123756787!   作:リッ菌

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やばい、勢いのままついに5話目を投稿してしまった……。

気付けば朝の4時半。慣れない時ほど頭は働くものなんですかねぇ

ガンガン創作意欲が湧いてくる! 描きたくて描きたくてしょうがない!!


第5話 間違えた!

「さて、二人ともお疲れ様」

 

やっとの事で目的の職員室まで辿り着いた暮斗先生御一行。

職員室の中には先生達はまだ残っており、皆それぞれの仕事に追われている。私達には目もくれずひたすらに各々の仕事を全うしていく様は、教師という職業がいかに大変なものなのかを教えてくれていた。

 

「あー、づがれだよぉーー」

 

荷物を降ろした私はすぐそのまま廊下でへばってしまった。私自身運動は得意ではなく、普段から身体動かしていないかったことが原因なのか、長時間重い荷物を支えていた腰と腕にはもはや限界が訪れており腰を下ろし両手を床につけ、背を反らす。

天飛先輩は私を見て微笑むようにくすくすと笑っていたが、今の私にそんなことを気にしている余裕はなく、そのまま後ろに倒れこんでしまいたかった。しかし先生の言葉がそれを許さなかった。

 

「ほら、私もまだやることあるんだから、先にあなた達を送って行くわよ」

 

先生はデスクの引き出しから車のキーを取り出し、席を立つ。やっとだ。やっと帰れる。

その気持ちは間違いないのだが、なんだか嬉しいような、嬉しくないような。

ここで先生や天飛先輩と過ごした僅かな時間は辛いものもあったが、それは間違いなく楽しいと言えるものであった。

少しばかり名残惜しいな、と思う気持ちを払い私はよっこらせと重い腰を上げる。

 

「さ、行こう」

 

先生が職員室から出て、天飛先輩と歩き出し、私もその後ろについて行こうとした時、携帯に着信が入った。

誰だろう、と鞄からスマホを取り出し液晶を見るとそこには「亜実」の文字。

何かあったのかな。

受信ボタンを押し、スピーカーを耳に当てるや否や、焦ったような怒ったような、そんな亜実の声が鼓膜を突き抜けた。

 

「ちょっと、要! 今どこにいんの!?」

 

何を慌てているのかと、疑問に思ったがなんの根拠も理由もなく胸に騒ついた感覚を覚え、冷静に亜実に尋ねる。

 

「今から学校出るとこだけど……どうしたの?」

 

私の言葉に対し、亜実はより一層焦ったようで、少しだけ早口気味に答える。

 

「待って待って! もう着くから少しだけ待っててよ!」

 

「あ、亜実?」

 

それだけいうと通話が終了した。スピーカーからは虚しく「プーップーッ」と通話が終了したことを知らせるメロディが流れている。

 

「すみません、先生、亜実がなんだか少しだけ待ってて欲しいって……」

 

「あら? 月野瀬さんもまだ帰ってないの?」

 

いや、亜実は確かにもう帰宅しているはず。私が教室を出る時に一緒に出て来たのだから。

なら一体どうしたんだろう。

 

「うーん、もう帰ってるハズなんですけど……」

 

その答えは亜実が玄関から入って来たことによりすぐわかった。

 

「はぁ、はぁ、危ない危ない」

 

私達の目の前まで走って来た亜実が両膝に手をついて息を切らしていた。

そんなに急いでどうしたのだろう。先生にも私にも、まさか天飛先輩にも、これと言った用事はないはずなのだが……。

 

「どうしたの!? 息切れるほど全力で……」

 

私が尋ねると亜実は黙って持っていた鞄を目の前に差し出した。

何のことか分からず頭にハテナを浮かべていると、まだ息が整っていない様子で途切れ途切れにその理由を話す。

 

「実はね、その鞄、私のかも」

 

「え?」

 

疑問に思い鞄の中を開ける。特に何もない、これは間違いなく私の鞄だろう。

 

「いや、これ私のだよ?」

 

「鞄の横のポケットの中、よく見て……」

 

うーん、と鞄の脇についているちょっとした隙間のようなポケットに目を凝らすと、中に一瞬光が反射して銀色に輝く何かが見えた。

奥まで指を突っ込みそれを引っ張り出してみると、それは見覚えのない鍵。

これの持ち主は誰のなのだろう。そんなこと聞くまでもなく、この状況では一人しかありえない。

 

「それ、私の家の鍵」

 

「えっ!」

 

ようやく呼吸を整え終えた亜実はいつのまにか作っていた左手の握りこぶしゆっくり開くと、そこには見知った一本の鍵が。

 

「あ、これ私ん家のだ……」

 

「そう、私間違えて要の鞄持ってっちゃってたみたいで……」

 

亜実はははっと笑うが、私はどうも納得できない。

一体どうしてそんなことが……。確かに私は登校してすぐに鞄を机の横に掛けていたし、それ以来一度も触れてなどいない。昼は寝坊したこともありお弁当を作って来てなかったため、ポケットに忍ばせていた千円札で購買部へとご飯を買いに行ったから、そのタイミングでも触ってはいない。

一体全体どうなってるの……?

 

「さ、取り敢えず鞄と鍵、返してよ」

 

「う、うん……」

 

疑問を払拭出来ないまま、亜美に言われる通り私は亜実のであるという鞄を、亜実は私のであるという鞄をそれぞれ交換する。

すぐさま中身を確認し、中にしまわれていた一冊のノートをちらりと覗いた。

そのノートの表紙には私のものであるという証拠に「尾楽 要」と書かれていた。

その行動を見た亜実は、何を勘違いしたのか、私の背中をポンポンと叩き、いたずらに笑う。

 

「大丈夫だって、何にも盗ってないから!」

 

「い、いや、そうじゃなくて……」

 

とてつもない違和感が私を襲う。

何が、とは言えないがまだ何か引っかかっているような。

軽く頭を押さえ考えてみるが、その違和感の正体は一向に分からない。

二人のやりとりを見ていた先生がニコリと微笑んで、口を開いた。

 

「月野瀬さんがそんな間違いするなんて珍しいわね」

 

いや、先生、そうじゃない。確かに間違いといえば間違いなのだが、この間違いは普通に考えればありえないのだ。

私は次の言葉を期待したが、先生の口からはこれ以上言葉が紡がれる事はなかった。言われた本人も笑っているだけで特に気にはしていない様子である。

 

「尾楽さんたちは今から帰るところだけど、ここまで来たんだし、月野瀬さんも送って行くわ」

 

「あー、ありがとうございます!」

 

亜実は恐らく家からここまで走って来たのだろう。もう一度ここから家へ走らせるのは酷ならことかも知れないが、私は言い知れぬ恐怖に似た感情から、その時だけはなんだか亜実と一緒に帰りたくはないなと思ってしまった。普段から仲良くしている友人に対しこんな思いを持ってしまった私は嫌な奴なのだろうか。

 

「尾楽さんも行くわよ」

 

先生に呼ばれた頃には亜実はすでに私の前を歩いており、慌てて私も駆け足で後を追う。

まあ、なんでもいいか。後はもう家に帰るだけなんだし、帰ってまだ見ていない不審者さんの動画でも見ていればこのモヤモヤとした気持ちも晴れることだろう。

一先ずはそう強引に納得することにした。

 

「うーん、やっぱりここの廊下って長いよなぁ」

 

廊下を一つ曲がったところで誰にも聞こえないよう呟き前方の職員用玄関を見つめる。これが本当の長さなのであれば明らかに設計ミスであるのだが……。

しばらく歩くとようやくドアの前まで辿り着いた。

私はふと鞄に入れていたスマホの液晶を見る。

時刻はすっかり17時を過ぎており、下校時刻からはもう既に2時間以上も経っていることに驚いた。

なんだかあっという間だったなぁ、と思いながら私はとあることに気付き、一連の動作に違和感を覚える。

 

(あれ、私今スマホどこから取り出したっけ……?)

 

自分で鞄を開け、中にしまってあるスマホを取り出し、液晶を確認した。これだけならば別に問題ではない。

問題は取り出した場所。私は今鞄から取り出した。

でもこの鞄はさっき亜実から渡されたもの。私は自分の鞄にスマホを入れっぱなしにしており、今日はこの放課後まで一度もスマホなど出してはいない。

 

(待って待って待って、どうなってるの……)

 

私は亜実と会うまで、間違いなく持っていた鞄からスマホを取り出していた。そしてそれは間違いなく自分のものであると確信している。スマホのトップ画面も、スマホの保護カバーも、全部私が自分のものであると確信が持てるものだ。

 

(……疑問はまだある)

 

そして、亜実はつい先程私たちと合流した時、一体どこから来た?

玄関から入って来た、それは間違いない。でも私は教えていない。そう、教えてなどいないのだ。

 

「私は亜実に自分達がどこにいるかなんて一言も言ってない……」

 

なのに亜実は、この亜実は、私のいる場所へすぐに向かって来た。そう、まるで最初から私たちのいる場所がわかっていたかのように。

疑問が確信に変わった瞬間、一気に背中を嫌な汗が伝う。

今この目の前にいる、この亜実の姿をした女は一体誰なんだ……?

 

「っ!!!」

 

妙な視線を感じ亜実の方を見ると、こちらを向いており、顔をうつむかせたまま口元だけがニヤリと笑っていた。

亜実だけではない、先生も、先輩も……。

 

「ひっ……」

 

私はたまらなく恐怖を感じ、情けない声を出しながら後ずさる。

亜実だけではない。先生も、この天飛先輩も、一体誰なんだ。どうなってるの……。

やがて数歩下がったところで私の右足はガクリと床を踏み外したかのようにバランスを崩した。

 

「っ! なにこれっ!?」

 

驚き後ろを見ると、私の後ろの床が全て抜け落ちており、そこは深いようで底が見えない。さっきまで歩いていたはずの床がなぜ、どうして。

……完全にパニックに陥っていた。目の前の友人達も、この学校も全てがおかしい。

 

「どうしたの、要?」

 

亜実は先程から同じ表情を崩さぬまま口元だけを動かしてジリジリと私へ滲み寄る。

それに続いて先生、天飛先輩も。

 

「いやっ……」

 

もはや震える声で呟くことしか出来なかった。

 

「早く帰りましょ、尾楽さん?」

 

「いやっ……来ないで……来ないで……!」

 

私はもう前を見ることが出来なくなり、そのまましゃがみこんでしまう。

恐怖のあまり、涙腺すらも緩み目からは暖かな雫が伝う。今はもう生きている心地すらなかったが、その雫が口に入り、ほんの塩気を感じる時、私はまだ生きているのだと嫌でも実感した。

だがもうみんなも、学校も普通ではない。あまりの現実味のなさに私の頭が変になったのかと疑ってしまう。どう考えてもありえない。これは実は夢? それとも私の妄想?

色々と思考を重ねてはみるもののやはりこの頬を伝う涙の感触。恐怖で味覚がおかしくなっているのか、不思議と涙の味はしなかったがそれでも今感じているこれら全ては私にこれが現実なのだと思い知らせた。

 

(もういやっ……お父さん、お母さん……助けて……)

 

私はこの迫り来る三人の手に捕まってしまったらどうなるんだろう。そう考えた時ふと両親の顔を思い浮かべた。しかし恐怖のせいなのか両親の顔すらも上手く出てこない。私が親不孝者だったから。ついには両親にも見捨てられたのか。

ああ、こんなことなら最後にお母さんとお父さんに一今までありがとうくらい言っておけばよかったなぁ。

もう覚悟は決めた。

私は未だ潤む視界を開き友人であったもの達へと向ける。

彼女らの手は既に私の目の前まで迫って来ていた。

 

(……やっぱり怖いっ)

 

触れられるであろう、その瞬間、私は再び目をぎゅっと強く瞑ってしまう。

 

(……?)

 

……何秒そうしていただろう。体感的にはもう何分も経っているようだったが実際は数秒程度だろう。しかしおかしい。いつまで経ってもその手が私に触れられることはない。

またしてもゆっくり目を開くと、その目の前の六本の腕の間から、一本の手が差し伸べられていた。

それは私を待っているかのように、微動だにしない。

 

「これ……は……」

 

この手にはなんだか見覚えがある気がした。そして妙な安心感もあった。

この手は取っても良い気がする。いずれにせよどちらに転んでも後悔はない。いや、後悔だらけではあるが、もうそれもいつまで悩んでいても仕方がない。

私はそっとその手を握った。

 

「要!」

 

瞬間、その手に勢いよく引っ張られ、知りうる限りのあらゆる光よりも強い閃光が私の目を眩ませる。

強くも心地よい光に導かれ、睡魔とも覚醒とも似つかぬ感覚が私の意識を包んだ。




さて、少々長めになってしまいましたが第5話、いかがだったでしょうか?

少し先のネタバレを言うと、ここからようやく本編、正真正銘のゾンビものが始まります笑

書いている側としてはすごく長かったのですが、皆様的にはいかがでしたか?

では次回も楽しみに!
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