転生したら柱の女だった件   作:ひさなぽぴー

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4.それは福音か災厄か

 はい、というわけでいつものようにおおまかに五百年カッ飛びました。 推定九千歳くらいになりましたアルフィーちゃんです。紀元前五千年くらいですね。たぶん。

 

 ここ千年ほど、まったく身長が伸びてないんですがどうなってるんでしょう。それどころか骨格とか肉付きもどう控えめに見ても完全なる子供体型なんだけど、なんで? ガイアがわたしに合法ロリになれとささやいてるの?

 

「肉体が全盛期を迎える前に石仮面を被った副作用かもしれんな。あれは全盛期を保つようになるが、正しくはその状態に戻すものだ。その状態になったことがない以上、お前の肉体はその姿が全盛期と認識しているのだろう」

「……だから実証実験もなしに石仮面被るのイヤだったんですよぉ!!」

 

 ええまあ、なんとなくそんな気はしてたからいいんですけどね……。一応覚悟はしてたんで、別に……うん……。

 

 ……それはともかく。

 この五百年で何をしてたかというと、石仮面にさらなる力を持たせるための素材を探してみんなで大陸中を旅してました。

 

 その結果わかったことは、わたしたちのいる大陸が北米大陸ってことですかね! そこはなんていうか、だろうなって感じだけど!

 

 素材? ダメですね。南米大陸も回ったけど全部ダメ! どれもこれも石仮面に合わなかったですね!

 まあ、わたしとしては二十一世紀には絶滅したと思われる生き物が色々見れたから結構楽しい旅だったんだけどね! いや、わたしが知ってるのは骨だけで生きてるときの姿はわからないから、あれが本当にそうだったかは知らないけど!

 

 ともあれそんなわけで、一旦この大陸の捜索は打ち切ることになった。さすがのカーズ様も、こうカスリもしないと堪えたんだと思う。

 

 なので、今は海を渡って違う大陸に行く途中。計画としては、極夜を利用して凍りついた北極を渡ることになっている。

 とはいえそこは人外の集団だから、わりと近所を散歩するくらいのノリだ。この時代、わたしたちは正真正銘地球生態系の頂点だからね。グリズリーだって怖くない。

 

 そんなある日のことだ。

 

「……カーズ様、あれ……」

 

 最初にそれに気づいたのは、サンタナだった。彼が空に指を向けるのにつられて、わたしたちも顔を上げてそれを認識する。

 

「おいおい、ありゃあ……」

「隕石か。でかいな」

 

 そう、そこには空から降りそそぐ赤い玉があった。赤熱して、轟音をあげながら落ちてくるそれは、見ようによっては世界の終わりに見えなくもない。

 

「どうする?」

「少しルート変更といこう。もしかしたら、この地球上には存在しない物質が見つかるかもしれん」

「あっ、確かにそうですね! えへへ、楽しみですねカーズ様!」

「うむ。……まあ、期待しすぎて肩透かしを食らう可能性のほうが高い。今から落ち込む準備はしておくのだな、アルフィーよ」

「いえ、ワクワクしすぎてそんなの無理ですね!」

「……姉上のそういうところは、このワムウには理解しがたいです」

 

 何を言うんだワムウ! 地球外の物質とかロマンじゃあないかッ! 何がなんだかわからない謎の物質とか、気にならない!?

 ……ならない? そっか……ならないかぁ。

 

「……俺はちょっとわかるかもしれない」

 

 ふふん、それに比べてサンタナは見どころがあるね! いっそわたしと一緒に研究者になろうよ!

 ……ならない? そっか……ならないかぁ。

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 いつものように約五百年があっという間に過ぎた。

 いや我ながらびっくりする時間の流れだよ。なんかもう人間だった頃の時間感覚には戻れそうにない。

 

 この五百年は、こないだの隕石の調査に没頭していてほとんど動くことがなかった。食事のために場所を変えることはあったけどね。

 

 そう、結果的にわたしたちはユーラシア大陸への渡航を中止した。わたしとしては、ユーラシア大陸の絶滅種……ホラアナライオンとかオーロックスとかを見てみたかったんだけど、カーズ様がそう決めたんだから仕方ない。

 

 じゃあそのカーズ様はこの五百年間何をしてたかって言うと、さっきも言ったようにこないだの隕石の調査だ。ほとんどそれしかしていない。

 わたしでもちょっと驚く集中力は、さすがって感じかな。カーズ様ももしかしたら本質は研究者なのかもしれない。戦闘すら人並み以上にできる天才なだけで。

 

 で、今はそれもだいぶ落ち着いてきた。そのまま実験をする段階に入ってる。

 どんな実験かと言えば、隕石を使って石仮面にうまいこと影響を与えられないかという感じだね。

 

 うん、あの隕石ただの石じゃなかったんだ。わたしはよくわかんなかったけど、なんかカーズ様も見たことのない物質が入ってたみたいで発見した直後はわりとテンション高かったよ。

 それを調べてみたら、正確には物質って言うより生き物っぽいとかで。地球の生態系に照らし合わせて無理に分類するなら、金属元素的な特徴を強く持ったウィルスの集合体、とかに分類できるらしいんだけど……。

 

 説明聞いた瞬間、思ったよね。

 それ、()()()()()()()()()()()()()()

 

 思い返してみれば確かに、飛呂彦先生の原作には出てこないけど、小説版ではスタンドを目覚めさせる弓と矢、その鏃を作ったのはカーズ様って設定になってるやつがあった。だとしたら、これから実験の過程であの鏃ができる可能性はすごく高いわけで。

 もしスタンドに目覚められたらそれは一ジョジョラーとしては嬉しい限りッ!

 

 というわけで、今回の実験はわたしもかなり積極的にお手伝いした。おかげでカーズ様から少しはお褒めの言葉をいただくという快挙を成し遂げてしまったね!

 

 ……まあ、その実験で何をしたかって、人間を対象にした人体実験なんだけどね。

 そしてさすがカーズ様、人間を殺すのにまったく躊躇がない。彼にしてみれば、人間にとっての鶏とか豚みたいな存在なわけだから、それもわからなくはないんだけど……元人間としては、ね。思うところはもちろんあるよ。

 

 あるんだけど、わたしが止めたってカーズ様が聞き入れるわけないし、止めたら最悪殺されるかもしれない。それもわたしにはできないんだよねぇ。

 だからわたしにできることと言えば、彼らの死を無駄にしないよう少しでも情報を多く集めてカーズ様がたくさん殺さないようにすることしかない。だからいつもよりがんばったってのもある。

 

 さてその実験だけど……ウィルス的なものとわかったらやることと言えば、そりゃあ感染させてみるに尽きるでしょ。誰だってそーする、わたしだってそーする。

 そしてカーズ様もそーした。まずは隕石を少し切り出して、破片を人間の体内に埋め込んでみた。

 

 そしたら、うん……なんていうか、()()()()()ね……。

 

 正直なところ、そんな気はしてた。だってジョジョにおけるキーアイテム、スタンドを目覚めさせる矢は、デッドオアアライブだ。その原料と思われるものを直に体内に入れたら、まあその、うん。ね。

 

 でも、わたしは原作知識でそれを知ってるけど、カーズ様は知らない。それを実際に結果を起こさずに止めるなんてできるわけない。仮説として提言することはできたけど、それでおしまいだった。ごめんね犠牲になったおじさん……。

 

 もちろんカーズ様がそれで止まるはずはなくて、その次は血液感染だーってことで隕石を加工し始めた。

 

 てなわけで、本人曰く「ちょいと片手間の遊びみたいなもの」でこさえられたこちら、こちらをご覧下さい。

 デザインは特に何もないシンプルなやつだけど、この形状わたしとても既視感がありますねぇ!

 

 そう、どこからどう見ても、()()()ッ!

 

 なんだかジョジョの世界に一歩近づいた気がして、悶え苦しんだよ! 喜びでなッ!

 

 ……さてそんなこんなで遂に出てきた鏃。これで人間を順番に斬りつけていったところ、なんとまあ九割以上がお亡くなりになってしまってわたしはドン引いた。体内に埋め込むのとほとんど変わらないじゃあないか!

 でもよくよく考えればこれも当然の結果だったかもしれない。原作だとわりと大勢のスタンド使いがこの鏃から生まれてるけど、四部とかこれが原因で死んだ人が大勢いたことはほのめかされてたわけだし……。

 

 とはいえ、全員が死んじゃったわけでもない。

 そしてこの鏃の傷から生還した生き物は、スタンド使いになる。実際、その全員が不思議な力に目覚めた。スタンドだ。

 

 わたし大興奮! ……とはいかない。

 なんてったって、スタンドはスタンド使いにしか見えない。だからわたしたちにはそれがどういうものか見えないし、その能力も結果しか認識できないんだよねぇ。

 

 おまけに、スタンド使いになった彼らは一様にわたしたちに牙を剥いた。観察とかしてる暇はなかったよ。

 

 気持ちはわかる。理不尽に拉致られて実験台にされて、いつ死ぬかわからない中で圧倒的な力にさらされる状況。そんな中わたしたちも知らない力に目覚めれば、人間って立ち向かうよね。

 いやまあ、そういうことができる人だからこそスタンドに目覚めたのかもしれないけど。

 

 ただ……ねぇ……。確かにわたしたちは全員、スタンド使いじゃあないんだけど。それでも、残念ながら普通の人間でもないんだよね……。

 

 何が起きたかって? そりゃあもう、いつぞやの再演みたいな一方的虐殺だよ。

 

 確かにね、スタンドを持ってればわたしたちにも対抗できる。実際、戦闘経験が少ないわたしたち年少組は何度か危ないことがあった。サンタナとか、たぶんわたしがかばわなかったら三回くらい死んでたと思う。

 でもカーズ様やエシディシ相手となると、ね……。

 

 そもそもスタンドって、全部が全部戦闘に向いてるわけでもないし、そうでなくとも初手を取って奇襲してこそってやつも結構多い。本体が認識できるより速く、強く動ける相手には、どうにもならないこともあるわけで……。

 全部終わって血まみれになりながら、わたしはため息しか出なかったね。

 

 これは間違いなく石仮面の完成に寄与すると、最高にハイ! ってやつになって高笑いするカーズ様とか。

 

 複数との戦いを経験して楽しかったのか、やたら名残惜しそうなワムウとか。

 

 人間に殺されかけたことがショックで凹んでるサンタナとか見てるともうなんか、こう、ね……。

 

 エシディシ? あのおっさんは「こういうやつが増えればもっと楽しく戦えるんじゃあねーか?」ってワムウを焚きつけてるよ。

 

「一通り情報は手に入った、実験は終わりだ。アルフィー、石仮面を完成させるぞ!」

「は、はいっ!」

 

 こうして真なる石仮面づくりが始まった。

 今までのものと違うのは、骨針のところ。ここが、例の隕石から削り出されたものに差し替えられた。

 はからずもその過程で石仮面の作り方を教えてもらっちゃったんだけど、喜んでいいのか悪いのか。

 

 でもね、カーズ様。わたし知ってるんだ、残念だけどこの隕石じゃあわたしたちを究極生命体にはできないって。

 




本文中にある通り、本作では「スタンドの矢の制作者はカーズ様」説および「スタンドの矢の正体はウィルス」説を採用しました。ご了承ください。

・・・最初のプロットでは、矢はゲブロンからできていてすべてのスタンド使いはグロンギ族の子孫だったんだよ! な、なんだってー!?
みたいなクロスオーバーを考えてて、今回の話も柱の一族VSグロンギ族にしようかと思ってたんですよ。
でもそれをやると大規模なクロスオーバーになって収拾がつかなくなりそうだったし、何より究極生命体になってない段階のカーズ様がダグバに勝つ未来が見えなかったのでやめておきました。
仮面ライダー、敵も味方もオーバースペックがすぎるよね・・・。

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