ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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ワイのヒミツ

なんでか知らないけど共通して話数が90を超え始めると途端に投稿スピードがダレる


第90話 趣味が悪い色

 

「ここが、神浜記憶美術館か。」

 

ザンライザーから降りたさやかが眼前の建物を見上げる。

併設されている施設内の駐車場を見渡しても、そこには来館者どころか施設職員の車すら一台も見当たらない。

ひなのが言っていた通り、この施設は廃館しているのは紛れもない事実だろう。

 

「…‥‥‥外観はそのままのようだが、中に入るとそのウワサの空間が広がっているのか?」

 

『その認識で相違ないかと。事実、内部からウワサである私と同じ反応が確認できます。』

 

十七夜の疑問にアイがさやかのスマホから顔をのぞかせながら答えると十七夜はそれなら、と納得した反応を見せる。

 

「さて、問題は何人助け出せるかだが…‥‥さやか、お前さんの見立ては?」

 

「‥‥‥‥‥少なくとも七海やちよは問題ないはずだ。梓みふゆの誘いにも真っ向から反発していた。それ以外は割と怪しい。」

 

「由比君は名前程度は知っているが、深月フェリシア君と二葉さな君、そして環いろは君か。七海のヤツ、いつの間に仲間を増やしていたのだな。」

 

「やちよが反発するのがわかってんなら向こうもそれなりに潰しに来んのは火を見るより明らかだ。なるべく時短で行った方がいいんじゃないのか?」

 

やちよは絶対にマギウスの翼に与したりしない、というさやかの見立てにひなのは目的をやちよだけに絞ってなるべく早く態勢を整えることを提案する。

その提案にさやかは難しい表情で考える。

できることならみかづき荘の面々を全員助け出したいのが本音だ。

しかし、魔女化やソウルジェムのことを聞かされた時、フェリシアは確実にマギウスの翼に入ってしまうだろう。

彼女は事実はどうであれ、魔女を両親の敵として見ている。そしてマギウスの翼の目的は魔法少女の救済、言い換えれば、世界から魔女という存在をなくすことができる。

つまるところ、フェリシアが求めていることとマギウスの翼の目的が合致してしまっている。

 

(フェリシアには悪いが、彼女には望みが薄いだろう。)

 

やちよ・いろは、そしてフェリシアときて残る鶴野とさなが講義を受けてどう思うか…‥‥‥こればかりは二人に任せるほかがなかった。

 

「…‥‥‥この状況でマギウスの翼と全面的に矛を交えるつもりはない。それでいこう。」

 

さやかの決断に二人は静かに頷き、三人は美術館の内部に足を踏み入れる。

 

「蹴破るか。」

 

「ああ。」

 

「え、お前ら今なんて────」

 

十七夜の呼びかけに頷いたさやかの二人が美術館の扉に勢いよく蹴りを入れる。

ひなのが制止の声をかけるより早く魔法少女の蹴りを入れられた扉は、哀れにも盛大な破砕音を響かせながらド派手に転がっていった。

目の前で行われた器物破損に茫然としたまま声すら出せなかった。

 

「…‥‥‥ふむ、なるほど。こういうものか。」

 

先に押し入った十七夜が美術館の中の空間を見て要領を得たかのように頷く。

扉を壊したその先には三人の背丈を、見上げなければならないほど優に越したタンスがあった。

幅や高さともどもそこら辺のビルもかくやというレベルで引き出し一つでも普通の人間ほどの大きさだ。ところどころ引き出しが開けられているため、そこを足場にすれば上へ行くことができるのは想像に容易い。

 

「‥‥‥‥‥斜め前方に誰かいるな。ちょうどこのタンスを越えた先か?」

 

『1時の方角に二つの魔力反応あり。該当パターンから環さんと七海さんであると推察されます。ただし注意してください。魔力反応が見られるポイントに同時に魔女の反応も見られます。』

 

「…‥‥‥ドッペル、ということでいいのか?」

 

『魔法少女の反応と魔女の反応が入り混じっていますので、それで相違ないかと。』

 

「…‥‥‥急がないと危険か。」

 

アイの忠告にさやかは急ぐ必要があると感じ、再びザンライザーを召喚する。

 

「先に行く。二人はそれで私のあとを追ってくれ。」

 

「すまない、助かる。」

 

十七夜にそう伝えるとさやかは宙に浮かび上がり、そのまま上昇。あっという間に巨大なタンスの背を越すといろはたちがいると思われる奥の空間に姿を消す。

 

「都君、自分たちも早く────って、どうした?そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。」

 

「…‥‥‥割とお前らって性格似てる?」

 

「…‥‥‥‥いや?自分はそうは思わないが‥‥‥‥美樹君はいわゆるお人よしだろう?自分は他人に対してあのようにはなれないな。残念なことに。」

 

 

 

 

 

 

「ハァ…………ハァ…………や、やちよさん、このままじゃ……………!!!」

 

「使いたくないドッペルまでわざわざ使ったのに、こうまで追い込まれるなんて……………!!」

 

さやかたちが記憶ミュージアムにカチコミしにきたのと同時刻。ウワサの異空間の奥ではいろはとやちよが戦っていた。

二人がいた空間は巨大な吊り橋のような足場が真ん中を走り、その下をこれまた巨人のような人種が使うものではないかと思ってしまうほどの高さの本棚がわずかな隙間を残して敷き詰められている空間だ。

その空間も今はそこら中に穴が開いていたり、本棚も倒され、炎があがり大炎上を引き起こしていた。

そして、状況は劣勢。両者ともその身にドッペルを纏っているにも関わらず息も絶え絶えで明らかに疲弊していた。

 

「ここのウワサを倒したのに、こんなのまで出てくるなんて…‥‥‥!!」

 

ドッペルの中でいろはが苦し気な表情で上を見上げる。

見上げた先にはこの状況を作り出した元凶がいた。

その存在は煌びやかな派手な金色の装甲に身を包まれた巨大な浮遊物体だった。50メートルはある巨体の後部からは装甲の色と同じような色合いをした金色の粒子がばらまかれていた。

 

「やっぱりこのウワサ‥‥‥‥美樹さんを元にしたウワサね‥‥‥‥!!」

 

後ろから見える粒子にやちよがそのウワサの元となっているのがさやかであることを見抜く。

相手どっている巨体が見せてきた特徴は大まかに言えば、一つは今目にしている通りあの巨体で空を浮いていること。そして巨体の側面から飛び出てくるビーム。そしてそれらをかいくぐって攻撃を仕掛けようとしたところで見せたその巨体を覆えるほどのバリア。

どこの要素を引っ張り出してもさやかのチート具合を模倣したのは明らかだ。

 

(でも…‥‥だからこそ敵となったときの脅威の度合いが高すぎるのよ‥‥‥‥!!ドッペルですらまともにダメージが与えられないなんて、一体どういう能力してるのよ!!)

 

ウワサを通して、改めてさやかが持っている能力のおかしさに険しい表情でにらむが、状況は変わらない。

ウワサはその巨体の側面から二人に向けてビームを掃射する。

発射されたビームは雨あられのように降り注ぐと着弾箇所に小さくない爆発をまき散らす。さながら絨毯爆撃のような攻撃を二人は飛び退くように下の本棚のエリアに逃げ込む。

 

「ううっ‥‥‥‥!!」

 

「ッ‥‥‥‥いろは!!」

 

ビームの爆撃から逃げ込んだ二人だが、本数や範囲の広さからいろはは完全に回避することができなかったのか、吹き飛ばされるようにやちよの元に飛んでくる。

たまらずやちよが悲鳴のようにいろはの名を呼ぶが、ウワサはその巨体に見合わないスピードで距離を詰めると胴体からカニのような大型クローをのぞかせる。

 

「しま────」

 

気づいたときには既に遅く、やちよはウワサの攻撃をよけきれず、クローにドッペルごと掴まれてしまう。

 

「や、やちよ‥‥‥‥さん‥‥‥‥!!」

 

やちよに降りかかる危機にいろははなんとかしようと立ち上がろうとするが、ダメージが回復してないのか倒れるようにバランスを崩してしまう。

 

「クッ…‥‥こ、この‥‥‥‥はな‥‥しなさい‥‥!!」

 

クローを振り払おうとするやちよだが、いくらドッペルを動かそうとしても巨体の圧倒的なパワーに阻まれ、身動き一つとれない。それどころかさらに力を込められ、苦悶の表情を浮かべて悶える。

 

「アッ…‥‥ガッ…‥‥‥!!!」

 

ミシミシと言う音がやちよ自身の体から響く。相当な力で万力のように挟みこまれているのか、大きく目を見開いて声にならない声を挙げる。

 

「あ、ああ…‥‥‥!!」

 

このままではやちよはあのウワサに殺される。いろはでなくともやちよがおかれた状況を見れば誰もがそう思うだろう。

今頼れるのは自分のみ。そしてやちよを助けられるのも。

だが、自分が覚えている限り一番強いといっても過言ではなかったやちよですら、ダメージらしいものを少しも与えられなかったという現実が少女に無力感となって暗い影を落とす。

 

 

(それでも………………!!!)

 

最後の力を振り絞るようにいろはは自身のドッペルから伸びる血塗られたような包帯を一つにまとめあげ、そのまま金色のウワサに思い切りぶつける。

いろはの攻撃はウワサの巨体を押し除け、バリアごと壁に向かって吹き飛ばした。

その衝撃で拘束されていたやちよも解放され、なんとか着地するも咳き込んでその場に膝をつく。

 

「やちよさん!!」

 

維持ができなくなったのか二人のドッペルが同時に霧散する。一抹の安堵の雰囲気があった二人だが、礼を言う時間もなく苦しい表情でウワサが飛んでいった先を見据える。

 

「………………逃げましょう!!」

 

「ッ……………はいッ!!」

 

これ以上は死に急ぐだけ。

ベテランとしての経験からそう判断したやちよが今が最後の好機とみていろはに撤退を伝える。

いろはは見当たらない仲間たちのことが頭をよぎったのか、一瞬表情を暗くさせるが、すぐに切り替え、やちよの提案に頷く。

 

 

「やちよさん、これからどうしましょう‥‥‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥そうね…‥‥あまり気が進まないけど‥‥‥‥見滝原の彼女らを頼るしか選択肢はなさそうね…‥‥!!!」

 

「見滝原‥‥‥‥‥?あの、やちよさん。それは一体誰のことを‥‥‥?」

 

いろはの不思議そうな表情からの反応にやちよは怪訝な顔で首をかしげる。

言うまでもなく、見滝原の彼女らとはさやかたちのことだ。そしてそれがさやかたちを指していることはいろはもわかっているはず。

それにも関わらず、まるで初めて聞いたかのような反応を見せるいろはにやちよははっとした表情を見せ、それが自身がよく知るみふゆの魔法の影響下にあることを察する。

 

(やられた‥‥‥‥となるといろはは美樹さんに何も連絡をよこさないでここに来たのね‥‥‥‥!!癪だけどこの子が一番信頼しているのは彼女なのに‥‥‥‥!!)

 

「私を呼んだか?七海やちよ。」

 

「ッ!?」

 

目の前に現れた存在に二人の足が止まる。

 

「あ、貴方…‥‥どうしてここに…‥‥!?」

 

大きく目を見開いて何故ここにいると言わんばかりにやちよは現れたさやかを見て驚きを露わにする。

 

「いったんお前と情報のすり合わせをしたかったのだが、連絡してもつながらないから何かあったのだと察した。そこでみかづき荘に駆けつけたのだが、あとは彼女の案内だ。」

 

そう言ってさやかはスマホを取り出すと、画面からフィギュアくらいまでのサイズのアイが姿を見せる。

 

「状況はなんとなく理解した。ここからの脱出だな?支援するから殿は任せてくれ。」

 

「え、ええ…‥‥た、助かるわ。」

 

些か察しの良すぎるさやかにやちよはうなづくことしかできない。

疲弊しているいろはとやちよを前方に、その後ろに空を飛ぶさやかという布陣で三人は記憶ミュージアムからの脱出を再開する。

 

「…‥‥‥そういえばいろは、私のことがわかるか?」

 

「は、はい…‥‥顔を見たらすぐに…‥‥‥でもどうしてわたし‥‥‥‥」

 

「みふゆの魔法よ。多分、みかづき荘に来たときに貴方たちに掛けたのだと思う。一番厄介な美樹さんを来させないために。」

 

脱出の最中、さやかがいろはに自身のことがわかるかどうかを尋ねる。

結果としては魔法としての効果はそこまでのものではなく、ちょっとしたきっかけ程度で解けてしまうようだ。

 

「‥‥‥‥‥二人とも、何か妙なヤツと戦っていたのか?」

 

不意に後ろを振り向いて目を細めるさやか。

それを追っ手が来たのだと感じたいろはたちも振り向く。

逃げてきた方向に拡がる暗闇。それにいろはたちには嫌というほど見慣れた金色の光が瞬くと高速で飛行する棒が現れる。

 

「…………………なんだあれは?」

 

宙を浮く棒という不思議なものに首を傾げるが、前に出ることで気を引きつつも囲まれないように────具体的には棒の切先を向けられないように立ち回るさやか。

 

「気を付けて!!それは貴方を模したウワサからの攻撃よ!!」

 

「ッ…‥‥‥!?」

 

やちよの言葉に目を見開いてわずかに足を止めるさやか。次の瞬間、さやかの周りを飛び回っていた浮遊物体、GNファングからビームが一斉射される。

 

「!!」

 

わずかな隙を突かれたさやかだが、機敏に反応し、すぐさま射線から逃れる。

 

(やはりというか‥‥‥‥妙に私のウワサがばらまかれていたのはそういうことか‥‥‥‥)

 

さやかはファングの動きを注視しながら右脚のGNカタールを手に取る。

GNファングの狙いはさやかなのか視界に金色の粒子を残し、全方位からビームを放つ。

 

「先に行けッ!!今の狙いは私だ!!」

 

「さ、さやかさん‥‥‥でも!!」

 

「いろは!!行くわよ!!」

 

ビームを躱しながら叫ぶように二人に先を促す。

はたから見ると危険な状況であることにいろははためらうような表情を見せるが、やちよが引きずるように彼女の手を引っ張る。

 

「…‥‥‥‥お願いだから、私の前で死ぬなんてマネはやめなさいよね。」

 

少しだけさやかに目を向けたやちよがそんなことを呟くといろはを連れ添って先に出口の方向へ駆けていった。

 

「‥‥‥‥‥死ぬつもりはない、と言ったところで言葉だけでは意味はない。」

 

自身に言い聞かせるように言葉を紡ぐとさやかは手にしていたカタールを投擲。

投げたカタールは周囲を飛び回っているファングの一機に突き刺さり、爆発する。

 

「…‥‥‥しかし、あの二人は一体何と戦っていたんだ?向こうから感じるこの圧は…‥‥?」

 

まだ一機しか落としていないファングより、さやかの視線はそれらが向かってきた領域の向こう側に向けられる。

そして、その暗闇から一瞬煌めきのようなものが見えると徐々に輝きは巨大化していく。

 

(イヤな予感…‥‥!!)

 

その星のような煌めきが加速度的に大きくなっていくと、さやかは感じ取った不穏な雰囲気からファングの包囲を強引に突破して高度を下げる。

次の瞬間、直前までさやかがいたところを極太のビームが通過していった。ファングの撃ちだすものとは比較することもできないほど高出力のそれは、領域の壁に直弾すると建物がまるごと吹き飛んだかと錯覚するほどの大爆発がさやかに襲い掛かる。

 

「‥‥‥‥‥なんだあのデカいの。」

 

爆発もさることなら、暗闇の向こう側から現れた金色のデカブツにさやかは趣味が悪い色をしていると思うのだった。

 

 

 

 




前書きのヒミツのせいで自分は一つ前の作品を2年近くほったらかしにしてます(白目)

自戒の意味も込めてここに記す

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

  • ガンダムだ
  • ガンダムではない
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