俺、蓮、竜司の3人はモルガナに教わった通気口から城の外へと出ることに成功し、城門を出た。
すると頭がぐらついたような感覚に襲われ、気づくと周りの風景はThe都会、という感じの街並みに変わっていた。
「おいおい、さっきまでのはマジでなんだったんだよ……。あれ?英二の格好も変わってるぞ」
竜司に指摘され、俺も自分の服装が先程までの武装した格好ではなく、死ぬ直前に着ていた普段着に変わっていることに気づいた。
「どういうことだ……。完全に武装が……いや、全部じゃねぇな」
俺は腰に装着された情報端末に気づき、自分の考えを否定する。
そんな中、蓮が慌てたように竜司に話しかける。
「竜司!時間……」
「げっ!もう昼かよ!」
「そうか、2人は学校なのか」
「あれ?英二は学校じゃないのか?見たところ同年代と思ってたんだが」
「ん?俺は20歳だぞ。あ、今まで通りタメでお願い」
「年上かよ?!」
そういや言ってなかったな。
「俺らは学校に行くけど、英二はこれからどうする?」
んー、そうなんだよなぁ。大学通ってたけど、ここじゃその大学もないだろうし。かといって行く宛てもないし……。あれ?これって詰んでる?
「あー……ちょっとこの辺知らない土地だから散策しようと思う」
「え、家とかどこにあるんだ?」
「……ちょっと親とかいなくてな」
「す、すまん」
あ、竜司に気を使わせたかこれは。
「なら、ここに行くといいかも。何かしら助けてくれるかもしれない」
蓮はそう言って[ルブラン]と書かれた名刺を手に取る。
「俺が居候させてもらってる場所だ。俺も世話になったばかりの身だが、色々助けてもらった」
「あ、ありがとう」
「あの世界で色々助けてもらった。お互い様だ」
蓮……さすがイケメン主人公だ。
「よし、じゃあ俺ら学校行くわ!マジで色々ありがとな、助かった」
「また英二とは会う気がする。その時はよろしく」
そう言って2人は走って学校へと向かった。
「蓮と竜司、いい奴らだな。さて、俺もお言葉に甘えてルブランに行くとするか。ルブランの場所は……」
そこで俺は重大な事実に気づく。
ルブランの最寄り駅は[四軒茶屋駅]、そしてここは[蒼山一丁目駅]、当然電車を使って移動することになるが……。
「あれ?俺金とか持ってなくね……?」
「はぁ……疲れた。校長も無理難題を押し付けないでほしいわね。今日は頑張ったし、ちょっと良いものでも食べようかな」
放課後、秀尽学園の生徒会長である新島真は渋谷のショッピングモールを訪れていた。
大学受験に向け対策を重ねつつ、生徒会長として学校の問題を次々解決していくことから、生徒のみならず教師陣からも頼りにされているThe優等生である。
「ちょっと高いけど、ここで美味しいものでも買っていこっと」
そう言って彼女はショッピングモール内の高級スーパーに足を踏み入れる。
「どれも美味しそう……どれにしようかしら」
「お客様、こちらなど如何でしょう?甘辛いタレが絡み合ってとてもオススメですよ」
ショーウィンドウの中にある惣菜に表情筋をゆるめながらカゴを持って歩みを進めていると、店員にオススメを紹介された。
「へぇ……とっても美味しそうです。じゃあこれにしよっかな」
「ありがとうございます。ではこちらで……え、新島真……?」
「え……?」
何故かその店員は、自分の名前を口ずさんだ。
ちょ、なんでここに新島真がいるんだよ!
あ、もう放課後の時間か……ってここ学生が来るようなスーパーじゃねぇよ!
俺、福良英二は高級スーパー内で声をかけた人物が自分の見知った人物であったことに驚きを隠せない。
そもそも、俺が何故ここで働いているのかに話を戻そう。
俺は蓮と竜司、2人と別れた後に金がないことに気づくと同時に、まず今日を生きるのに精一杯であることにも気づいた。
何せ近くの駅に行く金もないんだ、飯代などあるはずもない。
そこで俺はまず日払いのバイトを探そうという結論に至った。だが、蒼山一丁目駅付近には何もなかったので仕方なく、隣町の渋谷まで歩いて移動することにした。
そこで見つけたのがこのショッピングモール内の高級スーパーだ。日払いに加え、[高級]スーパーってことでバイト代もそこそこ良かった。また、人が足りていなかったのか即採用だったのも大きい。
俺は意気揚々としてバイトに取り組んだ。今も取り組んでいるはずだった、のに……ここに新島真が現れるとは予想外も予想外だ。
なんで新島真のことを覚えているかだって?綺麗で可愛い人の名前を忘れるわけねぇだろ。
そういう訳で現状に至るのだが……。
「すみません、何故私の名前を知っているのですか?」
それは綺麗で……じゃなくて。
「秀尽学園の生徒会長をされてますよね?それで少し……」
「え?あなた秀尽の生徒?」
「いや、秀尽の生徒に知り合いがいて、それであなたの名前を少し……」
おいおい、口からでまかせも過ぎるな俺。
「そういうことですか……。いや、でもおかしいです。名前だけならともかく顔を見て名前を呟きましたよね?」
す、鋭い……。やっぱり頭いいな……って褒めてる場合じゃねぇ!
こうなったら……竜司、名前借りるぞ。
「えっと、坂本竜司君ってご存知ですかね?彼と少し面識があって、彼に写真を」
「あー、2年の問題児君ね。彼と関わるのは程々にしておいた方がいいですよ。色々問題起こしてるみたいだし」
そうなのか?ゲームでもそうだが、何か良い奴だったと思う。
「ご忠告どうも」
「何か流されたような気がするけど……。まあいいわ。じゃあ、これもらえます?」
新島真には俺の言い分を納得してもらえたようで俺が勧めた惣菜を買ってスーパーを出ていった。
「あぶねぇ……心臓に悪いぞ」
口は災いの元だな。今後気をつけよう。
こうして俺は初日バイトをハプニングに苛まれつつも乗り越えた。
時刻は現在22時、バイトをするまではルブランに行こうと思ってたけど、よくよく考えれば他所に迷惑かけるわけにも行かねぇよな。
お金も少しはあるわけだし、ネカフェにでも泊まろう。
そうして寝床が決まり、疲れた体を癒そうと思ったのに時である。
<ピコン>
腰に装着された端末から通知音のようなものが聞こえた。
俺は腰から端末を取り外し、画面を表示すると次のようなメッセージが入っていた。
<MISSION完遂期限:残り20日>
「おいおい……だからMISSIONってなんだよ」
そこを教えてくれよ、そう思いつつMISSIONの文字を何気なくタップする。
するとMISSIONの詳細が表示された。
「なんだ、出るのかよ……えーなになに」
<カモシダパレスの攻略>
「これってどう考えてもあの世界の攻略だよな……。ゲームもそうだったし。あー、結局あの世界に戻らないと行けねぇのかよ」
生死をかけてあの世界を攻略する、俺にとっては憂鬱でしかなかった。
だが、やってやるしかない。幸い敵はそれほど強くなかった。ヘッドショットでダメージを与えていけば倒せることも分かった。
「くそっ……やってやるよ。となれば本気で挑んでやる、その前に……この端末で色々確認しねぇとな」
俺はそうしてクラス選択画面を表示した。