八雪はアッタカイナリ   作:うーど

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 お気に入りが増えている...!!!大変うれしい限りです!ありがとうございます!

 今回の話を書くのとても大変でした...。何が大変って、私、海行ったことがないからです!海行ったことが!!!

なのでわからないとこがあったら調べたり、はぐらかしたりして書きましたが、変な箇所があったら「海...知らないんだな...」ってな感じで微笑んでもらえたら幸いですね!

 また今回も長くなってしまったので分割しました。


海と写真1

「なぜ俺はお前と二人きりで海なんかに来てるんだ...」

「私の台詞を取らないでもらえるかしら?...はぁ、そもそもここに来ることになったのは貴方が最初に言ったからでしょう」

「お前だって同意してたじゃねえか」

 

 夏の真っただ中、俺と雪ノ下は二人きりでお互いちゃんと水着に着替えて海へと来ている。どこかに由比ヶ浜やら材木座やらが隠れてたりしない。まじで二人きりで海に来ている。

 男女二人っきりで海とか一見めっちゃリア充イベント中のように思えるが、俺も雪ノ下もびっくりするほど乗り気じゃない。例えばリア充カップル恒例イベントの「日焼け止めオイル塗って(はぁと)」など、そんなこと一切起きなかった。雪ノ下は手が届かない背中はそこらの女性客に頼んで塗ってもらったらしい。いやそんなイベント雪ノ下と起きてもらっても困るけど。...ああ、戸塚に日焼け止めオイル塗りたい。

 

 何故こんな状況になっているのか、それを説明するには少々過去へ遡る必要がある。

 

 

 

 

 

 

 実のところ俺と雪ノ下は絶賛仲違い中だ。いやまあ違えるほどの仲も無いが、とにかくそんな感じだ。

 

 その仲違いが起きた原因は奉仕部に一つの依頼が来たことから始まった。俺と雪ノ下はお互いに違う方法を提案したのだが、俺も雪ノ下もお互いが出したやり方が気に食わずに、どちらの案で進めるかでめっちゃ口論となった。雪ノ下が頑固だってことはわかっていたことだが改めて思い知らされたね。結局その依頼は俺が自分の案を強行的に進めて達成させた。案の定そのことに雪ノ下は大変お冠となってしまったが。でも今でも俺はこの方法が一番だと思っている。事も無き、依頼もちゃんと達成。何がご不満なんだか。

 

 この後もそのことが尾を引く形となり、奉仕部の中は俺と雪ノ下のせいで超ギッスギスとなっていた。そういうことに人一倍敏感な由比ヶ浜はそれでも何とか場を明るくしようとしていたが、どれも空振りに終わる。

 

 そこで手段を変えてきたであろう由比ヶ浜は急に俺等に「せっかく夏だしさ、三人で海に行こうよ!」と言ってきた。しかし、やはりと言うべきか、俺も雪ノ下も拒否を唱える。そもそも俺等はインドア派だし。家から出たくない。...ちがう、これは引きこもりだ。

 

 だが、短くない間を俺等と過ごしてきた由比ヶ浜は拒否られることなんて百も承知なのだろう、そんな反応をされても一歩も引かなかった。まず雪ノ下に「あたし、ゆきのんと一緒に遊びたいな...」とまるで雨に打たれている子犬のような目で雪ノ下を見つめ雪ノ下を撃沈。そして俺には袖部分を軽く引っ張りながら「ヒッキー...」と上目遣いで見てきて俺を撃沈。仕方なく奉仕部のメンツで海に行くことが決定した。俺等がチョロいんじゃない、由比ヶ浜の俺等の攻略が上手すぎるんだ。

 

 しかし、海に行く当日になってなんと由比ヶ浜が風邪でダウン。由比ヶ浜が来ないのならば俺も雪ノ下も海に行く理由などまったくもって皆無なのでこのまますぐにお開きにするつもりだった。

 

 しかし俺は今までの自分の態度に思うところがあった。そこで俺は今にも帰ろうとしている雪ノ下を呼び止めある提案を持ちかける。

 

「雪ノ下、このまま俺等で海に行こう」

「あ、貴方急にどうしたのかしら?理由も無ければ外には出られない貴方が理由も無しに海に行こうとするなんて...。ゾンビの変異かしら?」

「変異も進化も変態もしていない。ちゃんと理由ならある。雪ノ下、お前は今までの自分の態度に思うところ無いのか?」

「それは...」

「俺等のせいで由比ヶ浜に余計な気苦労をかけていたのは事実だ。もしかしたらそのせいで風邪をひいたのかもしれん」

「そう言われると弱ってしまうわね...。でも何故それで海に?」

「ようは由比ヶ浜の気苦労を取っ払ってやればいい。このまま海に行って俺等二人で楽しんできました的な写真を何枚か撮れば由比ヶ浜は俺等が無事仲直りしたと思うだろ」

「直るもなにも私と比企谷くんの間に元から仲なんて無いわ」

「いちいちツッコむな...。そうじゃくて、仲直りした思わせるんだよ。で、これっきりで前の依頼の件を引きずるのは無しにしよう」

「はぁ...。そうね、確かに今までの私の態度はあまり良くなかったわね。由比ヶ浜さんのためにもそうするわ」

 

 

 

 

 

 

 そういう理由があって今俺達は海へと来ている訳だ。

 

 それにしても先ほどから矢鱈と視線を感じる。...そりゃあ確かに絵に描いたような美少女がいたらつい見ちゃうよな。...普段から見慣れているはずの俺でも水着姿のこいつには目を奪われてしまったほどだし。で、そんな美少女の隣にまったく似つかわしくない男がいるんだから他の男共の怨念のこもった視線も向けられれる訳だ。あまり考えたくはないがこいつの隣に俺ではなく葉山がいたのならこんな視線向けられることは無いんだろう...。

 

 そんな視線に辟易しつつ俺は家から持参したとシートと飲み物が入ったクーラーボックス、レンタルしたビーチパラソルをせっせと設置していく。体力が悲惨な雪ノ下にすぐに必要となるだろう。

 

 そんな珍しく作業に勤しんでいる俺をまじまじと見つめる雪ノ下。

 

「...なんだよ?」

「いえ...その、やけに手馴れていると思って」

「あー、引きこもりのくせになんでこんなアウトドア技術持ってんの?無駄じゃね?とかでも思ったのか?」

「流石に被害妄想が過ぎるわ。思ったけれど」

「やっぱ思ってんじゃねえか。...はぁ、昔は家族とこうやって海に行くこともあったんだが、その時親父に『男ならパラソルの設置の仕方ぐらい覚えておけ、モテるぞ』とか言われ明らかに面倒事を押し付けられる形でやらされてその名残だな」

「そう...。貴方は海に行ったことがあるのね...」

 

 最後の雪ノ下の言葉に反応してしまい雪ノ下のほうへ視線を向ける。

 

「...もしかして海に来るの初めてか?」

「そう...なるわね...」

「...そうか」

 

 そしてまた視線を設置しているパラソルのほうへ戻す。まじか。雪ノ下は初めて海に来たのか...。その初めての海で一緒に来たのが俺って、何かすごい申し訳なく感じてきた。行く前に言ってくれれば別の方法を取っていたのだが...。

 

 

 そうこう言っているうちに設置完了。もうこれだけで疲れた。もう帰りたい欲に囚われそうになるが残念ながら言い出しっぺは俺なんだよなぁ...。

 

 あとはこれまた持参した防水バッグを肩にかけてスマホ以外の貴重品を中に入れる。

 

「雪ノ下、お前の貴重品もこのバッグに入れるから貸せ。あとカメラは俺のスマホを使うか。防水だし」

「ま、待ちなさい!貴方のケータイで私をも撮るというの!?」

「まあそうなるな」

「...如何わしいことに使われそうでとても不快なのだけれど」

 

 ジトーっとした目で見てくる雪ノ下。こいつ普段から俺のこと何だと思ってんだ...。

 

「しねえよ...。なんなら撮り終えたらお前のスマホに転送して俺のほうにあるデータは削除する形でもいいぞ」

「そうね、そうしましょう」

 

 

 

 準備体操をし終え、いざ俺たちは海のほうへと入っていく。

 

 水面が膝部分まで来るほどの深さまで海に浸かる。軽い波の衝撃が足に伝わってきた。

 

 雪ノ下はそんな波が新鮮なのか「おぉ...」と小さく声が漏れていた。そしてそのチャプチャプと小さく足で水を蹴っている。わりと楽しそうにしているな。なんか微笑ましい。

 

 そんな雪ノ下をジーと見ていると、雪ノ下は俺の視線に気づいたのかあからさまにハッとした後に小さく咳払いをした。

 

「こほん...。そ、それで、写真のことなのだけれど、どのように撮るべきかしら?」

「ん?あー...まあ楽しそうな雰囲気出てればいいんじゃね?」

「漠然としてるわね...」

 

 何か参考になるものが無いか辺りをキョロキョロ見渡すと一組のカップルに目が留まった。そのカップルは「もぉ、つめた~い!」「やったなぁ~おかえしだぁ!」とうすら寒いやり取りをしながら水をかけあっている。お前らの関係もそのうちそんな感じに冷たくなるぞ。そして雪ノ下は俺の視線の先を追って同じくカップルを見やる。

 

「まさか、あのようなことを私を貴方でするなんて言わないでしょうね...?」

「安心しろ。そんな写真撮ったところで俺もお前も由比ヶ浜に頭の病気を疑われるだけだ」

「...否定出来ないわ」

 

 いやほんと俺と雪ノ下でカップル紛いなこと出来る訳が無い。なんせ雪ノ下とは友達ですらないしな。

 

 何も参考になるものが無い...。さてどうするか。などと考えていると隣から「きゃっ!」と小さく悲鳴が聞こえる。水底の砂に足が取られ、雪ノ下はバランスを崩した。転倒しそうになるのを俺が雪ノ下の両肩を掴むことで何とか防ぐ。

 

「あぶねっ...!大丈夫か?」

「え、えぇ...ありがとう」

 

 雪ノ下は急な出来事にまだ動揺しており、ほんのりと顔に赤みがかかっている。そして俺の肩を掴みながら息を整えようとしている。

 

 俺はというと咄嗟とはいえ直に雪ノ下の肌に触れてしまい、ちょっとドギマギしてたりしてる。ほぼ照れ隠しのために俺は今の状態の雪ノ下をスマホで撮った。パシャリとシャッター音が鳴る。

 

「なっ!何を撮っているの!」

「いや、珍しい表情してると思ってな。由比ヶ浜に見てもらうと」

「くっ...、貸しなさい!」

 

 雪ノ下は俺の手からスマホを奪い、俺を軽く押し退けスマホを俺に向ける。そしてパシャリと写真を撮られた。

 

「すごいわ比企谷くん!貴方と海、とても似合わない!」

 

 とても嬉しそうに言う雪ノ下。楽しそうですね、俺をいじるのが。

 

「まあな、どんな背景だろうが俺は浮きまくって逆に背景に溶け込んじゃうまである」

「貴方に溶け込まれる背景が不憫で仕方ないわ」

「そうだな、ほんと仕方ないよな。お前の発言の辛辣度合が」

 

 

 

 

 

 

 その後も雪ノ下はパシャパシャと何枚か俺を撮るもんだから俺も無理やり雪ノ下からスマホを奪い取り逆に雪ノ下を撮る。そんなやり取りを何度かやっているうちに雪ノ下は完璧にグロッキーとなる。ほんと体力無いな...。

 

 そんな早いうちから体力を使い果たした雪ノ下を軽く引っ張りながら前もって設置したシートへ向かい、そこで雪ノ下を休ませた。クーラーボックスから飲み物を取り出すと雪ノ下に渡す。

 

「ほれ、水分補給はこまめにな」

「そうね、ありがとう...」

 

 雪ノ下はそれを両手で受け取りコクコクと飲む。ふむ、喉の動きがエロ...あ、こっち睨まれた。

 

「...何をジロジロと見ているのかしら?」

「まあ、あれだ。わりと楽しんでいたなと思っただけだ」

「...そう、ね」

 

 素直に認めた!?絶対に「そんなことないわ。第一貴方のような人が近くにいて気も休まらないのにどうやって楽しめと?」ぐらいの毒は吐いてくるもんかと...。どうでもいいが俺の雪ノ下のモノマネが上手すぎてヤバい。うん、ほんとどうでもいいな。

 

「初めての海を前にして似合わずとも気持ちが昂っていたようね。私だって素直に認めるわ」

 

 ...雪ノ下に素直に認めたことについて俺が驚いてたことがバレてた...。

 

「でも、その...ごめんなさい。早々と休むことになってしまって...」

「別に一応遊びという名目で来てんだから気にすること無いだろ...。お前が体力無い事なんて俺も由比ヶ浜も知ってることだしな」

「...それはそれでとても癪ね」

 

 雪ノ下はすぐに体力使い果たしたことをそれとなく気にしているようだ。いやほんと別に今更って感じだから気にする必要無いんだがな。しかし、ふむ、どうしたものか。

 

 そこでふと昔に家族と海に来たことを思い出す。大抵は小町と一緒に泳いでいたが、その役を親父にとられた時は何をしていたか。...そう、あれだ。

 

「雪ノ下、ちょっとここで待ってろ」

 

 と、その場に雪ノ下を置いて行こうとしたが...。見てる、見られてる。こう男共に見られてる。

 

「...すまん、やっぱ一緒にきてくれ」

「え、えぇ...いいけれど...?」

 

 雪ノ下は小首を傾げる。いや、この場に雪ノ下を一人にしたら間違いなくナンパに合う。そして雪ノ下の図書館レベルで豊富な罵倒語ディクショナリーによってナンパしにいった男共が次々と死体に変わっていくのが目に見えてわかる。...後は、その、あれだ、今の雪ノ下は疲れているし、人目があるから無いとは思いたいがナンパしてきた男が強引な手法をしてこないとは限らないし、極力雪ノ下にも危険が及ぶことは望むことでは無い。

 

 

 

 

 

 

 そんな雪ノ下を引き連れてあるものを借りて俺たちはシートが敷いてある場所へと戻ってきた。そしてそのあるものというのは...。

 

「バケツ...?何に使うのかしら?」

「その前にだ、雪ノ下。少しは興味あるんじゃないか?こんな俺が海でいったいどのように過ごしたのか!」

「...いえ?特には...」

「際ですか...」

 

 想像以上に雪ノ下に興味持たれていない俺...。いや知ってましたけどね...。望んだ回答が得られずに若干落ち込むが、だがここからが本番だ。海は海に入る以外にも遊ぶことはあるというのを雪ノ下に教えてやる!あとこれならそこまで体力使わないだろうしな。

 

 雪ノ下に何をするのか見守られながらバケツで作ったもの、それは。

 

「どうだ、久々だったが中々上手いものだろ、家族で海に来た時によくこうやって砂で城を作ったものだ...」

 

 そう、砂の城だ!海に来てしまったぼっちのためにある究極な遊びと言っても過言ではない。いや過言だけど。

 

 せっせと城の建築に勤しんでいると、後ろからカシャリとシャッター音が聞こえてきた。

 

「...おい」

「貴方、砂をいじくっている姿がとても似合っているわ!流石ね!」

「いやそれ全然褒めてないだろ」

「当たり前よ、私が比企谷くんを褒めることなんて無いわ」

 

 その後もパシャパシャと何度かシャッター音が聞こえる。俺が砂をいじくる様がどんだけお気に召してんだ...。

 

 しかし、いつの間にかシャッター音が鳴り止んでいた。物静かになった雪ノ下のほうを見たら俺の砂の城を見て何処となくうずうずしている。

 

「作りたくなったか?」

「それはっ...!」

「ほれ、バケツは2個借りてきたんだ。お前も作れるぞ」

「...そうね、せっかくだし、比企谷くんに乗ってあげるわ」

 

 雪ノ下はもう一つのバケツを受け取り、俺から作り方を吐かせると、せっせと作り始める。...うまいな。

 

 そんな砂弄りに夢中になっている雪ノ下を怒られる覚悟でパシャリと写真を撮る。ふむ、すごくレアな写真が撮れた気分だ。

 

 しかし後ろから思いっきり写真を撮ったと言うのにまったく気づかねえ!まじかこいつ、どんだけ砂弄りに夢中になってんの!?しかも矢鱈とクオリティが高い。

 

 え、ちょっと、え...。俺わりと砂の城が上手く作れるっていう自信あったのに、こいつの訳分からないハイスペックなせいで自信無くしたんだけど...。

 

 美少女がクオリティ高い砂の城を作るもんだから注目度が更に上がる。その城の隣にある俺製の砂の城が晒しもんみたいになってる。なにこれ辛い。

 

 

「...できたっ!」

 

 どうやらお気に召すぐらいの完成度が出せたらしい。雪ノ下は嬉しそうに完成した砂の城を眺めている。

 

 俺は完成記念にもう一枚パシャリと雪ノ下とその砂の城を撮る。いやほんとクオリティ高いな...。

 

「なっ!比企谷くん!」

 

 しかし今度は撮られたことに気づき、こちらを振り向いた。そして自分が結構注目を浴びていることにも気づく。

 

「えっ...。どうしてこんなに注目されて...」

「それ言うか?自分の作った城を見てみろよ」

「...うっ」

「どしたのこれ?このクオリティの高さどしたの?作っているうちにどんどんハマって本気出しちゃったの?」

「くっ...!私も...やりすぎたと思うわ...」

 

 視線に耐え切れなくなったのか、雪ノ下は照れ隠しに自分の作った城を破壊する。周りからちょっと落胆した声が漏れる。そしてついでに破壊される俺の城。


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