「後をつけたはいいが、これからどうする。ペルソナ5の世界と言ってもそんな詳しい攻略法とか覚えてねぇぞ」
俺は男子高校生2人を担いだ騎士達の後をつけ、地下へと進んだ。
豪華で煌びやかな地上フロアと比べ、地下は囚人を収容する監獄のような造りになっていた。
なぜ俺がこの世界をペルソナ5だと認識することが出来たのか、それは俺にペルソナ5のプレイ経験があったからだ。といってもプレイしたのはかなり前のことで、しかもそれほど入れ込んでやっていなかったため記憶はかなり薄れ、ほとんど使い物にはならない。そのため原作知識無双、ということが出来ず俺は慎重になっていた。
こんなことならもう1回プレイしとくべきだった……。
そんなことを考えていると騎士が気絶した2人をある牢屋に投げ入れ、牢の鍵をかけた。鍵をかけた騎士は何やらどこかへ行ってしまった。
「こんなとこで主人公が死ぬわけないと思うが、ほっとく訳にも行かねぇよな……」
俺は騎士が去った後、2人がいる牢屋へと向かい音が響かないほどの大きさで鉄格子を叩いた。
「おい、大丈夫か?」
「ん……いてぇ!」
俺の問いかけに金髪君の方が先に目を覚ました。ちなみに名前は忘れた。
「おい、大丈夫か?」
「うっせぇ!あんにゃろいきなり、、ってあんた誰だ?!」
「しっ!静かにしろ!……あの騎士がどこにいるとも分からない」
「お、おう……すまねぇ。てか、何で銃なんか持ってんだよ……。ひょっとして、あんた奴らの仲間か?!」
「いや、そうじゃない。たまたま連れ去られたのを見てほっとけなかった」
「へー……あ、そうだ!いきなりで申し訳ねぇんだけど、この扉の鍵外してくれね?!」
そう言って金髪君が懇願してくる。
そうしたいのは山々なんだが……。
「悪い、鍵を持ってないんだ。さっき閉めてたやつがいたからそいつから取ってくる。それまでにそっちの黒髪君を起こしておいて欲しい」
「と、取ってくるって言ったってよ……どうやって……」
いや、まあそりゃ……拳で?
「まあ多分大丈夫。んじゃ、そういうことで」
「お、おい!」
そうして俺は金髪君の呼びかけを無視し、さっきの騎士が歩いていった方向に向かった。
「あー、なんなんだよ一体!」
得体の知れぬ人物が去った後、金髪君こと坂本竜司は現在置かれた状況に苛立ちを隠せずにいた。
それも致し方ないであろう。転校生と共に学校に繋がるいつもの道を歩いていたはずが、見たことも無い城へと行き着き、中に入ると気味悪い騎士たちに侵入者呼ばわりされ、こうして牢に閉じ込められているのだから。
「あの騎士共、いきなり殴りやがって!それにさっきのあいつは一体……」
竜司は先程の銃を引っさげた人物を思い返す。
明らかに一般人、とは言い難かった。竜司は数秒考えたような素振りを見せる。
「全っ然わかんねぇ……。あー!くそ!今はあいつの言う通り、
竜司は近くで気絶している転校生の肩を持ち揺さぶった。
「起きろ、おい!」
そうして転校生、雨宮蓮は目覚めた。そんな蓮を心配するように竜司は声をかける。
「大丈夫か?」
「ここは……?」
「知るか……俺もさっき目覚めたばっかだ」
そこで竜司は蓮に対して、現状と銃を所持した人物のことを話す。
「そんな人が……」
「あぁ、今はそいつに頼るしかねぇ。ここん中に牢屋を脱出できそうなものもねぇしな。早く来てくれねぇとヤベぇ……っ!何の音だ?」
竜司と蓮は互いに顔を見合わせる。
何かガシャン、ガシャンという金属音が2人のいる牢屋に近づいてきていた。
竜司は一瞬、先程の武装者が戻ってきたのかと期待した表情を浮かべたが音の主はフルメタルの騎士であった。
「喜べ。貴様らの処刑が決まった。罪状は[不法侵入]、よって死刑に処す。貴様らは死を持ってカモシダ様の糧となれるのだ」
「はぁ?!!一体どういうことだ?!」
竜司は思わずそう声を上げ、蓮は無言で額に冷や汗を浮かべる。
すると騎士の後ろからもう1人、はだかの王様というようなガタイのいい男が現れた。
「フッフッフッ……そういうことだお前ら」
「お前は鴨志田?!」
竜司は自分の通う学校、秀尽学園の先生である鴨志田卓(かもしだ すぐる)の登場に驚きを隠せない。
「どんなこそ泥が俺の城に忍び込んだかと思えば坂本、お前だったのか。1人じゃ無理と踏んで仲間を連れてきたか」
「一体何を言ってやがる!こりゃどういうことだよ?!」
「フッ……喚いても無駄だ。これから貴様らは死を持って自分たちの罪を償うのだからな。お前ら、こいつらを連れ出せ!」
鴨志田がそう言うと、騎士数人が牢の鍵を開け2人を連れ出そうとする。
竜司はここにいてはまずいと感じ取り、牢が空いたのを見て逃げ出そうとした。
「おい転校生、こいつらマジだ!早く逃げ……がぁ?!」
「なっ?!大丈夫か?!」
しかし、その瞬間騎士の1人が竜司に盾を容赦なくぶつけ逃亡を阻止した。
「はっはっは!貴様らは終わりなんだよ!ほら連れてけ!」
「くっ……やめろ!」
蓮は抵抗しようとするも、すぐさま騎士に抑えられる。
「無駄だ無駄だ!逆らおうとするものは排除する!」
「くそっ……!」
蓮は己の無力さに嘆き、そして怒った。本当にここで終わりなのか、何も出来ずに終わるのか?そう自分に問いかけた。
その時、男の声が蓮の頭の中に響く。
「契約だ」
その瞬間、牢の中で青色の炎が巻き上がった。
「見つけた!」
俺の視線の先には牢の鍵を持つ騎士がいた。
よし、奴は俺に背を向け歩いている。これなら……。
俺はなるべく音を立てないよう騎士の背後に近づき、腰に装備したコンバットナイフを引き抜いた。
「む?何者だ?!」
しかし、さすがに足音が聞こえたのか途中で騎士に気づかれる。
俺は構わず首元に飛びつくと、いきなりのことで面食らったのか騎士は無防備になった。
そうしてナイフが刃こぼれしないよう甲冑で守りきれていない首の関節部分に刃を入れ、力強く引き抜いた。
「ふっ!」
「ぐふっ……」
騎士は呻き声を上げると同時に間もなく消滅した。
「人間じゃないからか……あんまり罪悪感は感じねぇな」
俺は騎士が持っていた鍵を手に取り、腰のポーチへとしまう。
「今のやつ、まだ意表をつけたから良かったが手馴れのやつなら危なかった。PARK3にデッドサイレンスをつけると気づかれにくくなるのか?」
デッドサイレンスはCoDBO4において、自分自身の足音を最小限にできるPARKである。これと武器のアタッチメントにサプレッサーをつけることで隠密性に優れた立ち回りをすることができた。
このペルソナ5の世界でどのような効果を発揮するのか未知数なところではあるが……。
「今は急がねぇとな」
牢屋に囚われた2人のことが最優先だ。PARK効果の確認はまた後でもできるだろう。
俺は周りに注意を払いつつ、二人の待つ牢屋へと向かった。
そうして無事、騎士に見つからず牢屋へとたどり着いたのだが、何か騒がしい。
「あれは……そうか!黒髪君、このタイミングでペルソナを使えるようになったのか」
牢の中では、制服とは打って変わって、黒のマントと赤い手袋をはめた黒髪君が、仮面のような顔と大きな黒い翼が特徴的なペルソナを使役し、騎士もといカボチャのシャドウを蹂躙している姿があった。
「奪え!アルセーヌ!」
黒髪君がそう指示を出すと、アルセーヌと呼ばれたペルソナが赤黒い光を発する魔法によりカボチャを一瞬で消滅させた。
「すげぇな……圧倒的じゃねえか。これは俺は要らなさそう……でもないな」
「いい気になるなよ貴様ら!この鴨志田の城において勝手はさせん!いけお前ら!」
俺の目には、鴨志田と名乗る男が後ろに控えさせていた騎士3人もといカボチャ3体を黒髪君に対峙させる姿が映っていた。
「一斉に攻撃しろ!」
「くっ……!」
いくらペルソナが覚醒したといっても、まだ使いこなせるはずもないよな。それに……。
「1体3は不公平だ」
俺は自分の得物であるICR-7の照準をすぐさま合わせ、立て続けにフルオートで発砲する。
その放った銃弾は全て、カボチャの頭部それぞれに命中した。
「「「ぐはぁっ?!!」」」
「なっ?!」
自分の配下達が一瞬で殺られたことに鴨志田は驚いている。
「腐っても日本代表(仮)のエイム力を舐めるなよ」
そうして俺はシャドウ達を消滅させ、スコープから目を離すのだった。