STEEL BALL HERO   作:ボンシュ

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 早めに更新できるとか言ってたが...スマン、ありゃ嘘だった。

 一度構想を練ったんですが、ふとささやいてきたのはアバッキオの同僚でした。

 結果だけを求めると、人は近道をしてしまう。
 近道したとき真実を見失うかもしれない。

 私がこの作品で何をしたかったのかを思い出して、一度練っていた構想を全部捨てて練り直しました。

 そのおかげで、前より『納得』できる構想になったので、更新させていただきました。

 あとがきは見なくてもいいです。




リベンジマッチ

 

 

 

 

 先手をとったのはサウンドマンだ。瓦礫に埋まっていた足先を思い切り蹴り上げた。ショットガンも比にならないほどの瓦礫が猛烈なスピードでジャイロに迫る。

 

 

ザバァッ

 

 ジャイロは避けるどころか足元に散らばっていた少しの瓦礫を思いっきり蹴り上げた。

 ジャイロが蹴り上げた小さめの瓦礫が数個と、サウンドマンが蹴り飛ばした瓦礫の散弾。勝負にもならなかった。

 

「なにっ!?」

 

 サウンドマンが驚いた。一瞬見間違いかと思うほど奇妙な光景だった。

 

ギャリギャリギャリギャリ

 

 

 ジャイロが蹴り上げた瓦礫が空中を跳ね回っていた。

 正確には、回転する瓦礫がサウンドマンの瓦礫を叩き落としてその反動でまた跳ねているのだが、動きの速さに目は追いつかずあたかも瓦礫が能動的にジャイロを守っているようだった。

 

「回転の力……まさか()()()()()もできるとはな」

 

「驚くにはまだ早いぜ」

 

「なに…? まさか!」

 

 眉をひそめたサウンドマンは、自分の『ミス』に気がつくと即座にその場から飛び退いた。

 

 ドシュゥウウウウ

 

「がっ、ぶああアアアアアッ!!」

 

 最初に投げた鉄球が、サウンドマンの背中に命中した。

 戻ってくる鉄球に気づかないように、わざと大きな音を立てて手元で回転させていたかいがあった。

 

 後ろに大きくのけぞって吹っ飛んでいった姿に、ジョニィが叫んだ。

 

「やった!!」

 

「いいや浅い!野郎、味な事をしやがって…命中する瞬間にのけ反って、衝撃を逃しやがったッ!」

 

 あれだと回転の力もまともに伝わっていないだろう。すぐに体勢を立て直される。

 巨大な(ラック)に囲まれてこうも暗い状況で、サウンドマンを見失うのは致命的だった。

 守りに徹すれば、またあの日の焼き直しになることは明白だ。

 

 ならばやることは決まっている。

 

「おいジョニィ、そいつから目を離すなよ! おれはこのままガンガン戦うッ!」

 

 サウンドマンの消えた暗闇に駆け出していったジャイロに向かって、ジョニィは力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

「クソッ……何をするか全く予測がつかんな、回転の技術とは」

 

 思い切りのけ反ったことにより間一髪のところで直撃は避けたものの、回転の力によって背中の皮膚が若干突っ張ったようになってしまった。

 

 足音どころか物音ひとつ立てることなく羽のような身軽さでラックの上段へと身を潜めたサウンドマンは、爆音を鳴らす心臓すらもすぐに落ち着かせて回復を待っていた。

 しかし回復を待つ間も決して油断はしない。ジャイロ・ツェペリという強敵を警戒し続けなければならないからだ。

 

 コツーン        コツーン

 

 照明が落ちているため、暗く無機質な空間が延々と続いているように見える。

 ジャイロの姿が捉えにくくなっているが、それは相手も同じ条件だろう。

 いいや違う。ここへ身を潜めている上に高さというアドバンテージがあるこちらが有利だ。

 

 それでも、サウンドマンは油断をしない。

 

 これは狩りではない。人間同士の戦いだからだ。

 

 ジャイロ・ツェペリの操る鉄球とその回転が未知数な点は脅威だ。しかしここで最も警戒すべきは『個性』だった。

 

「『スキャン』……物体に眼を搭載して、衝突したものを透過して見る能力だったが……」

 

 

 コツーン        コツーン

 

 

 それだけとは考えなかった。

 

 回転の力が完全に未知数なことを考えれば、例えば『潜水艦のソナー』のように自分の居場所を特定されることだってあり得る。

 

 だからサウンドマンは油断をしない。

 視覚だけじゃなく聴覚も研ぎ澄ませる。こちらへ近づく足音以外に、何か別の音が混ざってないかを警戒する。

 

 コツーン        コツーン    コツーン

 

 足音が遠ざかったり近づいたりしている。

 

 自分のことを探しているのだろう。

 

「............攻め時、だな」

 

 突っ張っていた背中はすでに回復している。

 このまま隠れていても、先に見つかって先手を打たれては今度こそ鉄球の一撃をまともに食らうかもしれない。

 

 サウンドマンはぬらりと動きだした。蛇のように物と物の間をすり抜けて、本来は発生する音を全身に受け流す。

 『音を奏でる者』という由来とは真逆に一切の物音を立てずに標的へと近づく。

 この技術と必殺の個性で、彼は数々の殺しを成功させてきた。

 

 コツーン・・・

 

 足音が止まった。

 

 ピタリと身体の動きを止めて周囲と同化する。鉄球が回転する音は聞こえない。

 

 スン  スン

 

 使うことはないだろうが、毒などにも警戒する。しかし立ち込めるのはラックの鉄臭さのみだった。

 足音の止まった地点はわかっている。

 ゆっくりと、今度は視覚的にも悟られないように忍び寄った。

 

 見つけた。鉄球を握った手と、わずかにはみ出た足を捉えた。

 

 シルシルシルシル.........

 

 

「......鉄球が回転している。まさかここまで音を抑えられるとはな」

 

 まさしく間一髪だった。鉄球を使われる直前に見つけられた。

 

 先手をとったのは、このサウンドマンだったな。

 

 音の攻撃は、使う前に音が発生するので気づかれる。

 

 愛用のナイフを構えて、ジャイロのほぼ真上まで接近したサウンドマンは音を立てることなく、その場から飛び掛かった。

 

 

ガッシャアアアアアン

 

 

 勢いよく着地と同時に刺し貫いたナイフは、しかし空ぶった。

 

「これはッ! ジャイロ・ツェペリ まさか!」

 

 そこにあったのは、血を滲ませて、衣服の切れ端で棚に固定されたジャイロの腕と足だった。

 

「これで、クソ! 使()()()()()()()()() テメーの油断を買うには高すぎる気もするけどなあ......」

 

ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル

 

 脂汗を滴らせて片腕と片足のみになったジャイロが、凄まじい勢いで回転する鉄球を構えていた。

 

「ウオリャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ドシュウウーーーー!!

 

 

 

 

 

 ブン ブン

 

 

 おそらく最大威力で放たれた鉄球は、無情にも音の壁に阻まれた。

 

「このサウンドマンは、決して油断をしない・・・。囮の可能性も常に考えていたさ、だからこの程度の不意打ちも効かない」

 

「てんめえ... クソ野郎......」

 

 投擲の反動に耐えきれず床に崩れ落ちるジャイロを、音の壁の隙間からサウンドマンが冷たく見下ろす。

 音の壁に衝突して回転を続ける鉄球を見る。貫通してくることはまずないだろう。

 

「やはり、無意味なリベンジマッチだったな。そしてスデに俺の攻撃は終わっている・・・さっき飛び掛かったとき、『切り裂く音』のモンスターを作っておいた」

 

 ジャイロの腕と足が固定されていた場所から、十数匹の小さな生き物がわらわらと出てくる。

 

 その体には『ザクッ ザクッ』の文字や『ズバッズバッ』の文字が浮かんでいた。一体でも脅威のものが、群れとなって襲い掛かってきている。

 

「なにがあって復活したのかわからんが、今度は確実に仕留めてやろう・・・」

「お前の次のセリフは・・・」

 

『原型など残さずバラバラにしてやる』・・・だ」

 

「・・・ハッ!?」

 

 床に横たわりながらニョホッと笑みを浮かべたジャイロは、先読みをされて驚き戸惑うサウンドマンに対して言葉を続ける。

 

「俺だってこれで『等価交換』なんて思っちゃいないさ......てめーを誘うだけなら他にもやりようはあった」

 

「この程度でてめーを油断させることができないのはハナから分かりきっていた。だけどよォ......獲物を仕留める時には誰だって油断するからな......そこを狙わせてもらったぜ」

 

「しまッ!!」

 

 気が付いたサウンドマンが『後ろ』へ音の壁を作ろうと振りかぶった。

 

 

グッシャアアアアアアアッッ

 

 

 早かったのは鉄球の方だった。

 

 固定されていたジャイロの腕から飛んできた鉄球は、寸分の狂いもなくサウンドマンの顔面に直撃した。

 

 吹っ飛ぶはずのサウンドマンの体は、自分で生み出した音の壁にぶつかり衝撃が意識を刈り取ろうとする。

 

 シュウウゥゥゥゥゥ......

 

 本体がやられたことで、迫っていた音のモンスターも消滅する。

 

 

 ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル

 

 それは同時に音の壁も消えることを意味しており、阻まれていた『本命』の鉄球がサウンドマンに直撃する。

 

「ブッグオオおおおお!!!」

 

 絶叫が響き、吹っ飛んで床に倒れたサウンドマンの体には鉄球が深々とめり込んでいた。

 

 ピクリとも動かなくなったサウンドマンを、上体を起こして確認したジャイロは気が抜けたようにどしゃりと横たわった。

 

「クソッ回転で誤魔化しても痛いものは痛いな......だけどよお~~」

 

 仰向けのまま、ゆっくりと大きく息を吸って吐き出したジャイロは、気持ちよさそうに笑みを浮かべた。

 

「『借り』は返した...そしてこれで全部使い切ってやった......()()()()()()()()!」

 

 

 

 

 ジャイロ・ツェペリ リベンジ成功

 

 回転で出血と痛みを抑えるも重体

 

 

 

 サウンドマン(サンドマン) 敗北

 

 鉄球により意識を奪われ、回転の力で皮膚を硬質化させられ完全に拘束されるものの、目立った外傷はなし

 

 

 

 





 次回 STEEL BALL HERO


 車椅子をガンダムにされたジョニィは、BIG3のミリオと決闘をすることになった。

 「もちろん! 鉄球だッ!!」

 激しい猛攻の末、ガンビッドの操作に優れたオール・フォー・ワンが優勢になった。

 しかしそれが、逆に妹の夫の逆鱗に触れた!

 「関係ない、行け」

 果たして渋滞に巻き込まれたDIOと承太郎の将棋バトルの結果は!?

 次回 STEEL BALL HERO

 『逃げたらヌケサク、進めば同僚』

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