お待たせしました。 皆さん大爆笑確実のあのギャグが出ます。
ジャイロとマンダムが戦いを繰り広げていた時、イレイザー・ヘッドこと相澤は広場で次々とヴィランを倒していっていた。
さっきから奇妙な現象が起こっている。これは何者かの個性か。深く考える余裕はなかった。ゴーグルで目線を隠して、マフラーでヴィランを投げ飛ばし続ける。
緑谷の言う通り、戦闘スタイルは本来は一対一。長時間の戦闘で身体に疲労が溜まりつつあった。
「来たか!!」
最初に現れた手だらけの男が迫ってくる。だがその動きは単調だ。個性を消して肉弾戦に持ち込み一気に倒す。頭がやられれば士気も下がるだろう。
急接近して右肘が狙った胴への一撃は、相手に掴み取られた。
「やっぱり……動き回ってて分かりにくいけど、髪が下りる瞬間がある…………そしてその間隔はだんだん短くなっている!」
観察されていた。この男はオレが個性を消している時間を計っていた。不味いと思った時には遅かった。個性の持続時間が切れてしまった。瞬間、掴まれた肘がボロボロに崩れた。
「くそっ!」
蹴飛ばして距離をとる。呆気なく飛ばされたヴィランは蹴られた腹をさすってよろよろと立ち上がる。
咄嗟の判断で離れたのは正解だった。崩壊したのは皮膚だけで済んだ。手を握って広げて、痛みがあるものの動いたことに安心する。
強力な個性だが触られなければ問題はない。マフラーで拘束してもあの個性じゃ無駄だろう。なら重い一撃で一気に倒す。
周囲の雑魚どもは倒した。あとはこいつとさっきから棒立ちの異形型のやつ、そして13号たちが戦っている黒いやつだ。
「流石はヒーローだぁ……かっこいいなあ〜〜、かっこいいなあ〜〜………………でも残念だ。本命はオレじゃない。やれ、脳無」
バゴォオオオオオ
「がぐあぁああ!!」
意識が飛びそうになった。ダンプカーか何かで吹っ飛ばされたような衝撃とともに視界が回った。畳み掛けるように身体の至る所から壊れる音がした。
痛みで意識を失いそうになると、別の痛みが無理矢理に叩き起こされた。拷問のような痛みの連続が終わったと思ったら、ようやく地面に叩きつけられている事を自覚した。
ならばすぐ後ろだ。個性を消してこの超パワーから逃れようと個性を発動してすぐ後ろを見た。黒い脳みそ剥き出しのヤツがいた。
バキリ
「ぐぅおああああ!!!」
まるで小枝でも折るかのように左手がへし折られた。個性を消しているのに一切落ちないということは、純粋なこいつの力ということだ。
オールマイト並みじゃねえか!
このままだと自分どころか生徒たちも危ない。そう思った矢先、霞んだ視界が少し離れた湖の岸近くに三人の生徒がいるのを見つけた。
あいつら……何やってんだ……!!
圧倒的に不味い状況だ。どうやって切り抜ければい「死柄木弔……」更に黒い霧のヴィランが現れた。まさかと最悪の想像をした。
「黒霧……13号とあと1人は始末したのか?」
「行動不能にはしましたが、代わりに『マンダム』がやられたのとその……生徒を1人取り逃しました」
「はぁ……? 黒霧ィ………お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよッ!」
1人逃げた。抑え付けられて視界は効かないが、これでしばらくすれば応援が来ることが確定した。だが、もう意識を保っていられない。
「あのクソジジィ……オレにお高い態度を取ってたくせにやられるとかマジでザマァだよ…………ダメだ。ゲームオーバーだ……帰ろう」
ダメだ。意識を失うな。生徒を守り切ることが教師の務めだ。13号もボールブレイカーも務めを果たしたに違いない。だったらオレがここでその務めを放棄するわけにはいかないだろう。
「ああ……そうだ、帰る前に平和の象徴としての「矜持」を…………へし折って帰ろう!!」
男の手が湖にいた三人に伸びた。もはや目を開けるだけで目の奥が痛む。だがそんなこと知るか!
男が影になっててよく見えない。だが、最悪の事態は避けることが出来ただろう。
「ほんと……かっこいいなあ…………脳無!」
オレの意識は、ここで途切れた。
目が覚めると、僕は点滴に繋がれていた。ポタポタと水滴が落ちる様子が見える。ここで僕はぼんやりと、自分が助かったのだと理解した。ダメ元で脚を動かそうとしても感覚すら無かった。そんな劇的に治るはずはないか。
「よぉ……目が覚めたかよ」
随分と聞き慣れた間の抜けた声だ。声の方を向くと、同じく点滴に繋がれたジャイロがベッドに腰かけてこちらを見ていた。ジャイロも無事だったことに、僕はひどく安心していた。
「おい、頭は大丈夫そうか? 小口径っつっても頭に弾丸を食らったんだからな」
言われて思い出した。僕の意識は頭に衝撃が走った瞬間に無くなった。弾丸で撃たれたと聞いて、自由に動かせる右手を額に添えた。
「心配すんな、リカバリーガールがキレイさっぱり治してくれたぜ。それよりよジョニィ……今よォ…オレ、ギャグ考えたぜ。オリジナルギャグだ。考えたんだ。でもいいか…一度しかやらねーからな。よく見てろ」
ジャイロはそう言って指を4本立ててみせた。
「一度っきりだ…指見てろよ 今何本に見える?」
「………………………4本」
するとジャイロは突然真面目右上を向いて、指を立てた手を顔の横に持ってきた。
「そこちょっと
………………………………
「つーギャグ…どよ?」
「ん〜〜〜〜‼︎ …なかなかオモシロかった。かなり大爆笑!」
「だろ? あとでもっとジワっと来んだよ、気に入ったからってパクんなよ」
ジャイロの知られざるセンスを目の当たりにしていた時、病室の扉が開けられた。中に入ってきたのはネズミみたいな熊みたいな謎の生物だった。いや、僕は知っているぞ。こいつは校長だ。
「ネズミちゃん、そこちょっと
「元気そうだねジャイロ・ツェペリ君。くだらないギャグをするほどには回復してるようだ」
「ケッ、おたくにはわかんねーだろうさ…このギャグの面白さがな」
悪いがジャイロ、僕にもわからない。
「それは置いといて、まずは君たちが無事で良かった。そして謝罪させてほしい。今回の事件は我々の管理不行届が原因で起こったものだ……本当に申し訳なかった」
「そんな……」
しょうがないことだった。それを聞いた校長は、下げた頭を上げることなく続けた。
「一歩間違えれば犠牲者が出ていたかもしれない。今回は本当に幸運だった」
よかった。みんな無事だったのか。ほっと安心して胸を撫で下ろすと、校長がじっとジャイロを見た。
「まだ話してなかったのかい?」
「い、いやぁ……なんつーか。まずは安心させてからがいいと思って…もちろん話すつもりだけどよぉぉ」
その様子に校長がため息をついた。
「いいさ! 僕が話してあげよう!」
校長が意気揚々と語ってくれたのは、ヴィランが襲撃してきた際に起こった出来事だった。僕が意識を失ってから、ジャイロはあのヴィランを殺し、相澤先生も瀕死の重傷を負ったらしい。
だが、その後オールマイトが駆けつけてヴィランを撃退したという。正直、ちょっと見たかったと思った。なんでも『ショック吸収』の個性と『超再生』の個性を持ったヴィランを、超パワーで上からねじ伏せたらしい。
「とんでもないな……No. 1ヒーローは」
「さて、ここからが本題だよ!」
「ヴィランを撃退して、みんな怪我したけど無事だった。これで終わりじゃないんですか?」
僕の想像より、物事は単純じゃなかったそうだ。
まずジャイロは僕のこちらでの保護者であり、教師だった。更に期間は短いが、ヒーローとして登録もしていた。
それが今回、ヴィランといえ「殺し」をしてしまった。それが不味かった。
記者会見において、学園側は正当防衛であったと主張したが、それを否定する声が出た。
「それが彼だったのさ。ジャイロ君が記者会見で自ら認めちゃったのさ。あれは正当防衛なんかじゃ無かったってね」
「おかしいか? オレはヒーロー、やつはヴィランだ。生かしておくのが間違いなんだよ」
「……………お陰で彼は教員免許を剥奪。なんとかそれだけで抑えることが出来た」
自ら正当防衛を否定したジャイロ。今言った理由は、僕にはなぜか飲み込めなかった。でも、今は何も言わない方がいいのかもしれない。あの男との戦いで何かあったのだろう。僕には想像もできない何かが。
リカバリーガールのおかげで、すぐに僕とジャイロは退院することが出来た。
ただでさえ少なかった依頼が来なくなることに関してジャイロは「やっと静かになるなぁ」なんて言っていた。
だがネットで微かに、身を挺してヴィランから生徒を守ったヒーローと言われていることを伝えたら、サインの練習がどうこうなんて言い出して、僕は心配するのが馬鹿らしくなった。
急遽設けられた休日が終わり、僕は一年A組の教室に戻ってきた。ちょっと見慣れてきた巨大な扉を開けたら、もう来ていたクラスメイトたちの何人かが一斉にこちらを向いた。そして、気まずそうに目を逸らした。
予想してたとはいえ、実際にやられるとキツイな
僕はあのとき、時が戻って無効になったとはいえヴィランを殺した。そんな相手に、前と同じように接するというのは無理があった。
車椅子で自分の席まで行くが、無言の空間が広がっていた。
「そ、そういえば梅雨ちゃん! 今日のホームルームだれが来るんだろ?」
「ケロッ、たしかに気になるわね……相澤先生は怪我で入院中だろうから…」
芦戸が絞り出すように言った。気を遣ってのことだろうが、僕には不要だった。
教室の扉が開けられた。包帯だらけの男が入ってきた。いや、僕はこの男を知っている。このクラス全員が知っている。包帯を顔にまで巻いた相澤先生が入ってきたことで沈んでた空気など吹っ飛んだ。
「相澤先生!? もう怪我はいいのですか!」
飯田がいつもの調子で言った。ほんとに堅物だな。
「良くないが、そんなことよりだ。まだ戦いは終わってねえ
雄英体育祭が迫っている」
「クソ学校っぽいのきたあああああ!!!」
「まてまて!」
「ヴィランに襲撃されたばっかなのに、体育祭なんてやっていいんですか?」
耳郎の言う通りだ。ヴィランに襲撃されて被害が出たんだ。イベントの一つや二つを中止にしてもいいだろう。だが、他のイベントだったらの話だ。
「逆だ。例年通り行うことで、雄英の警備体制は
雄英体育祭は過去に行われていたオリンピックと同レベルのイベントだ。個性を持った人間の出現で、それまでのオリンピックは縮小し形骸化した。その代わりとして雄英体育祭がビッグイベントの一つになったのだ。
更に雄英体育祭にはプロのヒーローもやってくる。活躍を魅せれば将来に直接繋がってくるだろう。
「ホームルームは以上だ」
昼休憩になり、A組のクラスは体育祭の話題で持ちきりになった。意気揚々とする者、自信を曝け出す者、緊張に身を固める者など色々いる中で、ジョニィの頭にあったのはこの休日の出来事だった。
「なあジャイロ……僕の爪弾ではあの男に勝てなかった。これからもっとあんなヴィランと相手をしないといけないのだろうか……」
いつもの事務所で、ジョニィはふと弱音を吐いた。自分でもらしくないと思った。やっぱり今のなしと取り消そうとする前に、ジャイロのいつもとは違う真面目な声に止められた。
「そうだろうな……身も凍るほどによ…だがジョニィ、お前が自分の爪弾の回転に疑問を持ったらいけねえ。Lesson3だ…『回転を信じろ』……お前が自分の回転を信じねえでだれが信じるんだ?」
新しいLessonを知ることが出来た。でも、ジョニィの心は晴れなかった。それは学校に通い始め、体育祭が近づいていることを知っても変わらなかった。
今日の授業の終了を告げるチャイムが鳴った。結局この日は一度も誰とも話すことなく終わった。
はずだった。
「なんだよこの人混み!」
「君たち! A組に何か用か?」
「出られねえじゃねーか! 何しにきたんだよ!」
教室の入り口に人の壁ができていた。
「敵情視察だろ。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見ときてぇんだろ。そんなことしても意味ねえから、どけモブ共…ッ!」
「知らない人のこととりあえずモブっていうのやめなよ!」
爆豪がまた挑発的な態度をとっていた。呆気にとられる野次馬の中から、濃い隈の男が人混みを掻き分けて前に出てきた。
「噂のA組……どんなもんかと見にきたが、ずいぶん偉そうだな。ヒーロー科に在籍するのはみんなこんななのかい? こういうの見ちゃうと、幻滅するな………」
「普通科の人間ってさ、ヒーロー試験に落ちた奴らも結構いるんだわ。そんで今回の体育祭のリザルト次第では、ヒーロー科への編入も検討されるらしい……その逆も然りだ」
油断してると足元をすくうぞという宣戦布告だった。
だが、そんな宣戦布告を受けたからといって劇的に何かが変わるわけでもない。
体育祭まであと2週間だった。その間に僕が出来ることは、馬に乗りながら正確に爪弾を撃つことや、いびつだが出来つつある回転の技術を磨くだけ。
これで大丈夫かという不安は拭うことが出来ず、あっという間に時間だけが過ぎていった。
体育祭当日。厳重な警備体制の中で開催されたにも関わらず観客は満員状態だった。
「雄英体育祭ィィ! ヒーローの卵たちが我こそはと凌ぎを削る年に一度の大バトル!! どうせあれだろこいつらだろ!? 敵の襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星! ヒーロー科1年A組だろォーー!!」
入場が始まった。大歓声の中、一部には疑問の声もあった。
「なあ……あれ、車椅子だよな?」
「ヒーロー科で車椅子って……大丈夫なのか?」
ジョニィの車椅子姿にどよめきが僅かに起こるが、それも圧倒的な歓声にかき消されていく。そして続々と、他の一年の生徒が集まる。その中にはもちろん宣戦布告をしにきた普通科もいるわけで、A組に対しての敵意が剥き出しになっていた。
全一年生が集まったところで、今年の一年生の担当教師が壇上に上がった。
「18禁ヒーロー、ミッドナイト!?」
まさかの人物の登場に、観客の男たちから喜びの声が出た。それは生徒も同じで、特に峰田は鼻息を荒くして打ち震えていた。
「静かにしなさい! 選手代表1-A、爆豪勝己!」
呼ばれた爆豪が壇上に上がる。
「宣誓…………オレが一位になる」
ブーイングの嵐が巻き起こった。だが、爆豪はそれをそよ風程度にいなして元の位置まで帰ってくる。
だが、関係ない。爆豪が相手だろうと蹴落としてでも上に行ってやる。
「一悶着あったけど気を取り直して、今年の第一種目はこれ! 障害物競走!!」
やった。その一言が頭の中を巡った。僕自身の機動力はほとんどないが、今回の体育祭においてスローダンサーに乗ってもいいと許可を得ていた。
それぞれの生徒がウォーミングアップをする中、ジョニィは設けられた小さな厩舎でスローダンサーにブラッシングをしていた。綺麗な藁が敷かれたそこでスローダンサーは満足そうに鼻を鳴らす。
「きっと、無理なことをさせるかもしれないけど……頑張ろうな」
と、突然スローダンサーの様子が変わった。筋肉が強張っているのがわかった。警戒してるようだった。
「だれだ!!」
即座に爪弾を回転させて、もう片手で車椅子を半回転させて振り向いた。
「やめろ……もう
轟焦凍がいた。体操着に身を包んで厩舎の入り口に立って、
「轟か……なんの用だ?」
「単刀直入に言う。今回の体育祭でオレはお前に負ける気はねえ」
「それだけか? ならそのまま出て行け………レースはもう始まるんだからな。準備運動でもしてるといいさ」
轟は少し考えるそぶりをしたあと、そうだなと言って去っていった。本当になんだったんだ。ただ宣戦布告をしにきたのか。だれも居なくなった厩舎の入り口から、回転させたままの爪弾に視線を移す。
やはりこの2週間かけても僕の爪弾は以前と変わらなかった。乗馬しながらの狙撃も、ちょっと当たるようになったくらいだ。
「回転………信じろって、何を信じればいいんだ。なんで教えてくれないんだ、ジャイロ……」
爪弾を回転させる右手首を掴み、忌々しげに見つめる。
「………これは……………」
その瞬間、集合のアナウンスがスピーカーから流れた。疑問が確信に至る前に、車椅子からスローダンサーの背に乗り変えてスタート地点へ向かった。
すでに一年生はほとんど集合していた。その中を馬に乗って進んでいれば、思った通り周りから様々な反応があった。
「馬、いいのアレ?」
「あいつ1-Aだよ。やっぱヒーロー科はとんでもねぇのいんだな」
ほとんど聞き流してるが、賛否両論といった感じだ。
「気にするなスローダンサー。レースが始まればお前に追いつけるヤツはいない……度肝を抜いてやろうぜ」
「あっれ〜〜、どうして馬なんかに乗っているのかなあ。これズルじゃないのォォォ〜? 違反ってやつじゃあないんですかア〜?」
宥めているところへ耳障りな声がした。僕が振り向くより先に、そいつはスローダンサーの前に立つ。陰湿な野郎だ。
「あれ? 無視? 無視するの? 陰険な人だなぁ。そんなんじゃ立派なヒーローになれないですよぉ〜」
こういうのは無視するに限る。相手にしても意味はない。
「さあもうすぐスタートよ! みんな準備はいいかしら!!」
「おっと、もうスタートですね。じゃあせいぜい、反則負けにならないように頑張ってくださいねェェ〜」
そう言い捨てて、そいつは前の方へと歩いていった。本当になんだったんだ。開始のランプが三つ点灯する。手綱を握り、意識をレースに切り替える。
ランプが全て消えた。
「スタァァアトォォーーー!」
爆発するかのように一斉に全生徒が飛び出した。
スタート地点から、まずはこの会場から出なければならない。一番先に出ることが望ましかったが、最初からトップスピードを出してはすぐに馬の脚が潰れてしまう。それでも出来る限りの速さで飛び出したのだが。
「邪魔だよ!」 「どけっての!」 「足を踏むなあー!」 「だれだ今殴ったのは!」「今触ったのだれよ!」「わざとじゃねぇー!」「道を開けやがれ!」
先に進んでいた生徒が、会場の狭い出口ですし詰め状態になっていた。これでは外に出ることができない。
「ここが最初のふるいってわけかッ! くそっ、退けよお前ら!!」
スローダンサーの脚にダメージがいかないよう配慮しているが、それも限界がある。更に暴れないように抑えなければならない。当然のように、流されるようにどんどん後退していってしまう。
「くそっ、こんな序盤でつまづいてられないんだ!」
いっそのこと、爪弾で何人か足を傷つけてやろうかと思った。だが、それをしてはルール違反になってしまう。
「直接的な妨害行為は認められない、だったな………クソッ…どうすれば!」
手も足も出ないその時、足元が一瞬にして氷漬けになった。
「氷……轟の仕業かッ!」
前方を見れば、轟が地面を氷漬けにしながら走っていっている。そしてそれを追うように、爆豪が両手を爆破させて空中を移動、切島は力技で突破、八百万が手から鉄の棒を出してその反動で、青山がレーザーの反動で飛び出していた。
「他にも何人かいるな。やっぱり一番の敵は身内だったか…………だが!」
ズバァアアアアアア
爪弾を大量に発射して、スローダンサーの足周りの氷を破壊した。
「いけっ! スローダンサー!!」
バカラッ バカラッ バカラッ バカラッ バカラッ
「そして、道を作るッ!」
ドバババババババ
爪弾を撃ち続けることで、前方の氷が破壊されていく。その隙間をスローダンサーは器用に走った。元々、ジョニィの乗馬テクニックはジャイロが感心するほどのものがあった。それに磨きがかかり、今では多少無茶な賭けにも出られるほどに成長していた。
「だが、この方法は……」
ジョニィの苦い顔の理由はすぐにわかった。
「おおっと、ジョッキーが開けた道を我先にと後続の生徒が追いかけるッ!」
「効率的ではあるが、悪手でもあったな」
相澤の言葉に歯を食いしばる。だが、やったことを後悔しててもしょうがない。乗り手の力みは馬が敏感に感じ取ってしまう。別のことを考えなくてはと、記憶を巡らせる。
「そこちょっと
「なんでよりにもよって……」
なぜ今になって思い出したのか。ジャイロの腑抜け面が頭に浮かんだ。こちらまで力が抜けて、爪弾の連射が止まってしまう。
「しまった!!」
気付いても遅かった。凍りついた地面がすぐそこまで迫っている。今から発射しても間に合わない。転倒か落馬を覚悟して目を瞑った。
ザパラッ!!
スローダンサーが地面を勢いよく蹴った。その風圧に吹き飛ばされないよう、ジョニィは手綱を力強く握る。
「うっ、うおおおおおおおっ!!!」
果たして、スローダンサーとジョニィは落馬も転倒もせずに済んだ。着地したのは凍りついてない地面だった。残っていた数メートルの氷の絨毯を、スローダンサーは華麗に飛び越えてみせたのだ。
現在、ジョニィの順位は3位。
障害物競走はまだ始まったばかりだった。
どんなギャグかは、原作を見ていただければよくわかります。
次回、障害物競走〜騎馬戦序盤まで