八雪はアッタカイナリ   作:うーど

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八幡とメガネと雪ノ下

「ちょっとそこの君、なにしてるの?」

 

 休日、久々に家から出て本屋に向かってる最中に警察官の人に呼び止められた。うん、これまさしく職質だ。

 

「君、中々怪しいね、学校はちゃんと通ってるの?今何をしようとしてたの?身分を証明できるもの持ってる?」

 

 矢継ぎ早に質問攻めををなんとか答えていく。怪しいってなんだよ。これだから外に出たくないんだよ...。

 こんな感じに職質受けるのは珍しいことじゃない。それどころか外に出れば高確率で職質受ける。割と本気で国家レベルでのいじめかと疑ってたりしてる。

 

 

 

 

 流石の俺もうんざりなので帰宅早々にどうやったら職質を受けずに済むか妹の小町に相談してみることにした。

 

「...職質受けてる人初めて見た」

 

 もうこの一言でだいぶ傷ついたよね。

 

「だから俺も困ってんだよ...。どうしたらいいと思う?」

「うーん、ようするに怪しい見てくれを少しでも塞げばいいってことでしょ?」

 

 そこは直すんじゃなくて塞ぐんだ...。臭い物に蓋をする理論を見てくれで使われるとは思わなかった。

 

「よし!小町に言い考えがあるよ!さ、お兄ちゃん、もう一度出かける準備して!」

「えー、また外に出るの?警察官怖いんだけど...」

「今度は小町も付いてくから職質されること無いよ!...多分」

 

 多分かよ...。

 

 

 

 

 そうして小町に引っ張られながらやってきた場所は...。

 

「...メガネ屋?」

「そう!お兄ちゃんは特に目が怪しいんだから、メガネでもしてれば怪しさを抑えられるんじゃないかって」

「そんな単純な話か...?」

「いいから!ものは試しってことで!ほら、小町が選んであげる!」

 

 たたたーっと店内に入っていく小町の後を付いていく。店内には様々なメガネが鎮座しており、別にメガネに興味がない俺でもこうかけてみたくなる衝動に駆られる。

 

 店内をキョロキョロと見ていると、小町が一つのメガネを持ってこちらに近づいてきた。

 

「お兄ちゃん、ほらこれ!かけてみて!」

「黒縁フレームのメガネか...。あー、なんかいかにもオシャレメガネって感じがするんだが...、俺に似合うのか?」

「むっ、お兄ちゃんは小町のセンスを疑うつもり!?いいからかけるの!さ!ハリアップ!!」

 

 微妙に英語使うのやめろよ...。ある人物の顔が脳内でちらつくんだけど...。

 渋々と半信半疑で小町から受け取ったオシャレメガネをかける。ほう、だいぶ軽いな。

 

「どうだ小町、似合って...、どうした?口空いてるぞ」

 

 メガネをつけた俺の感想を聞くべく小町へ顔を向けると、なんともアホ面を晒している妹がそこにいた。はしたないから口閉じなさい!

 

「あ、やっ...!うん!い、いいね!怪しい箇所にちゃんと蓋出来てるって感じがするよ!」

 

 顔を赤らめながらワタワタとそうこたえる小町。今こいつ中々酷いこと言ったぞ。

 

「まあ、少しは端から見ても怪しくなくなるならいいか...」

 

 かけているメガネを一度外し、カウンターへと向かう。わざわざ小町が選んでくれたものだし、ほぼ即決に近い形で購入を決めていた。

 

 

 

 

 メガネを購入した後、実際の効果を確認すべく帰りは別々で家へと向かった。小町が選んでくれたメガネをかけて家へと帰ったのだが、警察官の人とすれ違ったりしても職質を受ける事は無かった。あまりの嬉しさに帰った後にその事を小町に伝えたのだが「いや、職質受けないのは当たり前じゃない?」とまた傷つくこと言われた。泣きたい。

 

 そんな感じに休日が過ぎ、平日がやってくる。制服を着ていれば職質を受けることは無いので別にメガネをかける必要はないのだが、せっかくなのでメガネをかけて学校に行くことにした。...それに小町が選んでくれたものだしっ...。

 

 学校につくと矢鱈と視線を感じる。まさか俺を認識してるだと!?ステルスヒッキーの感度が落ちている事実に若干へこむ。クセになってんだ、音消して歩くの。

 

 教室に入ると女子達が俺に視線を向けつつヒソヒソと何か話してる。そういうの傷つくからやめてね。最近は俺の悪評も収まりつつあって、あからさまに陰口を叩かれることは無くなったと思った矢先にこれだ。またオレ何かやっちゃいました?

 

 

 そんな女子達の反応に辟易しつつ席に座ると目の前に天使が降臨した。どうしよう、俺もう死んでもいいや...。

 

「八幡!どうしたのそのメガネ!...な、なんか一段とカッコいいね!」

「はぅっ...!」

「八幡!?」

 

 え、どうしよう、戸塚からカッコいいなんて言われた...。俺死ぬの?まだやり残したこと結構あるのだが、戸塚にそんなこと言われたら一瞬でこの世に未練無くなりそうなんだけど。

 

 

 どうやら俺の席に来たのは戸塚だけではなかったようだ。

 

「ヒッキーどうしたの、そのメガネ!」

「へ...変か?」

「ちがっ...その、カッコいいよ!」

「そ、そうか...」

 

 顔を赤らめながらそうこたえる由比ヶ浜。

 

「比企谷...今日ちょっとカッコいいよ...」

「お、おう、ありがとな」

 

 そうそっけない感じで褒めてくれる川...川...?

 

「ヒキオ、そのメガネよく似合ってるし、カッコいいじゃん。隼人には劣るけど」

 

 褒めてくれるのはいいが一言余計なあーしさん。

 

「やめてヒキタニくん!私から純情な乙女の部分を引きずり出さないで!腐っていたいの!」

 

 よくわからんこと言ってる海老名さん。

 

「うぅ~!ヒキタニのくせにっ...!ヒキタニのくせに!」

 

 こいつもまたよくわからんこと言いながら顔を赤らめている相模。何が言いたいんだ。

 

 

 ってか何だこれ、気づけば俺の席の周りには女子達がいる。...いや、まさか、そんな。

 だが、脳内でそれを否定しようにも目に見えるのは皆俺に視線を向けながら赤くなっている女子達の顔だ。

 うん...、これきてる。小町、きてるよ。

 

 

 俺、モテ期がきてる!

 小町の選んでくれたメガネの効果は半端じゃなかった。

 

 

 

 

 今日は矢鱈と女子達の視線を浴びながら時間が過ぎていき、気づけば放課後になっていた。まあ授業ほとんど寝てたから時間過ぎるのが早いのは当たり前なんだが。今日は戸部が「お...俺もメガネかけたら変わるかな」と呟いたら「変わらないよ?」と海老名さんが真顔でこたえていたのがすっごい印象に残ってる。戸部、強く生きて!

 

 部活へと向かうべくそそくさと席を立つ。ここで由比ヶ浜に見つかってはならない。見つかったら一緒に行くことになっちゃうからだ。...だって、それちょっと恥ずかしいじゃん?

 

「あ、ヒッキー!」

 

 だが俺のそんな努力もむなしく散る。教室から出ようとしているところを由比ヶ浜に呼び止められた。無視して行くわけにもいかないので嫌々ながら由比ヶ浜のほうを向く。

 

「そんな嫌そうな顔すんなし!ちょっと優美子達との話が長引きそうだからさ、ゆきのんに遅れるって伝えて!」

「おー、そうか。雪ノ下にちゃんと伝えとくからゆっくりしていきな」

「わかったー!」

 

 

 

 

「あら、こんにちは」

「...うす」

 

 奉仕部の部室に入ると雪ノ下がいつもの席で本を読んでいた。何度見てもその美しさに一瞬目を奪われる。

 挨拶も早々に、俺もいつも座っている席へと腰を下ろす。長机を挟んで雪ノ下と対極になる場所だ。

 

「あー、由比ヶ浜だけどな、ちょっと遅れるってよ」

「そう、わかったわ」

 

 席に着くなり、由比ヶ浜から頼まれえた伝言を済ます。俺は大体の頼まれごとは忘れないのだ。忘れないが、やるとは言わない。

 ちゃんと伝言も伝えたので、いつも通り家から持ってきたラノベを鞄から引っ張り出して読書に集中することにした。

 

 

「...比企谷くん、そのメガネどうしたのかしら?」

 

 しかしそこでやっと雪ノ下がいつもの俺と違う箇所に気づく。教室に入って椅子に座るまでの間に俺のほうへ視線を向けていなかったことがよくわかる。

 

「まあ、なんてーの?イメチェン?」

「あら、そうなの?てっきり私は休日に外に出る度に職務質問を受けることにうんざりして小町さんに相談したらメガネを薦められたものだとばかり」

「...なに、どっかで見てたの?ストーカー?」

「貴方をストーキングしても何も得られるものなんてないでしょう。これぐらいは予測できる範疇よ」

 

 出た出た出ましたよ。雪ノ下のよくわからんハイスペックな部分が。いやほんとそのハイスペックで超絶無駄な予測立てないでくれる?

 

 そんな俺の反応を楽しんだのか、雪ノ下はクスりと小さく笑った。

 

「ふふっ、その反応をみるとどうやら正解のようね」

「はいはい、そうですよ。...それで」

「...なにかしら?」

「あ、いや...。それで、このメガネどう思う?...似合ってるか?」

 

 女子受けがそこそこ良かったため、雪ノ下にも感想を求めてみた。こいつが俺のメガネ姿にどういう感想を述べるのか大変興味があった。...というのは建前なのは自分でもわかる。他の女子と同様にちょっと褒めて欲しかったりしてる。

 

 

「よく似合っているわ。小町さんはいいセンスしているわね」

 

 なんか褒められ方が思ったのと違った。いや、似合ってるって言ってくれたが、どちらかというと小町のセンスを褒めている感じだ。

 あまり雪ノ下には受けがよくないのか?...いや、単純に俺に興味無いのか。

 

「でも、私は...」

 

 そう言うと雪ノ下は静かに席を立ち、こちらへ歩いてきた。

 

「え、なに?」

 

 俺の前で立ち止まった雪ノ下はゆっくりと俺のほうへ両手を伸ばしていき...。

 

「ゆ、雪ノ下...!?」

 

 俺の顔にかけられていたメガネをゆっくりと両手で外していく。

 

 

 

「私はメガネをかけていない貴方のほうが好きよ。だって、貴方の目がよく見えなくなってしまうもの」

 

 

 

 美しい声音で、微笑みながら雪ノ下はそうこたえた。

 ...そんな顔でそんな事言うなよ。駄目だ、今の俺絶対に顔赤くなってる...。

 

「あ、や、その...」

 

 あまりの出来事に言葉を失っている俺、そして今しがた自分がすっごい恥ずかしい事を言ってしまったことに気づく雪ノ下。

 

「い...今のはっ!貴方が目を隠してしまうと普段でも影の薄い比企谷くんを識別するのが更に至難になるからであって、別に貴方のその腐った目が好きだとか言ってるわけではないのよ!勘違いしないでもらえるかしら!」

 

 そして早口で言葉をまくしたてられる。うん、すっごい酷いこと言われた。ってか俺を目だけで識別してんの?確かに一番特徴的な部分だけどね!...不本意ながら。

 

 

「やっはろー!遅くなってごめんねー!あ、そこでいろはちゃんと一緒になって...ってヒッキー!?ゆきのん!?何してるの!?」

「せ、せせせせ先輩!?雪ノ下先輩も!距離近くないですか!!?」

「由比ヶ浜さん、一色さん、こんにちは。少し待っててもらえるかしら、すぐに紅茶を用意するわ」

「一色、お前生徒会はどうした。こんなとこで油売ってていいのか?」

「え!?え!?スルー!!?何で何事も無かったかのように!?」

「先輩!そうやって騙せると思ったら大間違いですよ!ちゃんと説明してください!」

 

 俺も雪ノ下も先ほどのやり取りをおくびにも出さず、騒がしいなか部活動の時間が過ぎていった。

 

 

 

 

「お兄ちゃん、せっかくメガネ買ったのに休日に外出る以外ではかけてないね」

「まあ、元々は職質対策に買ったみたいなもんだからな。普段からかける必要なんてないし」

「せっかくカッコいいのに、勿体ない!」

 

 小町の言った通り、あの日から俺はメガネをかけるのは必要最低限のみとなった。学校では女子にちらほらとまたメガネをかけてきて欲しいと言われたりするが、もう学校でメガネをかけることはないだろう。だって...。

 

 雪ノ下に認識して貰えなくなるのは悲しいから、な。

 




かぐや様は告らせたいのある話を見て思い浮かんだ内容です。
ちなみに私も好きですよ、八幡のあの腐った目。
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