神殺しin―――ハイスクールD×D   作:ノムリ

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裏切りの白い龍

時間停止か。

疑似神速は出来るけど時間操作は出来ないからちょっと羨ましいな。

「敵襲みたいだな、お前ら動けるか?」

「問題ないです、一定の実力が無いと強制的に停止されるみたいですね。一部動けない者たちがいるようですから」

 悪魔の陣営を見ると生徒会組が見事に固まっている。

 後ろで待機しているセレナたちは流石に固まってはいなかった。恐らく、イリナとゼノヴィアはセレナの朝稽古が無かったら危なかっただろうけど。

「ハーフ吸血鬼の『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』を強制的に暴走させたたんだろう」

 流石は神器オタクのアザゼル。周りを少し観察しただけで原因を特定した。

「そのハーフ吸血鬼に護衛とかはついてないのか」

「……旧校舎に待機させておいたの。小猫をつけておいたのだけど………」

 言いにくそうにリアスが答えると、妹の名前が出たことで黒歌がピクリ、と反応。視線を向けると言葉にはしないが行く、と目が訴えてくる。

「好きにしろ」

 小さく告げると術を使って一人速やかに旧校舎へと転移して消えていった。

 

「涼さん、私たちはどうしますか?」

「黒歌が旧校舎を終わらせたら適当に相手して帰る」

 とはいえ、時間停止に乗じてローブ姿の魔術師たちが大量転移で空から現れた。

現れた魔術師たちに警戒してるってことは三大勢力とは無関係の第三者の差し金ってことか。

「ちっ。来るんじゃねえかと思ってたが、本当に来やがったぜ」

「アザゼル、ミカエル。まず結界を。妹達の学び舎を傷つけるのは忍びない」

「そうですね。和平を結んだというのに、その場を破壊されれては顔が立ちませんからね」

 三大勢力のトップたちが校庭に出ると、各自結界を張ったり、魔力の塊を飛ばして手あたり次第に魔術師たちを撃ち落としていく。

 それに伴って、木場や姫島も同じように魔術師を倒す為に飛び出していく。

「セレナ、イリナ、ゼノヴィア、お前らも魔術師を狩ってこい。灯巳はこのままこっちで待機」

「了解です。イリナ、ゼノヴィア、二人合わせて私より撃破数が少なかったら罰ゲームですよ」

 それを聞いた二人は大慌てで武器を取り出して駆けていく。セレナと言えば慣れて手付きで光剣を生み出して二人の後に続いた。

 

「アザゼル、和平を組むことなった今だからこそ聞きたいのだが、神器を集めて、何をしようとしている?」

 サーゼクスが隣に立つアザゼルに質問すると。

「備えていたのさ」

「備えていた?」

禍の団(カオス・ブリゲード)だ」

 そんな名前の調査担当から聞いたっけ。派閥に分かれてテロリストが集まて出来たテロ集団だったか。正直、どうでもよすぎて報告書流し読みしてた。

 なんだっけ、『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスだったか、なんかそんな名前のが組織のトップしてたよな。神も恐れたとか言うけど、ドラゴン以下の神って寧ろ神の方に興味が湧いてくる。

「ごきげんよう、現魔王」

 地面に描かれた魔法陣から出てきた眼鏡をつけた褐色の人物。気配は悪魔だが、サーゼクスと隣に立つレヴィアタンを睨みつける。

「主、あれって一応、魔王の血筋なんだよね。それにしては魔力がしょぼすぎない?」

「灯巳。あれはな、いい血が流れていれば自分TUEEEE!!な悪魔なんだ。悪魔は大抵そうだしな。あれは死ぬまで直らんさ」

 二人で自分たちは関係ないとばかりに話していると魔力の弾が放たれ。灯巳が慣れて手付きで護符を投げると護符は空中に固定され、障壁を生み出し容易に魔力の弾を防いだ。

 

「人間如きが真のレヴィアタンの血筋である私を愚弄しますか!」

 攻撃を防がれているのに自分が優位になっていると疑わず、強気で出てくるレヴィアタン。

「サーゼクス、あの獲物は俺がもらうぞ」

「……カテレア、投降する気はないかい」

「えぇ、サーゼクス。貴方は良き魔王ですが、最高の魔王では無い!魔王として君臨するのは我々です!」 

 高らかに宣言するレヴィアタン。

「灯巳、お前は此処に待機だ《滅びの時は来た。穢れし世界。混沌ををもって全てを無に帰す。この牙、この爪は世界を殺す、我は獣なり》」

 聖句を唱えると右手に黒と赤のオーラが生まれ人の頭を握りつぶせる巨大な腕が構成。禍々しいオーラを身に纏い立つ姿は他人から見ればバケモノそのものだ。

 

「さぁ、久しぶりに狩りと洒落こもうか!」

 地面を蹴り、凄まじい瞬発力を発揮してカテレア目掛けて突撃する。

 流石に人間を見下していたカレテアも迫りくるバケモノに恐怖して本能的に術を使って地から飛んだ。元いた場所に獣の腕が振り下ろされると地面が抉れ、鋭利な爪は地面に突き刺さっている。硬い地面が抉れる威力が仮に人に振り下ろされたのならどうなるかは想像に難くない。

 

「おいおい、見下している人間の攻撃を避けるなよ」

「人間ですって、バケモノの間違いでしょ!」」

 宙に浮かぶカテレアを追う為に一対に翼を生やして空に上がると迫る俺を見て、恐怖に顔を浮かべながら逃げながら魔法の弾を撃ってくる。

「そんなんじゃ落ちるわけないだろ」

 右腕で魔法の弾を防ぎながら徐々に距離を縮めていくと一層、顔は恐怖に歪む。

 生きてからいままで一度も味わったの事ない恐怖。

 人間という種を狩る側だったカテレアは生まれて初めて狩られる側。弱者の恐怖を味わっていた。

「ありえない!ありえない!この真なる魔王の血筋が人間如きに!」

「弱すぎ、少しは向かってこいっての……もういいや」

 進むことを辞めると、カレテアも距離を取り。俺が何をしようとしているのかと警戒してする。

 獣の腕となっている右腕をカテレアに向けると形を砲へと変えた。手の平にぽっかりと穴が開いているような形となり、見るからに何かが放たれる見た目をしている。

 照準をカテレアに合わせると静かに砲の準備が行われていく。

 コカビエルの時には『混沌獣』は雷を生み出す為に山羊とサンダーバードを具現し、今回具現したもは”ミイデラゴミムシ”、”イルカ”。

 ミイデラゴミムシは過酸化水素とヒドロキノンを酵素と酸化還元反応を起こすことにより、高温高圧の水蒸気とベンゾキノンを含む摂氏100度にもなる超高温のガスを噴射する。

 イルカは仲間とのコミュニケーションを音を使って行う。

「チャージ!………発射!」

 拡散して噴出される超高温のガスを音響によって範囲の制御と振動による衝撃。広い範囲で放たれるガスは限定して放たれ、虫の姿で摂氏100度の超高温のガスは権能の力によって能力は底上げされ文字通り、高熱のビームと化す。

 

「――――――ッ!」

 一瞬にして高熱のビームにによって全身を包まれてカテレアは瞬間的に皮膚を焼かれ、肉を焼かれ、骨を焼かれた。それは時間にして3秒。悲鳴も、熱も、痛みも感じる時間もなくカテレアは溶けた。

「生物番組で見た虫の能力から作ってみたけど結構ありだな」

 カテレアは真面目に作った形状変化ではなく、お遊びで作られて形状変化のテストとして使われ肉片も残さずに溶けた。

 

「うっわ、えげつねぇ威力だな。悪魔が溶けたぞ」

「そういえば、主、昨日の夜。特殊能力を持つ生物を紹介する番組みてたからその辺から着想を得たんじゃないかな。主のあれは生物とか幻獣をサンプリングして自由に組み合わせるものだから多分、その辺のをまぜたんだよ」

 何を混ざたかは知らないけど、と付け加えて欠伸をしながら降りてくる涼の元へと駆け寄る灯巳。

「自由に組み合わせるってチートかよ……チートか」

 アザゼルは灯巳の適当な解説を聞いて観察する。

 獣の腕を生やし、翼を生やし、果てには高熱のビームを撃つ。文字通りサンプリングして、自由に組み合わせればほぼ無限に手札を増やし続けられる。

 

「あれはヤバイ。高熱のビーム(あんなもの)を連射されたら本当に全滅するぞ」

 巫女姿の灯巳とイチャイチャしている涼の姿は何処にでもいるラブラブカップルに見えるが、その正体は種族を一人で滅ぼせるバケモノなど冗談ではない。

「サーゼクス、ミカエル。冗談抜きでアイツを怒らせると滅ぶぞ」

「そのようですね」

「あぁ、一番ヤバイのは悪魔だ。少しでも彼の機嫌を取ることに動くとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 無事、黒歌といつの間に転移していた一誠とグレモリーが小猫とハーフ吸血鬼の男の娘を取り戻し帰ってくると俺に向かって飛んでくる飛行物体が一つ。凄まじい速度だが、対処できないほどでもないので殴ろうかと準備すると直前にセレナが割って入り、光剣で飛行物体ことヴァーリが俺を攻撃するのを防いだ。

「どういうつもりですか白龍皇。返答次第によってはその首、斬り落としますよ」

 光剣を構え直し問いただすセレナ。

「やっぱり、裏切り者はお前かヴァーリ」

「悪いなアザゼル。アース神族と戦ってみないかと言われてね、禍の団の誘いを承ける事にした。こっちの方が強い奴と戦えそうなんでね」

 おい、そこで俺を見てくるな。

「折角だ、神殺し神無月涼。俺と戦ってくれないか」

 口ではそういうわりには仮に拒否したとしても向かってくる気満々だ。

「お前のライバルはそこ居る一誠だろ」

「おい、涼!お前戦いたくないからって俺を売るなよ!」

「おいおい、一誠。実戦は訓練の数倍の経験を得られるんだ。三大勢力が和平したから世界が平和になって戦わなくても良くなるなんて思うなよ。失いたくないものがあるなら自分で守るしかない、どっちにしろお前は赤龍帝だ、白龍皇とは戦う以外に選択肢なんてない。というか面倒だから前がやれ」

「良い事言っておいて結局、面倒なだけかよ!?」

「やはり兵藤一誠と戦ってから君と戦うしかないようだが、彼は戦う気が無いらしい。ならこういうのはどうだい?君は復讐者となるんだ。俺が君の両親を殺し、そうすれば俺との間にある実力差は少しは埋まるだろう」

 まるで子供が遊びでも提案するように軽口で両親を殺すと口にしたヴァーリ。

 

「……ふざけんじゃねーーー!!」

 大きな咆哮と共に一誠は赤龍の鎧を身に纏った。

 赤と白の激闘は開始された。

 


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