機動戦士ガンダム In Last Paradisum 作:ROGOSS
モロッコと共に長い廊下を歩きながらザジバーは問いを投げかけた。
「例のアレはどうなっている?」
「はい、順調に進んでいるとの報告をうけています」
「そうか……ロンドベルとネオジオンの動きは?」
「どちらも今は比較的穏やかかと。ですが、いつまた、戦争の火蓋が落とされるかわかりません」
「困ったものだ」
そう言うとザジバーは執務室への扉を開き中へと入った。モロッコも続く。
部屋の中は必要最低限のものしかない。
だが、高く積み上げられた書類の束の量に初めて見る人は度肝を抜かされるに違いなかった。
ザジバーは宇宙世紀となった今でも、デジタル媒体よりもアナログ媒体を信用している古い人物だった。
デジタル機器が使えないわけではない。
それでもアナログに頼るのは、ザジバーいわく「いつでも隠滅できるから」らしい。
「ビスト財団も余計なお荷物を渡してきたものだ」
「2対のガンダム……ですか」
「あそこはダメだ。自分たちの欲を満たすことしか考えていない。ガンダムはそんな穢れたことに使ってはいけない。崇高な理想のため……平和のために使うべきだということをわかっていない」
「その通りです」
「抱えなければいけない案件は増えるばかりだ。。箱の件は?」
「その件ですが、今かなりアツいな話題になっていますね。なんでもユニコーンが起動したとかなんとか」
「そうか……」
そう呟くとザジバーは窓の外を見た。
人工的に晴れにされているコロニー内は、今日も穏やかな気候だった。
コロニーの住人たちは、外に出れば今でも連邦軍とネオジオンが小競り合いを続けているなど思ってもいないはずだ。
まったく暢気なものだ。
我々
それこそが人類全体が反映していくための鍵であるのに。そんな簡単なことを皆が拒み続ける。特に権力を持つ者はみなそうだ。
この世界で生きていくための創造と破壊は、種を滅ぼすためにはしてはいけないというのに。
ザジバーが一人ため息をついていると、モロッコが何事か通信をうけたらしい。
その顔が険しくなった。
「どうした?」
「あの少女が来ているようです」
「なにっ?」
「しかも、もう屋敷の近くにいるようです」
「……」
ザジバーが頭を抱える。その様子を見ながらも、モロッコは申し訳なさそうに尋ね続けた。
「いかがなさいますか?」
「追い返すわけにもいかないだろう。ロンドベルとビスト達が気付かないことを願うしかない」
「かしこまりました」
「それと、だ」
「はい?」
「ラインには見せるな。父親のこのような姿など見せたくない」
「承知しました」
モロッコは部屋を出て行った。
ザジバーは疲れたように椅子へともたれかかり、再び頭を抱える。
アイリス・ホーエンシュタイン。
かつてパンドラ事件でなくなったネオジオン高官の娘が何をしに来たかは予想がついていた。
だが、今連邦とネオジオンの手を結ばせるなど不可能といわざるおえなかった。
あの事件以来過激化した戦闘によっと、どちらも多すぎるほどの血を流していた。
「どうしたものか……」
ザジバーは目をつむると、思考の海へと漕ぎ出した。