神殺しin―――ハイスクールD×D   作:ノムリ

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絡み合った思惑・1

「それじゃ、準備は良いか?」

「問題なしにゃ!」

「問題ありません」

 俺が行くと、返事を返す、黒歌とグリューヌ。

 

 今から行くのは冥界。

 それもリアスとディオドラのレーティングゲームの真っ最中に乗り込む。

 ディオドラは調べで『禍の団』と繋がっているのが分かり、ついでに黒歌が小猫をこちら側に引き込み、グリューヌには黒歌の護衛に行ってもらい、俺一人で三大勢力に実力を示す。

 

「じゃあ行くか」

 三人で転移魔法陣を区切り、冥界へと渡った。

 

 紫色の空に人工の大地。

 悪魔の興じるレーティングゲームの為に築かれた結界の中に足を踏み入れた三人。

 もちろん、管理している悪魔からは三人が侵入してきたことはすぐ分かるだろう、むしろ分かってもらわなくては困る。

 

「それじゃ、また後でにゃ!」

「主もお気をつけて」

 そう言い、二人は目的の小猫の元へ向かった。

 

 すでに『禍の団』の攻撃は始まっているらしく、上空では魔力や光が飛び交っている。

「俺もかますとするか。《滅びの時は来た。穢れし世界。混沌ををもって全てを無に帰す。この牙、この爪は世界を殺す、我は獣なり》」

 背から一対の黒と赤を混じる翼を生み、空を翔ける。

 無作為に襲いかかってくる悪魔、堕天使を両手足を獣に変化させて片っ端から殴り飛ばしていく。

 

「お前まで来ているなんてな『禍の団』と協力でもしてるのか?」

「まさか、少し便乗しようと思ってね」

 面倒なのが来た、とばかりに俺の顔を見るアザゼル。その背には十二枚の黒い翼が伸びていた。

 

「お前、随分と同盟を結んでるみたいだな」

「ああ、三大勢力の不人気もあって、こっちの同盟は順調さ。この前も北欧と同盟が結べたからな」

「チッ!あのジジイやっぱり、もう手を組んでたのか」

涼の宣戦布告を受けて、アザゼルは知り合いであるオーディンに同盟の声を掛けたが考えておく、という返事以来音沙汰が無い。それそうだ、先に涼との同盟を組んでいた。なにより、三大勢力と同盟するよりも、『獣群師団』と同盟を組んだ方がよっぽどメリットがある。

 

「お喋りはここまでにして始めるか。この戦いも中継されているだろうから他の勢力へのアピールになる」

「便利に使ってくれやがるぜ!」

アザゼルが取り出し掲げたのは、紫色の宝玉が埋め込まれた黄金の短剣。

 

「これは『堕天龍(ダウン・フォール・ドラゴン)閃光槍(・スピア)』つってな。俺の研究の成果の一つだ」

 握られて『堕天龍の閃光槍』を掲げ、口にした。

「禁手!『堕天龍(ダウン・フォール・ドラゴン)の鎧(・アナザー・アーマー)』ってところか」

 光がアザゼルの全身を包み、収まった光の中から出てきたアザゼルは、黄金の全身鎧に所々に紫の宝玉が埋め込まれた姿。

 それは和平会議で見た『赤龍帝(ブーステッド・ギア)の鎧(・スケイルメイル)』と『白龍皇(ディバイン・ディバイディング)の鎧(・スケイルメイル)』に酷似し、色や形状が多少異なる程度だ。

「へぇー、少しは面白いのもってんじゃん!」

 

 

 

 

@ @ @

 

 

 黒歌が灯巳から教えてもらった隠密の術で、自身とグリューヌの姿を消し。二人はリアス一行を追っていた。

 グリューヌは先を走る、黒歌に質問を投げかけた。

「それでどういう作戦ですか?」 

「私の術で少しの間だけ白音だけを分断するから、その間だけ他の相手しておいてほしいにゃ」

「その程度なら問題ありません。リアスとも少しばかり私も話したいと思っていた所ですから」

 手の中にいくつもの魔法陣を生み出し、組み合わせて自分が望む効果を発動するように組み替えていく。

 

  

 二人がリアス一行に追いついて頃には、既に元シスターや元聖女だったディオドラの眷属たちは無力化、新しく入った一誠たちとも因縁深いフリードも、木場の聖魔剣の二刀流によって討ち果たし。 

 ディオドラによって攫われたアーシアを助けるべくリアス、朱乃、木場、小猫、ギャスパー、一誠の七人はディオドラの待つ最深部まで駆け足で進んでいた。

 

 

 玉座が触手ように、アーシアの四肢に絡みつき。

 その前で立つ、ディオドラ。

 

「ディオドラ!アーシアを返してもらうぜ!」

 部屋に叫びながら入っていく、一誠。

 それに続いて、部屋に入ってくるオカルト部の部員たち。

 

「やあ、此処まで来れないとかと思ってよ。折角だ、初夜は赤龍帝の目の前で犯すってのも悪くないかと思ってね、手はまだ出してないよ」

 いつかのイケメンスマイルとは打って変わって、悪役らしい笑みを浮かべる、ディオドラ。

 

「ディオドラ!」

 左手に宿った『赤龍帝の籠手』の緑の宝玉から緑の光が漏れる。

 

 

「悪い横やり入れさせてもらうにゃ!起動しにゃさい!」

 天井から飛び下りた黒歌とグリューヌ。

 空中で地面に向かって、ルービックキューブのように立方体型に複数の魔法陣が組み合った、特定の対象と自分を指定場所に強制転移させる魔法を投げつけた。

 魔法は地面に触れて瞬間起動。

 数秒で手の平サイズから部屋全体を包み込むサイズに巨大化。

 指定して通り、黒歌と小猫のみを指定の場所へ転移。現場には、飛び入り参加してきたグリューヌが残り、地面に着地していた。

 

 

 

「グリューヌ・グラシャラボラス!?」

 リアスは、死んだと報告され人物が生きて自分の目の前に現れて事に驚きを隠せなかったが、その場にも同じく驚いている人物がいた。

 

「ば、バカな!?貴様が何で生きている!お前は『禍の団』の旧魔王派の手によって暗殺されたはずだ!?」

 ディオドラは、リアス以上に驚愕したいた。

 それも、そのはずだ、グリューヌの暗殺を企て、作戦を考え、命令したのはディオドラだったから。

 旧魔王派に入った直後、組織での立場を確立し、聖女やシスターが泣き叫ぶ中で犯す、という欲求を満たす為にはそれなりの立場が必要になると考えたディオドラは、グラシャラボラス家の次期当主であるグリューヌの暗殺し、首を差し出すことを考えつき、実行した。

 

「ええ、確かにいい作戦でした。ですが、貴方程度に私が負けるとでも?たかが、多少魔法に長けた程度で?笑わせないでくださいよ」

 ハハ、と呆れた様子で、ディオドラを笑う、グリューヌ。

 ギリ、と歯軋りするディオドラ。

 

「グリューヌ、久しぶりね」

「ええ、本当に久しぶりです、リアス」

「挨拶なんてこの際、どうでもいいわ。貴方、さっきの話だと暗殺されたらしいじゃない、どうやって生き残ったのよ」

 そう、ディオドラ含め、全員が疑問に思った。

 魔王の口からも、ディオドラの口からも、本人の口からも、暗殺されてと言われているにも関わらず、いま目の前に生きてい立っているのは何故か。

 

「普通の暗殺者なら死亡したどうかを確かめたりするでしょうが、プライドの高い純血悪魔や旧魔王は相手を殺したかどうかなど一々、確認しない。それだけです」

 

「そう、それじゃあ、貴方が黒歌と一緒に行動しているということは、神無月涼と共に行動している、ということでいいのかしら?」

「合っていますが、正確ではありません。私は、我が主―――涼様に仕えているのです」

 

 純血悪魔が人間に仕える、なんて事が悪魔の老人に知れ渡れば分かりやすく、グラシャラボラス家の質は落ちた、とでも口にするだろう。

 

「アンタは純血悪魔なんだろ!なんで、涼の部下になんかに!」

 一誠は、若手悪魔の会合で、悪魔の上層部が人間をどれだけ見下しているかを知った。

 

「寧ろ、何故という問いたいのは私の方ですよ、リアス、赤龍帝」

「どういうことかしら?」

「プライドだけが高くて、絶滅という道を自分から走る悪魔。他者を見下す癖に、自分たちが優れている者を見れば足を引っ張る、なんともくだらない種族です。私は、魔王としての役目を果たさない兄を反面教師として、視野を広くして生きてきました。冥界の影を見つめ、他種族を観察し。悪魔がどれだけプライドだけの種族なのかを、その度に理解して。そんな時に、旧魔王の暗殺に遭い、いっそのこと死んでしまうのもありか、と思った時に涼様に出会いました。あの方は、種族など関係ない。悪魔も、天使も、堕天使も、人間も、世界中の種族が、あの方の前では平等だ。そして助け合って生きている。まさに、平和という言葉が体現されたように」

 

 純血悪魔という枠に置いて、グリューヌは異端と断じられるだろう。

 それでも、グリューヌは幼少期に一人で悪魔の行ってきた悪行を知り、それを悪とした時点で純血悪魔としての道は絶たれていた。

 人間を道具のように売り買いをして、要らない玩具を捨てるように眷属を捨て、当たり前のように眷属にするのに、家族を人質にして強要する。

 人間を見て知った、国が違く手も、言葉が通じなくても手を取る素晴らしさを。

 それが、どうだ、自分たちの種族を維持する為に、外から人を攫い。転生悪魔としたのに地位と権力は与えない。

  

「それが貴方の選んだ道なのね」

「ええ、冥界に居ては、グラシャラボラス家を継いでは、望むことが出来ない未来です。いつか貴方は言っていましたね。自分をリアス・グレモリーとしてではなく、リアスとして見てくれる人と結婚したいと」

 

「ええ、言ったわ。それが何かしら?」

「その話を聞いた時、思ったんですよ。グレモリー家を捨て、魔王の妹という席を捨てる、覚悟がないのに、求めるのかと」

「おい!結局、アンタは何が言いたいんだよ!」

 一誠はリアスの話が出た途端、口を挟んでくる。

「捨てる覚悟もないのに、求めるだけなら子供でも出来る、ということですよ。まあ、貴方に言っても詮無きこと―――お喋りは、この辺にしましょうか」

 その言葉と雰囲気を感じ取り、一誠たちが構えるのと同じように、手の平に卓球の球くらいの魔法の弾を作り出した、グリューヌ。

 


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