八雪はアッタカイナリ   作:うーど

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お気に入りに6件、そして2人の方から評価がっ...!嬉しいです!ありがとうございます!
自分の趣味にクラウチングスタートかましたので、評価貰えるとは思ってもいませんでした。


奉仕部と怪談

「第一回、奉仕部怪談噺ぃ~!!いぇ~い!!!」

 

 ドンドンパフパフと一人超盛り上がる由比ヶ浜。

 

 今現在夜の10時を迎え、ここ雪ノ下が住むマンションにお邪魔して俺ら奉仕部は集まっている。

 部屋内は照明等を全ておとし、唯一の明かりは蝋燭一本のみだ。そして俺たちはその蝋燭を囲うような形で下に座布団をひき床に座っている。

 

 

 まず何でこんな状況になっているのか。夏の終わりも間近に迫ってきているなか、部室内で唐突に由比ヶ浜が「怪談噺がしたい!」と言ったのが発端だ。そこからはもうトントン拍子で雪ノ下のマンションで怪談噺がすることが決まっていった。

 

 もう少しだけ詳しく説明すると、由比ヶ浜が雪ノ下のマンションで怪談噺をしようと雪ノ下にせがむ、が、雪ノ下はそれに対して難色を示す。本人は否定しそうだが、その手の話が苦手なのだろうな。しかしそこで由比ヶ浜の「そっかぁ、ゆきのん怖がりだもんね、ごめんね」というナチュラル煽りが放たれ、雪ノ下はその煽りにまんまと引っかかり、この怪談噺イベントが起きたという訳だ。雪ノ下嫌がる、由比ヶ浜煽る、雪ノ下煽りに乗っかかる、これまじで様式美すぎるだろ。

 

 ちなみに怪談噺が終わった後は由比ヶ浜はお泊りしていくそうだ。由比ヶ浜も雪ノ下が怖がりなのを知っているのだろうな、アフターサービスもちゃんと用意しているとは良い気づかいだ。

 

 あ、俺?普通に帰るけど?そもそもお情けで呼ばれたようなものだし。しかし帰りのことを思うとちょっと憂鬱となる。今日は風が強いため外を出歩いてる人があまりいない。そんななか真夜中に一人で歩いていたら間違いなく職質される。

 

 

 

「よぉ~し、じゃあ早速やっていこうね!司会進行はこのあたし、結衣だよ!!!」

「司会進行も何も3人しかいないんだから必要ないだろ...」

「ヒッキーうるさい!じゃあトップバッターはゆきのん!」

「ええ、わかったわ」

 

 雪ノ下の話す怪談は実体験からきたものだ。放課後の部室でつい眠気に負けうたた寝をしているといつの間にか近くに人の気配を感じた。危機感を覚えたのですぐさま体を起こすと、そこには生気をまったく感じ取れない目をした男が...って。

 

「おいまて、それ俺のことだろ」

「ゆ、由比ヶ浜さん!そこよ!とても生きてるとは思えない目をした男がいるわ!」

「おいこら」

「あっはははは!」

「由比ヶ浜も何笑ってんだよ」

 

 ぶっちゃけ雪ノ下の話す怪談はまったく怖くなかった。そもそもオチが俺だし。

 

 

「あー笑った~!じゃあ次はヒッキーね!」

「怪談なのに笑えるのは駄目だろ...。ってか次は俺かよ。まあいいか」

 

 俺が話す怪談はネットで見かけたものだ。夏合宿時に話した怪談はあまり受けがよくなかったんで、ネットからネタを仕入れてきたってわけだ。家賃が安い賃貸に住むOLが風呂場で恐怖体験をするっていう話なのだが、その場で聞くのも勿論怖いが、こういうのは実際に風呂に入った時にその恐怖が倍になって甦るのだ。誰もが聞いたことはあるだろ?水場に霊は現れやすいって、な。ちなみにそのネタを発掘した日は親父と一緒に風呂入った。

 

 そうこうして怪談を語り終えたのだが、なんだこれ。俺の目の前には由比ヶ浜に思いっきり抱きついている雪ノ下が映っている。

 

「ほらもー、ゆきのん大丈夫だよ!終わったよー!...いやぁ、それにしても怖かったぁ、ヒッキーって喋り方も怖いんだもん!」

「お...おわり!?そ、そう。...えぇ、まあ、そこそこ怖かったわ。そこそこね」

 

 こいつどの口が言ってんだ...。がっつり由比ヶ浜にしがみついて震えていた奴から出た言葉とは思えないな。

 

「えー?ゆきのんすっごい震えてたよ?ほんとブルブルって!可愛かったぁ」

 

 俺も気づいてたけど言葉にしてバラしてやるなよ...。

 

「...怖がってなんてないわ。由比ヶ浜さんの...バカ」

 

 ほらみろ、スネはじめた。雪ノ下がツーンと由比ヶ浜から顔を背ける。しかし未だに抱きついたままだ。そしてそんなスネのんにキュンキュンする由比ヶ浜。うーん、この百合百合しさ、多分こいつら俺の存在忘れてる。あ、ほら由比ヶ浜が俺のほうを見た瞬間に「あ、そういえばこいついたわ」みたいな顔したぞ。

 

 

「もー、ゆきのん機嫌直して!さ、怪談噺のラストを飾るのはこのあたし!」

 

 由比ヶ浜の怪談か...。うん、まったく期待出来んな。オチも無い支離滅裂な怪談が繰り広げられそうだ。どうやら雪ノ下も俺と同じこと考えているのか、その表情は余裕そのものだ。まあ、なるべく怖がってやるか...。

 

 

 

 などと余裕をこいていた時期が俺にもありました。

 

 

 

 由比ヶ浜!?由比ヶ浜さん!!?お前どうしてそんなフザけた口調でそこまで怖い怪談喋れるの!?終始笑顔なのが更に怖いんだけど!雪ノ下なんて体裁など諸々かなぐり捨ててガッツリ泣いてんぞ。今も俺の腕に思いっきりしがみついてる。普通の状況ならば雪ノ下がしがみついているとか胸がドキドキもんだが、今の俺は胸をドキドキさせてる余裕がない。

 

 由比ヶ浜が話す怪談の舞台は高層マンションでの話なんだが、最後に「そういえばここも高層マンションだったね!」って言った後にフッと蝋燭の火を消すもんだから雪ノ下は声に出しながらの号泣、俺は「照明!雪ノ下!!照明!!はやく!照明!!!雪ノ下ぁ!!!」ってな感じでここ一番めっちゃ大声出た。

 

 

 そんな阿鼻叫喚な形で第一回奉仕部怪談噺はお開きとなった。

 

 

 

 

 その後は俺と由比ヶ浜の二人がかりで雪ノ下をあやすなど大変だった。ちなみにあやす際に「いや!由比ヶ浜さん怖い!いや!」って雪ノ下からガチの拒否反応されていた。今は落ちつきも取り戻し、雪ノ下が淹れた紅茶を飲んでゆったりとしている。

 

 そんな中、バイブレーションの音がきこえた。音源の先を見ると由比ヶ浜のケータイがあった。

 

「由比ヶ浜さん、ケータイが鳴っています」

「ヒッキーなんで敬語!?ってママからだ。ちょっとごめんねー」

 

 由比ヶ浜はケータイを取り電話に出た。相手は由比ヶ浜の母親か。

 

「うん、うん、...え!?...うん、わかったぁ」

 

 どうやら母親との通話が終わったようで由比ヶ浜はケータイを閉じる。そして申し訳なさそうな顔を雪ノ下に向けた。

 

「うー、ゆきのん...。ごめんね、急に帰らないといけなくなっちゃった...」

 

 ...おい、アフターサービス。

 しゅんとする由比ヶ浜。サーっと血の気が引いていく雪ノ下。そりゃそうだよな、あんな怖い話聞かされた後なのに急遽一人で過ごすことになったもんな。

 

「ごめんねー!ゆきのん、ごめんねー!おやすみー!」

 

 そして由比ヶ浜は荷物を纏め、早々に立ち去って行った。

 そして取り残される俺と雪ノ下。あまりのことに俺も雪ノ下も声が出ず、唯一の音は時計から発せられるカチッカチッという音だ。

 

「...じゃあ俺も帰るわ」

 

 うん、耐えられん。この気まずい空気耐えられん。俺も逃げるように雪ノ下の家から出ようとしたのだが。

 

「まって、お願い、まって!」

 

 必死な表情の雪ノ下に思いっきり服の裾を引っ張られる。

 

「比企谷くん、今日は泊っていきなさい。いいえ、泊ってください。お願いします」

 

 そして雪ノ下から藁にも縋る勢いでお願いされた。

 

「いや、流石にまずいだろ。独り暮らしの異性の家に泊るとか」

「今はそんな小さなことはどうでもいいわ!それに比企谷くんだったら対処法はいくらでもあるのよ!」

 

 小さい...小さいのか?...。しかし雪ノ下とはそう短い付き合いでも無いのだが、こんな必死な表情は初めて見るぞ。そこまでか。...いや、わりとそこまでの話をされたな。

 こんな雪ノ下を一人にするのはそれなりに気が引けたりしてる。今回は例外ということでやむを得ず泊ることにした。

 

 

 

 

 そうして今は雪ノ下の寝室で布団を敷き、布団の中。服は雪ノ下から学校で使っているジャージを借りた。ちょっときつい。

 

 ここまで至るのも大変だったんだけどな。まず俺が話した怪談を覚えているだろうか。そう、風呂場うんぬんの話。そのせいで雪ノ下がお風呂に入っている間ずっと風呂場とドア挟んだ脱衣場の場所で存在確認され続けられた。存在確認とはようするに「比企谷くん、ちゃんとそこにいる!?」「...います」みたいなやり取りのことだ。

 ってかそんな風呂場の近くにいるせいで雪ノ下のシャワー浴びる音や湯舟に浸かる音やらをガッツリ聞いてしまった。学校一美少女のそんな艶めかしい音を聞かされ続けてめっちゃ辛かったし、めっちゃ興奮した。

 

 とまあ、そんなこともあったが何とか乗り切って見せた。雪ノ下が浸かった後の湯舟にも興奮したとかそんなことはなかった...いや、めっちゃ興奮しました。

 

 

 後は眠るのみなのだが、眠れるだろうか。ここは先ほども言った通り雪ノ下の寝室だ。そして勿論ここに自分のベッドの中に入っている雪ノ下がいる。近くに女子がいる状況で眠れる気がしないわ。

 

「比企谷くん、まだ起きているかしら?」

 

 そんなモンモンとしていると、雪ノ下がいつもよりも小声で話した。

 

「...起きているぞ。正直眠れるきがしない」

「ふふっ、それは私が近くにいるからかしら?」

「...ノーコメントで」

 

 俺の回答にまた雪ノ下は小さく笑った。そしてフゥと小さく息を吐いた。

 

「まさか、私が比企谷くんと一緒の部屋で眠る日がくるなんて、貴方と初めて出会った私ではまったく想像もつかなかったわ」

「俺は今日ここに来る時の俺も想像出来てなかったわ...。雪ノ下もそうだろ?まさか今日こんなことになるとは想像できたか?」

「そういうことを言っているのではないのだけれど...。だって、そうね、昔の私なら比企谷くんを泊まらせるぐらいなら死を選んでたと思うわ」

 

 死を選ぶってなんだよ。言い方が武士っぽいんですけど。だがちょっとそのセリフ言ってみたい。使う機会どこだよって感じだが。

 

「昔の貴方は変わりたくないって言っていたのだけれど、今の貴方は大きく変わったわ」

「なんだよ藪からスティックに...。まあ、雪ノ下の言うとおりだな...。昔の俺ならまずこんな催しもんとか絶対に行かない。しかし今の俺はあの時もしかして俺は誘われないのか心配にまで...って何言わすんだ恥ずかしい」

「...貴方が勝手に言ったのでしょう。...へぇ、誘われないのか心配になっていたのね...」

「ぐっ...殺せ」

「嫌よ、面倒くさい」

 

 俺の超需要無いクッ殺を面倒くさいで一蹴しやがった。

 思い返せばこいつとの出会いってクソ最悪だったなぁ。あの日を思い出すと確かに今の状況ってミラクルすぎるだろ。

 

「そしてそんな私達よりも大きく変わったものがあるわ」

「...それは、なんだよ」

「それは...」

 

 ここで雪ノ下との会話が一瞬途切れる。一拍おいて、ゆっくりと静かに、とても大事な物を扱うかのように、雪ノ下はその答えを告げる。

 

 

 

「私達の関係」

 

 

 

 それはとても優しい声色で、まるで愛おしい者の名前を呼ぶかのようだった。

 そして俺はつい彼女のほうへと顔を向けた。部屋は明かりを落としてあり、目が暗闇に慣れてはいても、その横顔を確認することは出来なかった。でも、それでも、今の彼女はきっととても優しい顔をしているのだろうと、あの部室でみる横顔を思い浮かべた。

 

「比企谷くん、この先の私達、由比ヶ浜さんと比企谷くんと私、この関係は更に良くなっていくのかしら?」

「さぁな...。関係って人間よりも大きく変化するしな。わずかなことで結構ブレたりするもんだ。でもな」

「でも?」

「俺はきっと...」

 

 この先何があろうと、関係が更に良くなろうが、とても悪くなろうが、どのように変化しようが、この関係は決して壊れない。そう確証している。...まあ、こんな恥ずかしいこと言えないわな。

 

 

「比企谷くん?」

「ん?ああ、何でもない」

「...そう?」

「ってかそろそろ寝るか。流石に眠くなってきた」

「そうね、私も...、今なら眠れる気がするわ」

 

 雪ノ下と話ていくうちに、だんだんとまぶたが重くなっていくのを感じた。心のなかで雪ノ下におやすみを告げると重くなったまぶたを閉じた。

 

 

 

 

 と思った矢先にドーンと思いっきり窓を叩くような音が響く。まじでびっくりして布団の上でつい跳ねちまったわ。

 そして驚いてるのは俺だけではなくて。

 

「比企谷くん!!」

 

 超パニックになった雪ノ下が俺が入ってる布団めがけてダイブする。思いっきり雪ノ下の頭が俺の鳩尾を強打。こいつ、マーダーライセンス持ってるんじゃね?

 

「ゆ...雪ノ下...、おまっ、殺す気か...」

「比企谷くん!窓!誰かが窓を叩いているわ!」

「こんな高い所にある窓を誰が叩けるんだよ!ほら、今日ちょっと風強かっただろ?これは風が窓を叩く音だ!」

 

 そうこう言ってる間も窓はずっとドンドンと叩く音を出している。...風だよな?

 

「比企谷くん...そういえば」

「おい、馬鹿、思い出すな」

「由比ヶ浜さんが今日語った怪談で...」

「思い出すな!やめろ!!」

「最上階にも関わらず外から窓を叩く男がっ...!!」

「思い出すなって言ってるだろうがあああ!!!」

 

 本日の阿鼻叫喚パート2である。結局俺たちは一睡も出来ずに終わった。

 

 

 

 

 

「いやー、昨日はごめんね、急に帰っちゃって...。ってゆきのん!?ヒッキー!?その目どうしたの!?隈すっごいよ!!?」

「誰のせいだと思ってんだよ...」

「由比ヶ浜さん...貴方の...貴方のせいでっ...」

「えっ?えっ?」

 

 もう怪談はこりごりだ...。

 




夏が終わる前に夏の風物詩ってことで。
怪談の内容は思いつかなかったので思い切って無くしました。そこが重要ではないですし。

私がかく八幡と雪ノ下ってどうしてこうポンコツになってしまうのだろうか...。
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