やはり俺が十師族を守護するのは間違っている。 作:ハーマィア
遅れて申し訳ないです。劣等生の新刊読んだり読み返してたりしたら遅くなりました。
深雪の新魔法ってあのキャラと関係してたりするのかなあと思ってます。
〜人物紹介〜
比企谷八幡
六道の人間としてある種の特権を保有しており、暇な時間を持て余して怪しげな実験を行ったりしている。今作限定で兄と姉(オリキャラ)がいる。
関本勲
苦労人。朝に気持ちよく登校していたら痴漢から犯行予告を受けたり、その痴漢の女風呂のぞきの冤罪を晴らす為、旧長野県のとある場所(四葉本家所在地)に夜の9時に東京にいたのに呼び出されたりした。哀れなエピソードはまだまだある。
渡辺摩利
猫は飼ったことがないが猫が好き。かわいいものが大好き。どうでもいいが彼女の恋人修次のメアドを八幡は知っていて、メールのやり取り件数は僅かに八幡の方が多い。
森崎昴
スバルってキャラ既にいるけど気づいたの森崎が出た回を投稿した後だし一回決めた名前とかあまり変えたくないのでこの昴は沖矢昴の昴です。
「…………ちっ、まだか……?」
静寂とは本来、心を落ち着けるもの。
荒ぶりを鎮め、心のさざなみを穏やかにするものだ。
放課後の日差しが窓の隙間から入り込み、生徒たちの喧騒は何処か遠い出来事のように思える。
暖かい風に吹かれながら、ゆったりと読書でもしていたい春の心地良さだ。
「…………」
——しかし、着席しその場の空気を直に味わっている風紀委員の関本の内心は、この場から今すぐにでも立ち去ってしまいたいと訴えていた。
理由は、キレたら怖い風紀委員長が既にキレてしまっていること。
その原因は、——ばん。
「……っ!?」
びくり、と摩利の肩が揺れる。音を立てて扉を開け、部屋の中に入ってきたのは、諸々の事情で風紀委員の雑用を手伝う事になった八幡だった。
「すいません、遅れました」
何やら荷物を抱えており、両手で持つその箱は随分と重たそうだ。どうやら扉を肩で押してあげたらしい。
しかし、彼女が驚いているのは、彼が荷物を抱えている点、謝るのは口先だけの悪びれもしないその横柄な態度に対してではなかった。
生徒会室もそうだが、この部屋の扉にも電子キーで解錠施錠する電子ロック機能が備わっており、基本的に入室しようとする者は、入室申請の後に内側から解錠してもらわなければ入ることができない。
だというのに、チャイムが鳴るどころかロックが破られた時の警報すら鳴らなかったのだ。
……警備システムが無効化されたのか?
その事に摩利やその他の風紀委員が戦慄していると、箱を抱えた彼——比企谷八幡が口を開いた。罪悪感を抱えている様子は全くない。
「……何をした?」
「はい?」
摩利が八幡に鋭い視線を向ける。が、帰ってきたのは困惑の問い返しであり、どうやら本気で摩利の質問が理解できていないようだった。
「その扉……鍵がかかってた筈だが、どうやって開けたんだ?」
針金で開けられるような安い仕組みの鍵ではない。この学園で部屋の鍵として採用されているものの殆どは、今では主流となっている鍵がなければ開けることができない電子キータイプなのだ。
それの解錠を、襖を開けるかのような気軽さでやってのける。
敵意のある無しに関係なく、学園にとってこの男の存在は危険だ。
…………まさか、無自覚でやってのけた、なんて事はないだろうが。
そんな摩利の思い込みにも似た心配を払拭するかのように、テーブルに箱を置いた八幡はスラックスのポケットから一枚のカードを取り出し、摩利に見せる。
「ああ、これですよ」
「……なんだ? それは」
見た目はただの名刺サイズの黒いカード。
中にチップが内蔵されており、これをかざすだけで鍵が開く仕組みのようだ。
ただ、風紀委員会本部のキーは摩利が持っているし、全ての扉を開けられるマスターキーは職員室にある。
加えて、スペアキーの存在など聞いたこともなかった。
だからこそ、摩利は八幡がどうやって開けたのか気になったのだ。
方法如何によっては、処罰を停学処分に差し戻すことを検討しながら。
「ああこれですか」
しかし、摩利の心配は杞憂に終わる。……八幡にとっては、当たり前のことだが。
「統合型マスターキーです」
八幡が示したそのカードの正体は、ただのマスターキー。これをポケットなどに忍ばせて鍵を外から開けたのだろう。
「有事の際には我々六道が即座に動くことが求められてるんで、いざという時にどこでも駆け付けられるよう、学園長より特別に発行していただいたうちの一基ですよ。去年は六道の人間がいなかったから目にする機会もなかったと思いますが」
淡々と、事実を口にする八幡。ただこの場合、正直は口にしない方が良かった。
「……六道というのは、学園から特権階級でも与えられているのか?」
こういった反感を買ってしまうからだ。
「正式な申請と許可の下に発行してもらってます。授業免除だって、それなりの功績と成績を俺達
「入学初日に痴漢をやる輩が、未だ何の処分も受けずにこんな場所にいる。特別扱いと言わずに一体何と言うんだ?」
トゲのある眼差しで八幡を見つめるのは、椅子に座る風紀委員の一人。先輩だ。
八幡にとって名前も知らない彼は、ただの反感で物を言っているように見えた。
「……ああ、だったら先輩も生徒会長に具申してくれませんかね。『風紀が乱れる』って」
しかし、この場に限ればこの発言が八幡にとって好ましく働く。
「……何?」
「俺もその罰としてやらされてるんすよ。しかも被害者の意向とやらで更生プログラムみたいなのになってるし、俺への罰が適切に行われる為にも、先輩も協力してください」
八幡の処分に対する反論が、八幡以外のところから発生した。こうして八幡に反感を持つ人数を増やしていけば、自分に対する処分をより重くすることも可能になる。
そうすれば、六道からの離脱も早める事ができるだろう。
「……なるほど、イヤイヤか」
「はい」
まさか風紀委員の中に
内心では薄ら笑いをしながら、いかにもやる気なさげな視線をその男に向けた。
しかし——
「では、よく仕事に励むように。それが委員長や生徒会の決定であるなら、俺は文句は無い」
「!?」
風紀委員の男はそう口にすると、八幡から視線を外してしまう。それからは黙ったままであるし、もう八幡への興味は無さげだ。
「……そう、ですか」
多少だが懐いてしまった落胆の感情を顔に滲ませながら、八幡は言葉を絞り出す。
自分に向けられる負の感情には何のダメージを受けなくても、自分を見透かした視線に八幡は弱いのだ。
こほん、と摩利が咳をした。
「というわけで、比企谷がここにいる理由は懲罰の為だ。私は本部待機しないといけないし、誰かこいつと2人で行動してほしいんだが……誰かいないか?」
摩利の後、一呼吸置いて八幡の視界から左側の席に座っていた関本が手を挙げる。
「自分が連れて行きます。ちょうど今日、墨鐘が休みですので」
見れば、関本の隣は空席。普段関本と組んでいる生徒が、今日は病欠しているのだ。
「……わかった。比企谷は関本と組め。あとの新人2人には私から説明するとして、……これ以上は特にない。出動!」
摩利の声と同時に、4人を除いた風紀委員がCADや携帯カメラを手に部屋を出ていく。すれ違う際、達也が親しげな視線を向けられているのは八幡が来る前に何かやりとりがあったのだろうか。
そう考えていると、八幡は関本に肩を叩かれた。
「……なんすか?」
不機嫌そうに尋ねる八幡に関本が見せたのは、カメラ機能の付いた携帯端末。
「……本格的な盗撮の仕方の伝授ですか、……っ!?」
関本の水平チョップが八幡の左脇腹を捉え、彼の言葉を奪った。
「ほら、行くぞ。今日はとりあえず見廻りルートの確認だ。備品の使い方は歩きながら教える。……それで良いよな、渡辺?」
衝撃でぐらついた八幡の首根っこを関本が掴み、ずるずると引き摺っていく。
「あっ、ちょっ!? ……新人イビリが過ぎてませんかねぇ!?」
「これがウチなりの問題児に対する最大限の歓迎だ」
新入りというか、手慣れた備品扱いだった。
その、妙に馴らされた感のある2人のやり取りを摩利は黙って見つつ、先程の関本の質問に対して答えを返した。
「ああ。……そいつの見張りも頼むぞ。逃げないように、な」
「勿論だ」
「ではこれで……」と摩利が部屋に残ったもう2人の新人、達也と森崎に向き直った時。森崎もちらちらと主に八幡に目を向けながら、手を挙げた。
「あ、オレも行きます。このタイプの使い方は家柄よく使いますし、風紀委員のルールも昨日勉強してきました。1人で行動するよりは三年の先輩の動きを身近に見たくて……よろしいですか?」
もしかしたら自覚していないかもしれないが、森崎は熱のある視線を八幡に向けていた。達也は元より、色恋沙汰に比較的疎い方である摩利にも、わかってしまうくらいには。
まさかこいつ、モテるのか——そんな邪推を摩利がしてしまう程には。
「あ、ああ。……それでは、達也くんに教えた後は対策本部に私はいるから、何かあれば其方に来るように」
2人が纏う謎の空気に気圧されつつも摩利が返事をすると、その言葉に反応した八幡が顔を上げる。
「たいさくほんぶ?」
風紀委員会本部で先程まで話されていたことだが、八幡は知らないのだ。
「今日から部活動の勧誘期間に入る。CADの携帯も解禁されるし、実質無法地帯化する場所も少なくない。だから我々風紀委員が出張るんだよ」
「なるほど……」
頷き、納得している様子の八幡だが、その声色はどこか他人事のように聞こえる。
いや別にだからといって文句はないが、と摩利は話を変えた。
「……ところで、君が持ってきたこの箱の中身は何なんだ? ここに置いておかれても困るんだが」
「ちょっと預かっといてほしいんです。他に預けられそうなとこもないですし、後で引き取りに来ますから」
「……? 一体何が、……っ!?」
おもむろに、封がされていなかった箱の蓋を開ける——と。
「……っ!?」
それを見た途端、八幡が唐突に姿を見せた先程以上の驚きが、摩利を襲う。
しなやかなでありながらどこか愛くるしさを感じさせる姿。
今はまだ、鋭さを感じさせないつぶらな瞳。
…………にゃーん。
「はぅえっ!?!??!!??!!?」
自分を見つめる二つの眼に、自分が何者であるかを忘れて、普通の女の子のように摩利はそこから飛び退いた。
そして、恐る恐る覗き込み——唾を飲み込んだ。
「……な、こ、これは……」
控えめに言って猫。大袈裟に言って猫。どう見ても猫。世界情勢の安定しないこの時代、魔法師にとって縁遠いペットという名の動物が、そこにはいた。
「……仔猫、か」
ふみふみ、と頼りなさげに足下に敷き詰められたトイレ代わりのタオルケット(紙類は貴重品だ)の感触を確かめていたそれは、摩利の視線に気付き、ふにゃあと鳴いた。
威嚇も警戒も何もない、敵意すら知らない無知さから来る眼差しは、摩利の心を射止め、絡めとる。
「さっきそこで拾いました。後で持って帰るんで、できれば預かってて欲しいんですけど」
「いや……あのな、私は動物を飼ったことはないんだが……」
震えながらも、残った理性を総動員して遠慮する姿を見せつける。それは、風紀委員長としての矜恃か、或いは未知の存在への恐怖か。
しかし、そんな抵抗は結果的に無意味だった。
「餌とかは箱の中に入れてあるんで、よろし——」
にゃん。
箱の中から飛び出す仔猫。まだ生まれたばかりだろうに自分の体長の何倍も跳躍して見せるのは、流石に鳥獣の血が為せる技か。
……って、そんなのに見惚れてる場合じゃ——!
猫は基本的に自由奔放だ。爪とぎなどで家具などを傷つけられてしまうという話はよく聞く。
そして今ここは風紀委員会本部室。荒らされたら困るものだらけで、達也によって綺麗に片付けられたばかりの部屋なのだ。
猫に向けて伸ばそうとする摩利の手は虚空を切り、飛び出した仔猫の四つ足は八幡の左肩を踏んだ。
「……ん、なんだ?」
仔猫は左肩に着地した後、右肩に移動してから八幡の頭によじ登り、何度か感触を確かめた後に、落ち着いたのか伏せて目を閉じた。
拾ったのは自分だし、理由はわからないが何より頭上から離れそうにない。そう判断した八幡は、諦めたように口を開いた。
「‥‥連れてきます。それじゃ」
八幡が仔猫を入れていた箱に手を向ける。——と、中に入っていたものも含め、次の瞬間に箱が僅かなチリを残して消えた。
「……!」
「……どんな手品かね」
八幡の使った魔法に対する反応は、それぞれ違う。
達也は流石に声を上げるような真似はしなかったものの、彼は目を見開き、八幡は比較的よく目にする驚愕の表情を浮かべていた。
摩利はただ呆れていただけだ。それは単に、その魔法以上の驚きを知っていたからかもしれない。
「では失礼します」
部屋から出ていく三人プラス1匹を見送る2人だが、その後達也に行われた説明でも、2人とも八幡の使った魔法に関しては口にすることはなかった。
次はワートリ短編の予定。キャラはミラで、テーマは深夜のチェーン店ラーメン。