神殺しin―――ハイスクールD×D   作:ノムリ

11 / 19
影の使い

 学生に取って一年に一回だけの一大イベント夏休み。

 約一か月にも及ぶ長期休みは学生が朝から夜まで自由に行動できる数少ない時間だ。

 ある者は、彼氏、彼女と一緒に過ごし、ある者は、遠方へと旅行へ、ある者は、実家へと帰省する。

 

「俺たちは部長と一緒に冥界への帰省に同行することになったよ。お前はどうなんだ」

「俺は……何もないな。組織としての仕事はこの前、終わらせてきたし、そもそも実家がこっちの世界に存在してない」

 教室で一誠と窓際の壁にもたれ、二人で夏休みの予定について話していた。

 一応は三大勢力と和平を結んでいない俺だが、一誠とは友人関係を継続。魔王たちからしても、俺と個人の関係にある、イッセーを通して何かと情報を知りたいので無下にするようなことはしてこなかった。

 

「まあ、夏の醍醐味である、海水浴と夏祭りでも満喫しようかね」

「クソ!リアルハーレム野郎め!水着と浴衣を堪能するつもりか!」

 何を言うか、一誠よ。コスプレなんぞ頼めばなんだって着てくれるわ!てか、灯巳なんて家なら基本が巫女服だし、黒歌も着物だしはだけて胸が半分ほど見えてるけど。

 

「一誠。一応は忠告しておく」

「……なんだよ改まって」

「仲間を、家族を失いたくきゃ、強くなれ。三大勢力が和平を結んだことで、『禍の団』を含めて世界中の組織が動き出す。俺の時もそうだ。弱かった、訓練が足りなかったなんて理由で負けたら後悔するぞ」

「随分と重い言葉だな」

「言ってなかったか。俺がカンピオーネになったのは、まつろわぬ神を殺したからだけどな。まつろわぬ神を殺した理由は、そいつが俺の両親を食ったからだ」

「はっ!?」

「俺を庇って食われる両親を見て、俺のタガは外れた。自分が食われることを理解した上で、俺はまつろわぬ神と殺し合いをした。結果、俺も下半身を食いちぎられたけど、ギリギリで勝って蘇ったってわけだ」

 俺の話を聞いて、予想以上の重い話に絶句している、一誠。

 だろうな、そもそも、両親が死んだなんて話をこんな軽くするわけがないけど、しておいてやるべきだ。一誠の両親はまだ生きてる、けれど、コイツは自分の家族に迫るである危険を理解してない。戦うって意味を理解してない、心の何処かで甘さがある。

 

「忠告はしたぞ。これで何か問題が起こっても、俺に八つ当たりはしないでくれよ」

「……俺は甘いって言いたいんだろ」

 理解しているご様子だ。

 

「おいイッセー!夏休み、海水浴場と夏祭りに行くぞ!」

「そうだ、ナンパするなら定番の場所だからな!」

 松田と元浜が肩を組んで近づいてきた。

 どうも二人は夏休みに、イッセーと三人でナンパへと繰り出す気満々らしい。

 

 セレナ、灯巳、アーシア、桐生たちのグループの会話に耳を傾けてみるとどうも初めての夏休みの過ごし方を、桐生によってレクチャーされているようだ。

 

「いい、夏は学校も無くて朝から晩まで一緒に居られるんだから。隙を見つけてアタックしなきゃ駄目よ!」

「はい!分かりました、桐生さん」

「私たちもアタックするべきでしょうか」

「いや、私たちは既にアタックして、寧ろアタックされてるから。どうせ海も、祭りも行くんだし。そんな事よりも、夜をどうするか考えたほうがいいじゃん。どんな水着を着ようかな~」

 どうもあっちはあっちで、盛り上がってるようだ。

 夏休みの間に事件でも起きないことを願うばかりだな……無理だろうけど。

 

 

 

 

 

「若手悪魔の会合への招待状、ね」

 学校が終わり帰ろうとしている時に、リアス・グレモリーからお呼びがかかりオカルト部に行くと、一通の手紙を渡された。

 中の内容は、今度、冥界で若手悪魔たちの会合があり、それに参加してほしいというものだ。

 魔王たちからすると、自分たちの事を知ってもらい敵対しないようにしたいというわけだ。分かりやすいパターンに出てきたな。

 今のところ、天使と堕天使からの伝達は無し。

 サーゼクスも、レヴィアタンも強さに関しては、この世界基準で言うなら問題ない。けれど、強さが=王としての素質に直結するかと言えばそうじゃない。

 どれだけ強くとも王として、民を従えるに足る技量が無ければ話にならない、逆に弱くても、従えるだけのカリスマ性があれば問題ないともいえる。結局は、魔王は戦闘に関しては良くても、王としては問題外ってことだ。

「お兄様から是非とも参加して欲しいそうよ」

「どうしますか、涼さん」

「どっちでもいんじゃない?どうせまともな展開にはならないでしょ」

 灯巳、そういうのは口に出さないもんなんだよ。

 

「おいおい、陰陽師嬢ちゃん。そういうのは思っても口に出さないでくれよ」

 声をした方を一斉に一誠たちが振り向くと、リアス・グレモリーがいつも座っている椅子に腰を下ろしている、アザゼル。

「いつの間に!?」

「お前らまだ甘いな。涼たちは気づいていたぞ」

 気配を消した程度で見つからないと思ってるのなら、甘く見過ぎだ。

 俺の視線を受けてニヤリと笑う、アザゼル。

 若干、腹立つな。アザゼルは駒王学園の教師としてやってきた。話ではオカルト部の顧問になり、これからの戦闘の為に訓練を教える立場になるそうだ。

そんなことを味方でもない、俺には話して良いのかと聞くと、少しでも自分たちの良いところをアピールして敵対しない関係に持ち込みたいそうだ。それを、口にしちゃってる時点でどうかと思うけどな。

 

「これは貰っておく、こっちも禍の団関連で動かないといけないからな」

「そっちは何か、禍の団について掴んだか」

「オーフィスに会った」

「はぁ!?」

「グレートレッドを倒すのに手を貸せと言われた」

「……お前はそれを受け入れたのか」

「いや、今のところは、俺の組織が基地にしている場所で食い物で釣ってる、どうなるかは知らん」

「知らんて、お前な」

「俺は、オーフィス相手でも勝てるだろうが、お前らは違うんだろ」

オーフィスはこの世界でも上位に入る強さ、それも単体でだ。三大勢力含め、他の神話勢力でも、相手取るのは困難らしい。

オーフィス含め、今は不安要素がありまくりだ。こっちも色々と準備しないとな。

例えば、戦争の準備とかな。

 

 

 

 招待状に従ってやってきた冥界。

 若手悪魔の会合は今日から数日後にある、俺たちは魔王、恐らく、サーゼクスの思惑だろう。観光をしてもらって少しでも、関係を保ちないだろう。

「本来なら魔王である、お姉様が案内するはずだったのですが……ごめんなさい」

 ソーナは頭を下げる。

 彼女の言う通り。本来なら組織の長である、俺の案内を貴族とはいえ、ソーナがするはずはない。彼女の姉、セラフォルー・レヴィアタンが案内をするはずだったけど、人間界にある。魔女っ娘のイベントに参加するべく置手紙を残してドタキャン。

 他の魔王も若手悪魔の会合に向けて、手一杯ということで、顔見知りのソーナが抜擢された。

 というか押し付けられた。誰だって一人で一種族を相手取れる奴に街の観光案内なんてしたくないだろう。

「気にするな、授業参観と和平会談の時点で性格は大体察してる」

「…うぅ…ごめんなさい」

「さて、護衛二人のセレナと灯巳は知り合いだから自己紹介もしなくていいし、気楽だろ」

「ソーナ先輩!甘いもの、甘いもの食べたい!」

 ソーナの手の手を取り、一番前を歩く、灯巳。

 灯巳とソーナは学校でも仲が良い。

 互いに姉の居る妹の立場ということもあって妹ならではの悩みや苦労。コカビエルの一件で結界を展開している間に、お喋りをしていた二人は、俺の知らない間に友達という関係を築いていた。

 手を繋いで歩く二人の姿を見ていると、本当の姉妹のようだ。

 灯巳は姉というか、実家とはうまくいってない。それでも幼い時に仲の良かった姉というものを求め、ソーナにその姿を重ねているのかもしれない。

 どんな理由があっても、仲が良いのはいいことだ。

「私たちも行きましょう」

「ああ、行くよ。情報収集を頼む」

 視線を落とし、不自然に動く自分の影に向かってつま先でノックして歩き出した。

 

 

 

 シトリー領を四人で観光していると、やはり、ソーナは有名らしく。すれ違う人が後ろを振り返ることが多々あり。そんな事に慣れているのか、ソーナは気にすることなく進んでいく。

 野菜や果物は人間界の物と似ているけど、串焼きの素材がミノタウロスだとは、食べたいと思えるものじゃなかなかった。

 

「カルチャーショックだ」

「……人間からすれば確かにショックでしょうね、灯巳さんは気に留めず食べてましたけど」

「そいつに常識を問うな」

「なんですと!私だって常識くらいあります。それに加工してあれば牛肉もミノタウロスの肉も一緒の肉でしょ!食べて美味しければ問題なし!」

 ニッシッシ、と笑う、灯巳。

 当ても無く歩き回って丁度いい時間になってということで、見かけてカフェに入り三時のおやつタイムに入った、俺たち。

 セレナ、灯巳、ソーナは紅茶とケーキセットを、俺はコーヒーを注文してのんびりとしている。

 

「ちょっと、お手洗いに」

 カップに半分ほどコーヒーを残して、席を立ち。トイレに入る。

 誰も居ない事と監視系の魔術が無いことを確認して、天井のライトに照らされ、生まれた自分の影をつま先でノックをする。

「出ていいぞ、朱柘(しゅざく)

 俺の影を不自然に盛り上がり、本来、形なんで存在しない影が人型へと形を変えていき、数十秒後には影は人になった。

「はい、マスター」

 顔を上げることなく下を向いてままの、黒髪にフードつきのコートを着て、頭にはフードを被っている少年―――朱柘(しゅざく)

 彼は元、転生悪魔。

 神器を持っていたことを理由に、貴族悪魔に家族を人質に取られ、強引に転生悪魔にされ。俺が転生悪魔から人間に戻せるという噂を聞きつけて、俺の元にやってきた。

 『盗みの極意』で転生悪魔から人間に戻った、朱柘は家族の元に戻り。家族を月の都に引っ越して、そのまま、俺に仕えてくれている。

「情報収集の成果を聞きたい」

「はい、シトリー領は比較的平和ですが、他の領地では地下で人間を扱ったオークションや幼い子供を娼婦とする店もいくつか発見しました」

 やっぱりか。魔王は役立たず。いや、期待なんてしてなかったけど、少しは良くなるんじゃないかと思ったけど無理だったか。

「分かった、お前は継続、情報収集を頼む。『闇夜の暗殺者(ナイト・アサシン)』があるとはいえ、気を抜くなよ。危険があればすぐに撤退しろ」

「了解しました」

 そう言って、俺の影へと潜っていった、朱柘。

 朱柘の生まれ持った神器『闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)』は影を操る防御系の神器だったけど、俺に仕え、偵察、潜入などの仕事をしているうちに亜種の禁手『闇夜の暗殺者』を発現。影の中に潜り、繋がる影へと移動したり、影での拘束や攻撃など。防御寄りの神器は幅広く使えるようになっていた。

 恐らく、『共に戦場に立つ』の祝福の効果が後押しをしたんだと思われる。

 俺の組織が情報という重要なもので他の組織に負けないのは、朱柘と朱柘が率いる隠密部隊あってこそだ。

「若手悪魔の会合は、悪魔の大元が勢ぞろい。叩けば埃どころか、ゴミの山が出てきそうだ」

 はぁ、とため息を吐きながら、これでまた悪魔を滅ぼす理由が増えてことに頭を悩ませながら、トイレから出ていく。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。