ふと思いついて書いてみた

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死なない冒険者が居るのは間違っているだろうか?

 ああ。死にたいなぁ。

 死にたい。天に昇りたい。愛しき彼女に合うために。ああ、ああ……彼女に会いたい。

 だがそれも叶わない。彼女の愛が、彼女の残した恩恵が、今もこの身に刻まれる。ああ、死にたい。

 モンスターに全身を喰わせても灼熱の炎に焼かれても凍土にその身を晒しても、自分は個々にいる。ああ、死にたい。

 

 

 魔石灯一つが照らす暗い部屋。そこに二人の男女が居た。

 白い髪に濃い隈が男を不健康そうに見せるがケタケタ笑うその雰囲気は陽気の一言に尽きる。男は半裸で寝台に腰を下ろす。

 

「しっかし解らんね。おたく、相当強いよね? なんで体なんて売るの?」

「────趣味だ」

「嘘ばっか。ま、俺は気にしないけどね」

 

 胡散臭い男の笑みに女はふん、と鼻を鳴らす。

 

「それより早く脱いでくれよ。それぐらいのご褒美はあってしかるべきだ──30階層では大変だったしね。ラーニェからかうのは楽しかったけど」

「これから女を抱こうというのに女の話をするのかお前は──」

「するよー」

 

 やはり、胡散臭い。先ほど嘘ばっか、などと言っていたが此奴にだけは言われたくない言葉だ。

 さっさと済ませよう。と、服を脱ぐ女にヒュウ、と口笛を吹く男。豊満な胸が露わになる。

 

「やっぱ美人だね。胸もある──それによく鍛えられていて、締まりも良さそう」

「………30階層に、何をしにいったんだ?」

 

 女が突然振ってきた話題に男は笑顔で答える。

 

「30階層に言って胎児っぽいのが入ったものを回収してくるように言われたんだよね。いやー、変な依頼だった」

「……………」

「あ、ちなみにこれ極秘だから内緒ね?」

「………そうか」

 

 女はそういって、男と視線を絡め、手を頬に伸ばす。そのまますっと首へ這わし、握りしめた。

 

「───ッ! 首、締めは……やだなぁ。僕、上級プレイ、は、やられるよりやる側なんだけど」

「これがそう思うか?」

「思わんね──」

 

 男はそういって女の胸をもむ。

 

「その胸の、奥──おも、しろいもん……いれ、てるね? 君、人じゃ───」

 

 ゴキンと首の骨が折れ男の減らず口が止まる。だらりと力の抜けた男の体を放り捨て女は男の荷物を漁る。暫く物色し、その手が止まる。

 

「───ない」

 

 舌打ちし、男の体を睨む。その頭部を踏みつぶし、部屋を真っ赤に染め上げた。

 

 

 

 

 ダンジョン。無限にモンスターの湧き出す地下迷宮。天然の洞窟のようなところから外と錯覚しそうな森、果ては整備されたとしか思えない遺跡のような場所まで存在する謎の多いその場所で幾つか解っていることもある。たとえば、18階層ではモンスターは生まれない、とか。

 そこは安全階層(セーフィティーポイント)。そこには街が存在する。価格は地上の何倍もだが、補給のままならぬダンジョンでは重要な街だ。

 そんな街で殺人が起きた。たまたま来ていた【ロキ・ファミリア】は現場に向かう。部屋は真っ赤に染まっており、下半身のみ衣服を纏った男性が横たわる。その頭部は潰れており、顔は解らない。

 

「みないで、レフィーヤ」

 

 即座にアイズがレフィーヤの視線を遮り、ティオナが「ぐろ……」と呟く。中にいた男達がその声に振り返る。

 

「あぁん? おいてめえ等、ここは立ち入り禁止だぞ!? 見張りの奴らは何やってやがんだ!」

「やぁ、ボールス。悪いけどお邪魔させてもらっているよ」

 

 男の名はボールス。怒れるボールスに話しかける【ロキ・ファミリア】団長であるフィン。Lv.が上のフィン達に苦々しげな顔をするボールス。この街では強さが全て。自分がそのルールで好き勝手やってるがやられるのは好きではないボールスは文句を言いながらも捜査に協力させる。

 事件は昨晩。たった二人で宿を貸し切りそういうことをするであろう事が察せる客達が入った。男の方は仮面を被り女はフードを深く被っており顔は伺えなかったそうだ。

 証紋も取らずその場で中層のドロップアイテムを大量に渡され通してしまったのでどちらの所属かも解らない。と、ボールスの部下が『開錠薬』《ステイタスシーフ》を持ってくる。本来他人にみられぬようロックされたステイタスをみるための薬で、非合法なアイテムだったりする。それを使おうとした獣人の小男の手が、ガシリと捕まれる。

 

「───え?」

 

 ティオナが唖然と声を漏らし、レフィーヤがひっと喉を鳴らす。ティオネやアイズも目を見開きボールスは後ずさり獣人の小男は叫んだ。何せ、手を掴んだのは今まさにステイタスを暴かれようとしていた男なのだから。

 

「それは困るなぁ。殺すよ、お前──」

 

 顎がないのに何処から声を出しているのか、陽気な声が聞こえる。ゴポリと首の断面の肉が泡立ち、膨らむ。それは形を整えていき、その光景にレフィーヤはうっ、と口を押さえる。

 

「んー。いい寝覚めだ───眠るなんて実に24年ぶりぐらいかな」

 

 コキ、コキキと首をならす。リヴェリアは、目を細めはぁ、とため息を吐いてフィンは苦笑する。

 

「君だったか。なら、これは誰も死んでないことに喜ぶべきか」

「おいおい勇者様? 僕頭つぶされたんだけど。喜ぶとかま?」

 

 ケタケタ笑う彼は寝たと言うだけありトレードマークの一つの隈が消えている。アイズはその顔を知っていた。ティオネとティオナも。知らないのはレフィーヤだけだ。

 

【不死者】(アンデット)………ヴィンセントか」

「し、知り合いですか?」

「ああ………此奴は───()()()()()()()()()()だ」

 

 私より遙かに長い時を生きている。そういわれ、レフィーヤは目を見開いて男を見た。

 

「はじめましてー。【アンラマンユ・ファミリア】元団長。ヴィンセント・クルムだよー」

 

 《スキル》の効果で死ねず、《スキル》の効果で恩恵が封印状態にならず、オラリオ創世記から存在し続ける生ける歴史の立証人。ヴィンセント・クルムはそういって笑った。




続け!

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