TS転生ベルベット・クラネル君の英雄讃歌   作:美久佐 秋

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 副題は『白血(はくち)の病』です。



episode.18:冒険の第一歩

 束の間の戦場は、初めての連携にしてはかなりの出来だったと言えるだろう。

 敵から圧するような魔力の奔流がなくなり、誰もがホッと一息吐いていた。

 

 ……それにしても、全く感知出来なかったな。オッタルさんでさえ敵の攻撃に気付けなかったのは、普通じゃない。

 他の人……特にアミッドさんに意見を聞こうと顔を上げれば、彼女も同じ事を考えていたのだろうか。お互いに視線を交わし、頷き合う。

 まずは意識と情報を共有しよう、と。そんな僕達に異を唱える人はおらず、二人を中心に話を進める事になった。

 

 

「まず大前提を確認しますが、あの敵性存在は倒せたと思いますか?」

「残念ながら倒し切れていない……敢えて言い直すのであれば、完治出来なかったと言うべきでしょう。まるで病魔のようでした」

「……病魔?」

 

 

 何をもって病魔だと感じたのか。

 説明を求める人達に対し、アミッドさんは敵に魔法を掛けた時の事を語った。

 

 

「戦闘中にクラネルさんも仰っていましたが、あれは呪詛の類です。私の魔法で治療が可能だったのが何よりの証拠ですが、あの治療しても意味のないような、靄を掴みきれない感覚……まるで白血病のようでした」

「別名、“Pale Blood(ペイルブラッド)”。確か神秘を追い求める魔術師、あるいは稀に魔導士が発症する難病だったかしら」

「はい。この白血病を患った患者はまるで青褪めたように血の気が失せていく事から、神フレイヤ様が仰ったように“Pale Blood(ペイルブラッド)”と呼ばれ、やがて狂ったように血を求めるようになる精神疾患(・・・・)です。治療魔法や回復薬を施しても意味はなく、出来る事は輸血かカウンセリング程度とされています」

「血を求めるって……穏やかじゃないね。でも、輸血をすれば問題ないのか」

「いいえ、神ヘスティア。問題には(・・)なりませんが根本的な解決にはなっていないのです」

 

 

 話が少し脱線してる気もするけど、今はあの敵性存在については何が手掛かりになるか分からない段階だ。勉強させてもらうつもりで、僕達は耳を傾ける。彼女は粛々と、白血病のプロセスについて語り出した。

 

 まず第一段階(ファースト・フェーズ)では、精神に何らかの異常を来たした人が魔力を制御出来なくなり、体内から漏れ出す様になる。症状はまるで魔術師殺しの『呪詛(カース)』のようだけど、発病要因から分類上は精神疾患とされている。

 次に第二段階(セカンド・フェーズ)。魔力は生命維持の重要な要因(ファクター)であるため、漏れ出した分の魔力を血に含まれる魔力から補完していく。精神疲労(マインド・ダウン)は枯渇した魔力を補充するために起きる一時的な意識消失であり、この第二段階(セカンド・フェーズ)の前段階の症状と言える。精神疲労(マインド・ダウン)を強靭な精神力で抑え、無理矢理にでも魔法を使おうとすればこの段階になり得る為、気をつけて欲しい。そう言ってアミッドさんは注意を促した。

 

 

「そして第三段階(サード・フェーズ)では、第二段階(セカンド・フェーズ)の状態を放置する事で身体が見る見るうちに青褪め、血の巡りが悪くなり、脳を始めとする内臓機能に異常を来たした後……やがて血に狂う獣と成り果てます。この段階に至った場合、助かる見込みはありません。もし奇跡的に治療出来たとしても、脳機能に必ず異常を残すでしょう」

「お、恐ろしい病だね……」

 

 

 

 原因が精神的なものであるから治療には確りと病に向き合う必要があるけど、伝える事で発狂でもすれば目も当てられないため、発症した患者の状態によっては病状が伝えられない事もあるのだとか。

 魔法を扱う人にとっては想像したくもない病だ。発病例が少ないとは言え、僕も他人事ではない。それを理解しているのだろうヘスティアはなんとかコメントを残していたけど、その口元はひくひくと引き攣っていた。

 

 

「いずれは治癒師(ヒーラー)として治療方法を必ず確立したいと考えていますが……力及ばず、今まで私がこの病から患者を救えた事は一度もありません」

「そうなんだ……ごめんよ。辛い事を思い出させてしまったようだね」

「いえ……、私もまだまだと言うことでしょう。精進致します」

 

 

 口惜しい想いを語る彼女に、ヘスティアはただ一言。がんばれ、そう嬉しそうに声をかけるだけだった。

 

 

「話を戻しますが、何故私があの敵性存在を白血病のようだと感じたのか……それについてはあまり重要ではありません」

「どういう事ですか?」

「これは治癒師(ヒーラー)としての感覚的なものなので説明のしようもありませんし、もし本当に白血病のような敵なら、大本となる存在はどこかで高みの見物をしている筈。先程の襲撃は分身か、あるいは末端によるものでしかないでしょう。

 しかし先程の戦闘で得た情報が正確なら、敵は優先的に神ヘスティアと神フレイヤを狙い、次点で『神秘』の発展アビリティを発現している私達を狙っています。私達が此処にいる限り、あの存在は何度も襲撃を繰り返すかもしれません。そして最悪の場合は……」

「……放置すれば最早ダンジョンの異常事態(イレギュラー)どころではなく、オラリオの存亡が掛かってくる。そう言いたいのだな?」

「その通りです」

 

 

 確かに……パーティの3/4が『神秘』を発現してる上、【超越存在(デウスデア)】が二人もダンジョンで一堂に会する状況など滅多にない。敵の特性が本当なら彼女の言う事は一理ある。

 それに加えて、あの敵性存在には階層の垣根はないように見えた。ギルドの最上位……ファミリアで言う主神のような立場であるウラノスの祈祷が通じていないのなら、最悪の状況はダンジョンから都市への進出。オラリオ最高峰の治癒師(ヒーラー)は敢えて最後まで言わなかったけれど、答えを促すように投げかけられたオッタルさんの問いに、彼女は是と断言する。

 事の重要性は最早僕達だけの問題ではなく、神も含め誰もが顔を青褪めさせたり、冷や汗をかいていた。

 その中でも一際目立って異変を見せていたのはアスフィで、わなわなと身を震わせて目を見開く彼女にリューさんが心配して声をかけた。

 

 

まさか、本当に……?あの時の事は……、いや、私だけじゃ判断が……

「……アスフィ?貴女、顔色が」

「……すみません、リオン。問題ありません。そんな事よりも皆さんにも知って欲しい事があります。この件に関係あるかは分かりませんが……」

「構いません。今はどのような状況でも欲しい状態です」

 

 

 震える腕を抑え、精神を落ち着けようと一息ついたアスフィは躊躇いがちにアミッドさんの言葉に頷いた。

 

 

「私は敵の呪詛(カース)について、知っているかもしれません」

「本当ですか!?」

「……はい、おそらく。今でも信じられませんが、此処に来て信憑性が増しました。戦場の聖女(デア・セイント)……貴女は、人とモンスターの肉体を併せ持つ存在はあり得ると思いますか?」

「いえ、実際に見ない事には…………まさか、あなたは」

「はい。私は【白髪鬼(ヴェンデッダ)】を……『27階層の悲劇』で死んだ筈のオリヴァス・アクトを、この目で見ました」

 

 

 あの時の事は、今でも鮮明に思い出せます。

 そう続けた彼女は、何よりも冒険者としての責任から逃げまいと、悲痛な表情を一瞬だけ浮かべてからその表情を引き締め、当時の状況を詳細は伏せながら要点をだけ簡潔に語り始めた。

 

 

「【ロキ・ファミリア】が遠征に出るよりも前の事です。うちのファミリアの団員が受けた依頼(クエスト)───24階層のモンスター大量発生の調査の為、私達は食料庫(パントリー)に向かい、その途中物資などの補給でこの18階層で留まっていた時に援軍として【剣姫】と合流しました。そして調査の結果、モンスターの大量発生ではなく大移動だと判明したのですが……その原因は怪物祭(モンスター・フィリア)の事件でも都市を騒然とさせた花のような新種のモンスター……食人花(ヴィオラス)と呼ばれていましたが、そのモンスターを産み出す為の苗床(プラント)化によるものでした」

 

 

 そして【白髪鬼(ヴェンデッダ)】は、嬉々としてこのように語ったと言う。

 

 

食人花(ヴィオラス)を始めとした新種のモンスターは『深層』出身であり、死んだ筈の【白髪鬼(ヴェンデッダ)】も含め、彼らは『彼女(・・)』という存在を起源とした同胞らしいです。その代行者としてモンスターと人の混成体───怪人(クリーチャー)食人花(ヴィオラス)は従うようでしたが、その『彼女』が何かは結局判明しませんでした。分かったのは【白髪鬼(ヴェンデッダ)】がその存在によって死者蘇生の奇跡をその身に受けたこと。そして『彼女』は地中深く……少なくとも深層よりも下の階層に眠っており、地上への進出を願っていること。そのために【白髪鬼(ヴェンデッダ)】は迷宮都市(オラリオ)の破壊を目論んでいました」

「いました、とは?」

「その場には【剣姫】を追ってきた【凶狼(ヴァナルガンド)】や【千の妖精(サウザンド・エルフ)】、そして【白巫女(マイナデス)】も居ました。【剣姫】と戦闘を繰り広げていたレヴィスと名乗る赤髪の怪人が追い詰められていると戦況を判断したのでしょう。レヴィスは【白髪鬼(ヴェンデッダ)】の胸に手を突き立て、埋められていた魔石を喰らい……魔石を抜き取られた当人は二つ目の命を落としました。モンスターの末路と同じく、核を失えば灰となるようです」

「魔石を喰らう……まさか、強化種!?」

「はい、おそらくは。この情報は【凶狼(ヴァナルガンド)】によって【ロキ・ファミリア】の幹部や主神も把握しているでしょう」

 

 

 そう言ってアスフィは話を締め括り、集めていた視線を一歩下がる事で霧散させた。

 どうやらヘスティアやフレイヤ、オッタルさん達の視線は冷や汗をかくほどに緊張したらしい。まぁヘスティアの神格は低い知名度に比べて高いから、神威が抑えられていても存在感を感じる人は感じるものだ。

 それを感じ取ったヘスティアは微妙な表情で唇を尖らせ、そんなヘスティアのほっぺたをフレイヤがツンツンと突ついていた。……呑気すぎないかな?

 

 まぁ取り敢えず出る情報は出ただろうし、これからの方針を決めよう。

 パンッと、僕は一拍手で注目を集めた。

 

 

「さて、アスフィからの情報との関連性が不明な現状でこれ以上の議論は必要ないでしょう。しかし懸念事項である敵性存在が神に関係するモノを狙う上、オリヴァス・アクトの言う『彼女』の目的に通じている以上、どちらを調べても行き着くところは同じと僕は予想します。その上で今後の動きを決めますが、当初の予定通りに僕達は毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の大量発生を調査します。ヘスティアとフレイヤ達はヘルメスを連れて【勇者(ブレイバー)】と神ウラノスに情報の提供してきて下さい。……同盟の件の後押しにもなるでしょうし」

「えっ……?」

「……クラネルさん。何故ここで神ヘルメスが?」

 

 

 戸惑うようなアスフィの声に視線が集まるけど、他の面々も同じ気持ちだったのだろう。

 隣でまさか……と冷や汗をかいているのを横目で確認しつつ、アミッドさんに問われた僕はある場所を指し示した。

 

 

「……リューさん、お願いします」

「はい」

 

 

 簡潔に肯定を示し、指し示された先の木の根本に飛び込むリューさん。そして一息の間にその木の幹を蹴り上げ、大きく揺らせば……

 

 

「グヘェッ……!!」

「へ、ヘルメス様?!」

 

 

 生い茂る木の葉に隠れていたヘルメスがバランスを崩して落ち、アスフィ自作の『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を地面に転がして姿を現した。

 

 

「はぁ……何をしてるのかな、ヘルメス。こんなところまで、まさか神一人で来たわけではないだろうね?」

「そ、そんなわけないだろうベル君。勿論他の人達に付いてきたさ!!」

「誰に、付いてきたって?」

「……は、はい!『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を使ってヘスティアやフレイヤ様の後を付けましたすみませんでしたーー!!」

「『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』も気配や視線を消せるわけではないのに……オッタルさんは気づいてました?」

「あぁ。勿論、フレイヤ様には報告した。だが当然ながら視線の主の正体に気付いていたフレイヤ様は『勝手に付いてきたヘルメスに対してのお仕置き』ということで、俺達は放置していた。まぁ危なくなったら助けるようにも言われていたが」

「そ、そんな!?折角なら一緒に連れて行っても…………はい、勝手に付けたりしてすみませんでした」

 

 

 ギロリ。そんな効果が背景に浮かびそうな程、圧力の伴った視線が二つ。

 主神と大切な人が付けられた僕は当然良い気分はしないし、オッタルさんもオッタルさんで理性はあるけど【フレイヤ・ファミリア】である事には変わらず、彼も例に倣ってフレイヤガチ勢である。

 他にも、そんな無茶苦茶な迷宮探索を敢行したヘルメスに対して女性陣の非難の視線が向けられた。ヘルメスに何かあれば眷属……ひいてはアスフィの恩恵がなくなるのだから、当然と言える。この場に彼を庇う者は一人も居らず、針の筵状態でヘルメスは縮こまっていた。

 

 

「はぁ……全く。こういう訳で、ヘルメスを一人置いては行けない。だからこのように辻褄を合わせるように」

 

 

 その僕の言葉にヘルメスは希望を見たような顔になったけど、後悔するのはこれからになる。

 

 

「まず、フレイヤとヘスティアは神ウラノスからの依頼をヘルメス経由で受け、ヘルメスの案内で18階層に来た事にする。依頼内容は【神性】あるいは『神秘』保持者を狙う敵性存在の調査。『神秘』保持者として選ばれたのは、僕とアスフィ。アミッドさんについては、たまたま神々がダンジョンに入るところを見た彼女が(ヘルメス)に巻き込まれた事にしてほしい。そして筋書きとしては、僕達が此処に居たから狙われたのではなく、狙われているから敵の反応を確かめる為に来た、という形だ」

「そ、それは僕がディアンケヒトに彼女を勝手に連れ出した件の対価を払うって事かい?」

「【ディアンケヒト・ファミリア】に対しての補償は予定通りフレイヤの方で頼む。その代わり、ヘルメスはフレイヤに貸し一つだ。いいね?」

「わ、わかりました……」

 

 

 有無を言わせない僕とヘルメスのやりとりに、アスフィは感嘆の……もとい、もっとやってくれと言わんばかりの、若干楽しそうな表情を浮かべていた。

 

 

「幸いな事に【ロキ・ファミリア】の出発は明日になる。事情を話せば彼らも神の護衛はやってくれるだろう。団員達の治療を受け持った対価として頼んでもいいから、交渉はヘルメスに任せた」

「あぁ……もう、俺は君が恐ろしいよ。嘘が嘘になってないなんて、一体どんな対神経験を積んだのか。教えて欲しいものだよ」

ふふふっ……

 

 

 やれやれだと言いたげなヘルメスの物言いに、小さく笑みを零したのはフレイヤだった。

 そうだね。強引に神ロキとの会合をセッティングしたのは君だったね。早速役に立ったようだよ。

 そんな視線を彼女に向ければ、隣の小さな女神の背に隠れて可笑しそうに笑っている。ヘスティアはそんなフレイヤの様子に戸惑って居たけど、ヘルメスはあぁ……なるほどね、と納得して乾いた笑みをその優男風の顔に浮かべた。

 

 

「よし。それでは、それぞれ行動を起こして欲しい。……よろしく頼みます」

 

 

 最後の一言は、最強たる【猛者(おうじゃ)】に向けたものだった。

 フレイヤは勿論の事、ヘスティアの事も彼なら護ってみせるだろうと信じて。

 そして彼の返答は、その最強の背を以て示された。やがて【ロキ・ファミリア】の拠点(キャンプ)に向けて歩みを進める彼らの姿が見えなくなると、前衛のリューさんが先陣を切ろうとする。

 それを僕は、一言聞いて欲しいことがあると言って呼び止めた。

 

 

「まず分かっていると思いますが、僕達は囮です。ヘスティア、フレイヤ、ヘルメスがダンジョンから出るまでの」

「はい、それは百も承知の上です。私は治癒師(ヒーラー)として役目を全うするつもりですので」

「後ろめたい気持ちがあるなら、気にしなくとも良いですからね。主神が勝手に付いてきた手前、私が言えた事ではありませんが」

「それこそ貴女が気にする事はないと思いますが……」

 

 

 最初は慰めの言葉を掛けていたけれど、次第に自虐的に乾いた笑みを浮かべ始めたアスフィを、アミッドさんが慰める。その様子を見て、厄介な主神を主に仰ぐ同士で何か通じるものがあっただろうかと、僕は思った。

 

 

「ふふふ……。僕が気にしていた点はそこではありませんが、気を遣ってくれてありがとうございます。話を戻しますが、僕達の目的はこのままアミッドさんの依頼を続行しつつ、神々がダンジョンから出るまで囮となること。そして、未知の敵性存在を識ること」

「……もしかして、クラネルさんが言いたいのは」

「気付きましたか……。そう、これから僕達が挑むのは、未知(・・)です」

 

 

 何かに気付いた彼女達は、皆一様に身を震わせる。

 それは知らないことに対する恐怖ではなく、オラリオを脅かす存在に対する使命感でもない。今自分が立っている場所には嘗ての英雄達も必ず立っていたのだと、そう認識したが故の武者振るいだった。

 

 

「この迷宮都市(オラリオ)に聳え立つ摩天楼(バベル)が【超越存在(デウスデア)】によって建造されるよりも前のことです。魔物達を倒し、『穴』を塞ぐ事に専心していた英雄達は、いつかこう言いました」

「───ダンジョンとは?でしたね」

 

 

 アミッドさんの相槌に頷き、僕は語り手として物語を紡いでゆく。

 

 

「『穴』の上に『蓋』という名目で築かれた塔と要塞によってモンスターの地上進出を防ぐ一方で、地底に広がる『穴』の向こう側の世界に『未知』を見出し、その誘惑に抗えなかった酔狂な探索者達をいつしか『冒険者』と呼ばれるようになったのは、遠い昔のこと。神々がこの大地に降り立ち、恩恵を与えられた人類は飛躍的に文明を発展させていきましたが……今は人類の資源としての魔石を集める日々に、嘗ての冒険者の姿は少なくなりました」

「「「……」」」

 

 

 その言葉は、冒険者は炭鉱夫も同然だと揶揄しているのに等しく、他の冒険者達が聞けば激昂するどころではないかもしれないけど。彼女達は口を閉ざす。

 

 

「だから……───冒険をしよう」

 

 

 その言葉にハッと顔を上げた彼女達に、真名を、神々に賜った二つ名を告げ、その名の下に宣誓する。

 

 

「我が真名はベルベット・クラネル、神々に賜りし二つ名は【月宮(グルヴェイグ)】なり!神を狙う病魔?呪詛がどうした!家庭を護る炉の女神ヘスティアの名の下に、僕が貴女達を護ろう!そして【 綴ろう(Access)───!一つに旅路(ヘルメス)、二つに医療(ディアンケヒト)、三に秩序(アストレア)、四に家族(ヘスティア)。僕達の主神は司るモノは異なれど、彼らは子を守りを与える神であるが故に。主の恩寵を背に刻んだ我らは何を成そうか! 】」

「「「───冒険を!」」」

「【 そう、冒険を!今この時を以て、僕達は誰も挑んだことのない前人未到の『未知』に挑む『冒険者』となるのだ!……───さて、貴女は誰だ? 】」

 

 

 その言葉を皮切りに、冒険者達は立ち上がる。

 何も恐るる事はない。

 だから意思を、矜持を、誰にも譲りはしないとする己の価値をこの場で示す。

 秩序の冒険者(疾風)は道を切り開き、旅路の冒険者(万能者)は道を整え、医療の冒険者(戦場の聖女)は全てを癒さんと、彼女達は神々に賜った二つ名と主神の名に誓った。

 

 そんな英雄の姿こそ、僕が求めた出会いだったのかもしれない。

 あぁ、綺麗だ。そう感嘆に浸る僕は勿体無い気持ちもあったけれど、やるべき事は先にある。だから僕は、紡いだ讃歌の断章を此処に締め綴る。

 

 

「【 ───Legends of Fragment(主神に贈る眷属の断章・冒険の第一歩) 】」

 

 

 

 宙に浮かぶ文字群が描く四重奏(カルテット)

 その音色に合わせて、精霊達が鈴を鳴らしていた。

 

 





 神秘を追い求める魔術師、血を求めるようになる病。そして獣。
 断片的にですが、ダンまちの世界観に合う形でBloodborneの設定を活かせたかなって思います。

 二つ名に関してはまた後々の話で書きますが、調べれば直ぐに出てくると思いますので、気になれば参考にでも調べてみてください。
 感想・批評をお待ちしてます_φ( ̄ー ̄ )
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