結果だけを求めると、人は近道をしたがるものだ
近道したとき真実を見失うかもしれない
やる気も次第に失せていく
大切なのは、真実に向かおうとする意志だと思っている
向かおうとする意志さえあれば、たとえどんなに書くのが遅れたとしても、次の話は投稿できるだろう?
向かってるわけだからな、違うかい?
すみませんでした。
「そ、その手はッ!」
シュガーが拾った自分の両手を見て、もう一度個性で現れた『両手』を見た。
チラリと見えたところに、乗馬でついた傷のあとがあった。切り落とされた手と同じところだった。
バッ!
取り上げるために身を乗り出そうとしたが、その前にジャイロの手に遮られた。悪魔の尻尾のような蔓が、狙いを定めてゆらゆらと揺れていた。
「間違った方を選ぶだけじゃなく、無理やり奪うのもアウトらしいな」
当たり前なんだろうけどな。独り言のように呟かれたそれは、僕への警告のように聞こえた。
しっかりしろ。なんのためにここに来たんだ。目の前にある両手から、自分の欠けた両腕へ視線を落とした。自然とその下にある両脚も見た。クラスメイトと比較しても細すぎる脚だ。
すーっと、頭に上っていた血が引いていった。
「ジョニィ答えろ……ただし、わかってるよな? どう答えればいいかは」
僕を遮っていた手は、松葉杖を握っていた。
「ああ………僕らが落としたのは…」
腐りかけの両手だ
ギャン
身構える間もなく、個性で生み出された両手がシュガーの元から飛び出した。
「うおおおおおおおーーー!! と、閉じた傷穴からッ!」
「両方……さしあげます」
手術で閉じられた傷口をこじ開けるように、僕の腕の中へ入っていった。不思議と痛みや不快感はなかった。腕の中に何かが入ったという僅かな異物感も、手首から先が元通りになると無くなった。
「よし、異常がないなら早く済ませるぜ」
信じられない。僕の手だ。個性は使えるのか。爪は回せるのか、よし回せた。
直った腕は、以前と同じように問題なく動いた。屋内なので試せないが個性も使えるという実感があった。
「
ジャイロが自分の手足を拾わせたんだろう。『はた』から見るとこんなに気持ち悪いなんてと思いつつ、ジャイロのリアクション対して。
「……わざとやってる?」
真顔で聞くジョニィに、ジャイロもまた真顔になる。少しの沈黙の後、耐えきれないとばかりにジャイロが「ニョホッ」と笑い、つられて僕も笑った。
二人が手足を取り戻すより前、その原因である男は死柄木達がアジトとして使っているバーにいた。身長に不釣り合いな長い足を投げ出すようにソファにもたれかかって、見下すようにパソコンの画面を見ていた。
「動画を見てるだけで、ここまで違和感があるやつは初めて見たな」
「インディアンがノートパソコンを使いながら、コーラを飲んでいる。なかなかお目にかかれる機会は無いですね」
カウンターで黒霧と死柄木がボソボソと話していた。
それはもちろん聞こえていたが、そんなことを気にするよりも俺は目の前の動画を見続けた。
『誰かが……血に染まらなければッ……』
『来い!……来てみろ………』
『オレを殺していいのはッ! オールマイトだけだア!』
動画が止まった。ステインの演説が始まった辺りから死柄木がイラついていたが、その理由は分からない。
オレにわかることは、このステインのセリフに全く感動しなかったってことだけだ。濁流のようなコメントの内容は、贋物はいなくなれだの、所詮はヴィランだの。中には自分の考えを延々と書いてるやつもいる。
だが、オレには関係ないことだ。
「黒霧……」
ビシュッ
「何でしょうかサウンドマン。話ついでに
音を乗せたノートパソコンを黒霧は何事もなく『もや』で包み込み、ソファの上にワープさせた。衝撃で間の抜けたようにパソコンは開き、黒霧も変わらずグラスを磨き続け、もやもやに揺らいだ様子は無かった。少しは鬱憤が晴れると思ったんだがな。
「手が滑った。そんなことよりカネの話だ」
「ケッ、久々に口をきいたと思えば金かよ。この守銭奴が」
「ガキは黙っていろ「はぁ?」それで、どうなんだ黒霧」
「どう……とは?」
睨みつけてくる死柄木を無視して、オレは今度はまっすぐに黒霧の方を向いた。フン……どうやら忘れていたわけじゃなさそうだな。
ジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリとの戦いの後、こいつは「もう少し待っていただきたい」と言ってきた。
ムカついたが、オレ自身も負傷していた為に「治るまでの間ならいいか」と思っていた。
だが、すでに十分すぎるほど待った。だのにその間、こいつらは保須とやらに行って脳無を暴れさせてきたという。
随分と楽しそうじゃないか。
サウンドマンが、とぼける気か?という目を向けると、黒霧は磨き終えたグラスをカウンターに置いてぽつぽつと喋り出した。
「『I・アイランドにあるサポートアイテムを、好きに奪ってくれて構わない』と、先生からの伝言です」
置いたグラスに、酒が注がれていく。
「………バカじゃないのか?」
カウンターに座ったサウンドマンが、グラスを持って問いかける。その目は本気で、本心からの言葉だった。
「いいか、オレは報酬の話をしたいと言ったんだ。報酬……現金…わかるな? それをなんでわざわざ厳重な守りのあるところへ…しかも、現金に変える手間のかかるサポートアイテムを取りにいくんだ」
「『I・アイランド』の科学技術の中には、決してヴィランに渡ってはいけないとされる物もある。あそこの物とわかれば、取引額に上限は無いでしょう」
椅子からサウンドマンが立ち上がった。すぐそばにいる死柄木からすれば、ただでさえ暑苦しい半裸の男が近くにいるのに、喧しくされてはイラついてしょうがない。
しかしそんなことおかまいなしに、サウンドマンは捲し立てる。
「オイオイオイオイオイオイオイオイオイ! そんな理由で取りに行こうってのか? あの島のことを例えるならタルタロスだ。しかもこっちは入ることが一番困難なやつだ。そんなのは、『無謀』ってもんだろう」
「私のワープの個性があります。あなたはただ、その能力で邪魔者を排除していただくだけでいい」
注がれた酒を一気にあおり、潤滑油のように喉を満たす。
「ナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナアナア! オレの職業柄、能力を使いすぎると対抗されるかもしれないんだ。あの2人にバレたものの、あんたらが手を回してなければオレもやりにくくなってた。 排除するだけだと? あの島の監視システムだけでも、相当な数がある!」
「『強盗』をします」
「だから気に入った」
(何言ってんだこいつら……)
手筈について話し始めた黒霧とサウンドマンを横目に、死柄木はただそう思った。
(サウンドマンの能力……音を物質化して、それに触れたものや音のついたものに触ると、音を現象として引き起こす)
死柄木はサウンドマンの言葉の意味がよくわからなかった。これだけの強個性で、しかも弱点らしいものも無い。対策を考えていたが、これといったものも浮かばなかった。それに……。
(触れただけで
さっきのパソコンが落ちたソファは、綺麗な切り口で何等分にも切り刻まれていた。
そのソファと同じようにオールマイトや他のヒーローがバラバラになる様を想像して、死柄木は笑った。
次回予告
「全部使うなんてチョロイぜ」
「ぼくらはまだ「再起不能」なんだッ!!」
「『リベンジマッチ』だ。ジャイロ・ツェペリ」
「全てを敢えて差し出した者が、最後には真の『全て』を得る」
次回 STEEL BALL HERO
「再起への条件 友情への条件」