TS転生ベルベット・クラネル君の英雄讃歌   作:美久佐 秋

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 詠歌の部分を修正……もとい、消去しました。
 後々に使うつもりですのでご了承ください。(11/10)

 6/24、加筆修正しました。


episode.08:“僕”は“私”で、“私”は“僕”

 これは事件終息後の話だが、簡潔に述べるとすればヘスティア様にフレイヤ様との関係がバレた。

 

 事の経緯は単純だ。

 アマゾネス姉妹が魔力欠乏による精神疲弊(マインドダウン)で倒れ、その原因の一端が僕の【覇心の劍】にもあったので拠点(ホーム)まで背負って送り届けると、その帰り道でフレイヤ様が待ち伏せしていたのだ。

 なぜ待ち伏せしていたのかというと、フレイヤ様は結局僕が剣を使わなかったことに拗ねていたらしく、それに関しては手を繋いで帰ってくれるなら今回は許す、と言われたので従ったのだけど……その時だった。ヘスティア様と遭遇したのは。

 

 

「な、な、な……!! なんでベル君とフレイヤが一緒にいて、しかも手を繋いでいるんだ──ッ?!」

 

 

 あの二房の黒髪(ツインテール)をワナワナと震わせ、顔を真っ赤にさせたヘスティア様の第一声がこれだった。

 まぁ、何も知らなければ仕方のないことかもしれない。他ファミリアの主神と仲良く……しかも美の女神と一緒にすれば魅了されていると思うだろう。

 僕が慌てて説明しようとすれば、実際に僕が魅了されているのだと考えたヘスティア様はフレイヤ様に詰め寄って説明を求めた。

 

 そんな時、フレイヤ様はヘスティア様にこう言ったのだ。

 

 

「ヘスティア。やっと……やっと、見つけたのよ。美の女神ではなく、“私”を見てくれる人が」

 

 

 ───人に、神意は理解できない。

 

 そんな言葉を聞いたことがあるけど……フレイヤ様のこの言葉は凄く、僕の心に染みた。それだけ、フレイヤ様のその言葉には、万感の想いが込められていたから。

 

 それをヘスティア様も感じ取ったのか、少なくとも魅了をしているわけではないとわかったのだろう。

 落ち着きを取り戻したヘスティア様は一先ず猛火のような怒りを納め、詳しい話をする為── 当然、その内容は他人に聞かせられないことが多いので、フレイヤ様を僕達の拠点(ホーム)に招くこととなった。

 ……正直、僕達の廃墟同然なオンボロ教会にフレイヤ様を招くのはアレな気がしたので、僕は何処か別の場所を提案したのだけど、ヘスティア様はついて来いの一点張りでフレイヤ様も乗り気だったので、僕は大人しく後ろから付いて行ったのだ。

 

 

「───それで、説明してくれるんだろうね?」

「……はい」

 

 

 僕は、洗いざらいヘスティア様に話した。

 フレイヤ様との『約束』を交わした出会いの日と、今までの関係を。

 僕の精霊としての本質を。

 それを知った切っ掛けとして、ロキ様と会談をしたことを。

 最後に、フレイヤ様と一緒にいるところをヘスティア様に見つけられるまでの経緯を。

 

 文字通り、『己に関する』全てを洗いざらい、だ。

 

 僕が話し続ける間、静かに目を瞑りながらも耳を傾け、話が終わればヘスティア様は一言だけ、こう呟いた。

 

 

「……フレイヤのことは、どう思っているんだい?」

 

 

 それは、核心であり、僕が明言を避けていたことでもあった。

 理由は、ヘスティア様を蔑ろにしていると思われたくなかったから。

 ただ、それだけの理由で──けれども僕にとって妹であり、姉であり、第二の母と思っていたから。そして、ヘスティア様もそう思っていたからこそ、だったのかもしれない。

 

 フレイヤ様もヘスティア様から言われるとは思われなかったらしく、目を見張り、その美しい顔に疑問を浮かべていた。

 僕も答えられずにいると、ヘスティア様は静かに語り出す。

 

 曰く、ヘスティア様はフレイヤ様のことは苦手ではあるけど、嫌いではない。同時にフレイヤ様の男漁りは自重した方がいいと思うけど、少なからず処女神として美の女神の大変さは理解しているつもりだから、と。

 

 どうやら、ヘスティア様には全てお見通しらしい。

 間髪入れず、どうなんだい? と再度問われた僕は、ただ一言。

 

 

「愛しています」

 

 

 と、答えた。

 そして、これからも誰かを好きになるかもしれない、とも答えた。

 

 何故なら、精霊としての成り立ちが『偶像崇拝』である限り、今はまだ精霊ではないとしても……少なからず他者から向けられる想念に基づいた行動や生き方になってしまうだろうから。

 ……それがフレイヤ様やヘスティア様の想いを蔑ろにしていることになるのは、とうに気づいている。僕の好意は人から向けられた好意で形作られていると、心の片隅で自分を、そして彼女達を疑っているのだから。

 それでも僕はこの想いが形作られたものではなく、僕の本心であると、証明するために言葉と行動を以て伝えなければならない。今もこうして彼女を想うこの『心』は僕だけのものだ、誰にも渡さないと、それが僕だと……そう、唄いたい気分だった。

 

 そうして“僕”の『■』はやっと、形を得ることができたのだろう───

 

 

『ふふふ……さぁ、契約(デュエット)を始めましょう?』

 

 

 ───深く、魅力的で甘い“私”の声が、『虚空』から届いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルベット・クラネル

 Lv.1→2

 力:A 812→I 0

 耐久:B 702→I 0

 器用:S 989→I 0

 敏捷:A 886→I 0

 魔力:SSS 1178→I 0

 神秘:H

 

《魔法》

【 】

《スキル》

英雄讃歌(ソウル・リアリゼーション)

 ・詩を紡ぎ、心象を具象化させる。

 ・効果の程は魔力量と心象の具体性、強度に依存する。

我は汝、汝は我(ペ・ル・ソ・ナ)

 ・発展アビリティ『自覚』の獲得。

 ・『自覚』により、内に潜むもう一人の自分と認識し合うことができる。

 ・理想を映し、この身を以て体現する。

 

 所用期間──約一ヶ月。

 モンスター撃破記録(スコア)──4541体。

 獲得発展アビリティ──神秘。

 

 




 メインヒロインは今後のストーリー展開的にも、フレイヤ様で決定です。

 そして補足としてここに感想でも聞かれたことを書こうと思います。

 まずこうやってフレイヤ様との関係が築かれたのは、今まで義祖父として育ててくれたゼウスに母、または姉として接しているヘスティア様の存在があったからです。もしフレイヤ・ファミリアに入団する展開になると、ベルベットはフレイヤ様の想いに応えようとして、すぐに精霊になる手段を考え、尚且つ実行に移るでしょう。
 しかしベルベットは人として(・・・・)の生を、フレイヤはベルベットの人として(・・・・)の成長を間近で見守っていたい。そんな両者の考えが共通していたからこそ、フレイヤ・ファミリアに入団するという選択肢は除外されていました。
 二人が好きあっているからといって、同じ空間にいることが必ずしも良いこととは限らない……。そんなバックストーリーがあります。
 一応「episode.05:我慢できなくて」のフレイヤ様の心情描写では遠回しにそんなことを書いたつもりだったのですが…………。読み返してみれば、あぁ、確かにこれはわからないなぁ。と自分でも感じました。

 これからも読者が読んでいて楽しめるよう、頑張りたいと思います( ̄▽ ̄)/

 あと、他のヒロインについては当人のベルベットに向ける気持ち次第で変わっていきます。原作とはまた違った展開を広げていくつもりなので、ぜひ待っていてください。



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