STEEL BALL HERO   作:ボンシュ

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 騎馬戦序盤までと言ったな


 あれは嘘だ


体育祭の巻 ②

 

 雄英体育祭がついに開催された。

 

 最初の種目の障害物競走は開幕早々に地面が氷漬けになるなど、壮絶なスタートとなった。

 

 

 氷の張っていない地面に着地したのは良かった。だが息をつく暇もなく、目の前を巨大な影が塞いだ。

 

「まずは手始め! ロボインフェルノ!」 

 

 ジョニィの額を汗が伝った。目の前にいるのは入試の時に倒した0ポイント仮想ヴィランだ。それも、何体も壁になるように配置されている。

 ジョニィは、なぜ突然氷が途切れたのかを理解した。この『壁』のせいで全員先へ進められなくなっている。

 

 この数………以前倒せたのはほとんど偶然だったというのに、数が多すぎる! ここで『使う』か!

 

 ジョニィは自身の爪を見て、そして周りの足踏みしている生徒たちを見て考えた。

 

 ダメだ。まだ他の生徒の個性もわかってないこの状況で、無闇に使いすぎると対策を立てられてしまう。ここはなんとか自力で……

 

 

ダッ!!

 

 

「な、なにぃぃー!!」

 

 

 思案するジョニィを嘲笑うように轟がロボットの前へ走り出した。標的を見つけた仮想ヴィランが手を伸ばし押し潰そうとする。

 

「せっかくなら、もっとすげぇの用意してもらいてェもんだな。くそ親父が見てるんだからな…

 

 地面に添えられた右手から、誰も寄せ付けない冷気が発生する。まさか、とジョニィが思った時には終わっていた。腕を伸ばしたままの姿で巨大ロボットが凍り付いていた。驚愕する生徒たちを一瞥して、氷像の足元を轟が走り抜けた。

 

「足元が空いてるッ!」

 

「ラッキィィィ〜、感謝するぜA組さんよ!」

 

「行け! 行け! 足元も氷が張ってねぇ!」

 

 その抜け道を他の生徒が見逃すはずもない。ダムの放流のように、足止めされていた者たちが一斉に流れ込んでいく。

 

「うわっ! くそっ、近寄るんじゃねえぞッ!」

 

 その人混みの濁流の中で、ジョニィは愛馬と共に立ち止まって耐える。

 

「落ち着け。まだだ……まだ行く時じゃない。まだ待て、いいか? その時になったら、だ」

 

 首を撫ぜて必死に愛馬を落ち着かせるジョニィの目には、ロボットの凍りついた様はひどく不安定に見えた。回転を不完全とはいえ身に付けたからこそ、安定した状態と不安定な状態を見極めることができた。

 だから、この後に起こる惨状も予想できた。

 

 

バララララドガッラララ

 

 

 「1-A轟、攻略と妨害を同時に! こいつはシヴィィー! ヤベェーな! 一抜けだー! あれだなッもうなんか、ずりーな!」

 

「戦略的、且つ合理的な選択だ」

 

「流石は推薦入学者! 初めて見る仮想ヴィランに物怖じせず難なく突破! 他の生徒を全く寄せ付けないエリートっぷりだ!」

 

 やかましいアナウンスだ。そういうものだからしょうがないとわかってはいてもムカついてくる。ジョニィの苛立つ気持ちを察してか、彼の愛馬のやる気も増していく。

 

「ああ……そうだな。待つのはここまでだ。度肝を抜いてやろうぜ!」

 

 爆発するようにジョニィを乗せたスローダンサーが飛び出した。早速、仮想ヴィランが反応して今度は通すまいと妨害してきた。その仮想ヴィランを見上げて、ジョニィは指を差すように右手の人差し指だけを向けた。

 

 

 

 時間はジョニィが轟に宣戦布告された少し後に遡る。

 

 

 轟が去ったあと、威嚇のために回転していた爪弾を見てジョニィはふと気がついた。

 

「僕の爪弾……いや、爪の『回転』……何か違和感がある」

 

 残り4本の指も立てて、爪を回転させる。

 

 

シルシルシルシルシルシルシルシルシルシルシルシルシルシル

 

 

「やっぱりだ……僅かだけど、乱れがある。たまに回転が遅くなるもの……ぐらつきがあるもの……バラバラだけど、どれも正常な回転じゃない………」

 

 ならば、とジョニィは考える。

 

「この回転を正常にしたのなら、どれほどの破壊力がでるんだ?」

 

 これまでジョニィが撃っていた爪弾は、コンクリートビルの壁に小さくとも穴を開けるほどのパワーがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今。ジョニィは人差し指だけの爪を回転させて、その回転に集中する。

 

「Lesson3……『回転を信じろ』。ジャイロ! これが僕の個性だ!!」

 

 あともう少しで押しつぶされるというところで、巨大な影がかかるほどになってジョニィは爪の回転が正常になったのを確信した。

 

 ガシャァァアアアアアア

 

 

 ジョニィの目の前に迫っていたロボットの手の平に穴が空いた。その穴は手の平に収まらず、はるか上にある仮想ヴィランの頭にも空いていた。

 

「これはもう「爪」を超えた………「牙」

 

これからは「(タスク)」と呼ぶ!

 

 先行した轟を追いかける形で、崩れ始めた巨大仮想ヴィランの足元をスローダンサーで駆け抜けた。周りではクラスメイトが大きさの違いはあれど仮想ヴィランの壁を突破していっていた。

 

 流石は自分と同じくヴィランの襲撃を乗り越えたクラスメイトたちだ。油断していたら馬に乗っているとしても簡単にその差を埋められてしまうだろう。

 

「このまま行くぞ! スローダンサー!!」

 

 ジョニィは勢いを殺すことなくそのまま爆走した。

 

「おいおいおいおい第一関門チョロいってよォォー! だったらこれはどうだ? 落ちたら即アウト! 落ちたくなけりゃ這いつくばりな! ザ・フォール!」

 

 爆進するジョニィの前に、巨大な大穴とその所々に足場がある障害が現れた。だが、以前それでも愛馬の速度は落とさなかった。

 

「落ちたら即アウトか……だがこのままだ。このまま更にぶっ飛ばすぞ!!」

 

 

 ザパラッザパラッザパラッザパラッザパラッザパラッザパラッ

 

 

 ジョニィはその走りのスピードのまま第二関門の綱へと走り込んだ。

 

 

「A組ジョニィ・ジョースター! 馬に乗ったまま綱を渡って第二関門を突破していくぞォー! てかあんなこと馬でできんだな!」

 

「あれだけの動きをするには、それ相当の技術がいるはずだ。まさかの才能だな」

 

 

 先ほどまでやかましいと思っていたアナウンスが心地よく感じた。なんて単純なんだろうかと思いながら、ジョニィは綱を渡ることに全神経を集中させた。アナウンスも耳に入らなくなっていった。

 だが、それは彼の功績が大きかった。スローダンサーの長い経験による実力と冷静さと度胸がなければ、たとえジョニィがプロの騎手(ジョッキー)だとしてもこんな無茶な走りを実現させることはできなかっただろう。

 

 

 ボッボッボッボッボッボッボッ

 

 

 だが、忘れてはならない。このレースでは妨害行為が認められていることを。後ろからの爆裂音に、ジョニィは振り向くことなく確信した。クラスメイトの1人が迫ってきている。

 

「なに曲芸してくれてんだクソがァァアア!」

 

「こんなタイミングでか! 爆豪勝己ッ!」

 

 振り向くことのできない状況で、せめて牽制にと爪弾をできるだけ拡散して撃った。

 

「危ねぇっ! だがやはり、よっぽど集中してるみたいだな。狙いが定まってねぇそんな攻撃が当たるかよ!」

 

 下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。そんなことわざに望みをかけてジョニィは爪が回復次第どんどん撃ち続けた。だがそれら全てが避けられていくのが、後ろからの声でわかってしまう。

 

「あと少しなんだ! 邪魔するな!!」

 

「障害物競走だぞ。邪魔してナンボだろうが!!」

 

 いつ攻撃されて落とされるかと考えると、気が気じゃなかった。だが結論から言おうと思う。ジョニィとスローダンサーは突破することが出来たのだ。

 

 それはジョニィのお陰でも、ましてやスローダンサーの実力でもなかった。

 

 爆豪勝己のこの威嚇が、スローダンサーに強い命の危機を感じさせていた。ここから落ちたとしても、ネットで助かるだろう。だがそれ以上に、爆豪の相手を殺すという意思が爆発音に乗って届いていた。

 

 それがスローダンサーの火事場の馬鹿力を引き出させた。

 

 ザパラッ!

 

「うわっ、うわああああああああ!!!」

 

 綱を渡ることなく、スローダンサーは足場から足場へ直接ジャンプして渡ったのだ。それも一度ならず何度も。

 

「ホワァァアアアアイ!? なんつー馬だよ! てか馬なのかよありゃあよぉ! 足場から足場へどんどん渡っていくぞ!!」

 

「理解できん……火事場の馬鹿力か?」

 

 

 生物的本能で逃げるスローダンサーに、もはやジョニィの声は届いていなかった。ジョニィ自身も振り回され、振り落とされないように、気絶しないようにするのがやっとだった。攻撃をしかけた爆豪も、唖然としていた。

 

 爆音が遠ざかっていたことに気づいたスローダンサーは、飛び跳ねるのをやめて興奮気味にその場をぐるぐると回る。その背中には酔いに耐えながらグロッキーになったジョニィがいた。

 

「ス…スローダンサー………無茶しすぎだこの野郎………だが、よくやった…」

 

 いつの間にか轟も追い越して1位になっていたジョニィは、第三関門の手前で愛馬から降りた。

 

 まだ気分が悪い。だがそんなことは言ってられない。爆豪のお陰でここまで来ることができたが、ジョニィにとっての問題はここからだった。

 

 目の前に広がるのは単なる平地などではない。関門の入り口や辺りにはドクロのマークや爆発のマークの看板がたてられていた。

 

「地雷原……だよな。もしかしなくても」

 

「生き物の不思議パワーに驚かされたが、ここはそんな力技じゃ通れねえぜ! 一面地雷原! 怒りのアフガンだァ! 非殺傷の地雷だが、爆音と爆風は失禁必至だぜ!」

 

「人によるだろうが」

 

 ジョニィは馬の背に寄りかかりながら地雷原の所々にある、円形に土の色が変わっている部分を見ていた。きっとあそこに地雷がある。ここで止まってくれて良かったと、心の底から思った。

 

「なるほどな………よく観ればわかるようになってる。だが、流石にここをスローダンサーで進むのは難しいか……」

 

 地雷を見ながら、ジョニィはスローダンサーの息づかいと体温を感じる為に密着した。人間より力強い心臓の鼓動と、ここまで無理をしたツケが急激な体温の上昇と発汗で伝わってきた。

 

「ここまで無理をさせたな………ありがとう……お前が居なかったら僕はこのレースでここまで来ることは出来なかっただろう」

 

 ジョニィはそっと疲れ切った愛馬をレースの端まで誘導した。その手綱を手放し、馬から降りた。

 

「おぉぉっとどうしたジョニィ・ジョースター! 馬から降りたぞォ! まさかリタイアかー!?」

 

 

 そのアナウンスの言葉を理解してはいないだろう。しかしレース途中で降りた騎手(ジョニィ)にスローダンサーは鼻を近づける。その鼻をジョニィは手で押し戻す。

 

「いや、もう充分だ。お前は充分にやってくれた……それ以上走れば疲労で骨折するかもしれないんだ。ここからは、僕だけで行く!」

 

ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル

 

 

 爪を限界まで速く回転させたジョニィは、その爪を地面に突き立てて地面を切り裂きながら前へ飛び出した。もうすでに轟や爆豪をはじめとした先頭集団に追い抜かされている。

 

「勝利は僕のものだ。もう躊躇しない………個性のフルパワーだ!」

 

 若干遅れながら、ジョニィも第三関門の入り口に到達した。その後ろから、聞き覚えのあるエンジン音がした。

 

「大丈夫かジョースター君!」

 

 入り口前で座り込むように居るジョニィを心配して、飯田天哉が立ち止まった。

 

「余計な心配だ。今はレース中なんだから、自分のことだけに集中しなよ」

 

 今は他人のことに意識を向けてる余裕なんてない。なんとしても勝たなくてはならない時だ。なのに飯田は。

 

「怪我をした人を見過ごすってのは、僕にとってのヒーローじゃない……たとえそれで勝利が遠くなったとしてもだ!」

 

 真っ直ぐ目を合わせられて言ったその言葉は、本当に心の底から思ってることなんだなと、僕はなんとなく思った

 

 

「………………別に怪我はしてない。僕の心配をしてるのはいいが、どんどん追いつけなくなるぜ」

 

 先頭集団へ指を差す。その先では、轟がすでに地雷原の半分まで到達していた。それを見た飯田はさすがに焦った。

 

「うおおっ! そ、そうだな。本当に大丈夫だな! ならば僕も遠慮なく行かせてもらうぞ!!」

 

 

 ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!

 

 

 ふくらはぎからエンジン音を響かせ、飯田は地雷原の中へ猛スピードで突っ込んでいった。地雷が起爆するよりも速く、ここの地雷原を突破するようだ。

 

 

 

 ありがとうな、飯田。感謝するよ。お前の理念は立派だ、僕なんかより人間ができてると思うよ。

 

 

「だから、本当に助かった……お前のおかげで『道』が開けた!」

 

 地雷原の中を僕の爪による移動で進むのは正直厳しかった。だが爆発した後の道は地雷も何もない道だ。後続が来る前に、行けるところまで進んでやる!

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ

 

 

 爆発で抉れた地面を切り裂きながら進む。

 よし、いい調子だ。このまま飯田が先まで進んでくれればいいが。そんな希望を抱くが、そう簡単にことは運ばなかった。

 

 

 ドゴゴォォォオオオオオ

 

 

「うおおおおお!! やっぱダメかあーー!!」

 

 

 一際巨大な爆発と共に、飯田が飛んでいく。その勇姿に僕は敬意を表する。だが、心の中でだけだがな。

 

 飯田が吹っ飛ばされたであろう地点まで来たジョニィは、まだその場所が地雷原の半分ほどまで来てないことに歯噛みした。

 あと数十メートルだというのに、ゴールは目の前だというのに。周囲の生徒たちは不思議そうに、這いつくばるジョニィの姿を見ていた。だが、彼らも自分のことで手一杯だ。地雷を踏み抜かないよう、慎重に、だが着実に先へと「歩んで」行っていた。

 

「こんな……こんな序盤で負けてたまるかよッ! タスク!!」

 

 先へ進む轟目掛けて撃たれたタスクの弾丸は、果たして距離があったために威力が落ちて、簡単に氷の壁でガードされた。それも後ろ手で容易く。

 

「クソッ! 妨害しても無意味かよッ」

 

 シルシルシルシルシルシルシルシル

 

 

 ザクッ  ザクッ ザクッ

 

 

 妨害すら不可能となり、ジョニィは渋々、目の前の地雷を掘り出した。金属の冷たい感触を味わいながら、掘り出した地雷を起動させないようそっと後ろに置く。

 この動きを繰り返して行くしかない。先に地雷を爪弾で処理するのもいいが、そうすると道を用意してやることになる。抜け駆けされるのは目に見えていた。

 幸いにも前半でリードした分がある。それに賭ける。もう残された道はそれしかなかった。

 

「おっとここで、遅れていた後続の生徒も追いついてきたぞー!」

 

 後ろからの足音がどんどん多くなっていっている。追い抜いていく人数が増えていく。1人に追い抜かされるたびに焦りが積もっていく。

 手元を狂わすな。爆発して気絶でもしたらそれこそアウトだ。慎重に慎重を重ねて、しかし素早く作業を行うのだ。

 

 ゴォン! ゴォン! ゴォン!

 

 地雷を掘るジョニィの後ろで規則的な爆発が起こった。だが、それは地雷の爆発ではなかった。爆豪が手を爆発させて空中を飛んでくる音だった。

 

「どけどけどけモブ共! てめぇらはヨタヨタと後ろを歩いてろッ!」

 

 爆破によって空中を移動できる爆豪にとって、この地雷原はあまりにも簡単すぎた。余裕が生まれた。『ムカつくやつをブッ飛ばす』という考えを行動を移せるほど、今の爆豪には余裕だった。

 

「おい半分野郎ッ! 宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえぞ!」

 

 爆豪は先頭の轟の前に出ると、爆破を思い切り浴びせた。

 

 

「ここで先頭が変わったァァー! 喜べマスメディア! お前ら好みの展開だッ!!」

 

 その爆豪に触発されてか、後続の勢いが増していく。

 

「とここで、後続もスパートかけてきたー! だが、ひっぱりながらも先頭2人がリードかぁー!」

 

 

 焦りが積もる。その焦りはついに抑えきれないものになり、地雷を掘るのさえ手をこまねいてしまう。

 

 

ドッゴォォォオオオオオオオオオ

 

 

 その時、後方でとてつもない大爆発が起こった。

 

「後方で大爆発ゥゥゥゥ!? なんだあの威力!!!」

 

 地雷を一個どころではない数を爆発させたそれは、先へ進む生徒たちの視線を一身に集めた。先頭の2人も漏れなくその爆発を見ていた。

 爆発の煙から小さな物体が飛び出る。それは板のようだった。仮想ヴィランの装甲だ。だが、その装甲だけじゃない。それにしがみついてる者もいた。カメラロボットがその姿をハッキリと捉えていた。

 

 煙から颯爽と現れたのは、緑谷出久だった。

 

「偶然か故意か! A組緑谷! 爆風で爆進ッ! つーか抜いたァァ!」

 

 その爆風にのって、凄まじいスピードで飛んで行った緑谷はその勢いのまま先頭の2人を追い抜いた。

 

「元先頭の2人も足の引っ張り合いをやめ、緑谷を追う!」

 

 憤怒の表情で緑谷を追いかけ出した爆豪と、後続のことは仕方なしと氷で走りやすい道を作る轟。元々の速度がある2人と、一時的な加速に過ぎない緑谷ではあまりにも差があった。あっという間に追いつかれてしまう。

 

 

 だが、緑谷は装甲を手放すことなく2人が横一列になった瞬間を逃さなかった。両者の身体を足場に、装甲を地雷原へ思い切りたたきつけた。

 

 ガァアアアアアアン!!

 

 

「緑谷ー! 間髪入れず後続妨害!! なんと地雷原即クリアァァ! イレイザーヘッドお前のクラスすげえなあどういう教育してんだぁ!」

 

「オレは何もしねぇよ。奴らが勝手に火ィ付け合ってるだけなんだろ」

 

 

 

 

 

 

 先頭がもう見えなくなったところで、ジョニィの闘志が無くなることはなかった。爪の回転で地雷を掘り進めながら、先へ先へと急ぐ。だが、その緊張はとうとう重大なミスを起こしてしまう。

 

 カチリ

 

 

「しまっ……」

 

 

 ドゴゴォォォオオオオオオォォォォォォ

 

 

 空中に身を投げ出され、地面に叩きつけられる。緑谷ほどではないにしろ、複数の地雷の同時爆破を生身で食らったジョニィは辛うじて意識があるような状態に陥った。

 

「ぁぁ……そんな、ウソだ…………」

 

 更に、その落下地点は緑谷が飛んだのとは逆方向。地雷原のスタート地点近くまで飛ばされてしまった。絶望感が一気にやってくる。

 

 もはや後ろには生徒はいない。何人かの生徒は轟の作った道を走って関門を突破している。

 

「誰が予想できたか! 体育場に一番に帰ってきた、この緑谷出久の存在をおおおお!!」

 

 緑谷がすでにゴールした。轟と爆豪もゴールしたに違いない。

 

 目の前が霞む。もはや拭う気すら起きなかった。

 

 ここまで上手くできたというのに……まるで嘲笑うかのように運命はまた僕のチャンスを奪っていく。

 

 

 最初は足……

 

 

 

 今度はこれか……

 

 

 

 

 

「くそおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペロッ

 

 

 顔に、冷たく柔らかい感触が走った。

 

 

「………ッ!! そんな…お前が………スローダンサー……!…」

 

 

 バフーッ バフーッ バフーッ

 

 

 僕の眼前には、未だに息を荒げている僕の愛馬が立っていた。この老馬は、別れたさっきよりもしつこく鼻を僕の腕に押し付ける。暖かい鼻息がかかる。糸の切れた人形のように、力の抜けた僕の腕の下へ頭を突っ込んでくる。

 

 

「あぁ………バカだ……本当に、僕の方が…お前が行くというなら………ッ!」

 

 

 流れた涙を拭い切ったジョニィの瞳に、力強い闘志が灯った。

 鼻から頭へ、頭から首へ、そして背中へ。もう一度鞍へまたがったジョニィの目に、焦りや絶望感は無かった。闘志だけを剥き出しにして、思い切り笑みを浮かべた。

 

 

「奴等の「度肝」を抜いてやろうぜッ!!」

 

 

 

 

 

 





 書いてて予想以上に筆がのって、長くなったのでここまでです。

 次回は必ず騎馬戦序盤になるので。

 そして誤字脱字報告をしてくださった方々に感謝を……ありがとうございます。

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