸に渦巻く感情に。」

 

十七夜の問い詰めにさやかは考えるように目線を逸らしたうちに静かに肯定した。

 

「とはいえ、貴方のように言葉や映像として視えるわけではない。色々と抽象的な形で視えてしまうだけだ。」

 

「ではそれを問おう。君は自分の、この和泉十七夜の胸に何を見た。」

 

「…………………正解を答えた方がいいのか?」

 

「…………君が何を言おうと一度交わした約束を取り違えたりはしないと誓おう。」

 

面倒くさそうに頭を抱えるさやかの言葉に十七夜はそう答えた。

とりあえずさやかが何か彼女の気に障るようなことを言ったとしてもそれを理由に約束を反故にするようなことはしないらしい。

それを聞いたあとも難しい表情を浮かべながら考え込んでいたさやかだったが、一つ大きくため息を吐いた。

 

「…‥‥‥‥黒い炎だ。」

 

「ほぅ?」

 

 

恐る恐る十七夜の様子を見てみるが、彼女はさやかの言葉に興味深そうな反応を示す。

その反応をとりあえず問題ないと判断したさやかは言葉を続ける。

 

「私がお前の中に視えたものは黒い炎だ。あれは…………私の感性では憎しみだとか、憎悪としか表現ができないほど暗く、苛烈なものだ。」

 

「お前の憎しみは一体誰に、いや何に対するものだ?普通そういう復讐心のようなものは相手を目の当たりにして初めて膨れ上がったりするものだ。」

 

しかし、さやかの感性は程度こそあれども明確にその炎が今なお燃え上がっているのを捉えていた。

まるでその様は彼女の恨みが個々人に対するものではないと語っているようだった。

 

「お前の恨み、もっと大きいものに対してだな?」

 

そう言い切ったさやかと十七夜の間に沈黙が奔る。

十七夜は前もって何を指摘されたとしても水に流す、というようなことを言ってはくれたもののやはり怖いものは怖い。

さやかは内心戦々恐々とし、額から汗を流す。

 

「‥‥‥‥まったく、君という魔法少女は…‥‥‥どこまでもお見通しということかな。」

 

十七夜はそう言って肩を竦ませる。

呆れているような物言いだが、その表情に怒りとかそのようなものはなかった。

 

「‥‥‥‥言い当てられた割には怒ったりしないのだな。」

 

「なに、君を少しは見習っているだけだ。この程度で当たり散らしているようでは進む話も進まなくなる。」

 

そのやりとりのあとに再び二人の間に沈黙が漂う。

どちらからでもなく歩き始めたが、その足取りはどこかゆったりとしたものだ。

 

「君は復讐をすることに何か引け目のようなものを感じるか?」

 

「復讐‥‥‥‥‥?わからない、というのが正直だ。あまり誰かや何かを恨むようなことに縁がなかったからな。」

 

「…‥‥‥普通はそれが一番いいのだ。自分も、そうでありたかった。」

 

「…‥‥‥やはりお前の胸の内にあった黒い炎、復讐心か。一種の破壊衝動のようなものにも見えたが…‥‥‥」

 

さやかの言葉に十七夜は目を見開くと静かに目を伏せ、物思いに耽る。

 

「…‥‥‥少し、昔話に付き合ってくれるか?」

 

「…‥‥‥重たい話はもう結構なんだが?神浜市の魔法少女は揃いも揃って重たい事情を抱えている人間ばかりでいっぱいいっぱいに近いのだが。」

 

「いや…‥‥‥君もお互い様だろう。自分も言える立場ではないのを承知の上で言わせてもらうが、こうまで丸裸にしておいてそのままとは少しばかり虫が良すぎるのではないか?」

 

「まさかとは思うが破壊衝動というのも当たりか?」

 

先ほどとは打って変わってさやかにジトっとした湿気た目で見つめてくる十七夜にさやかはおそるおそるそう聞いてみる。

 

「フッ…‥‥‥‥‥大当たりだぞ、ご主人様♪サービスとして一から十まで時間の許す限り話してやろう。拒否権はない。」

 

(‥‥‥‥‥‥これかなりまずいのを踏んだか。)

 

わざわざメイドカフェの口調を持ってきてまでおどけたような言葉で話し始めたことに多分虎の尾を踏んづけたことを察したさやか。

あれだけ踏まないようにしようとした地雷を結局踏んでしまったさやかは十七夜からの昔話に付き合わされるのだった。

 

 

 

 

「今まで聞いた中で一番重い話だった‥‥‥‥‥」

 

半ば無理やりのような勢いで一通り十七夜に聞かされたさやかは鬱屈とした表情で頭を抱える。

フェリシアのことを聞かされた時も相当苦い顔を浮かべたが、十七夜の場合もそれに引けを取らない話だった。

 

「ふむ…‥‥ほとんど勢いに近いレベルで話してしまったが‥‥‥‥‥まぁ、いいか。別段今のところはするつもりがないからな。」

 

「するつもりがあるとかないとかの話ではないだろう…‥‥」

 

グロッキーに近い状態で十七夜を恨めしそうににらむさやかだが、その言葉尻と表情両方には疲れが見えている。

早い話、十七夜が恨んでいる相手というのが、人や団体とかそういうのではなく、この神浜市そのものがその矛先らしい。

正確に言えば、『東側の人間だというだけで周りから疎まれる』という理不尽極まりない現実に対してだ。

十七夜の能力が読心なのも、彼女がキュウべぇに西側の人間たちがなぜ東側出身の者を邪見にするのか、その真意が知りたいと願ったからとのことだ。

 

「しかし…‥‥妙な話もあったものだ。明確な理由がないにも関わらずただ東側の出身というだけでそんな迫害の真似事のようなことができるとはな。」

 

「‥‥‥‥‥自分も最初に知ったときは愕然としたさ。だが何回、誰にやっても結果は同じだった。皆、明確な理由がないにもかかわらず東側の人間だというだけで腫物のような扱いをする。」

 

「お前から見えた破壊衝動のようなものはそうした現状に対するものか。ちなみに聞いておくが本気で神浜市を破壊しようとかそういう物騒な考えではないのか?」

 

「さぁ…‥‥どうだかな。今は平静を保ってはいられているが、何かの拍子でその破壊衝動のままに動いてもおかしくはないだろう。」

 

「‥‥‥‥‥そうか。」

 

さやかの反応の薄さに呆けたような顔をみせる十七夜。

割と怒られたり復讐そのものを止めさせにくると思っていたばかりだったために、半ば拍子抜けに近い感覚を覚える。

 

「‥‥‥‥咎めたりはしないのだな。」

 

「咎める?お前のそれはいわゆる不当や理不尽に対するものだろう?東側に生まれたというだけで不平等な扱いをされるという現実を破壊するために、お前が燃やしているものだ。いうなれば、お前のそれは少なくとも悪いものではない。であれば止める必要性のようなものは今のところはないだろう。」

 

「‥‥‥‥よもやこの燃えたぎる激情を正しいと言ってくれるとはな。」

 

「正しいとは言っていない。」

 

「なに?」

 

「お前の復讐はお前自身がたどる道次第でいくらでも形を変えることができる。」

 

「つまり手法はいくらでもあるということか?」

 

「‥‥‥‥よくも悪くも、だな。ただ────」

 

「ただ?」

 

「お前が変えた世界にお前自身がいなければ、それは復讐が完遂されたとは私は思えない。と忠告のようなものだけはしておく。」

 

「とどのつまり、まずは生き残ってから、ということか。待ち受けているであろうマギウスの翼と来る可能性の高い、かのワルプルギスの夜との決戦に、か。」

 

「…‥‥‥‥まぁ、それもその通りではあるか。」

 

少し考えたあとにそう言葉を零したさやか。

十七夜の言う通り、まずは目の前にある脅威を乗り越えなければそれに挑むことすらかなわなくなる。

 

「まったく、皮肉なモノだな。壊したいモノのためにまずは守らねばならないとはな。」

 

わざとらしく肩を竦ませる十七夜だが、既にさやかの意識はこれから向かう場所に向いていた。

 

(‥‥‥‥場合によっては嫌なカードの切り方をしないと行けなくなるかもしれないな。)

 

たどり着いた建物の名前を見つけると内心でそう愚痴のようなものを零した。

 

「ここが都くんのいる南凪自由学園だ。さて、彼女はどうせ理科室でも貸し切って実験にかかりきりだろうから、校内をさまよう心配はなさそうだな。行こうか。」

 

(そして、マギウスの翼白羽根、観鳥令の通う学校、か。)

 

高くそびえたつ校舎を見上げるさやかは、漂っている難解な雰囲気を振り払うように瞳を伏せ、先を行ってしまっている十七夜のあとを駆け足で追っていくのだった。




感想くれると、うれしなぁ(白目)

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

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