妄想メンヘラ女はバニーガール先輩の夢を見ない   作:強炭酸カボチャ

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完全スランプ期の作者ですが、リハビリも兼ねて、思い付いたので書いてしまいました。

時系列は完全無視、パラレルワールド的な話で、キャラ崩壊も著しい完全番外編です。

こんな状況ですが、世界ではこういう百合が展開されているかもしれません、というそんなお話です(迫真)


特別番外編

最近、世界で猛威を振るっているウイルスの影響で、学校は休みになり、外出を自粛してどこにも遊びにいけない日々が続いていた。

いや、遊びにいけないのは良いのだ。食べ歩きが出来なかったり、好きなアーティストの音楽ライブが中止になったり、お気に入りのケーキ屋さんが休業してたりして悲しいけれど、遊ぶ友達もいないし、元々引きこもり気質の私からすれば全然余裕なのだけど、何より辛すぎるのが――麻衣さんに会えないということだ。

 

麻衣さんは同じマンションの別の階に住んでいる。最近、お仕事が大忙しで引っ張りだこだった麻衣さんも当然ながら昨今の状況ではあまり仕事もなくお家にいることが多いのだけど、そんなに近いのだけど……もう1ヶ月以上も会えていないのが現状だ。

 

麻衣さんは仕事柄、色々な人と接してきたし、今だってどうしても仕事で外に出ることがある。気を付けているし、最小限しか出ないようにしていても、やはりリスクを背負っている。

 

「もし私が原因で紅葉が病気に苦しんだりしたら一生自分を許せない」

 

麻衣さんは、騒動が始まってすぐに私と会うことを止めた。この頃は仕事も普通にしていたし、撮影で他県に行くのも当たり前で、自分がかかっていてもおかしくないと思ったらしい。実際、一緒に仕事をした人でも何人か症状が出ている人がいるらしいから警戒するのは当然だ。

 

私だって麻衣さんが言うことは分かるし、納得してるし、仕方ないって思う。

でも会いたいものは会いたい。

 

病気なんて関係ないっ!て私だけなら思ってしまったかもしれないけど、私が病気になるとかえちゃんも苦しめてしまうので、意地でもかかるわけにはいかなかった。

 

「もう無理です。耐えられないです。死にます。寂し過ぎて死にます」

 

『私、寝て良い?』

 

「部長には人の心が無いんですか!こんなに後輩が寂しがっているのに、なんでそんなに冷たいんですか!そんなにお昼寝が大事なんですか?」

 

『徹夜明けなんだよ……頭に響くから黙って欲しい』

 

「引くくらい邪険にするじゃないですかぁ!」

 

私だって、今の私が相当うざいって分かってるよ!でも限界だよ!以前までのぼっちだった私ならともかく、麻衣さんや部長に甘やかされてきた私には、もう一人は耐えられないんだよ!かえちゃんがいなかったらとっくに限界だったね!むしろ良く耐えた方だね!

 

『……桜島先輩からも電話あったんだよ』

 

私が麻衣さんと部長しかまともに話す相手がいないように、麻衣さんもまた、私と部長しか学校の人でまともに話す相手はいない。

 

『あの人に言っておいて……襲いたけゃ勝手にやってくださいと』

 

「麻衣さん、どこを襲撃しようとしてるんですか!?」

 

『まあ、自分の身は自分で守るんだね』

 

「私の家ですか!?なんで!?」

 

麻衣さんが怒るようなことした覚えないけど!?きちんとお家で大人しくしてますけど!?部長が物理的な意味じゃないんだけどね、とか、桜島先輩から延々紅葉の話されるの本当止めて欲しい、とか、ぶつぶつと文句を垂れ流し始めた。良く意味を理解できないけど、とにかく部長が滅茶苦茶ストレス溜まってるのは分かった。

 

『桜島先輩に連絡しなよ』

 

「麻衣さんに禁止されてまして」

 

『はぁ……自分から言い出したから言えないだけで、あの人もう限界だから』

 

電話でも話したりしたら会いたくなってしまうに決まっているし、私たちは殆んど連絡を取り合っていなかった。お互いの家が近すぎるというのも問題で、徹底して我慢しないと、会わないようにするというのは難しいのだ。

 

『あんたと桜島先輩と、両方相手にしてる私の方が限界』

 

もしやこれは、毎日5時間くらい部長に電話している私のせい?

元々引きこもり気質の私としてはお家に引きこもり続けること自体は何ら苦ではなく、料理したりアニメみたり、そんな感じで時間はいくらでも潰せるのだけど、如何せん、最近ずっと麻衣さんや部長といたせいで、ひとりぼっちに耐えられない体になってしまった私は、引きこもり生活三日と経たずに寂しくなり、それ以降、定期的に部長に電話するようになった。

 

『昼間は紅葉がかけてきて、夜遅くなると桜島先輩からかかってきて……しんどいよ』

 

徹夜の原因、麻衣さんだったんですね!?

 

というか、部長がガチの弱音を吐いてる!?これは相当に限界だったんだね!?だって部長、絶対他人に弱いところを見せたくないタイプだし、実際今まで見せたことないもん!こんなに素直に言うってことはもうどうしようもなくなってるってことだ!

 

「あの、麻衣さんには私から言っておくのでゆっくり寝てください」

 

『そうする……』

 

んー、部長ってなんだかんだ面倒見が良いから、本当に限界になるまで言い出さなかったんだろうな。

 

完全に覇気の無くなった部長の声に、私は後日お詫びとして何か好きなものを作ってあげようと決意した。部室にもコーヒーメーカーと高級豆を寄付しよう。

なんだかんだ私も麻衣さんも結構飲んでるし、いつまでも顧問の安いインスタントコーヒーを接収し続けるのも申し訳ない。正直、一教員の給料より、私や麻衣さんの方が稼いでるからね。

何となくあの安いインスタントコーヒー独特のチープさも好きになってきていたけど、やっぱり部長や麻衣さんには良いものを飲み食いしてもらいたいからしっかりしたものを選んでおこう。

 

私はインターネットでコーヒーメーカーと豆を即座に注文する。コーヒーメーカーは家にも設置したいので二台だ。元々コーヒーより紅茶派な私なんだけど部室で飲んでいる内に興味が湧いてきた。何れは部長の前でどや顔でブラックコーヒーを飲めるようになりたいし、良い機会だからコーヒーを飲む習慣でも作りましょう。

この引きこもり期間中にコーヒーメーカーを使いこなせるようになっておく必要もあるしね。

かえちゃんと二人でブラックコーヒーを飲めるように訓練するぜ。

 

さて、注文が終わったところでいよいよ麻衣さんに連絡しようと思う。

 

テレビでは死ぬほど麻衣さんの姿は見ているし、麻衣さんが載っている雑誌は余すことなく購入して読んでいるし保存もしているのだけど、やはり生の声で会話をしたいのだ。麻衣さんからは禁止されているけれど、部長も限界だし、そもそも私も限界だった。最初から麻衣さん絶ちとか無理だったんや。我慢できなくならないように会わないようにするって提案だったけど、そもそもテレビをつければ麻衣さんが出てるし、この部屋には麻衣さんの出ている雑誌やらグッズで溢れているので無意味だ。毎秒麻衣さんに恋してるね。

 

麻衣さんには隠しているけど、昔発売した麻衣さんの写真集も買い漁って舐め回すように見た。あの、母親との確執になったという水着姿も若干の罪悪感を覚えつつ誘惑に耐えきれず見ちゃったよね。申し訳ないけど最高だった。

でも、麻衣さんの機嫌が悪くなるのは間違いないので秘密だ。最近、昔の麻衣さんグッズを集めるのが趣味だったりする。子役時代のロリ麻衣さんのグッズとか可愛くて仕方がない。麻衣さんに秘密にしてるというのが、何だか背徳感があって、私はハマっている。元々、オタクというのは物を集めるコレクター魂があるものなので、私は世界一の麻衣さんオタクを目指し、グッズを集めているのです。

 

まあ、私はグッズじゃなくて本物の麻衣さんとおしゃべりしたり、ぎゅっとしたり出来るんですけどね!!

 

別に誰と話しているわけでもないけど、マウントを取りつつ、私は麻衣さんの携帯に電話をかけた。

 

きっと長電話になるだろうから、家電のところまで椅子を持ってきて。

麻衣さんと話したことをかえちゃんにも伝えたいからノートとペンを用意して。

 

「麻衣さん、元気ですか?紅葉ですよー」

 

久しぶりの麻衣さんに少しドキドキしながら、私はそれを隠すように、浮き足立つ心を必死に抑えながら、それでも高いテンションで、第一声を放った。

 

 

 

 

桜島麻衣の芸能界復帰というのは芸能界にとってビッグニュースだ。麻衣は人気絶頂の中、突如として引退したということもあり、その話題性は計り知れない。話題性だけでなく、その実力もこれまでの実績から分かる通り確かであり、子役時代に築いた人脈から、監督やプロデューサーに気に入られているとあっては、もう引っ張りだこになるのは当然の摂理である。

 

学生の身である麻衣はある程度仕事をセーブしてもらってるとはいえ、その忙しさは激務と言えるレベルだ。それでも、仕事は楽しかったし、やっぱり戻って良かったと思えた。桜島麻衣が生きるべき場所はここしかないのだと確信した。

 

ただ、最近の麻衣は不調だった。絶不調と言っても良い。普段なら絶対にしないようなミスをしてしまうくらいだ。原因は分かっている。

 

 

「紅葉とキスしたい」

 

『あの、それを私に言われてもだるいな、という感想しか』

 

理央の心底うざったそうな声も知らぬとばかりと麻衣は続ける。

 

「声も聞けない、手も握れない、頭も撫でれない。思春期症候群で母親に認識されなかった時よりツラいわ」

 

『もう襲えば良いんじゃないですか』

 

「もう二、三回は行きそうになって思い止まってるから言わないで」

 

『桜島先輩、紅葉より気持ち悪いですよ』

 

不調の原因は紅葉と会えないことだった。朝から晩まで働き、その上紅葉には会えない。自分から言ったことではあるし、各所で仕事をしている自分が紅葉と会うわけにもいかないのだが、頭では理解していても我慢できないことはある。昨今の状況故に、最近は仕事が落ち着いてきたことで、家にいる時間が長くなったのも悪い。仕事もなく、すぐ近くにいるのに会いにいけないというのは予想以上に辛かった。台本を覚えるなど家で出来ることをしようとしているのだが手につかない。

 

『連絡すれば良いじゃないですか。私なんて毎日三食食事の写真が送られてきて感想求められますけど』

 

「……(ドンッ)」

 

『……あのシンプルに台パンする音が聞こえたんですけど』

 

「大丈夫。明日のラジオで友人Aの話として貴女の恋話(こいばな)を全国へと暴露しようか悩んだけど何とか耐えた音だから」

 

『大丈夫じゃないですよね!?』

 

国民的美少女にしか出来ないスケールの嫌がらせに思わず寝そべっていたソファから転げ落ちる理央。もし万が一想い人に聞かれたりしたら死ねる。いや、それ以上に目が死んでいる豚野郎に聞かれでもしたら最悪だ。

 

こんな深夜に電話してきて、ひたすらに惚気をかます先輩に意趣返しのつもりで言った些細な言葉への反撃が強すぎる。

ちなみに紅葉は携帯を持っていないため、カメラで撮った写真をわざわざPCに取り込んで理央に送っており、それに理央は、美味しそう、とか、いいね、とかそんな適当な返ししかしていないが紅葉は満足していた。具体的には20分はその文面を見てニヤニヤしている。紅葉はちょろい。

 

「怒らないから言ってみて。紅葉とどれくらい電話してるの?」

 

『毎日五時間くらいですかね』

 

「明日のラジオを楽しみにしておくことね」

 

『怒らないとは!?』

 

理央は、麻衣が科学部に入部した時から思っていたが、紅葉よりも麻衣の方が独占欲が強く嫉妬深い。紅葉が理央に懐いていることも、紅葉が楽しそうだから嬉しい、という反面、嫉妬もかなりあるのは間違いない事実だ。紅葉が麻衣と理央、それぞれに向ける感情は違うのだが、だからこそ、両方独占したいと思ってしまうのである。

そんなわけで麻衣からしてみれば、友人であり、ある種、ライバル視している理央が、自分が我慢しているときに紅葉と長いこと通話したり、写真をもらったりしているのは、かなり嫉妬心を煽られる。

 

「冗談。そんなことしたら紅葉に嫌われる」

 

『そのくらいじゃ嫌わないと思いますけど』

 

「双葉さんにも嫌われたくないもの」

 

不意に、同性でさえ容易く魅了する猫なで声でそんなことを言われてドキッとしてしまう理央。本心からのものだろうが、多分にからかいの意図があったことは間違いない。やられっぱなしで終わるような性分ではない理央は反撃に出る。

 

『今の、紅葉に報告しておきますね』

 

「ごめんなさい」

 

勝者、理央。やはり部長は強かった。

その後、麻衣がひたすらに紅葉に会いたいやら、可愛いやらと語り続け、理央が半分寝ながら適当に相槌を打つという形式で通話は朝方まで続いた。理央が弱音を吐くのも無理はない。

 

 

「私から言い出したものね」

 

理央と会話をした翌日。今日は仕事は完全にオフ。家にこもりっきりになるわけで、そうするとどうしても考えてしまう紅葉のこと。部屋を出て数分もしない内に会える距離。何度も椅子から立ち上がっては座り直し、何度も紅葉の家電にかけようとしてはキャンセルを繰り返す。

自分から言い出しておいて、自分から破ったらカッコ悪い。もう散々カッコ悪いところを見せてしまっているが、それでも少しでもカッコよく見られたい。そんな意地やらプライドやらで、麻衣はギリギリのところで踏みとどまっている。

 

二年間もずっと一人で生きてきたのに、たった一人会えないだけでダメになる。この部屋に一人でいることが無性に寂しい。

そんな自分の弱さが嫌ではなくて、むしろ、愛しい。世界に色を与えているのはそういう弱さなのだと知ったからだ。

 

考えれば考えるほど、会いたくなる。

 

いよいよ耐えられなくなった麻衣が、何か電話をする言い訳を考えようと、まだ若干カッコつけようとしていると、放り投げていた携帯電話から音楽が流れ出す。それは着信音。

 

人によってカスタムすることもできるため、麻衣は特別な人には専用の着信音を用意していて。

 

 

その、特別な人なんて世界に一人しかいなくて。

 

 

『麻衣さん、元気ですか?紅葉ですよー』

 

ちょっといつもより幼げな跳ねるような声。

 

「元気じゃない」

 

声を聞いただけで、色々溜まっていたものが溢れてくる。気が緩んだら、とんでもないことを言ってしまいそうな、それくらいゆるゆるに溶けてしまう。

 

でも、それもいいかと麻衣は口を開いた。

 

「紅葉に会えていないから」

 

『……私も、寂しいな』

 

紅葉の口調がやはり幼い。最近気がついた、紅葉の特徴。甘えたいときはちょっと口調が幼くなる。きっと、頭を撫でればコロッと膝に転がってきて、目を瞑って口をニマニマさせるのだろう。

 

どうしようもなくそうしたい。

 

『今ならキス、させてあげてもいいかなー、なんて』

 

現状、不可能なのが分かっているのだろう。からかうような口調で紅葉が言う。しんみりした空気を払拭しようとそうしたのかもしれないが、こういう場合、強いのは麻衣の方だった。

 

「じゃあ予約ね。次会ったらキスだけじゃ終わる気ないけど――駄目っていっても止めないから」

 

『ふぇ?ん?えぇええ!?キキキ、キスだけじゃ終わらないとは!?それは私の知らない何かなのでは!?』

 

何かを倒したのか、ドンガラガッシャンと盛大な音。

慌てる紅葉に追い打ちをかける。紅葉は案外押しに押せばどうにかなることを麻衣は知っていた。

 

「駄目なの?」

 

『駄目というか、心の準備が……その、嫌ではなくてですね』

 

「じゃあ、いいのね?」

 

弱腰の紅葉に退路を与えないように畳み掛ける。

 

『えっと、えっと、はぅ』

 

「いいの?」

 

意味のない言葉を発する紅葉に、麻衣は電話越しでも色気が伝わってくるような艶のある声で囁く。

 

『…………う、うん』

 

紅葉が弱々しく返答する。

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、久しぶりの再会を果たした二人がどうなったのかは語るまい。

 

一日だけ空白の紅葉の日記帳と、翌日が真っ白の麻衣のスケジュール表。

 

その空白部分は、二人だけの秘密なのだから。










いつかやろうと思っていた1巻オマージュ。この後どうなったのかは皆さんのご想像にお任せします(意味深)

二章、本編の方もせっせと書き溜めていますので、お楽しみに!
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