#13 走り続けるY/アクセル爆誕
7月に入り、梅雨も明けて夏らしい気温となった内浦。鞠莉はその日も出張を終え、浦の星女学院へと戻って来た。駐輪場にハードボイルダーを停めると、横にはダイヤのバイクであるスカルボイルダー…の横に青い炎の描かれた赤のバイクが停められているのに気づく。
「Cool&Wildなバイクね。生徒の物かしら?でもこの時間帯はどこのClubも終わっている筈だし…」
鞠莉はバイクの持ち主を探そうと、校内へ足を踏み入れる。
理事長室の近くを通りかかると、ドアの前でスポーティーな服を着た、グレーのボブカットの少女が扉の前に立っているのを見つけた。
「Who?あなた、この学校の生徒じゃないわよね?」
「あ、もしかして理事長の小原さん?ゴメンね、勝手に入っちゃって!事務室誰もいなかったからさ…」
そう苦笑いをしながら頭を搔く少女。そこで少女は何かを思い出したかのように『あっ』と短く声を漏らした。
「そうそう!ねぇ、黒澤探偵部の部室って何処にあるの?依頼に来たんだけど…」
少女は依頼人だった。鞠莉は少女を連れて体育館へ向かい、そこにある探偵部の部室へと入室した。部室では、ダイヤとルビィがラジオでニュースを聞いている。
<被害者は意識を失った状態で発見されたものの、命に別状はないとの事です。現在、県内では同一犯の犯行と思われる通り魔殺人が発生しており、警察は関連を調査しています>
「通り魔かぁ…気をつけないとね、お姉ちゃん」
「ここの所物騒ですもんね…あら、おかえりなさい鞠莉さん。その方は?」
「依頼人よ。えっと…そういえばあなたの名前って何だったかしら?」
「おっと失礼、名前を教えてなかったね。私、こういう者です」
少女はポケットから何かを取り出す。その手の中にある物を見て、一同は驚愕した。
「それは…警察手帳!?」
「る、ルビィ達、とうとう訴えられちゃったんじゃ!?」
「あ、別に逮捕しに来た訳じゃないよ。依頼で来たのは本当の話だから」
「沼津警察署…渡辺曜、でいいのかしら?」
「その通りであります!敬礼っ!!」
警察の少女…渡辺曜は人懐っこい笑みを見せるのだった。
「それで、曜はどうして依頼に来たの?探偵よりもPoliceの方が地位的には優れてるじゃない」
「メモリ絡みと思われる事件が起きたの。海未ちゃんからそういうのに詳しい知り合いがいるって聞いたから探偵部に来たんだ。それで早速本題に入るんだけど、まずはこれを見て欲しいんだ」
曜は1枚の写真を取り出す。写真にはアパートの一室が収められていたのだが、その中は凍りついたかのように真っ白に染まっていた。
「これ、ありえないでしょ?この部屋を丸ごと凍らせちゃうんだもん」
「はい…確かにここまで凍るのは不可解ですわね」
「曜が言いたいのはこれがドーパントの能力によるもの、という事かしら?」
「そう。推測だけどメモリ名も絞り込めたんだ。おそらくだけどこれは『Wのメモリ』のドーパントの仕業だと思うの」
「どうしてWのメモリだと思ったんですか?」
「昔、色々あってね…」
曜は少し悲しげに目を伏せる。聞いてはいけない事を聞いてしまった、そう思ったルビィは慌てて『ごめんなさい』と謝罪の言葉を口にした。曜は首を横に振り、再び話し始める。
「けどさ、あくまでもそれはまだ推測の範囲なんだよね。だからそれを調べて解決に繋がるよう協力して欲しいんだ、『地球の本棚』の力を使ってね」
「え?ちょっと、今なんて言ったの?」
「地球の本棚でしょ?もしかして間違ってる?」
何故曜が地球の本棚の存在を知っているのか。鞠莉の頭は疑問により埋め尽くされたのだった。
「いえ、地球の本棚で合っているのですが…そうなるとキーワードが足りませんわ。まずは調査に向かいましょう」
鞠莉、ダイヤとルビィ、曜はバイクを走らせ事件のあった現場へと向かった。
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「英玲奈亡き今、あなた達には正式にUTXの中核に入ってもらうわ。Saint Snowの活動も続けて構わないけど、どちらも疎かにしないようにね」
聖良と理亞はツバサに連れられ、綺羅家の地下にある洞窟へと訪れていた。
「これは地球の記憶が秘められた穴よ。どうかしら?」
「此処がガイアメモリのパワーの源にして始まりの場所、なんですね…」
「えぇ。それと近日、あなた達にはあんじゅと共にある人物の所へ行って欲しいの」
「ある人物?」
「ガイアメモリの事を研究している子よ。彼女は私とあんじゅの1個下、17歳の少女なの。他に言う事があるとすれば…かなり強力な力を持ったメモリの持ち主で、掴みどころのない子…かしら。少し危険な子だから注意しておいて」
その言葉を聞いた理亞は、途端に身体中の緊張が抑えられなくなった。ツバサが警戒している程なのだから、相当な人物なのだろう。
「さて、そろそろ仕事の時間ね…そういう訳だから宜しくね。2人共」
ツバサはそう言い、洞窟から去って行った。理亞はスマートフォンの写真をそっと見る。そこには無邪気に笑うルビィの姿があった。画面を横にスクロールすると、先日報道された英玲奈の死亡ニュースで流れた彼女のパフォーマンスの動画が。それを見た理亞の胸に、言葉にできない程の辛い感情が流れてくるのがわかった。
その表情に気づいた聖良は、彼女の肩にそっと手を置き話しかける。
「理亞…あなた、もしかしてガイアメモリを使いたくないって思ってる?」
「!!」
「正直に答えて。お願い」
「…使いたくない。ルビィに…友達に本当の自分でいる事、教えてもらったの。それからは使わないように気をつけてる。この前は姉様を止めようとして使っちゃったけど…」
「そう…実は私も、ガイアメモリを使う事が本当に正しい事なのか疑問に感じているの」
「え、姉様も?」
「この前の英玲奈さんの時もそう。あの時はツバサさんに逆らえなくて従ってしまったけど、ツバサさんは躊躇もなく英玲奈さんを殺すよう私に命令した。あんじゅさんは用済みと言って英玲奈さんを殺してしまったし…考えてみたら凄く残酷な事だと思うようになったの」
「………」
「それに、華蓮さん達がガイアメモリで私達を貶めようとした事、あなたがバイオレンスに襲われた事もあって…ガイアメモリを使った人、知ってしまった人は最後にはみんな壊れてしまったでしょう?私達は世界を変える為にUTXに入ったけど、必要のないものを切り捨てる事で世界が変わるなんて今は思えないわ」
「うん…私達、どうしたらいいんだろう」
聖良と理亞は過去の出来事を振り返り、UTX…ツバサのしようとしている事が正しい事だと思えなくなっていた。
しかし、自分達では彼女は止められない。どうすればいいのか、思いつきさえしなかった。
一方、鞠莉達は事件のあった現場に到着していた。現場であるアパートは学校から5分程のそう遠くない距離にあり、部屋には『立入禁止』と書かれた黄色のテープが張り巡らされていた。
「Wao!!Very Very Coldじゃない!!」
「あら、鞠莉達…と曜も来たんですね」
「園田刑事、この部屋で何がありましたの?」
「えぇ、実は…」
海未によると、この部屋の住人である高校生・鬼崎アキラが凍った状態で発見されたらしい。幸いにも彼女は一命を取り留めており、現在は病院で入院しているらしい。
「第一発見者は隣に住む50代の夫婦の方々です。夏にもかかわらず隣にまで冷気が来ている事からおかしく思ったのでしょう。ドーパントによる犯罪の可能性が高いかもしれません」
「あなたは…」
「急にごめんなさい。私は
「小雪は最近、埼玉県警から異動して来たんですよ。頭脳明晰でデスクワークに強いんです」
「それだけじゃないんだよ。小雪ちゃんが街をパトロールするようになってから少年の非行事件も凄く減ってるんだ。この前もタバコを吸っていた男子高生を注意したらしいんだけど、小雪ちゃんに注意されてから禁煙頑張ってるんだって」
彼女は整った顔立ちをしている為、男性からの人望も高いのだろう。小柄なツインテールの少女は『そんな事ないです』と頭を搔く。
「確かにCuteな顔ね♪ところで、ドーパント対策課って?」
「ここ数年で横行するガイアメモリ犯罪を取り締まるべく、新たに県内全ての署に設置された課なんです。私はガイアメモリ犯罪によく関わるという理由から無理矢理異動させられて…おまけに小雪や曜といった県外で優秀な業績を持つ方が異動して来たので、少し肩身が狭いんですよね」
「あ、私は東京にある警察本部から異動して来たの。こう見えても一応、沼津警察の警視だよ!」
「警視!?本当に凄い方なのですね…」
海未はそれより、と話を戻し被害者である鬼崎アキラの人間関係の調査結果を報告するのであった。
「鬼崎さんの高校に行き、聞き込みを行なったのですが特に人間関係によるトラブルは確認できませんでした。離れて暮らしている家族との関係も良好でしたし…」
「ちなみに鬼崎さんは自転車競技部に所属しているそうです。大会成績も良い方なので、他校の生徒が嫉妬によりメモリを使って彼女を襲った可能性が高いかもしれません。園田刑事、渡辺警視、自転車競技部のある県内の高校を調べたので今からそこへ聞き込みをして来ます」
「了解であります!頑張ってね!」
小雪は事情聴取を行う為、現場から去って行った。鞠莉達も引き続き部屋の中の調査を行なうが、これといって特に気になる点は見られなかった。これでは明らかにキーワードが足りない。
「ここには手掛かりはなし、ですわね…どうしましょうか」
「ねぇ海未、アキラは今どんな様子なの?」
「今は意識も回復しています。話す事くらいならできるかもしれません」
「本人に聞くしかなさそうね…病院へ行ってみましょうか」
「あ、じゃあ私も行くよ!」
鞠莉達と曜はアキラの搬送された病院へバイクを走らせる。病室の場所を確認しようと外から様子を窺っていると、病院の角を怪しい影が横切るのが見えた。
「Stay!あなた、何をしようとしているの!?」
「くっ、タイミングが悪かったか…私の邪魔をしないで!」
怪しい影の正体は案の定ドーパントであった。その身体は雪のように白く、不気味な見た目をしている。
「まさか、鬼崎さんを殺そうとしてるんじゃ…!?」
「そうはさせないわ!はぁっ!」
鞠莉はドーパントへと蹴りかかる。ドーパントは指から冷気を纏った白い霧を出し、鞠莉に浴びせようとする。
「もう…何やってんのさ!」
進展のない戦いを見かねた曜は何かをバイクから外す。それはかなりの重量を誇るであろう、大きな剣であった。その剣は曜でさえ上手く持ち上げる事ができず、剣はアスファルトの地面に穴を空けた。それを見たダイヤとルビィは、思わず息を呑むのであった。
曜は剣を引き摺りながらドーパントへ向かって行き、持てる力を出しながらそれをドーパントへぶつけようとする。
「えぇ!?そのBladeは何!?」
「私への質問は禁止!そんな事いいから変身してよ、小原さん!」
「な、何故それを知ってるの!?」
「だから質問は禁止!早くして!!」
「そうね、わかったわ!!」
鞠莉はダブルドライバーを装着し、果南へと呼びかける。
「果南!ドーパントが出たわ!変身よ!」
\ジョーカー!/
『鞠莉!今草加せんべいについて検索してた所なんだ、食べたいんだけどネットで頼めるかなん?』
「草加せんべいね!あとで注文するから早く変身しましょう!」
『ありがと、変身!』
\サイクロン!/
「変身!」
\サイクロン!ジョーカー!/
鞠莉は身体に風を纏い、Wに姿を変えた。
「それが仮面ライダーWなんだね…!緑と黒、噂通りの姿だ!」
『あれ、なんか一般人ぽい子いるけど正体バラして平気だったの?』
「依頼人よ!何故かわからないけど、私が変身できる事と地球の本棚の事を知ってるみたいなの!」
「仮面ライダーだったんだ…何を1人で話してるのっ!?」
ドーパントは指から冷気を放ち、Wの右半身にそれを浴びせた。
『わっ!そんな事話してる暇じゃなさそうだね…!』
果南は自身の手足を見る。Wの右手と右足は白く染まっており、1ミリも動かなかった。おそらくこの能力でアキラを部屋ごと凍らせたのだろう。身動きの取れないWを見たドーパントは、チャンスと言わんばかりにWをタコ殴りにする。
「Summerには寒過ぎる冷たさね!熱いのはお好きかしら?」
\ヒート!/
\ヒート!ジョーカー!/
Wの右半身が赤に変わり、手と足の氷を溶かす。そのままWはドーパントを殴りつけた。2発目の拳が叩きつけられようとした瞬間、ドーパントはそれを避けどこかへ逃走してしまった。
「Wait!逃がさないわよ!」
Wと曜が近くの建物の角を曲がると、緑色の和服を着た少女が逃げて行くのが見えた。その手の中には青いドーパントメモリが。彼女は既に追いつける距離にはおらず、そのまま遠くへと姿を消した。
「あの子が犯人か…もう少しだったのに!」
「ん?これは…」
鞠莉が足元に視線を落とすと、『
数分後、鞠莉達は浦女の理事長室の横にある『ボイラー室』と書かれた扉を開け、階段を降りて行く。そこはリボルギャリーの格納庫へ続く階段であり、中では果南がホワイトボードに草加せんべいの情報を書き込んでいた。
「いらっしゃい。あなたが渡辺警視だね」
「紹介するわ。彼女は松浦果南、Wの右側で地球の本棚の持ち主よ」
「沼津署の渡辺曜です!曜でも渡辺でも、気軽に呼んでいいよ!」
「それじゃあ…曜、犯人の目星がついたって本当?」
「あ、言い忘れてたけど私への質問は禁止だよ、果南ちゃん」
「曜はQuestionをされるのが嫌いらしいの。なので私が答えるわね!ドーパントのメモリを持った緑色のJapanese Kimonoの少女…おそらくこのポスターと関係があるんじゃないかしら?」
「『綾小路たかまろ』…有名な落語家だよね、よくテレビに出てるし」
「それじゃあ果南ちゃん、地球の本棚に入ってもらえるかな?私がキーワードを入力するから」
果南は意識を集中させ、地球の本棚へ入る。
「さぁ、検索始めるよ。キーワードは?」
「まずは『綾小路たかまろ』」
果南がキーワードを入力すると、風で本棚の数は減っていく。人名という事もあってか、かなり大幅な減少だった。
「2つ目に『沼津公演』次は…『親族』『女子高生』」
果南の手元には一冊の本が残った。表紙には『Himeno Ayanokoji』の文字が。先程の少女の名前と思われる。
「綾小路
「髪型もあの時逃げていたGirlに似てるわね…ドーパントの正体は彼女と見て間違えなさそうだわ」
「確かに。あの時私達が見た女の人と同じと見て構わないかも。ところで、どうして曜は地球の本棚を知ってるの?普通は私が地球の記憶にアクセスできるかなんてわからないと思うけど…」
「質問は受け付けない、と言いたいところだけどそれぐらいなら教えてもいいかな?みんなの事はこの子に観察してもらってたから、大まかな事は私も把握してるんだ」
すると、何処からともなくビートルフォンが飛んで来て曜の手に収まる。
「あの時のカブトさんだ!」
「やはりガジェットだったんですね」
「どうしてあなたがガジェットを?もしかして剛の知り合いなの?」
「剛って名前は聞いた事あるけど、関わった事はないかな。これはある人から貰った物なんだ」
「なるほどね、納得。話を戻すけど、綾小路たかまろの公演日は明日の夜。リハとかもあるだろうし、もう市内のホテルに泊まってるんじゃないかな」
「会場は市民文化センターですから、職員の方に聞けば何処のホテルに宿泊しているのかわかると思いますわ。私とルビィと鞠莉さんで市民文化センターに向かうので、曜さんは何処のホテルでもすぐに向かえるよう市内で待機していて下さい」
「ヨーソロー!わかったらすぐ連絡してね!」
鞠莉と黒澤姉妹は市民文化センター、曜は市内へと向かった。彼女はバイクを走らせる道中、不思議な気配を感じバイクを停める。気配のした方を見ると、帽子を被った長い茶髪の女性がこちらに向けて指を差していた。女性は赤のロングコートを身に纏っており、黒のサングラスを掛けている。
「あなたなんだね、ディライト!!」
曜は謎の女性…ディライトに向け、そう叫ぶ。ディライトは曜を差していた指を地面へと下ろし、何かがある事を示す。そこには炎に囲まれたアタッシュケースが。曜がそのアタッシュケースに近づくと炎は消え、カチンとロックの解除された音が鳴り響いた。
「これが…!」
曜はアタッシュケースを開けると、そこにはバイクのハンドルを模した装置が緩衝材に収まっていた。装置の上部には、ガイアメモリを挿し込むスロットが。
「遂に完成したんだね!私のドライバーが…」
曜はメモリドライバーと思しき装置を取り出し、ディライトへと語りかける。しかし彼女の姿は既に消えており、そこにはアタッシュケースのみが残されていた。
その頃、時を同じくして鞠莉達は市民文化センターへ到着していた。
「そういえば鞠莉ちゃん、鬼崎さんは大丈夫なの?ほっといたらドーパントに襲われちゃうんじゃ…」
「それならDon't worry!アキラが犯人に襲われるRiskがあるから、という理由で海未が警察病院に転院させたらしいの。周囲にも警備員を配備してあるそうよ」
心配事がなくなったのか、ルビィはよかった、と呟きながら一息ついた。事務室に到着し窓口を覗くと、中には先客がいた。小雪が職員へ聞き込みをしていたのだ。
「小雪さん。奇遇ですわね」
「こんばんは。探偵部の皆さんも用があるんですか?」
「はい。綾小路たかまろさんと姫乃さんが何処に泊まってるのか聞きに来ました」
「同じですね。私も園田刑事から姫乃さんが怪しい動きを見せていると聞いたので、彼女に事情聴取を試みようとホテルの場所を聞いていたんです。彼らの宿泊先は『プレジオ沼津』だそうです。私は先に向かいますね」
「ありがとうございます、小雪さん!これで曜さんに連絡できるね!」
「そうね、今かけてみるわ!」
鞠莉はスタッグフォンを取り出し、曜へ電話をかける。数秒後、曜と電話が繋がったので、鞠莉はホテルの場所を伝える。
『プレジオ沼津ね!今私がいる場所からだと少し遠いけど…急いでも15分はかかるかな』
「事務室に小雪がいて、彼女から宿泊先を聞いたわ。ここからだと大体6分ぐらいで着くそうよ。遅れてもいいからあとで合流しましょう?」
『わかったけど…今小雪って言ったよね?どうして小雪ちゃんがホテルの場所を知ってるの?』
「海未から姫乃が怪しいと聞いたらしくて、彼女もホテルの場所をStaffに尋ねていたわ」
『でもあの時姫乃さんを見たのは私達だけだよね?なんで小雪ちゃんが知ってるんだろう。私、姫乃さんが犯人かもしれないなんて小雪ちゃんにも海未ちゃんにも連絡してないのに』
「そうなの?海未が周囲の防犯Cameraを調べて、小雪に姫乃が犯人かもしれないと伝えたんじゃないかしら?アキラもドーパントの襲撃に備えて警察病院へ転院させたみたいだし」
『あー、確かに海未ちゃんならするかもしれない。真面目だし…』
「そういう訳だから、私達は先にホテルへ向かうわね」
鞠莉は電話を切り、ダイヤ達と共にプレジオ沼津へと急いだ。
ホテルへ到着し中へ入ろうとすると、フロントの前にコンビニへ行っていたのか、姫乃が飲み物の入ったビニール袋を手に提げながら現れた。
「どなたです?」
「Hello,黒澤探偵部の小原マリーよ」
「単刀直入にお聞きしますわ。あなた、ガイアメモリを持っていますよね?」
「探偵ですか…申し訳ありませんが、警察でもない方々に話す事はありません。明日は父の公演を手伝わなくてはならないので失礼します」
「あ!待って!」
姫乃はそう言いながら走り去って行く。鞠莉達はあとを追うが、ビルの角を曲がろうとした瞬間に白いドーパントが出現する。鞠莉は冷気を浴びせられる前に後ろへそれを避け、ダブルドライバーを装着した。
「果南!」
『お、例のドーパントかなん?それじゃあ最初からヒートで攻めよっか』
\ヒート!/
\ジョーカー!/
「「変身!!」」
\ヒート!ジョーカー!/
鞠莉はWに姿を変えた。果南は風の記憶を持つサイクロンは今回のドーパントとの相性が悪いと判断した為、初めからヒートで戦う事にした。
「私の事を嗅ぎ回ってるんだね。それならいいよ、自分の砕ける音を聴かせてあげるからッ!!」
「面白いExpressionね!ならこちらは自分がBreakする音を聴く前にあなたのメモリをBreakしてあげるわ!」
Wは先程の戦闘で効果のあった炎の拳でドーパントを殴りつける。ドーパントも負けじと身体から冷気を放出すると、突然腕の動きが鈍くなってしまった。腕は白く染まっており、凍りかけていたのだ。
『うわ、厄介だなぁ。ヒートまで凍結させるなんて』
「これではFire Handが使えないわね…こっちにしましょう!」
\メタル!/
\ヒート!メタル!/
赤と銀になったWは氷が溶け、動くようになった腕を使いながら炎を纏ったメタルシャフトを叩き込んでいく。
「邪魔だって言ってるのに…!」
ドーパントは指から冷気を出し、今度はWの両足を凍らせた。
「キリがないわね!」
「鞠莉さん!私も助太刀しますわ!」
『ごめん!そうしてもらえると助か…』
「そこまでだよ!!」
ダイヤがロストドライバーを装着しようとした瞬間、ドーパントの後ろから大剣を引きずった曜が現れた。
「あとは私がやるよ。みんなは見ていて」
「曜!?何をする気なの!?」
「…私への質問は禁止だよ」
曜はそう答えながら大剣…エンジンブレードを持ち上げ、地面へ突き刺す。そして、先程ディライトから授かった装置・アクセルドライバーを取り出した。
『えっ?あのドライバーは…!!』
「あれ、ベルトだよね?仮面ライダーの!」
「この時を待ってたよ…この力を使って、あなたを倒す時を!」
曜が腹部にアクセルドライバーを当てると、ベルトが出現し腰に装着された。次に曜はポケットから赤のガイアメモリを取り出す。
\アクセル!/
「変…身っ!!」
\アクセル!/
曜はスロットにメモリを挿し、ドライバーの右のグリップを捻る。そして、バイクのエンジンのような音声と共に装甲を身体へ纏い、赤の戦士へ変身した。
「あなたは…!!」
「…仮面ライダー、アクセル」
曜の変身したライダー・アクセルは地面に刺してあったエンジンブレードを引き抜いた。
「全速前進、振り切るよ!」
<次回予告>
アクセル「お前だけは…お前だけは!!」
果南「曜が姫乃さんを見て取り乱した理由は何なんだろうね?」
???『曜ちゃんなら…きっとできるよ…』
アクセル「まずはあなたを止めなくちゃ」
次回 走り続けるY/ライダーの使命