「くそっ……なんだこいつら。そこら中にうようよしてやがる」
肩に自らの得物であるICR-7、腰周りにはコンバットナイフ、iPadのような情報端末、そして9-BANGというフラッシュグレネード(閃光弾)を引っ提げた完全武装の状態で俺、福良英二は悪態をつく。
俺の視線の先には、騎士のような風貌をしたフルメタルの2メートル以上ある馬鹿でかい巨体が動いていた。
んー、どっかで見たことあるような……。
何か見つかるとまずい気がするので身を隠しつつ、どこかも分からない室内を移動する。
てか、数多すぎんだろ。そろそろ見つかってもおかしく……って、またもう一体いやがった!
しかし、気づいた瞬間にはもう遅く、俺とそいつは向き合った形となった。
「くそっ、目が合っちまった」
俺は
「何者だ。排除する」
そいつは俺に近づくと同時に、騎士のような風貌から、ハロウィンに出てくるようなかぼちゃ頭に姿を変え、火球を放った。
「っ?!おいおい、一体どうなってんだよこの世界は!!」
「死ね」
「くっ!すまんが殺らせてもらうぞ」
俺はダッシュとショートスライディングで火球を避けると同時にADS(銃のサイトを覗き込んだ状態)を早めるためジャンピングする。
「ぶっつけ本番だが、ゲームの感覚と同じ!やることは一緒だ!」
そうして20メートルほど離れた場所から近づいてくる
「くらいな!」
そうして俺は引き金を引くと、乾いた発砲音がフルオートにより断続的に鳴り響く。
「ぐはっ、、?!」
「悪ぃな、こちとら殺られる前に殺るしかないんでね。とりあえずこの趣味の悪い場所から脱出しねぇと」
俺は標的が消滅したのを確認し、再び走り出す。
---そもそも、俺がこのような状態になったのは20分ほど前に遡る必要がある。
どっから説明すべきか……とりあえず俺は死んだ、はずだった。不運な交通事故ってやつだ。享年20。人生何があるかわかったもんじゃない。
まあ特段自分の生に未練があった訳でもなく、死ぬ寸前にこれといった後悔もなかった。
1つ頭をよぎったこととして、ゲームをもっとしたかったということだ。特に、あるゲームをもっと極めたかった。
「CoDBO4」、大人気FPS、CoD(コールオブデューティー)シリーズの1作だ。
オンライン対戦によるマルチプレイ型のゲームで、プレイヤーのエイム力、立ち回り、状況判断能力等々の純粋な実力が求められるゲームだ。
俺はこのゲームが大好きで、自分で言ってはなんだがかなりの実力があったと思う。もう少しで日本代表に選ばれるところまで来ていて、ほんとにあと少しという所でお亡くなりになった次第だ。唯一、それだけが心残りではあったりする。
そんなゲーマーだった俺な訳だが……そう。死んだはずだった。
しかし、何故か意識が戻り、目を開けると応接室のような部屋の中にいた。
全く持って意味がわからない、最初は誰かに拉致されたかと思ったがここに捨ておく意味もわからないし、何より交通事故の記憶がフラッシュバックした。
数分戸惑っていると、俺は自分の近くにiPadのような情報端末が落ちていることに気づいた。
俺はそれを手に取り、電源を付けた。するとこんなメッセージが表示された。
--カスタムクラスを選択してください--
目が点になるってのはこういうことかと思った。画面をスワイプするとそこには俺にとっては見慣れたような画面が続いていた。
カスタム1
メインウェポン:ICR-7(中長距離に特化した安定性のあるAR)
アタッチメント:グリップ(武器の反動を抑える)、グリップⅡ(武器の反動をさらに抑える)、クイックドロー(ADSまでの時間を短縮)
サブウェポン:コンバットナイフ(切れ味の鋭いナイフ。近距離の敵に大ダメージ)
ギア:スティムショット(回復量の向上。また、回復再使用までの時間を軽減)
装備:特殊装備(使用スタイルにより変化)
PARK1:スカベンジャー(敵の死骸から弾を入手可能)
PARK2:デクスタリティ(乗り越え、登り、スライディング、武器切替が加速。ジャンプまたは乗り越え中の武器の精度が向上)
PARK3:ゴースト(敵の監視モニター、監視センサーに感知されなくなる)
俺は唖然とした。所々効果が若干違うところもあるがこれはまさしく、俺があのCoDBO4で設定したクラス選択画面そのものだったからだ。
ちなみにクラス選択とは、マルチプレイによる他プレイヤーと対戦する前に自らの装備を決める段階のことで、ここで自分の使いたい武器や性能を決める。
他にもカスタム2、カスタム3と続いていたが、とりあえず俺はこのカスタム1を選択した。
するとここでまた俺は驚愕した。なんてったって実際にカスタム1の装備を身にまとっていたのだ。俺の肩にはあのICR-7が引っ提げられていた。
ずっしりとした銃の重みを感じつつも何故か体にだるさは感じない。
しかし、まだ俺の驚愕はそこで終わらない。
手に持っていた情報端末に更なるメッセージが表示された。
--使用スタイルを選択してください--
俺は頭の中にはてなマークが浮かんでいたが、次の瞬間その意味を理解すると、驚きで声も出なくなった。
画面にはCoDBO4ではお馴染みのスペシャリスト達、AJAX、NOMAD、BATTERYといったキャラクター達が表示されていた。
ゲームにおけるCoDBO4では、カスタムクラス選択で自分の武器を決め、スペシャリスト選択という様々な特殊装備や特殊武器を持ったキャラクターから1人を選択し、そのキャラクターのスタイルに合った戦い方をしていく。
今、眼前の情報端末に表示されているのは、ゲームにおけるスペシャリスト選択に当たるのであろう。
俺は驚きで唖然としつつもAJAXというスキンヘッドで強靭な肉体を持つキャラクターを選択した。
すると容姿こそは変わらなかった(これは何気に安心した)が、腰にはAJAX固有の特殊装備である閃光弾、9-BANGが追加で装備され、情報端末の画面が切り替わり、「MISSION START」という表示から固有武器「バリスティックシールド使用不可」というような表示に切り替わった。
……ツッコミどころ満載でしかないが、とりあえずゲームにおいて固有武器は試合開始から一定時間が経つ、もしくは多くの敵を倒すと使用できるようになったが、果たして……。
ていうかMISSION STARTってなんだよ……。マジでそれを説明してくれ……。
理不尽極まりない現状に不満と不安しかないが、考えても仕方が無いので、一旦そこで思考を切りかえ情報端末も腰にしまう。
そうして俺は驚愕に驚愕を重ねつつ、じっとしているわけにもいかないので部屋を出て、現状に至るのだが……。
「マジでどういうことだよ……。あいつ、いきなり変身したかと思ったら魔法みたいなので炎ぶっ飛ばすわ、危うく死にかけるわ、俺も俺でCoDと同じ動きができるわ、意味わかんねぇ……。それにミッションってなんだよ、俺死んだんじゃなかったのかよ……」
もうこれはあれですか?転生ってやつですか?
そうだとしてもいきなり死にかけて笑えないんですけど……。
「はぁ……実際にCoDBO4と同じ装備ができて同じ動きができるのも嬉しいけど、やっぱり死にたくはねぇよ。……ってか、そう言えばスコアストリークは……っ?!」
そう言って俺は腰にしまった情報端末に手をかけようとすると、奥の広間にて男子高校生らしき2人が先程のフルメタルの騎士らに囲まれている姿が見えた。
「おいおいマジか……ありゃヤベぇだろ……」
どう見てもあの二人、普通の一般人だ。あの騎士のやつら、初見の俺に対しても殺す気で攻撃してきやがった。あの二人も……。
「っ?!」
そうしていると、1人の騎士が金髪の高校生に手に持っていた盾をぶつけ気絶させた。もう1人の高校生も同じように気絶させられ、騎士に担がれる。
「……さすがに見逃せないでしょ。でもどうする、アタッチメントにサプレッサーはついていない……。さっきは一体一だから何とかなったが多対一はまずい。……っ?!」
どうにかして2人を助ける算段をつけようとしていると、俺は騎士に担がれた1人の黒髪眼鏡の高校生を見て本日何度目ともわからない驚愕をする。
「まじかよ……あいつは……、、そういやさっきのかぼちゃ頭の化け物もアニメで見たことがある……。まさかこの世界、ペルソナ5……なのか?」
俺はこの世界が何なのかを悟った。