123756787!   作:リッ菌

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やっとこさ本編です。

文章書くのって意外に疲れるもんですね……。

短く、拙い文章にはなってしまいましたが、ご指摘、ご感想よろしくお願いいたします!


第1話 おはよう!

「セーフ!」

 

勢いよく教室のドアを開け、中へと滑り込む。

ガラガラガラ、と勢いよく開いたドアはその勢いのあまり壊れてしまいそうだ。普段共に登校している親友に置いていかれ今日は一人での登校だ。

 

「……アウトよ、尾楽(おらく)さん」

 

ドアを開けるや否や担任の暮斗(くれと)(さやか)先生や既に教室に居たクラスメイト達が一斉に私へと注目した。先生のその言葉と表情には呆れというものが見て取れた。

いつもの遅刻ギリギリの登校に「てへへ……」と、笑いながら誤魔化し席へ向かう。が、その直前、先生の言葉が頭に引っかかり足を止めた。

 

「え……? 8時ピッタリだからギリセーフですよね?」

 

「はぁ……。本当にそう思う?」

 

壁にかかった時計を見上げながら先生はため息を吐く。

それにつられるように私も時計を見上げた。

短針は8。長針は12よりも少しばかりずれている。どうやら教室の時計は時間が微妙に合っていないようだ。

一応念の為にと鞄からスマホを取り出し時間を確認してみる。

液晶には「8:03」の表示。……まさかの3分の遅刻だ。

 

「えー! 3分くらいいいじゃないですかー!」

 

「そんなわけないでしょ……」

 

私はよく遅刻をしてしまいがちだ。朝が弱い私にとって1秒の睡眠でも死活問題である為、中々ベッドからは出てこれず、朝の支度も遅い。始業時間に間に合った回数よりも遅刻した回数の方が多いのは言うまでもない。

今更皆勤賞などそんなものはないものの、今日はギリギリ間に合ったと確信していた為、ここは何としても先生を説得する為にも引き下がりたくはなかった。

 

「私が中に入った時には8時でしたよ!」

 

私はせめてもの抵抗にと半ばゴリ押し気味に学校到着時点の状況を伝えた。

それを見た先生はやはり呆れたようにやれやれ、と首を振る。

 

「……もういいから早く席に着きなさい。朝礼を始めますよ」

 

抵抗虚しくあっさりとあしらわれてしまった。

だがまだ諦めない。諦めなければ勝機はある……!

次の一手を頭を絞り考える。……閃いた。

 

「そこを何とか〜」

 

……結局何も思い付かず、考えた挙句が懇願することとは……我ながら情けない。でもこの上目遣いで可愛い生徒からの頼みとなればいくら先生といえど陥落するはず。

 

「尾楽さん……?」

 

「はい……ぃっ!!!」

 

穏やかな声で名前を呼ばれ先生のその目を見て息を飲んだ。

先生は少しばかり睨みを利かせていた。口は笑っていたもののその目つきは恐ろしく、おおよそ先生が生徒にしていい目つきではないと思う。

 

「……わかりましたよぅ」

 

一撃で黙らされるその様にクラスからはクスクスと少数の笑う声が聞こえる。

少しだけ恥ずかしさを感じながら私は仕方なくトボトボと席へと着いた。

はぁ、本当は間に合ってたのに……。

 

「起立! 礼! 着席!」

 

席に着いてから少しして朝礼係が号令を行う。

私はそれに合わせ流れ作業のように一連の動作を行った。

 

「昨日乃木宮で不審者が目撃されーーー」

 

気がつくと先生が何やら喋っているがどうも頭に入らない。せっかく間に合ったと思っていたのに、そうではなかった事実は、私にとって想像以上のショックであったようだ。

私の座る最後列の窓際から、ぼんやりと外を見つめる。私の家は見えないが、その通学路は途中まで見える。改めて距離にして考えれば本当に大した事はないのに、何故こうもギリギリ間に合わないことばかりなのか。本当はもっと早く起きられればいいだけの話ではあるのだけれど……。

 

「はぁ……」

 

もうどうでもいいやとため息を一つ。考えたところで遅刻は遅刻。今更覆しようもない。

どうせ先生の話は集中出来ないし何か他のことを考えよう、と、動画投稿サイトの今個人的にハマっているとある動画を思い浮かべた。

 

(昨日の動画は面白かったなぁ……♡)

 

昨日見たゾンビ襲来用に武器を作る不審者の動画。ホームセンターで購入できる物だけで作った簡単かつ強力なコンパウンドボウを作る回。その動画の最後に投稿主が自ら試し撃ちしているシーンを思い出した。

必死に何度も何度も空き缶に向けて矢を射るその姿はあまりにも必死すぎて逆に面白いと一部の視聴者からは評判を得ていた。私も当然その一人。

そのシーンを思い返して思わず口角が上がる。

 

「……なめ」

 

彼の投稿は他の動画もとても面白い。自作メイスの時なんかは段ボール箱相手に何度も何度も形が崩れるまで叩きのめしていた姿は思い返すだけで吹き出しそうになる。

 

(かなめ)!」

 

「うわっ! 何っ!?」

 

不意に名前を呼ばれた事により、驚きすぐさま声のする方へ顔を向ける。

 

「何って……もう朝礼終わったよ?」

 

声の主はこの学校で恐らく私が一番仲の良い友人であり親友の月野瀬(つきのせ)亜実(あみ)だった。普段から登校を共にする仲で同時に今日、私を置いて登校した張本人だ。

 

「あ、ホントだ」

 

見渡すと、いつのまにか先生の姿は教室からなくなっており、クラスメイト達も各々仲の良い友人達の席へ集まり談笑していた。

 

「まったく、この前も遅刻して、また今日も遅刻して、一体何回遅刻すれば済むんだか……」

 

やれやれ、と亜実も先程の先生ばりにため息を吐いている。へへっと苦笑しながらも先生にも呆れられ、友人にも呆れられ、まったく、我ながら呆れさせの天才かと自嘲したくなる。

だが、今回はこの友人にも言いたい事はあった。

 

「あっ、でも今日置いてかなかったら間に合ってたかもしんないのに!」

 

「はぁ!?」

 

……そりゃその反応も当然だろう。苦し紛れに反論したものの悪いのは全部自分だ。悪足掻きも甚だしいが最後の抵抗としてついつい言葉が飛び出てしまう。

 

「あんたねぇ、私のせいにするっての!? そんな子には……」

 

亜実は両手をワキワキと動かし。

 

「こうだっ!」

 

思い切り私の両の脇腹をくすぐる。

 

「ぎゃー! やめてーー!」

 

私は脇腹が凄く弱い。人間誰しも弱点となる部位はあるものだが、私は特に脇腹をくすぐられるのには弱い。亜実もそれをわかってのこの行動だろう。……というか脇腹くすぐられて平気な人間自体がそもそもそんなにいないか。

 

「ひっ、やめ、やめれ……」

 

身をよじって抵抗するも亜実の両手は的確に脇腹のウィークポイントを押さえており、その魔の手から抜け出す事はそう容易くはなかった。

やがてひとしきりくすぐられた後には疲れて息を切らす私と満足そうな亜実があった。

 

「どう? 反省した?」

 

「はっ、反省しましたぁ〜……」

 

ぐったりと机に突っ伏し、息を切らしながら答える。亜実は「分かればよろしい」と満足げに笑みを浮かべる。

 

「んで、今日はどうして遅刻なんかしたのよ?」

 

目線を私の高さに合わせ、問う。

いつものことだから、と返そうと思ったが毎度毎度この返事では申し訳ない。今日も亜実は私の家の付近で十分近くも待っていてくれたのだろうから。

 

「いやぁ〜実はですね、"Youre Tube"のハマってる動画を夜中まで見てまして……」

 

「あの"絶対的!危険人物"の動画?」

 

「そうそう! 最新投稿が夜中の3時だったから、ついついね〜」

 

私の好きな武器職人の動画だ。投稿主の名前は"絶対的!危険人物"なのに何故かコメント欄では不審者さんと呼ばれており、私もその投稿主のことは不審者さんと呼んでいる。

 

「あんたも好きだねぇ。どんなだったの?」

 

「ん?」

 

「その最新投稿」

 

ああ、と私は昨日見た動画の内容を詳細に説明した。

うんうん、と頷きながら私の話を聞いている。

時々相槌を打ちながらも私の話を嫌な顔一つせず楽しそうに聞いてくれるこの亜実という子は、やっぱり良い友人だ。

動画の内容を全て話し終えた後も私の話に合わせてくれている。親友がこの子で良かった。

私はこういう何気ない日常がとても楽しく感じる。いつまでも亜実には私と付き合いを続けて欲しい、そう思った。




まだまだ日常を楽しんでいる彼女達。
不安な影は少しづつ、少しづつ迫って来てますよぉ。

さて、要ちゃん達はそれに気づくことが出来るんでしょうか!?

しばらく日常が続くかも知れませんが、次回も是非楽しみにしていただければと思います!

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