STEEL BALL HERO   作:ボンシュ

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 長くなったので分けて投稿したいと思います。


ヴィラン襲撃 その①

 

 一年A組のレスキュー訓練に現れたのは、ヴィランの大群だった。

 

 その中の黒い霧状の男、黒霧はうろたえる生徒たちを見て無い眉をひそめた。

 

「おかしいですね……先日いただいた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが」

 

「やっぱり先日のはクソ共の仕業だったか……」

 

 嫌悪感を隠すことなくイレイザー・ヘッドは吐き捨てた。その手が首元の拘束マフラーにかかる。

 

 

 

 

 

 

 

「どこだよ……これだけ大衆引き連れて来たってのに。オールマイト(平和の象徴)……あぁ、子供を殺せば来るのかなあ」

 

 まるでケツにツララを突っ込まれた気分がした。他のみんなもそうなのだろうか。いや、そうに違いない。さっきから手が震えている。緊張がスローダンサーにも伝わっていく。

 

「『ヴィラン』……? バカだろッ、ヒーローの学校に入ってくるとかアホすぎるぞ!」

 

 切島が緊張を拭うように言うと頭の回る八百万が警報装置の有無はと13号に問う。

 

「奴らが現れたのがここだけか学校全体か、どちらにしろ()()()()()()ができるのがいるってことだろうぜ、そしてここまでの用意周到さ………バカだが阿保じゃねぇ」

 

 轟の冷静な言葉で相手は狡猾な相手だと切島は認識を修正した。

 

「13号、ボール・ブレイカー。すぐに避難を開始、学校に電話で連絡できるか試せ。センサー対策をしてるやつらだ、電波系の個性を持ったヴィランが妨害してるかもしれねぇ。上鳴、お前も個性で連絡を試せ」

 

 危機的な現状を把握したイレイザー・ベッドが、戦闘ゴーグルを付けながら淡々と指示を出した。

 

「あっ、ウス!!」

 

「先生は!? まさか一人で戦うつもりですか!? イレイザー・ヘッドの戦闘スタイルは一対一の対人戦……あれだけの数だとッ」

 

 焦る緑谷に、戦闘準備を完了させたイレイザー・ヘッドが振り返らず答えた。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらんッ!」

 

 そう言い残してイレイザー・ヘッドはヴィランの大群に突っ込んでいった。何人かがそのあとを追おうとするが、一歩踏み出すこともできず恐怖に立ち尽くしていた。

 

「よぉーーし、全員避難だ! ほら、おめえさんもボケっとするなッ!」

 

 ガツンと頭を殴られて喝を入れられたジョニィはようやく動き出すことができた。すでに入り口へ走り出しているクラスメイトの後ろ姿を見て、僕も急がねばと手綱を持つ手に力を込めた。

 

「おれたちは馬だから移動が早い! すぐにこのことを学校側に伝えんぞ!」

 

「ああ、わかってる!」

 

 馬の脚ならすぐに入り口まで行ける。イレイザー・ヘッドの時間稼ぎも長くはもたない。すぐに他の教師を呼ばなくては。

 スローダンサーがクラスメイトに追いつきそうになる。だがいまは気にしてられない。スローダンサーのスピードを上げた。

 

「そうはさせません」

 

 

 

 前方の地面から黒い霧が噴出した。馬が驚いて急に止まるもジョニィはなんとか耐える。立ち塞がったのは黒霧だった。

 

「はじめましてみなさん。本日雄英高校に入らせていただいたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして……ム!?」

 

 ガオオン!!

 

 黒霧が言い切る前に鉄球が投擲された。ジャイロが投げた鉄球は霧状の身体を通り抜けてすっ飛んでいった。

 

 

「やっぱきかねぇのか。丁寧な言葉遣いで、紳士ぶってカッコつけてんじゃねーぞこの悪党が!」

 

「貴方もカリキュラムにありませんでしたね……やはり変更があったようですが、それとは関係なく私の役目は……」

 

 

 黒い霧状の身体が広がっていく。僕の個性で戦えるのか?考えている暇はなかった。両手の爪弾を回転させて構える。

 

 13号がブラックホールを使おうとした。だがその時、爆豪と切島が先行して飛び出した。爆豪の手が爆発をおこし切島は硬化した手刀で突貫する。

 

 爆煙が広がったが覆い尽くそうとしていた霧は消えていた。あっけない最後じゃねーか。爆豪と切島はまだ暴れ足りないようだった。

 

「その前に俺たちにやられることは考えなかったのか!!」

 

 だがジョニィは爪弾の回転を止めていなかった。まだ来る確信があった。瞳が黒く燃える。その爪弾の回転が警戒のものではないことをジャイロは気がついた。

 

「待てジョニィ! 爪弾は撃つな!」

 

 ジャイロが叫んだのは爆煙の隙間に黒い霧の端が見えた瞬間だった。

 

 

 ドババババババババッ!!

 

 

 一切の躊躇をせずに煙の中へ爪弾を連続して撃ちまくった。その目はいつかのとき以上に、黒く燃えていた。

 

 

「ぐおおおああああ!!」

 

()()()()()()

 

 ヴィランの悲鳴が響く。

 

 どうして当たったのか、それはわからなかった。だがジョニィにとってそれはどうでもよかった。ヴィランを『殺す』ことができたのなら。

 

 その時、13号とジャイロを含んだ全員がジョニィの躊躇のない攻撃を見ていた。ある者は絶句し、またある者は止めようと駆け出す直前で止まっていた。

 

 

「ジョニィ……お前………ッ」

 

 

 

 

 

 

ドォォオオオオオオオオォォォォォ

 

 

 

 

 

 

「その前に俺たちにやられ………えッ!!」

 

 爆撃したヴィランの方へ構えたまま、切島と爆豪は固まった。

 

「何が起こったんだ、俺はさっき…」

 

 混乱する切島と爆豪の後ろで、ジョニィもまた射撃態勢のまま動いていなかった。

 

「何が起こったんだ……! 僕は確かに爪弾であいつを仕留めた、手応えはあった!」

 

 だが、その言葉を否定するようにヴィランは煙を払って現れた。どこも怪我すらしていない状態だった。

 

「どういうことだよ! いまあいつ「ぐわー!」って言ってたよな!?」

 

「わからない。ひょっとしたら演技だったのかも……」

 

 峰田が狼狽るも、緑谷は現状を必死に理解しようと考える。やっぱりあの霧状の身体には物理攻撃が効かなくて、さっきのは僕らを騙すために? でもどうして騙す必要があるのか。

 

 

「いやあ……本当に危なかった。貴方が居てくれて助かりましたよ」

 

 

 そう言うやいなや、黒霧は再度自身の身体を広げてA組を全員包み込んだ。

 

 黒い奔流にみなが動きを止める中、飯田天哉は個性のエンジンで瞬間的に加速し近くにいた麗日(うららか)砂糖(さとう)を抱えて霧から飛び出した。

 

「みんなぁぁぁあああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い霧が晴れる。残っていたのは飯田、麗日、砂糖、障子、13号、そしてジョニィとジャイロの7名だけだった。

 

「障子君、他のみんなはどうだ。無事か?」

 

 すぐさま障子は複製腕で目と耳を作り、訓練場内の状況を把握する。

 

「みんな離れ離れになってるが、無事だ」

 

 障子の言葉に残された全員が安堵の息をつく。だがすぐに身構えた。目の前には黒霧が出口を塞ぐように立ち塞がっていた。

 

「物理攻撃無効でワープの個性とか……無敵だろ!」

 

「いいや、物理攻撃は効いた!」

 

 砂糖の言葉に被せるように、ジョニィが否定する。

 

「僕の爪弾は確実にやつに命中した、そして倒したんだそれは間違いないんだ!」

 

「それじゃあなんでピンピンしてんだよ。当たってるなら少しはへばっててもいいんじゃねーのか?」

 

「それは………」

 

 今度は何も言い返せなかった。ジョニィも目の前の黒霧を見てダメージがあるようには見えなかったからだ。

 自分の言葉に自信が持てなくなってきた。ひょっとしたら気のせいだったのでは。不安感を抱いていたところへジョニィは肩に重みを感じた。

 

「いいやお前さんは間違ってねえ」

 

「ジャイロ、じゃあなんであいつは」

 

 

「やはり………来てよかった…」

 

 

 

 黒霧から男が一人現れる。また新手のヴィランかと緊張が走った。

 

 だがその男はそんなことはお構いなしに、口を動かし続けた。

 

 

「そこの、馬に乗っている左の彼だけだが……まあいいだろう。俺が時を戻したからだ。黒霧が攻撃された瞬間、俺が時間を6秒『だけ』戻した」

 

「時間を………」

 

「戻したって……そんなのハッタリに決まってる! 第一だ、自分の個性を僕らにに教えてなんのつもりだ!」

 

 理解の及ばないことに飯田が焦るも、『マンダム』は静かに言葉を紡いでいく。

 

「このオレを「殺し」にかかってほしいからだ。公正なる「果し合い」は自分自身を人間的に生長させてくれる。卑劣さはどこにもなく……漆黒なる意志による殺人は、人として未熟なオレを聖なる領域へと()()()()()()

 

 マンダムは全くふざける様子もなく、それどころか穏やかに語っていた。

 

「乗り越えなくてはならないものがある。『神聖さ』は『修行』だ。だから君たちに全てを隠さずに話している………個性にも目的にもオレにはウソはない」

 

 今度こそ、マンダムは敵意を剥き出しにして向かい合った。

 

「よろしくお願い申し上げます。どうする? 決めるのは君たちだ…」

 

 正直どうかしているとしか思えなかった。これまで出会った人間の中で一番頭がイカれているやつだと思った。

 そう思っているのを読んだように、マンダムはジョニィの方へ視線を向ける。

 

「これが「男の世界」………反社会的と言いたいか? 今の時代………価値観が「甘ったれた方向」へ変わってきてはいるようだが…」

 

 

「みなさん耳を貸さないでください! 所詮はヴィランの言うこと……まともに聞いても理解できようもない戯言です!」

 

「その通りだ。センセイの言う通り悪党の言うことにいちいち耳を貸していたら出来るもんも出来なくなっちまう。ああ〜〜、例えば……」

 

 

 ドギャアアアアアアア!!

 

 

「さっき投げた鉄球がやっと戻ってきたッ! 13号、黒いのを足止めしろ! ジョニィ! 飯田! 入り口まで走れっ!!」

 

 さっき外した鉄球は回転を止めていなかった。戻ってきた鉄球はマンダムの後ろから襲いかかり、腰に命中して足の動きを止めた。

 

 飯田はクラスメイトを見捨てて走ることにためらった。だが、ジョニィは即座に走り出した。それを阻止しようと黒霧が覆いかぶさる。

 

「させません! ブラックホール!!」

 

 13号の指先の蓋が開きブラックホールの吸引で黒霧はジョニィから離されていく。

 

「走れジョニィ、GO! ジョニィ!!」

 

 足を止められたマンダムは、しかし焦っていなかった。右手首の腕時計のつまみを動かし、秒針を『6秒戻した』。

 

 

 

 ドォォォォオオーーーーーーーン

 

 

 

 

「ああ〜、例え………ハッ!」

 

 マンダムは身体をずらして後ろからくる鉄球を回避した。外れた鉄球は、ジャイロの手の中へ戻っていった。馬で駆け出していったジョニィも自分のすぐ隣にいた。

 

「なんだってこれは!?」

 

「『6秒』だ………「6秒」だけ時を戻せる……『公正(フェア)』にだ…すでに公正(フェア)にそれは話した。この腕時計の「秒針」をつまみそれだけ戻す。それで個性のスイッチが入る」

 

 

 もはや言葉は不要だった。この場の全員が理解していた。マンダムというヴィランは時を戻せる。それを『実体験』として理解していた。

 

「たとえ突破されようとも、『6秒も』あればこの男(黒霧)が追いつける。何度でも聞くぞ、どうする?

 

オレを殺さなくてはここからは絶対に出て行けないッ!




 ほとんどSBRの台詞をそのまま持ってきてるだけです、どうかお許しを。

 リンゴォの台詞はほんと大好きなんです。
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