STEEL BALL HERO   作:ボンシュ

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ジョニィ・ジョースター オリジン その2

 

 

 個性が発現してからというもの、意外と生活に問題は無かった。

 

 だが、ヒーローとしては終わっていたんだ。

 

 ぼくのヒーロー像は、車椅子で戦うものとは違う。オールマイトのように立派な二本の脚で立ち、どんな災害時にもすぐ『駆け』つける。

 

 それがぼくの目指すヒーローだった。

 

 なのに、個性が発現してからぼくの足は動くことをやめた。どうしてなんだ。ぼくが何かしたっていうのか。

 

 先生に相談したら別の道を勧められた。

 

 家族に相談したら、戦闘用の車椅子とかわけのわからないものを勧められた。

 

 違う、ぼくがなりたいのはこんなヒーローじゃない。

 

 こんな個性があるから、ぼくは足を動かせなくなったんだ。

 

 ぼくは個性に足を奪われた。

 

 だから、ぼくはこの個性が嫌いだ。

 

 さっきの男に対する脅しだって、本当に使うつもりは毛頭無かった。もし手を貸されたら、暴れてやろうと思っていた。

 

〈治したけりゃさっさと来な〉

 

「まて! てめぇこの野郎 まちやがれ!」

 

 その音声を最後に、スピーカーからは全く声が聞こえなくなった。

 

「畜生! ぼくが何をしたってんだよ! 10分なんて不可能だ  行ける距離じゃない!」

 

 上を見ると、まだ階段は続いていた。残り三階だというのに、いまはそれが永遠に続いているように見えた。

 

「くそおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

グルグルグルグルグルグル

 

 爪を回転させ、それを地面に当てた。

 

 瞬間、さっきまでの苦労が嘘のようにロケットのような勢いで階段を登り切ったジョニィは、勢い余って階段の踊り場の壁に身体をぶつける。

 

 口の中を切って血を流しながら、それでも力強い眼差しでカメラに指を向けた。

 

「ガハッ  10分以内に来いだって? ああ行ってやるとも! だがな、もうあんたから教えてもらうつもりはないっ!」

 

 次の階段へ手をかけジョニィは言う。

 

「その方法とやらを暴いてやるッ! 教えてもらうんじゃあない。僕が…おれがあんたから奪うんだっ! 首を洗って待ってろよ、今はまず、あんたを一発ブン殴ってやるッ!」

 

 プツン、と映像が途切れる。

 

 ジャイロ・ツェペリはニョホッ、と笑みを浮かべて目の前の二人組を見る。

 

「さぁ、約束だぜお二人さん。さっさと帰りな。そして二度とそのしみったれた面を見せるな」

 

「お、おおおおい待て待て! あいつがあんな事できるなんておれたちは知らなかったんだぞっ!」

 

「そうだ! よく考えればあいつはあんたの仲間じゃないのか? だとしたらイカサマだ! こんな取引は無効 無効だッ!」

 

 声を荒げる二人組に対して、ジャイロは椅子から立ち上がって机を叩く。

 

「イカサマだってェ!? おいおたくら、ちゃんと言葉を選べよ。この勝負はお互いにフェアと判断して臨んだ勝負だ。自分たちが負けそうだからとイカサマ呼ばわりするってんなら……」

 

 ジャイロはいましがた破壊されたカメラの映像を指差して笑う。

 

「あいつ自身に聞いてみな。お前はあの男の仲間か?ってよ  絶賛怒り心頭のあいつなら親切に答えてくれるだろうぜ。あのカメラを破壊した個性のオマケ付きでな ニョホホ」

 

 

 五階まで来るのに、時間はかからなかった。一個だけある扉には、ジャイロ・ツェペリという名札が付けられていた。

 

「ジャイロ……ツェペリ!」

 

 地面から這い上がってやつの部屋の戸を開けようと手をかけた瞬間、向こうから扉で吹っ飛ばされて転がされる。

 

「いってぇぇ  なにしやがんだジャイロ・ツェペリ!」

 

「違う! おれはジャイロじゃねぇ中のやつだッ! 関係ねえ 関係ねぇからな!」

 

「チキショー! 覚えてろよォォオオ!」

 

 三流の悪役が放つような捨て台詞を発して、二人の男は転がり落ちるように階段を下っていった。

 なんだったんだあの男たちは……。わけがわからないまま、呆然とするぼくの背後から、そいつは言った

 

「ったくよォ〜、人がせっかく優しくお帰りいただこうとしたってのに……無駄に終わっちまったじゃねぇか」

 

 振り向くといた。背は僕より大きく、マカロニウエスタンみたいなカウボーイの格好をした男だ。

 

 そいつは手に持った鉄球を奇妙な形のホルスターにしまい込むと、踵を返して部屋の中へ戻って行こうとした。

 

 こいつだ! こいつがジャイロ・ツェペリだ!!

 

「てめぇジャイロ・ツェペリ! よくもおれに個性なんかをォ!」

 

 腕の力で思い切り跳ね上がり、ジャイロの腰のガンベルトを掴んだ。その拍子に、腰に収められていた鉄球に触れてしまう。

 

「待て! バカ やめろ!」

 

 ズギュゥゥゥゥウウウン

 

「おおおおおおおおおおおおおお」

 

 ドクン

 

    ドクン

 

 一瞬、ほんの一瞬だった。

 

 

  ドクン       ドクン

      ドクン   

 

 だが、その一瞬は僕がこれまで経験した何よりも衝撃だった。

 

 

  ドクン  ドクン   ドクン    

 

ドクン        ドクン

 

 今………何が起こったんだ!?

 

 …………いや確かに………今……確かに

 

 

 

 だが………もう動かない………(本当に動いたのか?)

 

 

 オレの両脚……

 

 「鉄球」……

 

今……鉄球に触れた…男の

 

 

 扉が閉まっていく。 だが、オレは咄嗟に個性を使って急速に接近した。

 

 

 世間はオレにあきらめろと言った………

 言葉で、時には無言で

 

 この男は、ジャイロ・ツェペリはいったい何者なんだ!?

 

 

 ボロボロの状態で部屋に滑り込んだオレを、ジャイロ・ツェペリは椅子にどかっと腰掛けながら言った。

 

「妙な期待をするなよ。お前の事情がどんなものか計り知れないが、その床から立ちあがったのは偶然にすぎない」

 

 冷たく、言い聞かせるように。

 

「単なる肉体の反応で、それ以上のものは何もない」

 

 だが、そんなことは知ったことじゃない!

 

 オレはこいつから治療方法を奪ってやるんだ!

 

「その鉄球だな! それが原因か!? 回転していたその鉄の球。たとえばこのオレにもそれが出来るのか………!?」

 

 だが、ふんぞりかえったままジャイロ・ツェペリは椅子を回転させて背を向けた。いいだろう、そっちがその気ならこっちにも考えがある!

 

「ならばもう一度触ってやるぜェェーーーー!」

 

 もうやけくそだった。辺りの家具を発射台にして飛び上がり、ジャイロ・ツェペリの腰の鉄球に手を伸ばした。だが。

 

 ズギュゥウウウウウウウウ

 

「 なっ  」

 

 ジャイロ・ツェペリが触れたところから、オレの指が、手が捻れて言うことを聞かなくなった。そのままカーテンレールを掴んで、どんなに力んでもオレの指は捻れたまま掴んで離そうとしない。

 

「けなすこと言って落ち込ませる前に誉めといてやる。なかなか鍛えられた上半身をしている……上半身はな。

 

 そしてはっきり言っておく。この鉄球の回転はたしかにオレの武器だ。

 だが、おたくさんのような歩けないものを歩かせる事なんか出来はしない……」

 

 

 

 

 

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