僕の心の中にある幻想を、少しでも感じ取っていただけたら幸いです
一応色のシリーズで、これからもちょくちょく書くつもりですが
…初投稿がこんなんであれですが、よろしくお願いします
星空を渡る私に、風がそっと頬を撫でて挨拶をする。
ただそれだけを繰り返す夜を、幾度繰り返したことか。
…そんなもの、忘れてしまった。回数なんて、問題ではないのだから。
…それでは、なにを求めていたのだろう?
…わからない。忘れてしまっていた。
眩しい。
日差しの中を駆ける私に、鳥たちが挨拶をしていく。
きっと、こんにちは、とか、邪魔だ、とか、そういう事を言っている。
こんな静かな昼間を、何度刻みつけてきたのだろう。
…そんなこと、記憶になかった。どこへ刻んだかも、わからない。
…それでは、なにを忘れまいとしたのだろう?
…それすら―――わからなかった。
一体、何故私は空を行くのだろう?
どうして…とか、何故…とか、考えても仕方のないことだとわかってはいるのだけれど。
考える他にすることもなく、私は考えつつ歩き続ける。
考えても…答えなど出るはずがないのに。
答えが…あるかどうかすら、わからないのに。
さらさらと風が吹いて、雲が途切れた。千切れた綿のようなその合間から、ささくれだった鏡のような、巨大な水面が見える。
この高さからだとわからないけど、もっと下がればささくれの正体がわかる。
それは、塔。天に向かって伸び上がる、槍のような旧い塔。
もちろん、中には誰も居ないし、塔としての原型をとどめていないもののほうが多い。
エメラルドグリーンの海面を貫いてそびえるソレは、何かの墓標のようにも見えた。
私がいつからこうして天を歩いているのか…その疑問と同じように、あの塔はかつてなんであったのか、なぜ海に沈んだのか…
もし、景観が変化し続けるものであったならば、思考するという行為もそれなりに意味を持っただろう。
だが、歩けども歩けども、上は空、下は海。変化しない眺めには、いつしか飽きるのが当然というものだろう。
そもそも、私は人間である。
空を歩く事が出来る―――という点を除けば、の話ではあるが。
その、空中歩行のできる人間の他に人間を見ない、というのも、また奇怪な話ではないか。
…やっぱり、あの塔には昔、人が住んでいたのだろうか?
もう慣れてしまった冷たい孤独を思い出し、身震いした。コートの襟を掻き合わせ、少し早歩きに進む。
風が強くて、寒い。高空を行くのだから当然のことだが、今更ながら―――
少し、寂しかった。
寂しさが、寒さに共鳴して、身体の芯まで染み渡るようだ。
ぽろりと、冷たい涙がこぼれた。いったいいつ以来だろうか…
だけど、私は涙の意味を忘れてしまっていた。悲しいのだろう、と漠然と感じるが、それだけ。
涙にそれ以上の意味を持たせることなどできない。
私は独りなのだから…
泣くという行為に意味などない。
涙を見せて、同情してくれる人もいない。
涙を見て、嘲笑う者もいない。
だとしたら、この流れる雫にどんな意味があるというのだろう?
わかるはずがない。
誰も、いないのだから…
歩くことに、目的はなかった。それが今、誰かと共にありたいと言う願望によって目的を得た。
否、願望自体が目的となった。
…探そう。この、無限に海と空が続く世界で、一握りの希望として。