機動戦士ガンダム In Last Paradisum 作:ROGOSS
クリムゾン襲来
自分の人生に満足したことがなかった。
戦時中という特殊な状況下に生まれたというのに何故なのだろうか?
むしろ、戦時中でありながらも議員の息子として産まれてしまったが故に不自由することなく生活ができてしまっているからこそなのか……最初は思っていたがどうやらそういうわけではなかった。それが理由ではないと感じる。
常に感じる喪失感。誰かがいないという不安感。何かが欠けていると思い。
だが、今まで欠けたピースを見つけることが叶ったことはなかった。
そうして気付く喪失感の原因。
自分には、8年前より前の記憶がないという事実。
僕は自分の人生という名のパズルを作り上げたかった。しかし、ピースをなくしてしまっている今、それを叶えることはできない。
戦争は嫌いだ。
あぁ、この人たちは今から私の指揮で死ぬことになるのだと。
戦時下に生まれたことを憎んだことはなかった。
それでも家系や血筋といったしがらみのせいで、自分が戦いの関わることとなっている事実を恨んだことはあった。
復讐のための闘い。
そこに崇高な理念や高尚なイデオロギーなど一切ない。残せるミームも存在はしない。私利私欲にとりつかれた亡者の個人的意思でしかない。わかりながらも、周囲を利用し、利用され、今日もまた戦地へと向かっていく。
私は、不毛な戦いに明け暮れる毎日に終止符を打ちたかった。
●○●○
UC0096
サイド9(カイロス) タイムス宙域
ネェル・アーガマ級強襲揚陸艦 シェル・アーガマ艦内
「斥候にあたっていた部隊との連絡途絶!」
「ミノフスキー粒子濃度上昇! 敵シグナルを発見……これはクリムゾンです! クリムゾンの部隊が現れました!」
「第一種戦闘配備! 艦長、いかがなさいますか。」
「むぅ……」
副艦長のハンネは、隣で顔を引きつらせている艦長のルッツへと問いかける。
ルッツは難しい顔をしたまま口を開こうとしなかった。
彼はおびえているのだ。それでいて、艦長として船員の命を守るためにはどう立ち回るべきかを考えている。
相反する思いがぶつかりあい、ルッツはショート寸前となっていた。
ハンネはため息をつくと、再びルッツに催促をかける。
その間も敵部隊は進行してきていた。
「まさか、クリムゾンがこの宙域にいるとは驚きですね」
「むぅ……第三のシャアといわれる男か。たしかインダストリアル7の方にもシャアの再来といわれる男が……」
「まったく。艦長には分相応なまでの情報網があるのですから、もっと上手に使ってください」
「す、すまん……」
「敵高速接近中! さ、3倍の速さです!」
「クリムゾンが来たかっ!」
「全ミサイル発射開始! 艦砲射撃も始めッ!」
シェル・アーガマ上部に搭載されている巨大ミサイルコンテナが火を噴く。
最新鋭の熱源探知追尾機能ミサイル「レーヴァテイン」は、袖付きの強襲部隊へと襲い掛かった。
数機のギラ・ズールは爆散するも先行している赤い機体、クリムゾンことドゥクスは依然としてシェル・アーガマへ高速接近していた。
第二波のミサイル群に次いでビーム砲が発射されるも、ドゥクスに当たる気配すら見せなかった。
ドゥクスは艦まで数百mまで近づくと、ビームライフルを放った。命中と同時にシェル・アーガマの艦内が大きく揺れる。司令室のモニターがエンジン部分に被弾をしたことを警報音と共に一斉に知らせ始めた。
「状況報告っ!」
「後部主力エンジン損傷! 航行能力30%低下!」
「くそっ! MS部隊はまで出撃できないのかっ!」
再び大きな揺れをシェル・アーガマを襲った。
母体となっているアーガマやネェル・アーガマよりも防御面を重視されたがゆえに、シェルと名付けられたか艦であったが、高出力のビームライフルを数発を無傷で耐えることはできなかった。
「カタパルト損傷! 炎上を確認!」
「MSに引火させるな。消火作業急げ!艦長、いかがなさいますか」
「ぐぬぬ……後部ハッチから出撃させる……」
「危険です。敵に背を向けて発艦させるのですか?」
「だ、だが……」
「クリムゾンが退いていきます!」
メインモニターにはクリムゾンが反転する姿が映っていた。
同じく、随伴していた機体も退いていく。
「退いていくだと?」
「敵が明らかに優勢だったというのに……妙ですね……」
「むぅ……まるで、我々をこの宙域から動かせないようにだけしているような感じがするな……」
「どちらにせよ、修理を急ぎましょう。間もなく時間となるはずです」
「工兵に修理を急がせろ。第二種戦闘配備の下げる。パイロットはMSに搭乗させておけ」