ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
「なんだ、近くで待ってくれていたのか。」
自身を模したというウワサを見事打破したさやかはは急いで外に出ようとしたところで手ごろなところで待ってくれていたいろはたちを見つけ、高度を落とす。
「すまない、どうやら待たせたらしいな。先に脱出してもらってても構わなかったのだが…‥‥‥」
「さやかさん!よかったです。ケガとか何もなくて…‥‥」
自分を待ってくれていたことに表情を綻ばせながら降りてくるさやかにいろはが心底から安堵したような表情で駆け寄り、無傷で戻ってきたことを喜ぶ。
「とりあえず、もう長居は無用なはずだ。そうだな?」
寄ってくるいろはを尻目にやちよに確認するように尋ねるさやか。
それにやちよはわずかに悔し気というような、険しい表情をしながらもうなづいた。
一同は上層へ上がるためのゴンドラに乗り込み、座席につき一息をつく。
「あの、流れで乗ってしまったんですけど、こんなゆっくりしていて大丈夫なんですか?」
席についたがいろははどこか落ち着かない様子でいる。
おそらくウワサからの追撃を警戒しているのだろう。
「それはないでしょう。あのウワサは美樹さんが倒した。そうでしょう?」
「ああ。手こずりはしたがな。」
やちよの言葉に軽く一息を入れて苦労したような雰囲気を出しながらウワサを撃破したことを明かすさやか。
「‥‥‥‥一応お前とおんなじバリアを持ってるって話だったが、どうやって突破したんだ?ドッペル───まぁ要は魔女の力の一端を使っても歯が立たないらしいってのをよ。」
「‥‥‥‥私の持っている剣がバリアに対して特効持ちだったという感じだな。もっと詳しい説明がいるなら外で話すが……………」
「大丈夫よ。貴方ってそういう魔法少女って認識し始めたから。」
やちよにそう言われるとさやかはそうか、と軽く返して会話が終わってしまう。
少しゴンドラに揺られるだけの時間ができたが、ふとしたところでさやかが何か思い出したように顔を上げる。
「そういえば七海やちよ、さっきから感じていたことがあったのだが。」
「なにかしら?」
「丸くなったな。初めて会ったころとはまるで見違える。」
「ま、丸くなった…………!?!?嘘でしょ………………!?!?」
さやかの丸くなったという言葉にやちよは目をかっ開いてわなわなとした様子で立ち上がると徐に自身の腹回りを触り始める。
「?………………私は別に体型のことは言っていないが?」
「え」
「フ……………フフッ……………」
きょとんとしたさやかの言葉にやちよは言葉を失い、茫然自失に近い状態で立ち尽くす。ちなみに声を押し殺しているような笑いをしているのは十七夜だ。文字通り体をくの字に曲げてまで体が震えているのと込み上げてくる笑いを抑え込んでいる。
さやかは決してやちよの体型が太ったとかそう言うつもりで言っていない。彼女が言及したのは主にやちよの纏う雰囲気が丸くなったという意味合いで言ったのだ。
まるで憑き物が落ちたと言うのが一番正しいか。特にいろはに対するそれは初めて神浜市に足を運んだ時とは違う、互いに互いを信頼しているような雰囲気だった。
ただ、突然丸くなったといわれて一番最初に想像するのは体型であるのが現実だろう。それも言われたやちよはモデル業もやっている。
つまるところ一番気にしなければならないのは自身のプロポーションの維持なわけで──────
「……………………歯ぁ食いしばりなさい、いい加減にその貴方の口に遠慮と思慮深さが入るように修正してあげるから。」
「さやかさぁん!!主語が!主語が足らないんです!!女の人に体重と年齢の話はタブーなんです!!」
「そうか、学ばないな。私も。」
静かな怒りを募らせるやちよにいろはが背後から彼女を羽交締めにして取り押さえる。
自身がやらかしたことを察したさやかは諦めのような乾いた表情を浮かべながら逃げるようにゴンドラの屋根に退避した。
「君たちは‥‥‥‥自分を笑い死にさせるつもりか‥‥‥‥‥!!」
「いやいや、お前もお前で笑いすぎだって。こっちにまで飛び火したらどーすんだ。」
笑いのツボにでもはまったのか、目元に涙のようなものを浮かべながら恨めしそうにしている十七夜にひなのが少し白い目で眺めていた。
「…‥‥‥思ったよりこのゴンドラ長くないか?」
「まぁ、お前から借りた乗り物でも少しかかってたよな。」
「確かに、数分は乗っていただろうな。速度をそれなりにしてもらっていたというのも考慮するが。」
思っていたより長いゴンドラでの旅に屋根に上がったままのさやかは行く先を怪訝な表情で見つめる。
ザンライザーに乗ってきた十七夜とひなのも同じ意見なようだ。
「なら他に聞いておきたかったことを聞いておくか。いろは、結局どちらかとは会えたのか?」
屋根から顔を覗き込ませながらさやかはいろはにそう尋ねた。突然質問をぶつけられたいろはは驚いた表情を見せたが、それが前々から会いたがっていた里見灯花と柊ねむのことであることを察する。
「えっと、灯花ちゃんとは‥‥‥‥でも、わたしのことはまるで覚えていない様子でした。」
「…‥‥‥‥となると、柊ねむの方も同じような状態、と考えるべきか。」
どうやら以前さやかがいろはの自宅に半ば押しかけたとき推測した状況と同じことが起きていたようだ。
いろはの妹、環ういという
(しかし…‥‥そうなると肝心の環うい本人はどこにいった?正直元々いた人間の存在が丸ごと消失するなどありえないと思うのだが‥‥‥‥あまり難しいことはわからないが。)
人の存在とか正直言って概念的なところもいいところなため、早々に思考を切り上げるさやか。
(まぁ、それでもわかることは、あの小さいキュウベェは確実に環ういと関係はありそうだがな。)
いろはがあの小さいきゅうべぇに触れたことでういのことを思い出すきっかけになった。
なぜかいろはに気があるように妙に彼女の傍に姿を見せる。
そして彼女がなんらかの窮地に陥るとほかのきゅうベェにはない感情を露わにしてまで助けを求める。
(いや、どう見ても何かあるだろ。知っているのならなおさらのこと。)
「いろは、今度あの小さなキュウベェを見かけたら捕まえて傍に置いといてくれるか?」
改めてあの小さなキュウべぇの異質さを認識したさやかはとりあえずいろはに確保しておくように頼んだところでようやくゴンドラの終点が見えてきた。
降りる際に奇襲を警戒して周囲を見渡すが、出た先に待ち伏せもなく、記憶ミュージアムの中はもぬけの殻のようになっていた。
「もしかして、アレを散々にまで暴れさせてここの施設ごと、なんてするつもりだったのかしら。」
魔法少女一人の気配もなくなった施設にやちよがそんな言葉を零す。
まぁ、あんな図体のでかいウワサを効率よく運用するなら適当に配置して暴れさせてしまうのが一番だろう。連携とかを行うのは色々と無理がある。
ともかく悠々とした足取りで記憶ミュージアムから脱出した5人。
一仕事したと言わんばかりに体を伸ばしながらさやかはいろはとやちよの二人にこれからの動向を聞くことにした。
「これから…‥‥ですか?それはもちろん、攫われたみんなを助けに行きたいです。」
「そうは言うが、手掛かりはあるのか?具体的に言うと彼女たちが連れていかれた場所とか。」
なんとなく予想していたいろはの返答にそう指摘すると、途端に表情を渋いものに変え、痛いところを付かれたように顔を逸らした。
「ううっ、で、でも早く行かないと鶴乃ちゃんたちに何が起こるか────」
「ただ闇雲に行動を起こしたところで時間の浪費になるだけだ。まずいろはたちがやることは情報を集めることだろう。」
「そんなの、適当な黒羽根の魔法少女から聞き出せば済む話でしょ?」
「それもそうだが、別に情報を持っているのが羽根だけとは限らない。そうだろう?」
さやかの言葉に二人はお互いに顔を見合わせ、それがマギウスの翼に関する情報を手に入れていることを察する。
二人の反応から食いついたと判断したさやかは十七夜を見る。
互いに言葉はなかったが、求められていることを察した十七夜が二人に観鳥から覗き見たことを二人に伝える。
「やっぱりそこら辺にいる黒羽根を捕まえた方が速くないかしら。」
「まぁ‥‥‥‥あまり強く否定することはできないな。」
いぶかしむような目線を向けるやちよに困った笑みで肩を竦ませる十七夜。
いろはも十七夜と似たような表情で乾いた笑みを見せるが、内心は似たような心境かもしれない。
本拠地の情報を得たはいいものの、移動が可能な上に認証コードのようなものが必要だとなってしまえば、黒羽根をふん縛って言うこと聞かせた方が手間は省ける。
「…‥‥‥‥」
一通り十七夜からいろはたち二人への説明がされたが、その間さやかは何か考え込むような表情を見せていた。
「さっきから何か考えてるみてえだけど、何かあるのか?」
その様子をみたひなのが声を掛けるとさやかはいや、と否定気味な言葉を漏らすが、すぐにまた考え込んでしまう。
「‥‥‥‥なぁ、確か向こうのアジトに入るためには羽根たちが胸元に掲げているペンダントのようなものがいる、という話だったな?」
十七夜の方へ向き直りながらさやかはそんな問いを重ねる。
聞かれた十七夜は少しだけ記憶を手繰り寄せながらも、それが事実であるようにうなづく。
するとさやかはGNソードⅡを取り出すと、敷地内のアスファルトにがりがりと剣先で絵を描き始める。
「えっと…‥‥‥さやかさん?」
突然始まった絵描きにいろはは困惑気味に首をかしげる。
他の3人も同様に呆けたように雁首揃えてさやかの絵描きを見つめる。
「うーん‥‥‥‥‥?」
数分してから描き終わったのかアスファルトを削るのをやめたさやかだが、途端にまた首をかしげてしまう。
そこには翼を広げたような意匠が目立つ、羽根たちの持つペンダントが粗が目立つ形で描かれていた。
「どこかで見たことあるような気がするような、しないような‥‥‥‥?」
「それは羽根の人たちと会ったことがあるからじゃ…‥‥実際何回も姿を見ているわけですから‥‥‥‥」
さやかのつぶやきにいろはがごもっともな見解を述べる。
しかし、さやかはそれに首を振ると、そうではない場所で見たような気がする、と言う。
「‥‥‥‥‥‥なら、貴方が神浜市内で行ったことのある場所から羽根の魔法少女と出会ったことのある場所を省けばいいんじゃないかしら。」
やちよの提案にさやかはその通りに自身が神浜市内で行ったことのある場所の羅列を始める。
神西区、工匠区、北養区、水名区、中央区、大東区
もっと詳しく並べるなら、神浜市立付属中学、セントラルタワーといったこれまで足を運んだことのある場所から黒羽根と出会ったことのある箇所を除外する。
「残ったのは神浜市立付属中、ウォールナッツ、旧神浜ミレナ座、水名神社か。」
「一回足を運んだきりの付属中と水名神社は外していいでしょう。」
やちよの言葉通り、一回たけ、それも長時間そこにいたわけではない二箇所は外していいと判断し、残るはウォールナッツと旧神浜ミレナ座に絞られる。
前者はマギウスの翼の本拠地のある北養区にある上に非番に近かったとはいえ白羽根である観鳥と出会した場所でもある。
後者は特に言うことはないが、主であるみたまの持つ調整はやちよが初めて神浜市を訪れたのなら、まずそこに行けと言うほど強力なものだ。彼女がどこまで把握しているか定かではないが、羽根の面々にも調整を行っていたであろうことは想像に難くない。
「可能性が高いのは調整屋だな。羽根の魔法少女の調整がてら例のペンダントを受け取っていることも考えられる。」
「八雲から譲り受けるのか?おそらく難しいと考えるべきだな。」
「そもそも可能性が高いというだけで断言したわけでもないのだが……………何か別の理由でもあるのか?」
八雲みたまから拝借できないだろうか、というさやかの考えに十七夜が否定的な言葉を挙げる。
「いや、美樹君の八雲が例のペンダントを所有しているという推察に異論はない。しかし君は知らなかったと思うが、八雲は神浜市では唯一中立を宣言している魔法少女なんだ。」
「中立?どっちつかずの立場を貫いているということか?」
「………………悪い言い方をしてしまうとな。」
「ということはみたまさんは私たちに手を貸してくれることはない。そういうことなんですか?」
「正確に言うならば両陣営に、だろうな。基本的にこの事態には不干渉を貫く腹積りなのだろう。」
そう言って十七夜はすまないと目を伏して謝罪をした。まるでみたまの代わりに謝ったようにも思える十七夜の行動にわずかに首をかしげる四人。
「………………もしかして、八雲みたまとは知り合いか?」
「お互い、色々思うことのある
なんとなく察したさやかがそういうと十七夜はどこか色を失ったような表情でそう答える。
そこに懐かしむ、といった好意的なものなどありはしなかった。
「みたまさんが手を貸せないことはわかりました。でも、話くらいは聞きにいってもいいんじゃないでしょうか?もしかしたら何か教えてくれるかもしれませんし。」
「まぁ‥‥‥‥私たちより組織のことに精通しているかもしれないからな。それくらいなら徒労で終わる可能性も低いと思うが、どうだ?」
いろはとさやかの言葉に十七夜は少しだけ考えるような素振りを見せると、結局は八雲がどうするかだな、と言いながらも頷くのだった。
年上を年齢と体型ネタでいじるのたまんねぇなぁ!!
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない