やはり俺が十師族を守護するのは間違っている。   作:ハーマィア

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閑話【立つ鳥跡を濁さず】

 4月中旬、第一高校はテロリストの襲撃を受けた。

 

 反魔法主義を唱える団体「ブランシュ」がそのテロの主犯であり、その首謀者はブランシュ日本支部のリーダー、司一。司は義理の弟や魔法への劣等感に悩む第一高校の生徒達の心の隙間につけ入ることでテロの手先として仕立て上げ、それによって事態はより複雑かつ長期化することとなる——筈だった。

 

『う——がっ!?』

 

『ぐ……あ』

 

 テロが行われた当日、テロをカモフラージュする為に開催されていた討論会。そこで不自然な現象が起きた。

 

『魔法を使用しないでください! 暴発します(・・・)!』

 

 魔法が、爆発したのだ。

 

『なんだ……?』

 

 その現象が最初に観測されたのは、丁度テロリストが学園に最初の攻撃を仕掛けた時。

 

 キャストジャミングではない手段(モノ)による魔法の妨害を受け、第一高校の殆どの教員や生徒は魔法による抵抗や反撃が不可能になった。

 

 魔法が機能しない、のではなく魔法を発動することができない。

 

 学園側がそんな事態に陥れば、銃や爆弾を所持したテロリスト達によってあっという間に制圧されてしまう——かに思われたが、三浦優美子や六道、その他の魔法が暴発せずに魔法を使うことができた生徒や教員が存在したことによってテロリスト勢力は一掃され、捕縛された。

 

 そして魔法が暴発するという異常現象も戦闘が終息すると同時に止み、生徒達は魔法を問題なく使えるようになった。

 

 その現象については真由美や克人達はテロリスト達が持ち込んだ新種の対魔法仕様兵器の一種じゃないかという推測を立てているが、そんなものはテロリストの所持品からは見つからなかったため、未だその確証はない。

 

 幸いにも物理現象として観測される類の爆発ではなく想子情報体の爆発にとどまっていた為か、怪我人が出る事はなかった。

 

 しかし、達也が危険視しているのはこの程度のことではない。

 

 謎の現象の効果が続いていた間は達也や深雪も魔法が使えなくなっていたが、それも大した問題ではないのだ。——結果からすれば。

 

 達也が本当に危険視しているのは、テロの手先として利用された壬生紗耶香との対峙でも、日本の魔法に関する情報が抜き取られようとした事でもない。

 

 その後に行われたテロリストの拠点を制圧する作戦にて、彼はその根源——恐怖とすれ違っていたのだ。

 

『なん……だ……? これ、は……?』

 

 テロリストの拠点を壊滅させるという任務自体は成功した。だが、達也たちが手を下した訳ではない。

 

 何故か。

 

『……死んでる……のか』

 

 テロリストの首謀者が潜伏していると思われる廃工場。その場所への突入時、大量に発見された死体。物言わぬモノと成り果てた敵のその姿が、全てを物語っていたからだ。

 

 達也たちにとって敵と見なされる者全てが死んでいたのだ。死体が相手では流石に戦闘の起こりようがない。

 

 しかも、死体の様子から見るにただ殺されたのではなく……おそらくは拷問を受けて、その最中に死んだか自殺したのだろう。

 

 胸に孔を空けた者。眉間に孔が空いた者。

 

 首だけを残し、それ以外がお留守な者。

 

 特に、リーダーである司一の死に様は酷い。

 

 死ぬ前に余程の拷問を受けたのか或いは恐怖を味わったのか、死に際の痛みを簡単に想起させてしまうほど凄絶な表情で、伸ばした左腕と胴のみの体で息絶えていた。

 

 その腕と顔の向けられた先には彼の身体の残りのパーツと思しきモノが乱雑に散らばっていて、彼が絶望と苦しみの中で死んでいったことがありありとわかる。

 

『…………っ』

 

 そのあまりの惨さに、どうしてもと着いてきた深雪は吐き気を抑えられず、達也も思わず顔を顰めた。

 

 

 

『……証拠隠滅の為、コイツらの背後にいる連中に殺された……とかか?』

 

『この死体の様子だと、死亡から三、四時間は経過してます。桐原先輩の推測通りだとすれば作戦開始とほぼ同時——いえ、テロ開始の少し前ですか——に、「粛清」された事になるので辻褄が合いません』

 

 克人が呼んでいた、自分達が暴れた後の処理をする予定だった『片付け担当』が、ブランシュの構成員たちの死体を片付けている横で。

 

 ブランシュ掃討作戦に参加した桐原と達也は、片付けられていく死体を横目に話をしていた。

 

『同盟どころかブランシュを捨て駒として見てるなら、自分達に繋がるものを消すという意味でもあり得る話じゃねーか?』

 

『日本での数少ない活動拠点を犠牲にしてまで、ブランシュを操る黒幕がこの作戦に賭ける理由があるとは思えません』

 

『まぁ、そりゃそうか』

 

 ちらり、と視線を外す桐原。その先には深雪達女子の姿が。

 

 ……達也たちと同じく作戦に参加したエリカや結衣達は、ここから離れた場所で休憩している。今後の作戦がどう、ではなく、精神への圧迫を和らげ、リラックスして落ち着きを取り戻すためだ。そして、友人と会話をする事で、深雪の調子が戻っているように達也には見えた。

 

『それに』

 

『?』

 

『これでは、黒幕の目的がブランシュが挙げる成果の取得ではなくブランシュ自体の粛清の方に偏りますし、エガリテのようなブランシュの下部組織をも潰す羽目になる。蚊に刺されたからと腕を切り落とすようなものですね』

 

『そうなると……か』

 

『ええ。我々よりも先にブランシュを潰した第三勢力がいる……という事になります。それも、恐らく我々と目的が違う』

 

『まさか、それがお前たちが探している比企谷って奴なのか?』

 

『可能性はあります』

 

「でも、比企谷がこんな事をする理由がない」——と言おうとしたところで、二人の会話に新たな声が出てきた。

 

『ここを襲撃したのは比企谷くんじゃないわ』

 

 そう言って二人に話しかけたのは、雪ノ下雪乃。名目上は十師族である克人の護衛としてここに同行してきていた……が、実際は達也たちが機密を漏らさないように遣わされた監視役、といったところか。

 

 血縁上は深雪や達也の親戚にあたる彼女は、不機嫌そうな顔で達也を睨んだ。

 

『……比企谷が犯人だと言うのは確かに臆測でしかないが、君は何故断言できるんだ?』

 

『こんなに手間のかかる殺害方法を彼が取るとは思えない——というか、そもそも証拠が残るはずが無い。あんなのでも、四葉家の次期当主候補に挙がるくらいには優秀だから』

 

 次期当主——その言葉に、達也は動揺しかけた。

 

『あの、十師族……四葉家の、次期当主だと?』

 

『ええ。信じられないのも無理はないかもしれないけど』

 

 信じられなくて動揺する、というよりも、謎が解けて動揺しかけた、という反応だったが。

 

 あり得ない。あのような男が。——そんな思いとは裏腹に、確かに達也は納得していた。

 

 どうりで深雪に嫌われるような行動ばかりを取るわけだ。

 

 恐らく四葉家当主である四葉真夜は、八幡を四葉に結びつける為に四葉の血をより強く引く深雪との婚姻を企んでいる筈。

 

 それを知っていた八幡は、わざと深雪に嫌われる——下手をすれば殺されかねないほどふざけた真似をしていた。

 

 そして、そうすれば真夜に対する深雪の(・・・)反抗心が高まり、二人の不仲を目にした真夜は八幡を諦めて深雪を次期当主にさせる筈——とでも、考えたのだろうか。

 

(……しかし、そんな事であの叔母上が簡単に諦めるものか)

 

 次期当主候補という言葉が雪乃の口から出た以上、候補に上がっているのはほぼ確実。

 

 それに、候補などと呼ばれていても実際に権力争いをする事はない。

 

 当主である真夜が一言告げるだけで、次期当主は決まってしまうのだから。

 

『んじゃ、その比企谷って奴の仕業じゃないなら、一体誰がこれを?』

 

 桐原の一言に乗る形で達也は、思考を切り替えることにした。

 

『……雪ノ下さんは、誰がやったと思う?』

 

 雪乃が八幡の仕業ではないという事をほぼ確信しているようだし、達也にはそもそも心当たりがない。

 

 こんな殺し方は間違いなく特殊警察でもありえないだろうし、軍が動いたなら克人が何か掴んでいる筈だ。

 

『わからないわ。でも、何処かの組織の仕業にしても後始末がお粗末過ぎる。……それに、見て頂戴』

 

 雪乃が目を向ける先には、未だ運び出されてはいないものの、整列された遺体が並べられている。それらを指して、雪乃は言った。

 

『殺され方は様々だけれど、全ての死体から心臓が失われている。そして、それ以外は要らないとでも言わんばかりに乱雑に散らかっている。まるで食い(・・・・・)荒らした後(・・・・・)みたいに(・・・・)

 

 最後の言の葉、何かを確信しているかのような雪乃の物言いに、達也は彼女と視線を合わせる。

 

『……食い荒らした、だと?』

 

『臓器売買の為ならもっと使えるところも残っているし、ただの拷問殺戮なら心臓を全て持ち去るのはおかしい。合理的じゃないんですよ、この場に残された証拠全てが』

 

『……えと、そういうの、なんつーんだっけ。……確かかに、かーにば……』

 

桐原が思い出すように呟くと、雪乃が捕捉した。

 

『カニバリズム。人肉嗜食とも言いますが、それは人間が同じ人間を喰らう場合に指す言葉であって、この場合、彼らを喰ったのは人間じゃない。ですのでカニバリズムと呼べるかどうかはわかりませんが』

 

『よくわかんねぇが……ブランシュは、俺らでも仲間でもない完全な第三者に襲われたということか?』

 

『その解釈で間違いありません。そして恐らく、ブランシュを襲撃した犯人の目的は「栄養補給」だったのではないでしょうか』

 

 まるで教科書を読むかのように、雪乃はすらすらと言葉を並べる。その説明に違和感は感じられなかったが……。

 

 そこで達也が待ったをかけた。

 

『待ってくれ。雪ノ下さんは、ここを襲撃した連中の正体に心当たりがあるのか? だから、ここまではっきりとした推測を……』

 

 前提よりも仮定よりも、心当たりがなければできない推理だ。この状況証拠から見るに、心臓のみを目的としたチャチな組織犯罪と判断する方がまだありうる話だと言える。

 

 何よりも、確信がなければ、食うだの栄養だのと人間をそんな目で見られる理由がない。

 

 そんな問いかけに、雪乃は軽く頷いた。

 

『ええ。……といっても、私も知っているのは彼らの存在と通称だけ。それも祖父や祖母などから聞いた、御伽噺のようなものでしかないけど』

 

 ため息をつき、呆れるような仕草を見せる雪乃。

 

 夜の星が輝き始めた中、彼女は再び口を開いた。

 

 

 

『十神』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時の流れは残酷だと人は言う。

 

 時と共に変わらぬものはない、と人は決めつける。

 

 変化は劣化だと人は嘆く。

 

 だが、その残酷な変化こそが世の常であり、流動する時代こそが唯一不変の真実である。

 

 100年前と100年後の世界が同じであるはずがなく、100年前では超貴重で高価であるとされたものが技術革新などにより、100年後には世にありふれて見向きもされなくなることもある。

 

「レオ!」

 

「達也、パス!」

 

 また、長い年月の中に埋もれていく物もある中で、発展や進化などを遂げて100年後にも生き残り続けているものもある。

 

 たとえば、スポーツ。

 

 サッカーを起源としてハンドボールという競技が生まれたように、ルールの改定が行われたり、新競技として全く新しいものが生まれたりして、スポーツは人々に楽しまれている。

 

 達也たちが今授業の一環としてプレイしている競技〝レッグボール〟も、そうして生まれたものの一つだ。

 

 今、ゲームをしているコートはその四方が穴の空いた透明な壁に囲まれ、天井も壁と同じ頑丈な素材で塞がれている。その中で、決められた人数に分かれてボールを蹴り合っていた。

 

 これだけだと屋内フットサルと勘違いしそうになるが、レッグボールはその特徴の一つとして、壁や天井を使う——つまり、ボールを壁や天井に当てて反射させることができる。

 

 そして、ボールの材質と壁のスプリング効果によって反射性能を高められたボールは、箱の中を縦横無尽に跳ね回ることになり、そのスピード感あふれるプレイがまた、「魅せる競技」としても人気を博している。

 

「……」

 

 レオからボールを受け取り、相手チームの生徒を天井の反射を使うことで躱した達也。

 彼はそのまま自分でゴールに突っ込むよりも、近くにいた味方にパスで繋げることで、得点を確実のものとした。

 

「……?」

 

 試合が達也たちの圧勝で終わった後も、そのシュートを決めたクラスメイトからの妙な視線を向けられていなければ、或いは達也は、その生徒と言葉を交わす機会を失っていたかもしれない。

 

「ナイスプレー、吉田。いいシュートだったぜ」

 

 いや。彼には、特にコミュニケーション能力に優れた友人がいた。

 

 レオのお陰で、達也はそのクラスメイトと知り合えたのだと言えるのかもしれない。

 

「ああ、うん。……できれば、名字じゃなく、下の名前、幹比古って呼んでくれないかな。名字で呼ばれるのは好きじゃないんだ」

 

 達也からのパスでシュートを決め、その前からずっと達也に視線を向けていた生徒の名は、吉田幹比古。

 

 熱血系を思わせるレオとは対照的な、落ち着いた雰囲気を纏った少年だ。

 

「分かった。俺もレオでいいぜ」

 

「ありがとう、レオ。……それで、えっと……」

 

 休憩していたところにやってきたレオと親しげに言葉を交わす幹比古は、次に達也にも顔を向けた。

 

 その視線はどこか遠慮しているというか、達也に対して何か考えていそうな面持ちだ。

 

「司波達也だ。俺も達也でいい」

 

「……あ、うん。よろしく」

 

 先程感じた視線の意味も気になって、達也は自分から手を差し出した。

 

 幹比古は遠慮がちに手を取り、達也と握手を交わす。

 

 形だけ、ではなくしっかりと握り返してくれている。

 

 嫌われているという雰囲気ではなさそうだ。

 

「君とは一度話をしたかったんだ」

 

 幹比古に対し色々と考えていた達也だったが、幹比古のその言葉に何か決意したような強い意志を感じて、それを知るべく再び彼と目を合わせた。

 

「奇遇だな。俺も、幹比古とは前々から話してみたいと思っていた」

 

「……あー、うん。話、というか。相談、というか。……達也って、生徒会に入ってるんだよね?」

 

「いいや。俺は風紀委員だ。生徒会所属なのは妹だよ。……生徒会に用事か?」

 

 相談。それに、幹比古は達也個人よりも生徒会に目的があるらしい。

 

 先月の事件から考えても、この学校は生徒が中心となって運営している事からも、生徒会を頼る人間が多いというのは別に珍しいことではない。

 

 だが……。

 

「そうだったんだ、ごめん。……うーん? でも、今年生徒会所属になって、生徒会から出向って形で風紀委員で仕事をしてる一年の男子生徒がいるって聞いたんだけど……達也の事じゃなかったんだ」

 

 取り次ぎをしようか、と口を開きかけた達也に幹比古が妙に既視感のある人物像を口にした。

 

「……ああ。それと全く同じ男子生徒が風紀委員で仕事をしていたから、多分そいつの事だろうな」

 

 それは達也にとって無視できる相手(八幡)ではないが、十師族絡みの事件だ。それを気安く噂を確かめ合える相手(幹比古)でもない。

 

 だから達也は、手早く適当(テキトーではない)に、幹比古の用事を済ませよう——と思っていた。

 

「なぁ幹比古。生徒会に用事があるなら、達也に言えば取り次いでくれるんじゃねえの? ほら、妹が生徒会にいるんだからよ」

 

 そう言ってレオは幹比古に提案するが、

 

「あ……いや。達也が風紀委員だと分かったし、達也に伝えればそれで十分かな」

 

「そうなのか」

 

(生徒会でも風紀委員会でも、どちらでも構わない……ということか)

 

 ならば、相談というのは生徒同士のトラブルか、報告か。申請や苦情などの申し込みは生徒会の仕事で、風紀委員の仕事ではない。達也と幹比古は同じクラスだが、達也は幹比古が他の生徒とトラブル——いや、そもそも絡んでいる所を見たことがないから、何かしらの報告だろう。

 

「話の内容は大丈夫か? 何なら風紀委員会本部で話を聞くが」

 

 一応の確認を入れるも、幹比古はこの場で話せばそれで十分と考えているらしく、首を横に振った。

 

「調べれば普通にわかる事だから、わざわざ言うのもどうかなぁ、って思ってたんだけど」

 

「備品の故障か?」

 

 幹比古は首を振る。

 

 そして。

 

 何でもなさげに……あくまでも当たり前の出来事のように……特大級の爆弾を投下した。

 

「いいや。——比企谷八幡について、なんだけど」

 

 瞬間、空気が凍った。——ような気がした。

 

「……ん?」

 

「……なんだと」

 

 幹比古が口にした言葉にレオは首を傾げ、達也は目を見開く。——驚きの、あまり。

 

「詳しく話を聞かせてほしい。何故君が比企谷の事を?」

 

 情報の中身が何かはわからない。しかし、達也にとっては見逃せない——いや、決して聞き逃す事はできない情報だ。

 

 例えそれが、どんな情報であっても。

 

 特に今は、元六道であるというだけで、八幡が自分達の正体を知っているというだけで達也たちが八幡を追っている訳でもない。

 

 八幡に関して、より早くより正確な情報を知りたい達也は、幹比古の言葉を無視することができなかった。

 

 

 

『私達でも気づく前に全てが終わっていた。全てを解析する眼を持つあなたでも、気づけなかったんじゃないかしら?』

 

 

 

 十師族でも六道でも対処ができない、そもそも魔法が通じない敵性存在の事を、雪乃達によって知らされてからは、特に。

 

「あ——うん、いや。君達が今探している『比企谷八幡』の事は知らないんだけど」

 

「……? それは、どういう……」

 

 どんな粗末な事でも見逃すまいとするも、幹比古の言葉の意味がわからず、達也は首を傾げる。

 

(「比企谷八幡について相談がある」。しかし、「達也たちが探している比企谷八幡は知らない」……?)

 

 同名の別人だと考えるのが普通だ。だが、もしそうだったとしてもわざわざ風紀委員や生徒会に報告する理由にはなる人物なのだろうか……?

 

「ただ、君たちが似顔絵で公表してる『比企谷八幡』と顔立ちが似てたから。一応、と思って」

 

「?」

 

 言いながら、幹比古は懐に手を入れる。

 

(やはり同一の人物なのか。しかし、ヤツに関する記憶を持つ者の殆どが今も記憶を失ったままだというのに、何故幹比古だけが……)

 

「これ……1998年の当時に国会で撮られた写真なんだけど」

 

「ああ……ん?」

 

 迷う達也に、幹比古が懐から端末を取り出し、とある写真を表示してみせた。

 

 その写真は印刷されたものをデータ化しているらしく、大勢の人間が整列して撮った集合写真で写真のところどころが黄ばんでいたりするものの、それぞれの人相はよくわかる。彼らの服装や足元、背景から見るに当時の日本政府高官か幕僚達のものだろう。

 

しかし、達也はその写真の違和感に瞬時に気づく。

 

 その瞬間、達也はどろり、と体内で何かが蠢くような気色悪さを覚えた。

 

「……これ、中央に居るのがそう(・・)か?」

 

 達也は、その写真の中央で真っ直ぐにこちらを見つめている人物に釘付けになっていた。

 

「……おい、こいつって……!」

 

 その人物に気づいたレオも、指をさして幹比古に目を向けた。

 

 幹比古は、表情を硬くして頷く。

 

 

 

「うん。……彼が凡そ100年前、世に現れ始めた魔法についての日本における対応と魔法開発の指針を決めた、当時の日本の首相——比企谷八幡だ」

 

 

 

 達也のよく知る少年の面影を残す、背筋を伸ばしていてもどこか異質な雰囲気を纏った男性が、そこにはいた。

 

 

 

 

 







次回本編更新ですっ!

ワートリ新作書こうかなって思ってます。以前のリメイクでデアラとかガイルとか多重クロスマシマシのやつ。
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