STEEL BALL HERO   作:ボンシュ

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試験開始

「おい触るな! まだ回転している!」

 

 鉄球の謎のパワー。それによってオレはまたしても、一瞬だが立ち上がる事ができた。

 

 ドジャアア

 

 車椅子に倒れるように座る。やっぱりあの鉄球なんだ。あの鉄球の謎を解かない限りオレの脚は治らない。それは確固たる真実だ。

 

「お前かよ…… なんの用だ? オレは忙しいんだよ。後にしてくれ」

 

 馬に跨って、ジャイロはそう言う。

 

 これにも、もう慣れた。ジャイロ・ツェペリはなぜかバイクとか車を持たない。代わりに馬で移動するのだ。駐車場に馬が止まっている光景は、最初はぶったまげたもんだ。

 

 いや違う! オレが聞きたいのはそこじゃない。

 

「いい加減にその鉄球の謎を教えろ! もうオレは15だ。どんだけ待てばいいんだよっ!」

 

 囃し立てるジョニィに、ジャイロはあくまで冷静にしかし力強く言った。

 

「Lesson1『妙な期待はするな』。おまえ忘れてんじゃねぇのか?」

 

「忘れるわけがないだろう。出会った時、最初に言われた言葉だ」

 

 ジョニィは思い出す。かつての無理難題をクリアしたあと、ジャイロが言った言葉だ。

 

「じゃあ大丈夫だな。さっさと行ってこい。GO! GO! ジョニィ! GO!」

 

「GOじゃねえ! 時間がねぇから早く教えろって言ってんだよッ!」

 

ジョニィが焦っている理由、それは試験だった。雄英高校の試験があと少しで始まるというのに、ジョニィはいまだ車椅子のまま、更にジャイロからは奇妙なLessonとやらを与えられる始末。

 

「クソっ! これで落ちたらてめぇの顔面に爪弾をぶち込んでやるからな!!

 

 時間ギリギリになったところで、ジョニィは悔しそうな顔をする。そして渋々、車椅子の車輪に回転する爪弾を当てた。爪弾の回転が車輪の回転に伝わり、車椅子は車椅子とは思えない速さで突き進む。

 

 

 

 しかし、途中の車道は大混雑していた。

 

 

 

「なんでこんな時に!! これじゃあ進めねぇじゃねぇかよ!」

 

 車道はもうダメだった。どうしようかと周囲を見回したジョニィの目に、歩道が写った。

 

「なんだ、歩道が広いじゃねえか!」

 

 渋滞する中を、ジョニィは車椅子ごと大ジャンプした。辺りの通行人や後続車の運転手らが、口をあんぐりあけているが、ジョニィはそんなことを気にしてる場合ではない。

 

「急げぇぇ!!!」

 

 タイヤがすり減るほど高速で移動するジョニィ。そして、ついに雄英の門が見えた。

 爪の回転を止めて、無事に雄英高校の正門を潜ったジョニィだったが、

 

 

「  ハッ! 」

 

 あることに気がついた。

 

「車椅子が… タイヤが()ぇ 」

 

 タイヤのゴム部分が擦り切れて無くなっていた。他の受験生たちは、ゴムの焼ける匂いに顔をしかめる。ジョニィも鼻を摘みながら、試験の受付人に話す。

 

「すみません、車椅子をお借りできませんか?」

 

 雄英高校の歴史上初、車椅子でヒーロー試験に挑む者。他の受験生は冷やかしかと笑っている。

 

「車椅子…  マジかよ」

 

「変なやつ……あいつと一緒のとこはやだなぁ」

 

 この視線にはもう慣れた。

 何を言われようが、オレの目指すものは変えない。ヒーローになるんだ。立派なヒーローになってみせる。

 

 その罵詈雑言の中から、一人の受験生が飛び出してきた。

 

「キミ! 大丈夫か、肩をかそう」

 

「ぁ ああ、サンキュー」

 

 受付の人が持ってきてくれた代わりの車椅子に乗せてもらう。珍しいヤツだ。こんなクソ真面目なやつは生まれて初めて見た。

 

「助かったよ。あんた、名前は?」

 

「ぼ、俺の名前は飯田天哉。受験生だ。そういうキミは?」

 

「ジョニィ・ジョースター。オレも受験生だ」

 

 オレが受験生であると伝えると、飯田天哉は一瞬ピクリと固まるも、すぐ頭を振り手を差し出してきた。

 

「よろしくな! お互い悔いのないように頑張ろう!」

 

 そう言って、飯田天哉は駆け足で試験会場まで突っ走っていく。

 

 ああ、やはりだ。

 飯田天哉の目は同情のそれだった。

 

「必ず……必ず回転の秘密を暴いて脚を取り戻してやる……もうまっぴらごめんだ!」

 

 ジョニィ・ジョースターも、決意を固めて試験会場へと向かっていく。

 

 

 

 

 その頃、試験官たちが揃ったモニタールームでは。

 

「なあ相澤君……この生徒なんだけど」

 

「なんですか?」

 

「車椅子……だよね?」

 

「そうですね。別に車椅子は我々が支給したものですから、何か細工されてたりはありません。ご安心してください」

 

「いやそうじゃなくて!! ゴハッ」

 

 血を吐いた巨漢の男が、煙を発して次の瞬間には骸骨のような痩せ細った姿になる。

 

「この子、大丈夫なの?」

 

「……….正直、私もこの生徒の試験参加を許可するか迷いましたよ。でも……」

 

 ある書類を、相澤は骸骨男に手渡す。

 

「ジャイロ・ツェペリ…あのツェペリ一族が推薦ン!?」

 

「そう、あのツェペリ一族がなぜかあの少年を推薦したんです。理由を聞いたら、はぐらかされました。何かあるんでしょう…あの少年には……」

 

 相澤が見るモニターでは、ジョニィが、支給された車椅子の調子を確認していた。

 

「さすが雄英……品質が段違いだぜ」

 

 すでに生徒たちには説明がされたが、読者の方々の為にもう一度説明させていただく。

 

 雄英高校ヒーロー科の実技試験はポイント制である。ポイントが一定基準まで達していれば合格、達してなければ不合格となる。

 

 試験会場は市街地を模したフィールドである。そこにロボットが配置されるのだ。

 

 ロボットの種類は計4種類

 

 1ポイントロボット、2ポイントロボット、3ポイントロボット、そして0ポイントロボット。

 

 0ポイントロボットは超巨大なお邪魔ロボット。倒さなくてもポイントに影響はない。

 

 以上をふまえて、これから起こる壮絶なポイントの奪い合いをご覧いただこう。

 

 準備運動が終えた頃、試験会場へ通じる大扉がゆっくり開かれた。

 

 全員が息を詰まらせて『その時』を待つ。

 

 

 

「ハイ、スタートォオオオオ!」

 

 

 

「   はい? 」

 

 あまりにも唐突。

 

 試験官にしてプロヒーローのプレゼント・マイクが個性を使って放った合図に、受験生は面食らった。動かない受験生らに、プレゼント・マイクは喝を入れる。

 

「もう始まってんだよ! 急げ急げッ! ……っているじゃねーか、粋のいいのがヨ!」

 

 誰よりも早く駆け出した、もとい飛び出したのはジョニィ・ジョースターだ。

 

「Lesson1『妙な期待をするな』、そんな懇切丁寧に開始を宣言してくれることなんか期待してなかったさ  そしてっ!」

 

 ジョニィは爪を回転させる。目の前には1ポイントロボットが佇んでいた。車椅子を直進させながら、ジョニィは右手をロボットに向ける。

 

 ババババババババババアッ

 

 ショットガンのように撃ち出されたジョニィの右手の爪弾は、1ポイントロボットを粉々に爆裂させた。

 

「『脆い』! どんどん希望が湧いてくるぞッ! 待ってろよジャイロ・ツェペリ……ヒーロー科に入って、それも一位になってやる‼︎ 

そして僕の成長を認めさせてやる……次の回転のLessonを受ける為にも!」

 

 次々と、ジョニィは爪弾でロボットを破壊していく。

 瓦礫があっても、車椅子の車輪に回転を加えて…

 

 ドシュゥゥウウウ

 

 ズバンッ    ズバッ

 

 車椅子ごと瓦礫を飛び越える荒技をやってのけ、その先に居たロボットを爪の回転で切り裂く。

 

 当初は車椅子で大丈夫かと思っていたモニタールームも、彼の動きには目を見張った。

 

「すごいね、車椅子なのにもうあんなにポイント稼いでるよ」

 

「元々の個性を最大限に利用した戦い方……車椅子というハンデを逆に利用しているとはな」

 

 だが、その快進撃は長くは続かなかった。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 超巨大0ポイントロボットが、姿を現した。

 

 

 

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