転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

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28.スーパーエイジャ争奪戦 破

 そんなわけで移動を始めたわたしたち。最初の目的地は、ローマを一旦通り過ぎてアルビオンだ。

 

 昼間は吸血鬼化で日光に極端に弱いショシャナはスタンド空間に退避させて。夜間はみんな出て走るっていうスタイルだ。

 その途中、わたしはカーズ様たちが周囲にいないことを確認してから口を開いた。

 

「ショシャナ、トナティウ。ローマに入る前に言っておきたいことがあるんだけど」

「遂に愛の告白ですか!?」

「んなわけないでしょ……」

「うん、そんなわけない。だいたい、大仕事の前に恋愛について話すと死ぬっていう迷信があるからするにしても終わったあとだよ」

 

 しょぼーんのアスキーアートみたいな顔されても、わたしはそれ以上言わないぞ。

 

 おほん。

 

「それはともかく。これからカーズ様の大作戦が始まるわけだけど……ぶっちゃけるね。めっちゃねむい」

「ああ……」

「そういえば、そういう時期でしたっけ」

 

 納得という様子の二人に、こくんと頷く。

 

 そう、眠い。わたしの休眠周期的に、もうほとんど寝てる時期なのだ。

 今のわたしは言うなれば、眠気に耐えながら必死こいて勉強をしてる受験生の心境。寝そうになるのをこらえながら、あれこれやってるわけで……。

 

「何かやらかしてもおかしくないから、注意しといてほしいなって」

「わかりました、すべてこの私にお任せくださいませ!」

「こいつに任せとくと不安なので、あたしも気をつけておきますね」

「ごめんねぇ……。ある程度すると逆にハイになるんだけど」

 

 人間だったころ、よく眠気と深夜ハイテンションが交互に来てたものだけど……今の身体でも似たような感覚は存在する。人間は数時間単位で推移するけど、今の身体だと大体数日ごとにって感じだ。

 

 わりと冗談抜きで二千年ぶりくらいのあくびをこらえようと、はあとため息をつく。

 人間があんまり夜更かしをし続けると次の日に早く起きられないように、わたしたち柱の一族もそういう傾向はある。いかに常識を超えた生き物であっても、地球に生まれた生き物である以上はその範疇からは逃れられないんだろうな。

 

 でもそうなると困るんだよなぁ……。夜更かししたせいで原作を寝過ごしましたとかなったら目も当てられないじゃあないか。

 いや、さすがに二部の時期になってもまだ寝こけてたらカーズ様たちにたたき起こされるとは思うけど……でもそれだと何もできないまま原作の物語に突入するから、できれば早めに起きときたいんだよなぁ。

 できるかな……目覚まし時計的なのって作れないものか……。

 

 ……まあ、これに関してはどうしようもないから諦めるしかない。早く起きようって思ってても、できないときはできないのはみんなもご存知の通りだ。

 

 だから今はそれよりも……。

 

「二人とも、これ今のうちに渡しとくよ」

「これは……まさか……恋文……!?」

「なわけないでしょ……あの、中を見てしまっても?」

「うん、いいよ。それはわたしが寝た後こうしてほしいって言う……まあ、要望みたいなものだから」

「あら? 一枚目はもしかして同じ内容ですか?」

「……シチリア島の後始末となっていますね。ショシャナもですか」

「うん、たぶんひどいことになるだろうから」

 

 吸血鬼を作って放置するとか、昔ですらしなかった。最低限の管理はしてたんだから、今の地中海地域で吸血鬼の放置なんてやったらとんでもないことになる。それこそジョジョの世界っていうよりバイオの世界になっちゃうぞ。

 それはなんとしてでも避けたい。避けられないとしたら、最低限に抑えたいんだ。原作でそういう逸話が出てこなかったことを考えると、たぶんこれはわたしがいることで起きることだから、ね……。

 

 遠回しにそう告げると、二人は神妙な面持ちで頷いてくれた。

 

「やっぱりアルフィー様は、お優しい神様ですね」

「……そんなことない。わたしはただ、弱虫なだけだから」

「何をおっしゃいますか。そんなアルフィー様に私は救われたのです! ですから、そんなにご自身を卑下しないでくださいな」

「ショシャナに同意するのは癪ですけど、あたしもそう思います」

「……二人ともありがとね。本当に。二人に会えて、本当によかったよ」

 

 これは本心だ。たまに期待が重いときもあるけど、むしろわたしみたいなヘタレで風見鶏なやつにはそれくらい重しになってくれる人がいてくれないと、ちょっとした決心さえできないんだから。

 それに、二人はこうやって励ましてくれるしね。過度な励ましは重荷になるものだけど、まったく励ましがないのもやっぱりしんどいもん。

 

「……あの、ところでアルフィー様」

「なぁに?」

「三枚目以降に書いてある内容なのですが……」

 

 連絡書として二人に渡した一覧は、一枚目が今回の一件が終わったあとのことを。二枚目がカーズ様たちが寝るまでの間のことを書いてある。

 じゃあ三枚目以降は何かというと……。

 

「これは、その……もしかして予言ですか? ナザレ地方に生まれるヨシュアという人間からサイン入りの杯をもらっておいてほしい、とか……そういう記述が多く目立ちますけど……」

「いやー、うん、その……なんていうか、まあ、うん……」

 

 いや、だって。仕方なくない? 何の因果か、不老不死になったショシャナがいるんだしせっかくなら……って思っちゃうのはさぁ!

 

 正直、全力でお釈迦様に顔向けできないことだとは思うけど、それでも……! それでもこれは元歴史学の徒としてはどうしても……どうしても我慢できないの……!

 だってよりにもよって人類史の中でこれから面白くなる地点で休眠を余儀なくされて、次に起きる予定なのが十九世紀末って、そんなのあんまりだよ……!

 

「すごい……! アルフィー様は予言もできたのですね……! やはり知の神様……!」

「い、いや、そんなすごいものじゃあないから……! これはなんていうか、ズル……そう、チートだから……!」

 

 そんなに信仰のまなざしで見ないで……!

 自業自得なのはわかってはいるけどさ……!

 

 

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 さてそれはさておき、まずはアルビオンだ。ここで半吸血鬼の部族と合流する。

 

 カーズ様が暇つぶしに手がけた彼らには、その当初からかかわってるわたしだ。顔を見せればそれで歓迎される。フリーの顔パスだ。

 これはショシャナやトナティウも一緒で、基本的に彼らはわたしたちに対してはサンタナの民並みに従順だったりする。

 この点はカーズ様に対しても同様ってところがあっちとは違うけど、カーズ様へのそれはどっちかって言うと恐怖政治に対するそれに近い。なので、命令するとなったらわたしたちのほうが受け入れてもらいやすい……はず。

 

 というわけで彼らの集落にやってきたわけだけど……案の定、わたしたちは歓迎されたあと、こうこうでと事情を説明したら半分以上が微妙な顔をしていた。

 

 彼らに吸血鬼のような不死身さがないのは周知の事実だし、そもそも言葉の通じないところに行きたがる人間がこの時代にどれだけいるかっていうと、ねぇ……。

 おまけに危ないことをしに行かされるわけだから、やりたがるはずがないんだよなぁ……。

 

 で、こういうとき強引にできないのがわたしだ。カーズ様みたいな情け無用の男ならそれもないんだろうけど、それができないわたしは言葉を尽くすしかない。

 

 幸い三十人ほどが素直に応じてくれて、二十人ほどが説得の末に応じてくれた。合計五十人ほどが、ローマに来てくれることになる。

 そのほとんどがまだ人間換算で十代くらいの若い子たちで、ローマを見てみたいっていういかにも若者らしい理由での賛同してくれたんだけど、わたしとしては複雑な心境だ。だってローマで何をするって、下手したら死ぬかもしれない行為なわけだし……。

 

 だからわたしは、できる限り彼らが死なないようにがんばらないといけない。指揮自体は、まあ、ショシャナたちに任せたほうがうまくいくと思うけど。方針として、いのちだいじにを徹底させるという点ではわたしがやらないとだ。

 

 そしてこれは、相手側に対しても同様だ。当たり前だけど、わたしは波紋使いを全員殺して済ませるつもりなんてない。

 カーズ様としてはそのほうがあとあと楽かもしれないけど、率先して人を殺す趣味は持ち合わせてないもんね。だから、できる限り穏便に済ませるつもりだ。気絶か、捕縛くらいにとどめる感じでね。

 

 大丈夫。なんてったって今回、カーズ様はできるだけ騒ぎを大きくすることなく、波紋使いの大半をわたしが引き付けておくようにと仰せだ。つまり、殺せとは言われてない! これ幸いとばかりに穏やか~に終わらせたい。

 

 ローマへの移動中にそういう話を済ませておく。と言っても、ローマ近くに着くまでは行きと同じくショシャナをスタンド空間に入れて。半吸血鬼のみんなもそこに入っててもらって、その間にショシャナに説明してもらう。

 

 ……ヘンなことを吹き込んでなきゃいいんだけど、そこは信じてるので。うん。あの子はその辺りをぼかすことはしないはずだから。

 

 ローマの近くに着いたら、ルブルム商会に手配しておいてもらってた荷車とかで身分や外見をカムフラージュ。そのまま堂々とローマ市内に入り込むことに成功した。

 

 カーズ様たちはまだ到着してなかったこともあって、待ってる間はみんなに自由行動をさせてあげることができた。

 

 みんななんというか、田舎から上京した若者って感じで見てると微笑ましかったね。この時代としては最先端を走るローマだ、アルビオンの風景とはまるで違うもんね。

 彼らの目を特に引いたのは、やっぱり巨大建造物。凱旋門の類に始まって、水道橋や円形闘技場なんかが人気だった。

 中には闘技場に飛び入り参加して優勝をかっさらった子もいたんだけど、ただの人間相手に半吸血鬼が全力出したらそりゃあそうもなる。

 

 その間わたしは何をしてたかと言えば、波紋使いたちの調査だ。ルブルム商会はローマ市内にも拠点を構えてるから、彼らの情報網を使って今何をしてるのかを調べてたよ。

 まあ、向こうも相当警戒してるのか、事前にわかってたこと以外でわかったことなんてほとんどなかったけどね。

 

 強いて言うなら、今ローマにいるスタンド使いが一人だけってくらいか。他はみんなシチリア島に向かったらしい。スタンドが使えずとも、波紋戦士として一流の人間はまだまだいるみたいだけど、スタンド使いがいないだけで戦力にはだいぶ差が出る。カーズ様の作戦、大成功じゃないのこれ。

 

「ふっ、当然だ」

 

 合流してきたカーズ様にそう伝えたら、渾身のドヤ顔を拝むことができた。井上ボイスでそれはずるい。

 

 まあそれはともかく、カーズ様たちの合流に合わせてわたしは半吸血鬼とルブルム商会の面々を動員。およそ一日かけて、秘密裏にローマの街を可能な限り封鎖した。

 もちろん正体はわからないように特殊な恰好をさせてだ。ついでに波紋対策もつけてあげている。こうすれば万が一波紋戦士と戦うことになっても、安心して戦えるだろうからね。

 

 そしてその夜。いよいよ本作戦が始まる。

 

「【ラ・ラガッツァ・コル・フチーレ】!」

 

 ショシャナが、スタンドを発動させる。すぐさま怪人のように変身した彼女の姿は、かつてと異なり翼まで真っ黒に染まっていた。それはまるで彼女が吸血鬼になったことを示しているようで、わたしとしてはちょっと複雑なんだけど、それはともかく。

 

 そうやって変身したショシャナは、本体と同化する性質のスタンドゆえに誰もがその全身をはっきりと認識することができる。

 そんな彼女が、夜とはいえまだまだ元気な繁華街に突如として降り立ったら。しかも暴れ始めたら、さてどうなるでしょう?

 

 答えは一つしかない。

 

 阿鼻叫喚、とまでは言わないけど、悲鳴と怒号が飛び交う大騒ぎに早変わり、だ。

 

 それを一瞥して、カーズ様たち三人はそれぞれの目的地に向かって散開する。

 

 わたしは彼らを見送って、深呼吸を一つ。

 

「……たぶん、これが今回寝る前最後の仕事だ。がんばるぞ」

 

 自分に言い聞かせるようにつぶやいて、わたしはいつでも動けるように意識を集中させた。

 




積極的にフラグを立てていくスタイル。

そういえばなんですが、読者の方からGLタグについてのメッセージをいただきましたが、アンケートでも不要論のほうが倍くらいあったので今後もタグはつけません。
ご了承ください。

今も未来もアルフィーが女性とカップルになる予定はゼロですが、ショシャナみたいなキャラがいるならガールズラブタグは

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