気付けばどことなく暗い洞窟の中に突っ立っていた。
「なんだ、ここ。一体全体、どういう座標設定したらこんなところに送られるんだ.......?」
周囲に眼を向けながらそう呟いた男はどうとでもなるか、とぼやきながら歩き始めた。
「とりあえず上に向かうか。診たところ下に深くなってるみたいだし、上に向かえばヒトかなんかに会えるだろう。」
そう呟いた次の瞬間、すぐ横の壁にヒビが入った。
なんだ?と思ったら、脆くなった壁を破って中から大量のエネミーが湧いてきた。
「くはっ、ずいぶんとファンタジーな世界だな。めんどいのはイヤだし、この世界もゆるゆるのファンシーなワールドだとありがたいんだけどな〜?」
黒いサイ型のエネミーが二足歩行しながらラーメン屋の暖簾をくぐるように出てきているのを前にしてそんな悠長なことをくっちゃべっていると、そのサイもどきが襲いかかってきた。
男は仕方がないな〜、とでも言いたげな雰囲気を醸し出しつつ眼を閉じ口を開く。
「_______砕けろ、芥」
思い浮かべるは五体が砕け散った目の前の黒いサイ。発する言葉に確たる芯を持たせ、体内から体外へ、ウォーターカッターのように自らの五体を切りとばすがよい。あ、黒いサイだとアレなんで、今日からブラックライノスでけって〜い。
イメージは具現化する。空想を現実に。
眼を開けば、イメージどおりサイもどきの五体は砕け散り、今まさに大地に帰るように消えていくところだった。
「いやなんでだよ!」
エネミーの核らしい魔力のこもった石は残っている。謎だ。いや、ちょっと待て。もしかすると、もしかするかもしれない_______
「____まさか、生きているのか?どうく.....いや、ダンジョン、メイズ、.......クハハハハ!なるほど、また今度だな!」
未知を与えてくれた世界に感謝する。だがそれと同時に上に登る未知を探すのも面倒になってきた。
「模倣宝具・擬似展開。最果てにてその身を輝かせろ、偽ロンゴォォォォ!!!」
偽ロンゴをナナメ上に向かって投げつける!
仮にも宝具だったものだ。輝く光はとどまることを知らず、どんどん層を貫いてゆく。瓦礫が落ちてくるものだと思って投げた瞬間防御態勢に入るも、想定していたものは消し飛んだので無駄だった。
「よぉし。ま、生きているなら勝手に戻るだろうし、閉じないうちにささっと登るか。」
幸い閉じないことはなさそうだ。少しずつ穴が狭まっている。閉じなきゃメイズくんに干渉して活性化させるか時間戻すかすればなんとかなるだろう。
さて、目的地も第一村人も視認したしとりま目の前にでもシフトすればいいだろ。
ドォォオオン!
「「うわッ!!!/きゃぁ!!!」」
突如襲いかかる衝撃と爆風に僕ことベル・クラネルとそのパーティメンバーのキリン・クサナギは今いる階層より下の階層のことなのに吹き飛ばされる。
「痛ぅ〜....。」
「....今の爆風と衝撃、下で何があったんだろう?」
「お尻以外無事みたいだし、一緒に観に行こ?」
「エイナさんには“冒険者は冒険してはいけませんッ!”って言われてるし、今日のところは帰らない?」
「ハァ〜、あのね、ベル?そんなんだといつまでたっても英雄にはなれないよ?冒険してこその冒険者なんだから!」
「エイナさんは“命あっての冒険者”って言ってたけど....」
「あ〜もう!いつまでもグチグチうだうだ言ってないで、とっとと行くよ!」
彼女はしっかり者でいい人なんだけど、好奇心旺盛で気になることがあるとすぐに突っ込んで行くのが、玉に瑕なんだよなぁ〜。
「....はぁ、わかったから置いてかないでね。」
少年少女移動中. .. ... ....
「で、そばまで来てようやくわかったけど。」
「この穴、かなり下層から続いてるのよねー。これって一級冒険者が言ってた階層無視攻撃ってやつかしら?52階層から58階層にいるっていう確か____
『そこな少年少女たちよ。ここは崩れて狭くなっている。話すならもう少し端に避けてくれないかね』
「すす、すみません!」
「ごめんなさい!....!ああ、あの!少しよろしいでしょうか!」
少女は何かを思いついたような風で、そばを通り過ぎた男に声をかけた。
『?何か用でも?』
「あ、あの、迷惑でなかったらで良いんですけど.......私たちのパーティになってくれませんか!?」
「ちょ、キリン!?」
「ベルは黙ってて。.......あの、どうでしょうか?」
『......君たちと一緒に行く事で、何か俺にメリットがあるのかね?どう見ても弱そうだが。』
男は何かを測るような眼でベルとキリンを見ると、そう言った。キリンはその言葉に思わず、うっ....と言葉を詰まらせてしまう。
だが男は、
『いや何、それを受けるのは構わない。のだが代わりにひとつ、いうことを聞いてもらおうか』
「ひぃっ!か、カラダだけは勘弁してください」
『なぁ少年?こいつぶっ殺してオーケー?』
「じょじょ、冗談に決まってます、よね?ごめんなさい!ほら謝って、地面に手と膝と頭をつけて!」
「あう、ごめんなさい.......」
「すみませんでした! と、ところでお名前を訊いてもいいでしょうか?」
『ああ、僕の故郷には“相手の名前を訪ねるときは、まず自分から答えなさい”という昔から言い伝えてきた、いわゆる訓戒・風刺とかを内容した短い句があるんだが、ねぇ?』
「ご、ごめんなさい!僕はベ『初めまして、僕はソラノ・カミシロ。名前で呼んでくれいいよ。ファミリーネームで読んでもいいけどそのときは.......よろしくね』ル・クラネル、です。なんで先に言っちゃったんですか!?今の流れ的に僕が自己紹介する流れだし、最後こわっ
『ああ、故郷の慣習のことを出したけど、ここは故郷じゃない。僕の故郷には“郷に入っては郷に従え”って言う句もあってね?ここではここのやり方もあるだろうし、先に紹介させてもらったよ。ククッ。で、彼女の名は?』
「....あ、はい。私はキリン・クサナギです。先ほどは失礼しました。道中よろしくお願いします。」
『よくできました。じゃ、しゅっぱち!』