妄想メンヘラ女はバニーガール先輩の夢を見ない   作:強炭酸カボチャ

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27話 目指せ今時JK~師匠を添えて~

土曜日。

私は麻衣さんがコーディネートしてくれた服をそのまま着て、街の中にいた。今や私の服装は麻衣さんに支配されている。麻衣さんが、持ってきたり、頻繁に家に届く荷物の中から漁ったりして、私の服をコーディネートし、そのままセットにして仕舞ってあるのだ。私が買った服の殆んどが倉庫部屋行きになっていることに納得がいかないのだけれど、麻衣さんのファッションセンスは間違いないので、私はこうして麻衣さんセットを愛用しているというわけだ。

 

今日のコーディネートは麻衣さん命名『お嬢様の休日セット』だ。うん、タイトルからして、そこはかとなく麻衣さんの弄りが入ったセットなのだが、上里先輩には私はお嬢様だとバレてしまっているから、こういう装備でいかないと、あいつ無理してる、と笑われそうで仕方がなかったのだ。一番お嬢様っぽいの選んだからね。

 

やるからには徹底しないと、ということで、このセットに合わせたメイクもしっかり行った。慣れないせいもあり時間は掛かったけど、それなりに出来たのではないだろうか。麻衣さんから化粧の仕方を半ば強制的に教えられていたのだけど役に立った。やっぱり麻衣さんは最高なんや。

 

タイミング良く、街中にでかでかと設置されているモニターに麻衣さんが出演しているCMが流された。スポーツドリンクのCMで、私はもう何百回と見ているけど何度見ても素晴らしい。ドリンクを持った麻衣さんが画面一杯にまで近づいてきて笑うのだから、それはもう全国の男子達が一瞬でファンになること間違いなしだ。

麻衣さんのファンは皆私の友達みたいなもの。つまり、私は既に友達いっぱい!?……止めよ、自分で言ってて悲しい。

 

このドリンク、今キャンペーンをやっていて当選すると麻衣さんのオリジナルグッズが貰えるんだよね。欲しすぎてドリンクがダンボールで大量に買ってあって部屋に押し込んである。麻衣さんにバレたら絶対怒られるから何とか隠し通さねば。

本人から貰えばいいじゃんとかそんなことは言わせない。だって、私の愛が試されてるんだ。愛があれば懸賞だって当てられる!……そう、ちょっぴり不安だったから大量買いしただけで、本気出せば一本で当てられたけどね?やっぱり売り上げにも貢献したかったからね?ドリンク美味しいしね?

 

私が1日1本飲み続けても高校在学中には消費しきれない量のドリンクをどうするか考えていると、視界の端に上里先輩が映った。

 

上里先輩の私服はデニム生地のショートパンツ、どこかのブランドなのか、ロゴが書かれた白いTシャツは上里先輩の体格にしては大きめ。小さな黒いバッグを斜め掛けにしていて、全体的にシンプルで纏まったファッションだった。大きめのTシャツはショートパンツにインされていて、そのえっちな生足の美脚が一層際立つ。スタイルの良さと整った容姿だからこそ成立する『シンプルなのにおしゃれ』、これが女子高生の最高位って奴か。思わず平伏してしまいそうだ。

 

「……貴女らしい服装ね」

 

開口一番、上里先輩は残念な子を見るような目と、ため息交じりの声でそう言った。

な、なんでだ?麻衣さんのファッションセンスに間違いはないはず!むしろ麻衣さんが流行を作ってるくらいなんだから、これこそが至高にして最先端でファイナルアンサーだ!

 

「まあ、人の趣味をとやかく言ったりはしないけど」

 

その目はとやかく言っているよ!ドン引いてるよ!口に出すより明確に伝わってるよ!

私はサーッと血の気が引くのを感じた。嫌な予感がする。否定して欲しい気持ちをいっぱいに込めて、願うように上里先輩を見詰める。

 

「もしかして……これ変ですか?」

 

暗い赤のワンピースドレスは、胸元に大きなリボン、尖った襟、他にも装飾が特徴的で金の大きな丸ボタンが6個、等間隔に胸から腹部にかけて左右3つずつ取り付けられ、左肩には用途不明な紐が数本前から後ろに縫い付けられ垂れ下がっていた。

赤と黒の素材の違う二つの生地が調和したスカートは、装飾過多なワンピースドレスを派手すぎないラインに落とし込んでいる。

靴もこれに合わせた黒の厚底のローファー。靴紐の代わりに可愛らしくリボン。もうお分かりだろう。このセットにはリボンが多い。頭にも右斜め上に大きなリボンを結んでいる。私には可愛らし過ぎる気もしたけど、麻衣さんが選んでくれた奴だし、色味も暗かったので大丈夫だろうと思ってたんだけど……まさかね?

 

「変というか……コスプレ?みたいなもの?」

 

はい、死んだ。

 

休日ってそういう意味かぁあああああ!家でしか着れないって意味なんですね!うわぁああああ!!終わった!もうおしまいだぁあ!家からここまでどれだけ距離があったと思っているんだ!電車にも乗りましたけど!?私、集合10分前からここに立ってましたけど!?巨大モニター見ながらぼけーっと黄昏てましたけど!?

 

街で見かけない服装だな、とは思っていたんだよ?でも、これが最先端のはずだから、皆、流行に付いていけてないのかー、とかドヤ顔で思ってたんだよね!恥ずかしい!周囲の冷ややかな目が簡単に想像できる!

 

「ゴシック?って奴でしょ?まあ、似合ってるわよ」

 

適当な慰めで面倒そうにしている上里先輩だが、そんな他人行儀な対応で私が満足すると思うなよ!巻き込んでやる!

 

「先輩も一緒に着てくださいよ!私一人でこんな格好してたら晒し者じゃないですか!」

 

「自分で着てきたんでしょ!」

 

上里先輩も着たら絶対似合うと思うんだ。女王様的な雰囲気になる。国見先輩は私的に絶対Mだと思うから上里先輩も挑戦しておいて損はないはず。

 

「まあ、今日は貴女の服も選んであげるって約束だったし、早速買って着替えましょう」

 

私のことは褒めておいて自分が着るのは嫌なようで、上里先輩は早歩きで歩き始めた。なんだかんだ付き合ってくれるし、服も選んでくれるこのツンデレよ。

 

「流石は師匠!」

 

「師匠言うな」

 

上里先輩に弟子入りを志願したあの日、は?と今世紀最大くらいの聞き返しからの全力拒否をされたものの、上里先輩が財布買いにいく時に服とかも選んであげるわよ、と優しき提案をしてくれたのだ。

 

私が目指すべき女子高生なんだと説明すれば、ちょっと嬉しそうにしたりとツンデレな上にチョロいのが何とも可愛い。正に師匠に相応しいのだからやっぱり師匠だ。弟子入りは断られたけど、心の師として敬うのだし、師匠と挫けず呼び続けよう。

 

さて、そんな上里先輩改め師匠と共にやってきたのは外観からして今時女子に流行っていそうなカジュアルでポップなお店。私イケてます!というオーラを放った女性店員がそこかしこで接客をしている。ふっ、私一人だったら怖じ気付いて逃げ出しているところだけど今日は違う。

 

「さあ、やってしまって下さい師匠!」

 

「なにもやらないし、師匠言うな」

 

この威圧感ある店内に簡単に踏み込んでいく師匠。私も意を決してその後に続く。

 

「……なんで服の裾掴むのよ」

 

「一人でいて話しかけられたらどうするんですか!」

 

「そりゃ話しかけるでしょ、仕事なんだから」

 

師匠はすいすい店内を進むと、次々と服を物色しては戻していく。これがおしゃれ女子の速度!つ、付いていけない。

 

「この辺とか割と流行りだし、良いんじゃない?」

 

「買ってきます」

 

この辺、と師匠が指差した辺りの服をとりあえず全部カゴに放り込む。

 

「な、何してんのよ!」

 

「え、買おうと思って」

 

「試着とかして一着選べば良いでしょ!同じもの何枚も入ってるし、絶対着れないサイズも混ざってるわよ!」

 

もう、本当に何してんのよ、と言いながらカゴに入れたものを綺麗に畳んで戻していく。私も一緒にお手伝いして戻していると師匠がジトッとした目を向けてきた。

 

「こんなに買ってどうするつもりだったの」

 

「買ってから着れるもの選ぼうと思って……」

 

一刻も早くここを脱出したかったから、とりあえず買えばいいや、という結論に至ったのだ。

 

「勿体ないでしょ!」

 

「いらないやつはバイバイということで」

 

ちなみに、このバイバイには物を売る売買と、さよならのバイバイで二つの意味がかかっているのだけど、それを説明したら無視された。黙々と畳んでいる師匠をチラチラと見ていたら無言でカゴの服を指差された。はい、すいません、畳みます。

 

「今日で分かった。アンタにはまず常識がない。財布とか服とか変えたところで意味ないから」

 

段々私の扱いが酷くなっているとは思っていたけど、ここに来て正面から悪口言われた。しかも師匠なのに私に呆れて匙を投げてる。酷い。

 

「別に、アンタはアンタで変える必要なんてないのよ、誰だって皆同じじゃないんだからさ」

 

「師匠……」

 

優しい声色で、師匠が言う。思わずじーんとしてしまう。無理に変える必要なんてないのだと、そんな優しい言葉をかけてくれるなんて。

 

「じゃ、そういうわけで」

 

「何帰ろうとしてるんですか!良いこと言って誤魔化そうとしましたね!?私を弄びましたね!?」

 

「うるさい!」

 

なんとか買い物を済ませ、店を出たところで優しい言葉をかけたと思ったら私を見捨てようとするなんて!まだ、財布買ってないじゃないですか!序章ですよ、序章!

 

「国見先輩に、上里先輩がいじめるって言い付けますよ!」

 

「やることが陰険ね!?」

 

次のバイトの時に国見先輩いるか知らないけど、私はやると言ったらやりますよぉ!それはもう脚色して、しくしくと泣きついてる!散々敵視していた国見先輩でも必要となれば頼りまくる、出来た後輩だ(棒)。

 

「はぁ、仕方ないわね、ほら、財布買うんでしょ」

 

なんだかんだと結局付き合ってくれる師匠最高だ。私はビビり倒しながらなんとか師匠の連れていってくれた店で財布を買うことに成功した。

 

「何がそんなに嬉しいの?」

 

薄いピンク色の小さな財布。

買い物の後、何となく即解散とはならず、一人じゃ絶対入らないおしゃれさん達の巣窟であろうコーヒーショップでだらだらする流れになったのだけど、家まで我慢できなくて、それを眺めていると、対面に座っていた師匠が呆れたみたいな顔をして言う。

 

「えっ、顔に出てました?」

 

「いいえ、心底つまらなそうな顔してる」

 

「ですよね」

 

「でも、すごい楽しそうな感じがする」

 

浮かれているのは自分でも分かっていたけれど、それを指摘されるとは驚きだし、そんなに私のことをきちんと見てくれていたのかと思うと、嬉しい。

まあ、そんな師匠といるから浮かれているのだけど。私はそれをそのままストレートに口にした。

 

 

「――師匠と一緒にいるのはそりゃ楽しいですから」

 

「…………師匠言うな」

 

何故か顔を逸らした師匠はそうお決まりとなりつつある反論を言った後、カフェの空調が体に合わなかったのか、赤らんだ顔を伏せるように下を見ながら、何やらぶつぶつと、佑真本当に大丈夫でしょうね、とか、こんなのと一緒にバイトなんて危険だわ、とか、呟いている。

 

酷い言われようだった。そんなに私が国見先輩に悪影響を与えると思っているのだろうか。いくら私が無表情でも、それであの殴りたくなるさわやかスマイルが無くなったりはしないはずだ。

 

私は少し拗ねながら、師匠が魔法の呪文を唱えて店員さんより召喚した滅茶苦茶名前の長い甘いコーヒーを口にする。

 

ただただ甘いそのコーヒーは、なんだかリア充の味がするような気がした。




本作の表紙風イラストを描いてみました。
全くイラストなんて描いたことなかったのですが、スーパー引きこもり生活をしていたので挑戦。
スマフォと指で描いたのですが、ちゃんとした機材はやっぱり必要だと思いました(笑)


【挿絵表示】


紅葉の髪の長さは肩くらいと描写した気がしますが、絵にするとロングの方が映えたので、6月になって初登場時から髪が伸びたことにします(迫真)


もっと可愛い紅葉さん、誰か描いてください(懇願)
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