ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
シラフでこれできないあたり自分もまだガンダムではないと思った
「あとはもうなるようになれ、としか言いようがないか。」
やちよたちとの最終確認を終えたさやかは一つ息を吐く。
猶予はもはや残されていない。
マギウスの目的がワルプルギスの夜である以上、反抗する側であるさやかたちはたとえ戦力が乏しい状態でも行動に移すだけしかできない。
「‥‥‥‥美樹さんはやれることをやっているわ。これは、どうやっても時間が足らなすぎるもの。数か月…‥もっと言うなら年単位でようやく向こうと張り合えるかどうかだと思うもの。だから足りない部分はみんなで補って、あの組織を止めに行きましょう?」
渋い表情を見せるさやかに隣にいるマミがそう慰めの声をかける。
掛けられた言葉にさやかは少し悩むような顔を見せたが、一言そうだな、と呟くと表情を緩ませた。
「…‥‥杏子と黒江に先行してもらっているからな。もしかしたら向こうでも何か情報を仕入れてきてくれるかも────ん?」
先に潜入しにいった二人に任せた英気でも養おうとか言おうとしたときにさやかは耳ざとくスマホの通知音が鳴ったのを聞き逃さなかった。
スマホの画面をつけてみると、そこにはメッセージが来たことを知らせる通知が。さやかがアプリをつけて送り主を確認すると、それはまどかから送られたものだった。
『今から会えたりしないかな‥‥‥‥迷惑だったりじゃなければいいけど…‥‥』
まどかとのトーク画面の中にそう書かれていたメッセージ。
彼女もワルプルギスの夜が神浜市に向かっていることを知っている。無論、さやかたちがそれの打倒に向かおうとしていることを。
心優しい彼女のことだからどうしても不安なのだろう。
その心中がわからないわけではなかったさやか。構わない、とまどかに返そうとしたが、その時には既に送られてきたメッセージが削除されてしまっていた。
「‥‥‥‥‥‥」
数瞬、間をおくように画面とにらめっこしていたさやかは即座に通話画面を起こし、まどかを呼びつける。
しばらく電話のコール音が耳に響いていたが────
『も、もしも────』
「遠慮する必要はない。私も、一度顔を合わせておきたいと思っていたからな。」
『────え、でも、大丈夫なの?』
さやかの切り出しに一瞬反応に窮したまどかだったが、至極まっとうな疑問が飛んでくる。
おそらく彼女の脳裏によぎっているのは外の様子のことだろう。
さやかが部屋のカーテンをめくって外を見てみると、確かに風は強いが雨が降ってくるような気配はない。
「まぁ、風は強いが雨は降ってないから用水路とか田んぼの様子を見に行くとかそういうのではないからな。」
『そ、そういうものなのかなぁ…‥‥‥』
「とはいえ、こういう電話越しで満足できるまどかではないだろう?」
『ま、満足って、そんな変な言い方しないでよ‥‥』
さやかの言いぐさにまどかはどこか恥ずかしがるような反応を見せたが、さやかから電話を掛けられたことがきっかけだったのか結局はまどかはさやかと一度顔を合わせたいと自身の本音を明かした。
「来たか。」
「うん……………って言ってもやっぱり風が強いね…………」
通学路の途中にある歩道橋で待ち合わせをした2人。
まどかの言う通り、風は強く、吹くたびに狭いところを通り抜けたような音が耳に入る。
若干の煩わしさを感じながらも、2人揃って髪を抑えている姿に思わず笑みをこぼしてしまう。
「インキュベーターは…………キュウべぇは相変わらずか?」
「そうなの!!もう聞いてよさやかちゃ〜ん!」
会話の皮切りにと出した最近のインキュベーターについて聞こうとした途端、堰を切ったような話し方で愚痴をこぼし始めるまどか。
どうやら相当しつこかったようだ。身振り手振りと体全体で表そうとしているまどかの姿に苦笑いと微笑みが入り混じった表情を浮かべる。
「わかっていたけど、こうまで頻繁に契約を迫られるとノイローゼとかになっちゃうよ〜…………」
歩道橋の手すりに項垂れるように頭を乗せるまどか。
そうまでしてまどかに契約を迫るのはやはりワルプルギスの夜が近づいていることも大きいのだろう。
「今日もか?」
「今日も。」
「それは災難だな。」
「むぅ……………返事に適当さを感じる…………」
さやかの返事に素っ気なさを感じたのか、頬を膨らませて不平不満を露わにするまどかには目線を逸らすことで逃れる。
そこからのまどかは今までの積もっていたものを全て吐き出すような勢いだった。
「……………ねぇ、さやかちゃん。大丈夫なの?」
ひとしきり話し、息切れを整えてるところから一転、どこか不安そうな面持ちを見せながらさやかに問いかけるまどか。
おおよそ優しいまどかのことだからそれを聞いてくることは分かりきっていた。
「………………わからないな。」
「!…………そう、だよね。わかる訳ないもんね…………」
さやかの答えにまどかは一度大きく目を見開いたあと、納得したような顔を見せるも俯かせる。
「だが、怖いと言うことだけは自覚している。」
「……………さやかちゃんでも、そう感じるくらいなんだね。」
「誰だって死ぬのは怖い。そう言ったのはまどかだろう?私も例に漏れないだけだ。」
「でも、さやかちゃんは行くんだよね?」
「………………ああ。もちろんだ。」
まどかの言葉に困り気味の表情で後ろ髪を触りながらも、はっきりとした声で返すさやか。
何も知らなければ、まだ平然としていられたかもしれない。
だけどさやかにはすでにそれができないくらいの繋がりがあった。
それを守るため、その者たちと共に明日へ進むためにさやかは神浜へ向かう。
「わたしが言えたことじゃないけど、さやかちゃんも相当なお人好しだよね。」
「………………まどかの卑屈な側面からくるものよりマシだと思うが。」
売り言葉に買い言葉。
さやかにそう言われたまどかは言ってはいけないことを、と言いたげに怒ったような顔を見せるとバッとさやかに飛びかかった。
突然の襲撃にさやかが面を食らっているうちにまどかは彼女の手からソウルジェムが変化した指輪をぶん取った。
「な、なにを────」
「へ、変なことはしないから!!」
ソウルジェムを取られたことに少なからず焦る顔を浮かべるさやかにそう言い返すまどか。
自身の魂が変化したものだから普通であれば是が非でも取り返すべきだし、まどかの発言も不審者のそれだがさやかは一言申したい気持ちを抑え、複雑な表情で待つことにした。
「────ありがとう」
さやかにそう返すと、さやかのソウルジェムを両手で包み、静かに瞳を閉じるまどか。
その様子はまさに祈りをささげているようだった。
「ソウルジェムは魔法少女が叶えた代わりに生み出されるモノ。だったらこの宝石は魔法少女が願いを叶えたっていう何よりの、ご利益のあるモノだと思うの。」
「‥‥‥‥人によってはいい顔をしなさそうだな、その認識は。」
「あはは、やっぱりそうだよね…‥‥‥でも、契約とかしていないわたしだからこそこのソウルジェムに、さやかちゃんの魂に今のわたしの願いを持って行ってもらおうかなって。」
「今の…‥‥?」
思えば、さやかはまどかから魔法少女になるとしたらどのような願いを叶えてもらうつもりだったのかを聞いたことがなかった。
今の、と称している以上何か別なものがあったのだろうが、ソウルジェムの素材や魔女化のことやほむらがこれまでたどった時間軸を聞かされたことで自身が契約することで悲しむ友達がいるのを知り、それを聞く機会もなかった。
「わたしはね、誰かを守れるような魔法少女になれればそれでよかったの。ある意味、契約した理由はさやかちゃんと似ていたのかも。」
「でも、ほむらちゃんのことを知ってからはそんな薄い理由で契約なんてできなかった。魔法少女になったことでこれからたくさんの人を助けられたとしても、わたしが戦えるようになったことで一番の友達が悲しむことは────わたしの願いじゃない、わたしが欲しいものとは違うんだって。」
「なら、今のまどかの願いは?」
当然、その疑問が浮かんださやかはまどかに問う。
「わたしは、みんなと一緒に未来を、明日を歩んでいきたい。その願いをさやかちゃんのソウルジェムに託す。だから────」
「────ああ。そのためにも、必ず生きて帰る。誰も死なせやしない。」
さやかの誓いにまどかは穏やかな笑みを見せながら、さやかにソウルジェムを返す。
その託された願いの込められた指輪を少し眺め、指に付け直した。
「じゃあ、そろそろ帰らないと。いつまでも外に出ているとお互いお母さんとかに心配されちゃうからね。」
そう言ってまどかは足早にさやかに背を向けて走り出す。
その背中を眺めるようにさやかも遅れて踵を返し、自宅への帰路を進み始める。
「…‥‥‥‥‥さやかちゃん!!」
ふと背中からまどかの大声が聞こえ、足を止めてゆっくりと振り向くさやか。
その視線を先には諸手を挙げて大きく手を振っているまどかの姿があった。
「またあした!!」
掛けられた言葉に一瞬驚いたように目を丸くすると、すぐに何か思いついたような笑みを見せる。
「…‥‥‥まどか。私の力の元であるガンダムは未来を切り開くための力だと聞かされた。」
「ふぇ…‥‥?」
唐突なガンダムの解説に不思議そうに首をかしげるまどか。
「未来を切り開くための力がガンダムなのであるのなら、未来を求めるまどかのその願いもまた、ガンダムだ。」
「私もお前も、ガンダムだ。だから、そんな寂しげな笑みを見せる必要はない。まどかの願いを背負った私はいつもまどかと共にあるからな。」
正直に言ってまどかの胸中にはみんなと一緒に戦えたら、という願望が全くないわけではなかった。
みんなと共に苦楽を一緒にする、などと聞こえはいいが、魔法少女になるということは文字通りよほどのことがない限り死が確定してしまうことだ。
それに引きずり込みたくないさやかやほむらの気持ちを理解したからこそ、今日まできゅうベェの誘いを頑なに断ってきたのだ。
だが、その小さな願望さえ見抜いて、さやかは自分と共にあると言ってくれた。
つまり、さやかが戦っているとき、まどかも一緒に戦っていると言ってくれたのだ。
「‥‥‥‥‥ホント、さやかちゃんには敵わないなぁ‥‥‥‥ありがとう。」
「美樹さん、こっちの方は準備OKよ。」
「わかった。なら向かうとするか。神浜市へ。」
「ご両親にはいいの?」
「正直見つかったら説明が面倒だから置き手紙をしてきた。少し世界を救ってくる、とな。」
「あら…‥‥‥なんだかあこがれそうな文言ね。」
まだ両親が起きていないのを見計らって自宅の外へ出る二人。
玄関の扉を開けるとワルプルギスの夜の接近を知らせるように強い風が二人を出迎える。
「…‥‥‥遅かったわね。もう少し早く起きてくるのだと思ったのだけど。」
「ほむらか。気持ちの方が十分そうか?」
自宅近くで待ち構えていたほむらにそう投げかけるさやか。
無論彼女に住所を教えた覚えはないが、前の時間軸で知っていたのだろうというていで話を進める。
さやかの言葉にほむらは左腕の盾に手を乗せると気を張った表情で頷いた。
「大丈夫。ワルプルギスの夜とか、諸々すべてを今回で終わらせてみせる。」
「了解した。なら足早に移動しよう。ぶっちゃけ父さんが起きてるみたいだ。」
「‥‥‥‥‥‥急ぎましょう!」
「ええ」
お互い顔を見合わせながら頷き、さやかの出したオーライザーに乗り、先に空へと飛びあがる二人。
その二人のあとをさやかも追うようにGNドライヴで浮かび上がるが、そのタイミングで玄関の扉が開け放たれ、息を切らしながら慎一郎が飛び出てくる。
「!!‥‥‥‥‥さやかッ!!」
玄関先にいないことにわずかに表情を曇らす慎一郎だったが、空から降り注ぐGN粒子のきらめきに導かれるように空を飛ぶさやかを見つける。
見つかったさやかは渋い表情を浮かべ、内心裁判の判決を待つ被告人かのように慎一郎の次の言葉を待っていた。
「…‥‥‥何をしてきたか今更は聞かねぇがよ、生きて帰ってこい。つるんでいる子供たちと一緒によ。」
「!!‥‥‥‥‥行ってくる」
慎一郎の送り出しにさやかは端的にだが、嬉しそうに言葉を返すとドライヴの出力を上げ、GN粒子の光を残しながら神浜市へと飛び立っていった。
平日ほとんど書けない………………多分更新これからも遅い…………ユルシテ……………ユルシテ……………
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
-
ガンダムだ
-
ガンダムではない