STEEL BALL HERO   作:ボンシュ

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ジョニィ・ジョースター

 僕の名はジョニィ・ジョースター。

 

 これは、僕が歩き出す物語だ。

 

 肉体的にではなく、青年から、ヒーローへと。

 

 

 

「ハッー! ハッハッハッハッハッ!」

「すげえ、笑ってるよッ!」

 

 撮影してる男の驚きが伝わってくる。画面の中央、燃え盛る倒壊したビルの向こうから、何人も担いでやってくるヒーローの姿が映り込んだ。

 

「もう大丈夫! なぜって? 『私が来た!』」

 

 ヒーローランキング1位。世界一のヒーローはそういってのけた。その立ち姿はまさしくヒーローそのものだ。

 

「………」

 

 僕は自分の足を見下ろした。

 

 椅子からだらんとぶらさがったそれを思い切り殴りつける。だが、何も感じない。痛みも、殴った感触もない。あるのは拳にじんわりとある殴った痛みだけ。

 

「どうして……個性なんか………」

 

 歯を食いしばり、何度も何度も殴りつけた。拳だけがじわじわと痛みを増していく虚無感に、思わず個性で爪を脚に向けた。

 

「……ハッ!」

 

 

 だが、一歩というところで理性が働き指先はさっきまで見ていたパソコンの液晶を向いた。

 

 

 ズバンッ

 

 液晶が割れた。そこに突き刺さっているのは爪だ。僕の個性で撃ち出した爪弾(つめだん)はパソコンを壊してしまった。

 

「新しいのを……いや、いいか…」

 

 ジョニィ・ジョースターの個性は爪を弾丸のように発射する個性である。

 初めて発現したのは3歳の時。幼稚園で友達と遊んでいる時に鉄砲の真似事をしていたら、爪が発射された。幸い怪我人は居なかったが、その瞬間からジョニィジョースターにはある症状が現れた。

 

「せ、せんせぇ〜〜、あしが…ぼくのあしは?」

 

 下半身不随。最初は勘違いと思われた。個性が発現した驚きによって一時的なものだと。だが一週間しても、一ヶ月経っても、それは治らなかった。

 

 車椅子での生活に慣れた頃、ジョニィの家族は日本にいるヒーロー『リカバリーガール』のことを知って日本へと移住する。

 

 だが、リカバリーガールの口から出たのは何度も医者から聞いてきたセリフだった。

 

「あたしの力じゃ、治せないね……」

 

 またダメだったと、父と母が落胆した。何度も何度も同じ結果を言い渡されてきた僕の中には、もう諦めようと、受け入れて楽になろうという気持ちがふつふつと湧いて来ていた。

 

 だが、リカバリーガールの発した言葉はぼくらの心に光を差し込ませた。

 

「だけど、あたしの予測が確かなら……『あの男』ならできるかもしれない」

 

 思考が止まった。動きも止まって、ひどく滑稽に見えただろう。だがそんなことどうだっていい。

 

「えっ……いま、なんて……できる…出来るんですか先生!!」

 

 父が立ち上がって、病院の中というのに声を荒げた。母は泣き崩れて息子のジョニィを抱きながらうわ言のように感謝の言葉を繰り返した。

 

「ぁぁ……ジョニィぃ…ありがとう神様………ありがとう……」

 

 そこへリカバリーガールが、父を椅子に押し込むようにして座らせながら言う。

 

「喜ぶのは早すぎるよ、あくまで仮説ですからね。可能性はゼロに近い」

 

 ゼロに近いという台詞も、親子にとっては希望そのものだった。0%じゃないのなら、可能性はあるということだ。

 

 だがそこへ水を差すように、リカバリーガールはジョニィの小さな肩を掴んで目を合わせた。

 

「ひょっとしたらこの方法は、あんたにこれまで以上の絶望を与えることになるかもしれない。いや、なるだろうね。それでもやるかい? その覚悟があるかい?」

 

 ジョニィは一度目を伏せて、これまでの人生を振り返った。歩けなくなったことで、他の子と同じように生活できなくなった。気を遣われ、どうしようもない気持ちに苛まれる日々の連続だった。

 

 その中で見たあの映像だ。

 

 No. 1ヒーロー『オールマイト』の勇姿にどうしようもなく憧れた。

 

 いつかこの下半身不随を克服して、あんな最高のヒーローになりたいと思った。

 

 ジョニィ・ジョースターの伏せていた目に力がこもった。まっすぐ目の前の医者の眼を見て、答えた。

 

「やりますッ……絶対にやってみせます!!」

 

 これは僕が歩き出す物語だ。

 

 肉体的にではなく、青年からヒーローへと。

 

 

 

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